必然的勝利
極限の攻防にあっては
勇気と誤断の交錯が
結果を左右する
逆転の可能性は常にあるところがいま見たものは
少しばかり様相が異なる
サートゥルナーリア(Saturnalia)とは、2016年生まれの日本の競走馬である。
安平町・ノーザンファーム生産、栗東・角居勝彦厩舎所属(※)、馬主はキャロットファーム。
名前は古代ローマの農耕神サートゥルヌスを祝した祭に由来し、現在のキリスト教圏においてイエス・キリストの顕現を記念する祝日である公現祭での行事の基礎となった。
※2018年7月~2019年1月にかけて、角居師の飲酒運転による調教停止処分により中竹和也厩舎へ一時的に転厩している。
主な勝ち鞍
2018年:ホープフルステークス(GI)
2019年:皐月賞(GI)、神戸新聞杯(GII)
2020年:金鯱賞(GII)
出自
父ロードカナロア、母シーザリオ、母父スペシャルウィークという血統。
父は香港スプリント連覇をはじめ、GI5勝を挙げた日本史上最高ランクのスプリンターで、サートゥルナーリアは2年目の産駒である。母は2005年の優駿牝馬を制し、その後米国へ遠征しアメリカンオークスを優勝した名牝。詳しくは個別記事を参照のこと。
母のシーザリオは繁殖牝馬としても大活躍を収め、本馬の半兄エピファネイア(父シンボリクリスエス)は菊花賞とジャパンカップを、同じく半兄リオンディーズ(父キングカメハメハ)も朝日杯FSを制している。
しかしこの一族には旺盛な闘争心が備わっている代わりに、それ故の折り合い難やかかり癖が見られた。エピファネイアもリオンディーズも鞍上は折り合いをつけるのに苦労していた。サートゥルナーリアは、育成段階においては折り合いに不安は無かったという。
母や兄姉達と同様にキャロットファームにて募集がかけられると、1口35万円×400口の総額1億4000万円で募集された。2016年産のキャロット馬の中では最高額タイである(もう1頭はレイデオロの弟)。
競走生活
2歳
やはり母や兄姉達と同様に、栗東の角居勝彦厩舎へ入厩。仕上がりは非常に早く新馬戦が始まった2週目の阪神でデビュー。鞍上はミルコ・デムーロ。レースでは最後の直線で窮屈なシーンもあったが進路が開けると一気の脚で抜け出し、最後はデムーロが流す余裕もあるほどの楽勝であった。
夏場を休養に充てて萩S(OP)で復帰すると、直線で持ったまま内から抜け出して、最後までちょんちょんと促すだけで快勝。
2歳シーズンの最後に年末のホープフルステークスを選択。当日は単勝1.8倍の1番人気に推され、相手はルメール鞍上のアドマイヤジャスタ、勝浦正樹で重賞2勝のニシノデイジー等々。
レース本番では好スタート好ダッシュを決めて2番手を追走。好位のインで脚を溜めて直線を迎えた。
しかし直線入口で前が壁となり内に包まれる展開となる。だが、中山の急坂に差し掛かったところで前のアドマイヤジャスタ、ブレイキングドーンの間が僅かに開いたところを一気に抜け出す。内で粘るアドマイヤジャスタを交わして更に1馬身半差をつけて快勝した。これには鞍上のデムーロも「今年一番強い2歳馬です」と絶賛。但し抜け出した際に進路妨害があったとしてデムーロが制裁(過怠金3万円)を受け、開催最終日に大逆転で制裁リーディングとなった。
年明けの年度表彰において、朝日杯FSを勝ったアドマイヤマーズと最優秀2歳牡馬を争って一騎討ちとなったが、30票差でアドマイヤマーズが最優秀2歳牡馬となった。
3歳春
年明け早々、競馬界はデムーロの行き先に注視していた。何しろサートゥルナーリアもアドマイヤマーズも主戦騎手はデムーロである。どっちに乗るのか、使い分けて両方か、と色々推測も飛んだが、結果年明けから2週間も経たずしてサートゥルナーリアはクリストフ・ルメールに乗り替わる事が発表され、それから数週間後にはトライアルを使わず皐月賞へ直行する事が発表された。
さて、本番の皐月賞では単勝1.7倍の1番人気に推された。相手は最優秀2歳牡馬アドマイヤマーズ、共同通信杯勝ち馬ダノンキングリー、若駒Sと若葉Sを連勝したヴェロックスが上位人気となっていた。
レースが始まると毎日杯勝ち馬ランスオブプラーナがハナに立ち、サートゥルナーリアは馬群の中程からやや前に位置取り追走する。直線に入ると外へ持ち出して先に抜け出したヴェロックスと競り合いになり、更に内ラチ沿いを進むダノンキングリーと3頭もつれた混戦となった。結果ヴェロックスをアタマ差下して1位入線を果たす。
直線半ばでルメールがサートゥルナーリアに左鞭をいれた事で内にもたれ、ヴェロックスの進路を狭めたとして審議が行われた。後にルメールは制裁(過怠金5万円)を受けたものの着順通りに確定しクラシック初戦を制覇。この勝利で鞍上のルメールはクラシック競走完全制覇を達成した。
次走は勿論東京優駿(日本ダービー)。しかし3週前のNHKマイルカップでグランアレグリアに騎乗していたルメールが直線で斜行し、折しも3月にも同様の不注意騎乗を行っていたことが加味されて制裁が重くなり、開催16日間の騎乗停止、つまりダービーに騎乗できなくなってしまった。
代打としてオーストラリアから短期免許でやって来たダミアン・レーンが選ばれ当日を迎える。当日は単勝1.6倍の1番人気に推され、ヴェロックス、ダノンキングリーと皐月賞上位3頭がそのまま上位人気となり、3番人気のダノンキングリーが4.7倍に対し、4番人気アドマイヤジャスタが25.9倍と、戦前の評価は皐月賞組で決まっても仕方ないといった風であった。
レースが始まるとサートゥルナーリアはスタンド前出走の洗礼、大音量のオイオイ声援にやられたかテンションが高く立ち上がるようなスタートとなる。道中は中段の後方に位置していたが、横山典弘騎乗停止により息子の横山武史に乗り替わった青葉賞馬リオンリオンが一昔前のテレビ馬の如く大逃げを打つ。その為馬群はかなり縦長になる。直線に入ってリオンリオンが逃げ潰れロジャーバローズが先頭に立つ中、サートゥルナーリアは外に出して追い上げるものの前が止まらない。先団から好位に立ったダノンキングリーと事実上の単騎逃げとなったロジャーバローズが追い比べる中、サートゥルナーリアは残り100mから脚が鈍り、一度交わした筈のヴェロックスに差し返され、4着。自身初の敗戦となった。
レース後、事前登録していた凱旋門賞への挑戦を断念する事が発表された。
3歳秋
秋シーズンは神戸新聞杯から始動。ここでは春に辛酸を嘗めたヴェロックス、ソエ(端的に言えば成長痛)で春全休明けの素質馬ワールドプレミア、京都新聞杯勝ち馬レッドジェニアルなどが参戦したが例年に比べかなり少ない8頭立てとなった。勿論1番人気である。
今度は出遅れる事無く発馬を決め、押し出されるように逃げるシフルマンを見ながら2番手を追走する。前半1000m63秒4とかなりスローな展開となり、4コーナー手前から動くと直線入口に入る頃には既に先頭に立ち、阪神の坂を登る時にルメールが少し押す程度でヴェロックスを3馬身突き放す快勝となった。
次走は天皇賞(秋)を選択。ここでルメールが前年の年度代表馬アーモンドアイに騎乗するため、短期免許で来日していたクリストフ・スミヨンが鞍上となった。天皇賞(秋)はアーモンドアイほか、ダノンプレミアムやワグネリアンなど有名どころが集まり、出走16頭のうち10頭がGI馬という豪華メンバーとなった。
1番人気こそアーモンドアイに譲ったが、2番人気はサートゥルナーリア。戦前はアーモンドアイにサートゥルナーリアやダノンプレミアムがどこまで食い下がれるか、が焦点となっていた。
しかしゲート入り前から異様にテンションが高く、発馬は決めてインの好位につける事は出来たものの、スミヨンが「終始力みっぱなし」と言うようにちぐはぐな競馬となる。前半1000m59秒0とアエロリットが緩み無いペースを刻む。直線に入ると、残り300m付近で内からアーモンドアイ、アエロリット、サートゥルナーリア、ダノンプレミアムが横一線になる。しかしアーモンドアイがスッと抜け出して後続を突き放す一方。サートゥルナーリアはダノンプレミアム、アエロリットと競り合いを演じるも残り100mであっぷあっぷになり、追い込んできたワグネリアン、ユーキャンスマイルにも差されて6着に敗戦した。
秋シーズン3走目には有馬記念を選択。鞍上には引き続きスミヨンが務めることとなった。前走天皇賞(秋)以上に豪華メンバーが揃い、アーモンドアイやリスグラシュー、スワーヴリチャードなどGI馬11頭が集結。中山競馬場をはじめ右回りでは無敗である為単勝7.8倍の3番人気に推された。
小雨降る中山競馬場。府中で行われたダービーや天皇賞(秋)よりも落ち着きがあり、きっちりと発馬を決めて中団後方につける。外枠のアエロリットがハナを主張して逃げる展開となり、1000m58秒5とハイペースで逃げ、更に淀みないラップを刻み続ける。残り600mを通過した辺りで外に回して進出を始め、直線入口で5~6番手につける。伸びがないアーモンドアイを尻目に抜け出しを図ったが、更に外からリスグラシューが抜け出すと中山の急坂を登り終えてなお突き放す剛脚に敗れ、サートゥルナーリアは5馬身差をつけられたものの2着を確保。スミヨン騎手や角居師は「いかに発走までに落ち着いているか」を本馬の好走条件に挙げ、実際落ち着きがあれば国内上位の実力馬である事を示した。
この好走が評価されたのか海外含めGI2勝だったアドマイヤマーズとは僅差で最優秀3歳牡馬に選出された。
4歳春
明けて4歳となったサートゥルナーリアの初戦には金鯱賞が選択された。昨年のダービーと天皇賞での敗戦から左回りがどうなのか、58kgはどうなのか、という点が注目されたが、出走馬がこれまでに比べ数本落ちる面子だった事もあり最終的には単勝1.3倍と一本被りの人気となる。鞍上にはルメールが帰ってきた。
レースが始まるといきなり人気の一角ロードマイウェイが出遅れの上不利を被る波乱のスタート。サートゥルナーリアは中団につけて追走。ダイワキャグニーが刻むペースは1000m63秒6と緩々でお誂え向きの展開となる。直線でスーッと外に出して坂を登り終えた段階で追い出し、一旦抜け出せばあとは突き放すだけで2馬身差をつけて快勝。左回りと58kgを共に問題にしない走りを見せた。
次走に優先出走権を得た大阪杯では無く、宝塚記念へ出走。例年少頭数傾向のある宝塚記念には珍しく18頭フルゲートとなり、GI馬8頭が集まった中1番人気に支持された。阪神の芝コースは稍重発表ではあったものの15時前にスコールのような大雨があり、馬場は非常に重たくなっていた。
レースでは発馬を決めたがホームストレッチでのポジション争いが激しく、それを静観する形で中団のインを追走する。4コーナー前でキセキやクロノジェネシスがまくり上げてロングスパートを仕掛ける中、それに少し遅れる形で外へ持ち出される。直線に入ってそこそこ伸びていたものの先に仕掛けた組には届くほどでは無く、残り200mの時点で勢いが鈍り、4着に敗れた。レース後に鞍上のルメールは敗戦理由を2200mがギリギリという距離適正と、重たい馬場にあると指摘した。
その後はジャパンカップへの出走を予定し、ルメールのお手馬アーモンドアイの同競走出走が決定したため池添謙一を鞍上に据えることも内定していたが、レース6日前になって左前脚の腫れのためこれを回避。一旦は有馬記念に目標を切り替えたものの、万全な状態で出走出来ないと判断され12月初旬に早々に回避が決定した。その後、2021年1月15日に引退が発表され、社台スタリオンステーションで種牡馬入りすることとなった。
特徴、その他
- 東京競馬場でイレ込みが激しくなる理由として「地下馬道」を挙げる人が多い。基本的にJRAの競馬場ではパドックから本馬場へ向かう際に地下馬道を通るのだが、東京競馬場の地下馬道は職員が自転車で移動するくらいに非常に長く、音も反響する為かここでイレ込む馬が多い。2018年の天皇賞(秋)で暴れた結果戸崎圭太を振り下ろしたダンビュライトが代表的か。
血統表
ロードカナロア 2008 鹿毛 |
キングカメハメハ 2001 鹿毛 |
Kingmambo | Mr. Prospector |
Miesque | |||
*マンファス | *ラストタイクーン | ||
Pilot Bird | |||
レディブラッサム 1996 鹿毛 |
Storm Cat | Storm Bird | |
Terlingua | |||
*サラトガデュー | Cormorant | ||
Super Luna | |||
シーザリオ 2002 青毛 FNo.16-a |
スペシャルウィーク 1995 黒鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
Wishing Well | |||
キャンペンガール | マルゼンスキー | ||
レディーシラオキ | |||
*キロフプリミエール 1990 鹿毛 |
Sadler's Wells | Northern Dancer | |
Fairy Bridge | |||
Querida | Habitat | ||
Principia |
クロス:Northern Dancer 5×4(9.38%)
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
親族の方々
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