ザビーネ(ドイツ語: Sabine)あるいはザビーナ(Sabina)とは、ドイツ語圏の女性名である。
短縮形・愛称形はザビー(Sabi)、ザプスィー(Sabsi)、ザッスィー(Sassi)、ビーネ(Bine)、ビーナ(Bina)、ビーニ(Bini), ビービ(Bibi)、ベー(Bee)、ビンヒェン(Binchen)など。
実在の人物
- ザビーネ・エバーツ(Sabine Everts) - 旧西ドイツの陸上選手(七種競技)。姓の独語発音は「エーファッツ」
- ザビーネ・キューグラー(Sabine Kuegler) - ドイツの作家。代表作は『ジャングルの子』(Dschungelkind)
- ザビーネ・ケーム(Sabine Kehm) - ドイツのF1広報、マネジャー。ミヒャエル・シューマッハの担当で有名
- ザビーネ・ザイデル(Sabine Seidel) - ドイツの元サッカー選手、トレーナー
- ザビーネ・シュタインバッハ(Sabine Steinbach) - 旧東ドイツの水泳選手
- ザビーネ・シュピッツ(Sabine Spitz) - ドイツのマウンテンバイク選手
- ザビーネ・ハック(Sabine Hack) - ドイツのテニス選手
- ザビーネ・ブッシュ(Sabine Busch) - 旧東ドイツの陸上選手(400m、400m障害)
- ザビーネ・ブラウン(Sabine Braun) - ドイツの陸上選手(七種競技)
- ザビーネ・ブレットシュナイダー(Sabine Bretschneider) - ドイツの自転車選手
- ザビーネ・ベッカー(Sabine Becker) - 旧東ドイツのスピードスケート選手
- ザビーネ・ベルクマン=ポール(Sabine Bergmann-Pohl) - 旧東ドイツの政治家。最後の東独国家元首
- ザビーネ・マイヤー(Sabine Meyer) - ドイツのクラリネット奏者
- ザビーネ・ヨーン(Sabine John) - 旧東ドイツの陸上選手(七種競技)
- ザビーネ・リーガー(Sabine Rieger) - 旧東ドイツの陸上選手(200m)
- ザビーネ・リシキ(Sabine Lisicki) - ドイツのテニス選手。ポーランド系姓の独語発音は「リズィッキ」
- ザビーネ・リヒター(Sabine Richter) - ドイツの陸上選手(100m)
- ザビーネ・ロイトホイサー=シュナレンベルガー(Sabine Leutheusser-Schnarrenberger) - ドイツの政治家
- ニコニコ動画の生放送主「ザビーネ」。
架空の人物
- ザビーネ(Sabine) - 特撮ドラマ『シルバー假面』の登場人物(演: ニーナ(内田仁菜)/少女時代: 渡邊エリー)
- ザビーネ・シャル(Zabine Chareux) - 『機動戦士ガンダム』シリーズの登場人物(声: 梁田清之)。綴りに注意
- ザビーネ・フォン・シュロッターシュタイン(Sabine von Schlotterstein) - ドイツの児童文学『リトルバンパイア』(旧邦題: ちびっこ吸血鬼、原題: Der Kleine Vampir)の登場人物。通称「恐怖のザビーネ」
- サビーネ・フォン・リッテンハイム(Sabine von Rittenheim) - 小説『銀河英雄伝説』の登場人物
- 陽炎・ザビーネ・クルツリンガー - 冲方丁のライトノベル「シュピーゲル」シリーズの登場人物
- 長崎ザビーネ - 堂高しげるの漫画『もえちり!』の登場人物
概要
古代イタリアのサビーニー人(ラテン語: Sabini)の女性を表すサビーナ(Sabina)に由来する女性名。元来はアペニン山脈に居を構えていたが、ローマという都市が建設される以前から近隣に広く定住していた。スパルタの末裔を自称するほどの勇猛果敢な民族として知られており(「サビーニー女略奪」参照)、サビーナという名にもそうしたイメージが付随している。
なお、ドイツ語圏の周辺ではサビーナの男性形サビーヌス(Sabinus)に由来する男性名があったり姓になってたりするが、ドイツ語圏では男性名や姓の方は全く一般的ではなく、女性名のザビーネにしても1950~'70年代以来の比較的新しいトレンドであったりする。
一般的な女性名としては、2世紀初めのキリスト教殉教者である聖サビーナに由来する。彼女は鉱夫出身のローマ貴族ヘーローデース・メタッラーリウス(Herodes Metallarius)の娘で、元老院議員であった夫ワレンティアーヌス(Valentianus)を喪い寡婦となっていた。彼女の世話係となった奴隷セラーピア(Serapia/Seraphia)は、ハドリアーヌス帝の迫害を逃れてシリアのアンティオキアからイタリアに来たキリスト教徒の出身で、両親を喪った後は数々の求婚を退けて信仰生活に入り、貧者に施すために所持品を全て売り払い、ついには自らを売り渡して奴隷となった女である。サビーナは彼女の信仰活動に深い感銘を受け、キリスト教徒に改宗する。
しかし迫害の嵐は再びセラーピアの元を訪れた。ローマの神々を拒絶する彼女を捉えるために二人の男が来たが捕まえることはできず、遂には松明で身体に火をつけようともしたがそれも失敗した。しかし結局は西暦119年、審問官デリッリウス(Derillius)の命により棒打ちに処され剣で首を刎ねられた。サビーナは夏場にさらし物となり朽ち果てていた彼女の遺骸を取り戻し、自家の霊廟に丁重に弔った。セラーピアも後に殉教者「シリアの聖セラーピア」として列聖される。祝聖日は命日の7月29日と埋葬日の9月3日である。
そしてサビーナもまた、迫害から逃れられなかった。セラピアに対して行った処遇が非難され、ついにエルピディウス(Elpidius)という者が彼女がキリスト教徒である事を訴えたのだ。やはりサビーナも信仰を捨て去ることはなく西暦126年、ローマの遥か北方の街ウィンデナ(Vindena)で首を刎ねられた。祝聖日は命日の8月29日である。
サビーニー女略奪
さて、ここで時代は更に約1000年前、ローマ建国の頃へと遡る。
『ローマ建国史』によれば、ローマを建設したロームルスたちローマ人男性たちはサビーニー人女性たちとの合コンを申し入れたが、サビーニー人はこれを拒否した。しかし諦め切れないローマ男たちは集団ストーカーと化し、ついにネプトゥルヌスの祭りに乗じてサビーニー女を集団拉致する計画を実行してしまう。世に言う「サビーニー女略奪」である。当然サビーニー女たちは腹を立てて拒絶を貫くが、ローマ男たちは「多少のワガママ(市民権=ローマ人と対等の扱い)も聞くしヘソクリ(財産権=夫と対等の立場)だって許すから、どうか嫁に来てくれ」とひたすら懇願してやっとこさサビーニー女たちも折れ、ローマ男たちは晴れてリア充になれたのだった。
しかし、残されたサビーニー男たちはそんなことで納得するはずがなく、彼らが住む諸都市は次々とローマに雪崩をうって攻め込んだ。たび重なる戦いと謀略の日々に、ついに両軍とも大いに疲弊を極めることとなったその時、間に割って入ったのは何とサビーニー女たちである。曰く「もしこれ以上争うのであれば、その原因である私たちを殺しなさい。これ以上父(サビーニー男)を喪い夫(ローマ男)を喪うのであれば、いっそ死んでしまった方がマシです」と。
かくして講和は成った。サビーニー人はローマ人と連合し、ローマの神域であったカピトーリーヌスの丘(現在のカンピドッリオ。ローマ市庁舎がある)は彼らの為に与えられ、中でもクラウディウス氏族はローマ人の名門ユーリウス氏族と比肩するほどの大門閥に発展する。やがてサビーニー人はローマ人と同化していくが、サビーニー人の勇気、とりわけ女たちのそれは今後も後世に語り継がれることだろう。
関連項目
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