ザンジバルとは、アフリカ東部のタンザニアに属するザンジバル諸島、およびそこに存在した国・都市などにつけられた名前である。
曖昧さ回避
ザンジバル(機動戦士ガンダム) - アニメ「機動戦士ガンダム」に登場する架空の艦艇。この記事で記述。
概要
ジオン公国軍が運用する艦艇。主にキシリア少将旗下の突撃機動軍に配属されていた。シャア・アズナブルの後半の乗艦でもある。
艦種と名前の由来
機動巡洋艦とされる。これは現実には存在しない艦種である。ジオン軍ではほぼ唯一の宇宙・大気圏両用艦であるため、オリジナル艦種が採用されたようだ。なお、のちのネェル・アーガマやラー・カイラムも「機動」戦艦の艦種が当てられているが、この二艦は建艦当初は大気圏内の運用能力を有しておらず、関連性は存在しない。
名前の由来はアフリカのザンジバル島から。ジオンでは珍しく地球の地名を冠した艦である。姉妹艦の一艘にもマダガスカルと言う名前が与えられており、当初はアフリカに存在する島の名前を付ける方針であったようだ。
建艦までの経緯
ジオン軍の国防方針は当然に宇宙での戦闘を主としていたが、0069年の公王制への移行や0070年代前半からのギレン・ザビの台頭により、より外征軍的な装備が求める傾向が現れ始めた。特に、ギレン・ザビの最終目標はジオンによる地球の管理運営であるため、地球侵攻は当然の帰結であった(他に予想される現実的な戦争展開としても、地球にしか存在しない希少資源の獲得、地球連邦を降伏に追い込むには宇宙での勝利を重ねても意味がないなど)。
しかし、地球への輸送そのものはHLV(輸送ロケット)で済むが、大気圏突入時は当然に無防備であり、突入前後も連邦軍との戦闘が予想された。そこで、突入前は宇宙艦艇として、突入後は大型航空機として活躍できる護衛艦艇が必要とされたのである。
地球侵攻用艦艇としては、まず戦艦として竣工していたグワジン級に大気圏突入能力を与えることで対処することが考えられた。だが、大気圏突入へのノウハウ不足もあり、設計当事者でさえ相当にリスキーかつトリッキーであることを認めざるをえなかった。また、グワジンは非常に高価な戦艦であり、数をそろえることは素人目にも困難に映った。
そこで、とりあえずの埋め合わせまたは保険として建艦が進められたのが本級である。
性能
全長は255メートル、横幅は221.8メートル、全備重量は24000t。ムサイ級軽巡洋艦より一回りほど大きいが、同じく連邦の両用艦であるペガサス級(ホワイトベース)よりは小型である。
エンジンは熱核ジェット。ミノフスキークラフトは装備しておらず、大気圏内では従来の航空機と同様に揚力を使って行動する。
武装は一説によれば火薬式連装主砲が一基、副砲として対空砲を兼ねたメガ粒子砲が4基ないし7基である。艦により相当な違いが見られ、標準装備が何であるかを断言するのは難しい。主砲が火薬式であるとする説によれば、大気圏内での使用を考慮した結果だと言う(ビームは曲射ができず、地球の丸みや地形の影響を受けやすい)。この思想はペガサス級にも見られる。
ミサイル発射口は2基。これは少数に見えるが、大型式のミサイルであり威力では従来のミサイルよりも優れていた。「Jミサイル」「Jタイプのミサイル(シャア談)」「J型ミサイル(Gジェネレーション)」といった呼称が使われている。
MS搭載機数は6機から9機説がある。また、MAの搭載も可能。カタパルトの装備はなく、艦下部のハッチから投下するように発進させる。
船型はほとんど航空機またはスペースシャトルと言ってよい外見であり、両用艦として設計された経緯を物語っている。また、大気圏内でのノウハウ不足を真摯に反省し、旧世紀のシャトルを参考にしたとも言われる。
実戦・評価
当初はその航空機を思わせる船型から宇宙での有効性・必要性を疑問視され、ムサイと比べるとやや日陰者の存在であったようだ。しかし、グワジン級の大気圏突入能力に抱かれていた疑問は地球侵攻後、二番艦であったグワメルが事故により大気圏突入に失敗・喪失することで現実のものとなった。一方、キシリアが配備を進めていた本級は難なく大気圏突入をこなし、地球での往来の護衛任務にはこちらが最適であることが判明。ジオン軍上層部の面目は丸つぶれとなり、逆にキシリア少将の権勢は巨大化。突撃機動軍が地球における優先権を主張する足がかりの一つとなった。
もっとも過酷と言ってよい戦場である「大気圏突入」戦に本級が存在することは前線の兵からも頼もしく、評判は非常に良かったとされる。輸送能力では専用のHLVには及ばなかったが、黒い三連星の地球への輸送など地味な活躍も見せている。また、地球上の侵攻部隊ではガウと並んで本級を旗艦としたMS部隊も多かった。
主戦場が地球から宇宙へ移ってからも活躍は続き、砲術戦能力ではムサイにやや劣るものの、対空砲の装備とMS搭載能力の充実ぶりから単艦での試験部隊の運用や要人輸送にも従事している。シャアはワッケインが率いる連邦の部隊(マゼラン×1、サラミス×3)相手に単艦で応戦し全滅させるという戦果を挙げている。この結果を鑑みるにシャアの指揮能力や連邦部隊の錬度についても考慮する必要はあるが、相当な戦闘能力を備えていると考えられる。
ジオン公国は大気圏内での戦闘ノウハウを往々にして所持しておらず、航空機や戦車なども地球の人間から見れば性能はともかく奇怪なものが多かった。その中では珍しく旧世紀のシャトルを範に取る手堅い設計であり、戦場のニーズによく答えた艦だったと言える。それだけに、配備の遅れやグワジンの無理な設計が悔やまれるところではある。
姉妹艦
- ザンジバル
ネームシップ。大気圏突入試験を行ったのも本艦とされる。詳しい経緯は不明だが、ランバ・ラル隊を地球へ輸送したのも本艦とされる。その後はマ・クベ隊の配属となったと言う推測がある。 - マダガスカル
黒い三連星の地球への輸送やマ・クベの地球からの脱出作戦に従事。小説版ではシャアのMS部隊の旗艦である。アニメ版のシャアの乗艦もこちらではないかとする説もある。 - ラグナレク
シャア大佐の乗艦。元はMA試験部隊の艦である。ニュータイプ部隊の旗艦となるが、連邦に撃沈される。シャアはMSで戦闘行動中だったため、別艦に救助された。なお、シャアの乗艦がザンジバル級であることは間違いないが、艦名については不明であるため、書籍やサイトでは現在も錯綜している。 - ケルゲレン
『第08MS小隊』で登場。アプサラスの実験に参加。一年戦争末期、休戦中に傷病兵を載せて宇宙への脱出を図るが、休戦を無視したギニアス・サハリンがアプサラスで攻撃したことにより、報復として撃沈させられてしまう。
小説版第08MS小隊によるとギニアスたちがサイド3から地球へ降下する際に使用したとされる。地球降下後はラサ基地にて、半年近くも電力供給源として利用されていた。貴重なザンジバルを半年も眠らせる使い方には疑問を浮かべる者もいたようだ。ちなみにケルゲレン子はこの艦の名が由来である。小説版では無事に離脱に成功している。 - サングレ・アスル
漫画『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』に登場。キマイラ隊所属で青く塗装されているのが特徴。艦名の意味はスペイン語の「青い血」(sangre azul)。 - ケルベロス、バンパイア、テンペスト
PC-98用ゲーム『機動戦士ガンダム Return of Zion』に登場。 - ケラウノス
雑誌企画『ADVANCE OF Ζ 刻に抗いし者』に登場。意匠に共通点はあるものの同型艦とは思えない大胆にアレンジされたデザインとなっている。名前はギリシャ神話のゼウスが持つ雷霆より。
ザンジバル改級
ザンジバルの運用データを基に設計の見直しを行い、生産性などの向上が図られた物。単にザンジバル級を改修したものやザンジバルII級との混乱が生じている感がある。
- キマイラ
ジオン軍エース部隊「キマイラ」の旗艦。ジョニー・ライデンの母艦である。『MSV-R』でザンジバル改級と設定された。 - インゴルシュタット
漫画『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』に登場。アクシズから地球へと派遣された艦でシャアが艦長をつとめる。
ザンジバルII級
ザンジバル改級との明確な違いは不明。
なお、キシリア少将がア・バオア・クー脱出時に乗艦していた艦については名称不明である。
後継艦
ジオン共和国では使用されることはなかったようだ。これは大気圏突入装備を有しており連邦の神経を逆撫でしかねないことと、そもそも不要になったことが大きいのだろう。ジオン軍残党では宇宙海賊となっていたシーマ・ガラハウが本級を装備している。航続距離に問題があったのか、アクシズでは装備が見られない。
連邦軍も鹵獲・接収した本級を運用することはなかった。一説によると、同じコンセプトのペガサス級が存在しこちらの方が優れていたのと、地球圏内のMS運用はガルダ級で十分補えると言う思考があったためとされる。実際、ミノフスキークラフトを装備せず、艦船としても中途半端な印象はぬぐえなかった側面は否めない。
しかし、アクシズ側が熱心にミノフスキークラフト搭載艦を竣工させていたように、大気圏内外両用艦の需要はなくなることはなかった。連邦でも第一次ネオ・ジオン抗争の戦訓から、最終的には両用艦を標準装備する方針が固められ、0153年のザンスカール戦争時にはサラミスのような小型・旧式艦にまで搭載が認められるようになる。
後継艦には恵まれなかったが、始祖鳥的とも言えるそのコンセプトは脈々と受け継がれたのである。
その他よもやま
- デザインは富野喜幸。クリーンアップは大河原邦男。0083が河森正治、08小隊が山根公利。
- シャアの乗艦であったこともあり、早い段階で模型化がなされている。また、モビルスーツ・イン・アクションでもリリー・マルレーンが商品化がなされている。
関連動画
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関連コミュニティ
関連項目
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