シイコ・スガイは、アニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の登場人物。
地球連邦軍の「魔女」。ひとつ前のガンダムに出てきた地球の魔女ではないので注意。
概要
境遇・ルックス
サイド6のパルダ・コロニーで暮らす民間人の女性。既婚者で、(恐らく)3~4歳程度の「ぼうや」がいる。「スガイ」は夫の姓。
かつては地球連邦軍のモビルスーツ・パイロットであり、5年前のジオン独立戦争(一年戦争)では100機以上もの撃墜数を記録した「スーパーユニカム(unicum=特別)」、別名「魔女」として知れ渡っている。
子供が成長して余裕が出来たこともあって、つい最近、軍事警備会社「ドミトリー警備」に就職(?)し、そこの宣伝クラン「CRS」のパイロットとしてクランバトルに参戦する。クラバのエントリーネームは「MAMAMAJO(ママ魔女)」……奥さんもうちょい隠そうよ。
顔見知りのアンキーとタメ口で会話している辺りから、年齢は恐らく30代あたりか。しかし童顔で低身長(147cmのアマテ・ユズリハよりわずかに高いくらい)のため、かなり幼く見える。その割にスタイルは中々よい。
黒のおかっぱ髪と、白目のない、紺と赤のまんまる目がデザインの特徴。ガンダムで白目がないと言えばブライト・ノアやミライ・ヤシマだが、あえて他作品で例えるなら『ポケモンSM』のスイレン当たりが近い。パイロットスーツを着ている時の目のヤバさから恐慌状態のもちづきさんを思い出す人もいた模様。
人物像
初見では到底パイロットとは気づかないほど、戦いの影が薄い人物。平時の言動もどこかおっとりしており、よくいる普通の学生~若奥様に見える。
しかし、その実はかなりシビアかつ大胆な物の見方をしている。ガラの悪いイズマ・コロニーのネノクニスラムにも単身で立ち入る度胸があり、アウトローなカネバン有限公司の面々にも全く物おじしない。職場ではプロのパイロットとして、割と容赦のない物言いをする。
どことなく戦闘狂の気があり、いざコクピットに座ると高揚した表情を見せ、言動も苛烈になる。というより、むしろ平時の言動の方が我を抑えたもので、こちらの方が素の感性なのかもしれない。
「ニュータイプ」については「ジオンのプロパガンダ」と評し、否定的な見解を見せる。やや過剰な拒否反応だが、見方を変えれば、彼女はニュータイプという存在そのものに執着し、恐れているのかもしれない。
また、そもそも「彼女自身がニュータイプらしい」描写も劇中では見受けられる。
パイロットとして
流石と言うべきか、そんじょそこらのクランパイロットとは比較にならない、高度な操縦スキルを誇る。
独立戦争から通して、連邦軍の主力量産MS・軽キャノンを駆るが、自機の位置バレを全く恐れず、積極的に距離を詰める戦闘スタイルをとる。余り性能がよいとは言えない軽キャノン乗りとしては危険に思えるが、ジオン軍から「スティグマ戦法」と恐れられた独自の操縦テクニックが彼女の強さの源。
通常では不可能な、急激な軌道変更によって敵機の視界外へ逃れ、致命の一撃を仕掛けていく。彼女の攻撃で撃墜された機体には、致命傷となった破損以外に、「何かで突かれたような穴」と「何かが削れた跡」という、独特の破損が生じている。これが「スティグマ(聖痕)」の名の由来である。
彼女の機体の左肩には「ほうきに乗った魔女」と「And Death Shall Have No Dominion(そして死は覇者に非ず)」の警句[1]を象ったエンブレムが記されている。
ストーリー上の活躍
……ソロモンで堕ちたって聞いて、それならもういいかって、
吹っ切れたつもりだったけど、今になってまた現れるなんてね
戦争に負けても、「私」は負けてない
赤いガンダムは、私が倒すのよ
先行劇場版『-Beginning-』の追加特典映像でチラ見えしていたが、本格的な登場はテレビ第4話『魔女の戦争』から。イズマのカネバン有限公司を菓子折り持って訪ねてきたところから、シイコの物語は動き出す。
一年戦争当時、シイコは自分のMAVを「赤いガンダム」に撃墜され、殺されていた。失意のシイコは、戦後はそのまま退役して結婚し、夫の地元パルダに移住して一児を授かる。しかし「ぼうや」も手がかからない年になり、生活が安定した矢先に、第二次ソロモン会戦で行方不明になったはずの「赤いガンダム」がサイド6に出現した。それを知った魔女は、再び戦場に戻ってきてしまったのである。
カネバンでの聞き込みを終えたシイコを送るバイト少女・マチュは、子供もいるのに危険な「戦争」にこだわる理由を尋ねた。影が差す化粧品ポスターを背景に、シイコは淡々と語る。
何かを手に入れるために、何かを諦めなきゃいけないなんて、
そんなの理不尽じゃない?
望むもの全てを手にすることが出来たら…どんなに幸せか
ニュータイプとかいう選ばれた人たちなら、それができるのかしら?
ねぇ、可愛いバイトさん。赤いガンダムのパイロットって、
ど ん な 人 ?
「普通の人」である母と折り合いが悪いマチュにとって、家庭の幸せと仇敵への報復の両立を考える「普通じゃない母」シイコは、興味深い人物だった。しかし憧れる間もなく、シイコに「あなたが赤いガンダムのMAV」と見透かされていることに気付いたマチュは戦慄する。
ポメラニアンズ vs CRS のバトル前日、シイコと戦うことを知ったマチュは、考えてみれば何も知らないシュウジ・イトウの「願い」に思いを馳せるのだった。
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ここから先は重大なネタバレ成分を多分に含んでいます。 ここから下は自己責任で突っ走ってください。 |
確かに、連邦の軽キャノンとは大違い。
でも、所詮は量産型でしょ?
それで、ガンダムに勝てます?
シイコ(とMAVのボカタ)が乗ってきたのは、ジオン軍の現役機・ゲルググジムではない。それもただのゲルググではなく、ドミトリー警備のモスク・ハン博士によって、最新技術の駆動部摩擦キャンセル加工を施された実質的専用機である。
スティグマ戦法──敵機に撃ち込んだアンカーケーブルを起点とする円機動とAMBACを組み合わせた、通常では不可能な角度の立体機動[2]──も冴えわたり、さしもの赤いガンダム/シュウジも防戦がやっと。GQuuuuuuX/マチュに至っては戦いに割り込むことさえできない。
《拘り過ぎだよ!そいつはアンタの仇じゃないんだ!》
そんなことどうだっていい!
このパイロットのプレッシャーは普通じゃない!
だが、ボカタとシイコは「赤いガンダム」のパイロットが、シイコのMAVを奪った「シャア・アズナブル大佐」ではないことに気付いた。それでもシイコはボカタの制止を無視し、「赤いガンダム」の「ニュータイプ」を殺すべく刃を振う。彼女にとっての「戦争」は戦友の敵討ちではなく、「特別な、選ばれた存在」である「ニュータイプの否定」へと変わっていたのだ。
赤いガンダムのパイロット!お前が選ばれた奴じゃないと証明してやる!
そうすれば、私は……
《何を言ってんのかわかんねぇよ!!》
──ニュータイプと呼ばれる「特別な存在」だったはずのシイコのMAVを目の前で殺した、もう一人の「特別な存在」たる「赤い彗星」。だが、その赤い彗星すら戦場であっけなく散ったと聞いたシイコは、理不尽なこの世界では「望むもの全てを手に入れる選ばれた存在などいない」と考え、結婚して母親になるという「普通の人生」を受け入れることを決意した。
シイコにとって、再び現れた「赤いガンダム」はその決意を否定する、許しがたい存在に他ならなかったのである。かくして、シイコは赤いガンダムのパイロットを抹殺するべく、クランバトルに参加した―ニュータイプと呼ばれる人々が自分に倒される程度の「選ばれた存在ではない」ことを証明するために、そして自分が選んだ現在の人生を続けていくために―。
──皮肉なことに、マチュが自分の母と異なる「普通じゃない」存在として憧れめいたものを感じたシイコ本人が何よりも望んでいたのは、「普通の母親」としての人生だったのだ。
私のために死んで! ニュータイプ!
はっ! ガンダムのパイロット……?
こんなものはまやかし……
ニュータイプなんていないっ!!
共鳴する2人、ララ音が木霊する戦場。3本目のスティグマワイヤーで止めを狙うシイコだったが、遂にゲルググの腕部が限界を超え崩壊。一瞬の間隙、後ろを取った赤いガンダムのビームサーベルがコクピットを直撃し、シイコを蒸発させた。
──ボクの願いはひとつだけ。それ以外は何もいらないんだ──
──それがお前の望むすべてか──
ぼうや……
シュウジと交感し、彼の「ひとつだけの願い」を知ったシイコは、穏やかな表情だった。最期の刻、彼女が見たのは、彼女が本当に望む「たったひとつのもの」だったのか。
その一方、2人から完全に置いてけぼりにされてしまったマチュの中では、歪んだ焦燥が芽生え始めていた……。
以上が劇中におけるシイコ・スガイの出番ほぼ全てである。子持ち人妻・過去の撃墜王・戦場で変質した復讐鬼・実はニュータイプなどなど、こってこてに濃いキャラクターとして登場した上に、『めぐりあい宇宙編』を始めとする数々のオマージュ演出を体現するだけした彼女は、たった1話で退場(しかも劇中におけるシュウジの最初の殺害相手として)してしまった。
第4話自体、お話としての完成度が高かったこともあり、放送後の各SNSでは彼女の深層心理の推察、オマージュ元と照らし合わせた考察が次々と行われた。並行して「有り得たかもしれない、無事にぼうやと旦那の元へ帰る二次創作」などが溢れ続けることに。海外放送版の吹替もハマっていたことで、そのインパクトは海外オタクにも広がりを見せた。
……放送直後に動画担当スタッフが相次いで投稿した下記ポストが、視聴者の心の傷を更に抉ったのは言うまでもない。
関連動画
関連静画
関連項目
- ガンダムシリーズの登場人物一覧
- 機動戦士Gundam GQuuuuuuX
- ニュータイプ
- 地球連邦軍 / 軽キャノン / ゲルググ(GQ)
- シャリア・ブル - ゲストキャラ・ニュータイプ・有線武器使い・軍人の強敵など、テレビ版『機動戦士ガンダム』の彼と共通点が多い。
- プロスペラ・マーキュリー - 「逃げれば1つ、進めば2つ」の教えを唱える「水星のママ魔女」。
- イリア・ソラリ - 『復讐のレクイエム』の主人公。シイコとは別の意味で子供を愛し、不幸にした母親。
- リディ・マーセナス - 『機動戦士ガンダムUC』のパイロット。性別や時代が違うがよく似ている。
- アメリカン・スナイパー / ランボー - ファンのキャラ造形考察でよく名前の挙がる映画。
脚注
- *聖パウロの手紙の一節、またはディラン・トマスの詩からの引用
- *ガンダムシリーズなら『第08MS小隊』のグフカスタム/ノリス・パッカードや、ボールK型/シロー・アマダがやった戦法を思い浮かべて貰えればわかりやすい。……ぶっちゃけ作画担当が同じ『進撃の巨人』の方がわかりやすいかもしれないけど。
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