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シクロホスファミド(Cyclophosphamide)とは、抗がん薬である。商品名はエンドキサン®。
概要
シクロホスファミドは、ナイトロジェンマスタード誘導体で、アルキル化薬に分類される抗悪性腫瘍薬、免疫抑制薬である。1958年、旧西ドイツのアスタ・ウェルケ社(現在のバクスター社)研究所で合成され、日本では1962年から医薬品として製造販売されている。シクロホスファミド水和物がエンドキサン®の名で上市されており、剤形には注射剤、錠剤、散剤(原末)がある。たとえば、以下の目的のため使用される。
- 悪性腫瘍(がん)の症状の緩解。
- 治療抵抗性のリウマチ性疾患の治療。
- 全身性エリテマトーデス、全身性血管炎、多発性筋炎など。
- 副腎皮質ホルモン剤による治療で効果不十分なネフローゼ症候群の治療。
- 褐色細胞腫の治療。
- 臓器移植や骨髄移植における拒絶反応や移植片対宿主病の抑制。
シクロホスファミドはプロドラッグであり、生体内で4-ヒドロキシシクロホスファミドなどの活性代謝物となって作用する。DNAの主としてグアニン塩基N-7位をアルキル化することによって核酸合成を阻害し、抗腫瘍作用を示す。また、免疫系のBリンパ球やTリンパ球の増殖抑制作用も示す。
シクロホスファミドの代謝物であるアクロレイン(2-プロペナール)は、尿中に排泄されたのち膀胱粘膜と接触して出血性膀胱炎を起こす。したがって、その予防目的でメスナ(ウロミテキサン®)が併用される。メスナがアクロレインの二重結合部分と反応(マイケル付加反応)すると、アクロレインの膀胱障害活性が失われる。4-ヒドロキシシクロホスファミドと縮合し、アクロレインの生成を抑制する作用もある。
シクロホスファミドの重大な副作用は上記の出血性膀胱炎のほか、ショック、アナフィラキシー、骨髄抑制、間質性肺炎、肝障害などがある。成人T細胞白血病リンパ腫治療薬のペントスタチン(コホリン®)との併用により心毒性が発現し死亡した症例があるため、ペントスタチンとの併用は禁忌。また、免疫抑制作用のため重症感染症の患者への投与も禁忌。催奇形性の疑われる症例の報告があるため、妊婦には投与しないことが望ましい。
シクロホスファミドは、国際がん研究機関(IARC)による発がん性のリスク評価においてグループ1に属し、ヒトに対する発がん性が認められる。シクロホスファミド水和物の融点は45~53℃で、常温では白色・結晶性の固体だが、揮発性がある。調製時のシクロホスファミドの曝露を防ぐため、安全キャビネット内で閉鎖式接続器具を用いて調製すること。また、閉鎖式投与ルートと組み合わせた閉鎖式薬物移送システム(CSTD)の導入も、抗がん剤の曝露対策として有効である。
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関連項目
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