シュブ=ニグラス(Shub-Niggurath)とは、H.P.ラヴクラフトが創造した「外なる神」の一柱である。
概要
豊饒の女神・大地母神の性質を持つ、正体不明の存在。しかしやたらと名前だけは儀式や呪文に現われる外なる神である。
創造者であるラヴクラフトは名前だけを示して作中に登場させず、「黒い雲の様に巨大である」としか語っていない。
想像されている姿は泡立ち、ただれている塊と雲の一部が融合して体が形成されているのではないかといわれている。黒い触手や粘液を垂れ流す口、先端が蹄になったねじれた足などの形を形成していると考えられ、そんな姿から〈山羊〉を連想させたのではないかと考えられる。
シュブ=ニグラスの系譜
アザトースが最初に創造した「闇」から生まれたとも、アザトース自身が生んだとも言われている。また、アザトースが創造した「無名の霧」から生まれたヨグ=ソトースとの間に「恐ろしき双子」ことナグとイェブを生んだとされるが、オーガスト・ダーレスはハスターの妻であるとしている。
女神ではあるがサバトの雄山羊と同一視されるなど男神としての側面も有しており、女性に子供を産ませたりもしている。
長女にして性魔術を司る旧支配者、ウトゥルス=フルエフルは蛇神のイグとの間に生まれた娘。
またニャルラトホテプの従妹にあたるマイノグーラと交わり、悪名高きティンダロスの猟犬を生み出している。
シュブ=ニグラスと崇拝
シュブ=ニグラスを崇拝する存在は多いといわれており、ドルイド教などのグループが教団を形成している。それらの多くは儀式を行い、その結果使者として「黒い仔山羊」が召還されることがよくあるといわれている(「黒い仔山羊」に関しては後述する)。
シュブ=ニグラスを崇拝する教団として知られているのは「シェッベ=ミグ」や「ニューワールド・インダストリー」などが知られている。ヨグ=ソトースはときにその教団のもとに直接訪れ、生贄を求めることだろう。
従属種族
従属種族としては、この女神の落とし子とも言うべき「Dark Young」が知られている。直訳すると「闇の子」なのだが、邦訳では広く「黒い仔山羊」と訳されて知られている。
この「黒い仔山羊」はクトゥルフ神話TRPGで知名度が高まった神話生物で、ロープ状の触手と蹄のある四本の脚を持った、全体的なシルエットが樹木に似た怪物として知られている。ルールブックの引用部分によれば、初出はロバート・ブロックの「無人の家で発見された手記」とされているが、同作品においては当該生物はショゴスとして言及されている。しかし、上記の特徴はショゴスとは明らかに違う生き物のものであることも事実であり、解釈はさまざま。
これら従属種族は数多く存在し、集団としてはThousand Youngと呼ばれている。直訳すると「千の仔」なのだが「千匹の仔山羊」と訳される。従って「這いよれ!ニャル子さん」において、宇宙でのブランド肉として「黒い仔山羊」の肉が登場するのは日本でしか通用しないギャグである。
化身
その後も「化身」として姿と名の異なる存在が示唆されており、人気の高い神格である。
- ムーンレンズの番人(Keeper of the Moon-Lens)
ラムジー・キャンベルの小説「ムーンレンズ」に登場。イギリスのセヴァーン溪谷、ゴーツウッドで崇拝される化身。”ムーンレンズ”はこの化身を捕えている門の鍵となる異世界の装置である。
多足に支えられた白い肉の柱として顕現し、頭頂部には無数の目と巨大な嘴を持つ。信者に捧げられた生贄の人間を飲み込み、人と山羊を混ぜ合わせたような奉仕種族「シュブ=ニグラスに祝福されしもの(ゴフ=フパデュ=シュブ=ニグラス)」に作り変えてしまう。 - 畝の後ろを歩くもの(He Who Walks Behind the Rows)
スティーブン・キングの小説「トウモロコシ畑の子供たち」に登場。アメリカ・ネブラスカ州の辺鄙な町ガトリンの広大なトウモロコシ畑を聖地とする「飢えたトウモロコシの神」。
巨大な緑色の植物の山のような姿に赤い眼が輝き、乾いたトウモロコシの皮の匂いを漂わせている。信奉者は町の大人を殺害した子供達だが、彼らも19歳になると神の生贄として捧げられる運命にある。アイオワ州のオークヴァレーの田舎町近辺で豊穣の神として崇拝され、トウモロコシ畑の地下の迷宮に棲んでいるといわれている。 - パンの大神(Great God Pan)
アーサー・マッケンの小説「パンの大神」に登場。シュブ=ニグラスの男神としての化身で、制御されざる自然の横溢な生命力の具現化とされる。
見目麗しい美少年、人間と山羊をかけあわせた怪物サテュロスといった顔を持つが、真の顔を見たものは例外なく発狂してしまう。稀に人間の女との間に子を為すが、女は発狂を免れ得ず、生まれた子は美しい容貌と残忍な気質、他者の精神を支配する異能を持つ。ほとんどドリームランドに居ることが多く、原初の人間に豊穣の神として崇拝されていたといわれている。ときに人間の女と交わり「パンの子ら」を産むという。彼らは誰もが美男美女の姿をしているという。
クトゥルフ神話TRPGでもキャラクターデータが公表されているが、SANチェック成功で1d100、失敗で即死という規格外の存在。 - 森の貴婦人(Lady of The Woods)
女性の姿を取る化身。とりわけ魅力的かつ自信に満ち溢れた存在であるが、所謂「悪い子」(火遊び的意味合い)であり、それに気づくこともできるがそれが却って欲望のしもべにさせる要因となるという。
シュブ=ニグラスの将来が失敗したときによく出現し、現地人をもてあそんで崩壊させるという。
別名
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
- クトゥルフ神話
- 外なる神
- ヨグ=ソトース
- ハスター
- ウトゥルス=フルエフル
- ゴーツウッドのノーム
- ハワード・フィリップス・ラヴクラフト
- アロンソ・タイパーの日記 (作中で1ヵ所のみだが、その名が言及される)
- 破風の窓 (同じく、作中数ヵ所で名がちらりと登場する)
- 姉なるもの
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