シュメール語とは、かつて存在した言語である。
概要
メソポタミア文明の楔形文字でおなじみの言語…なのだがどの言語族に属しているかわからない通り、解読されている割にまだなぞの多い存在である。
文字体系
紀元前4千年紀末から紀元後まで使われた文字であり、本来の使い手であったシュメール人が歴史上から消えてもシュメール語を継承したアッカド語やヒッタイト語などの語族が違う言語を表す際にも使われ、ウガリト語に至ってはもはや楔形文字がアルファベットと化している(ていうかシュメール語の解読自体アッカド語によるシュメール語の字引きから逆算されて行われた)。
研究史において日本の中原与茂九郎という研究者が、「あれ…これ実質漢字と同じ分類にならね…?」と唱え以来漢字の六書で文字の分類が行われている。
え?六書ってなんだよってそりゃー
っていう小学校で習ったあれだよ(詳しくはググってくれ)。
ただやっぱり例外もいくつかあり、文字の中で協調したい部分に線を加え意味を変える「グヌー」、二つの文字を交差させて意味を変える「ギリムー」といったものがある。
さて、ここでいよいよ説明しよう。この楔形文字、実は日本語と同じく表意文字と表音文字のちゃんぽんである(こらそこ、変な妄想しない)。つまり漢字のように使われる文字とかなのように使われる文字、さらに音読みや訓読みのように同じ文字に複数の意味が重ねられるのである(表音文字は小文字、表意文字は大文字で表される)。また同音異義文字も結構多かったりする、
ここまで聞いて正直ビビった人、大丈夫だ。楔形文字はせいぜい600文字程度しかないので日本語に比べてもだいぶ文字数が少ないのである。
なお紀元前三千年期半ばに左に90度回転するというよくわからない変化を起こし、今に至る。
とりあえず表音文字だけでも見ていこうと思う(なおフォントが存在するのはシュメール語の楔形文字であり、一般的に用いられるアッカド語、特に新アッシリア語のではないので注意)。
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文法
まず簡単にまとめると
- 基本的に述語が後ろに来るSOV
- 修飾語は被修飾語の後ろ
- 文法は膠着語的で接辞を名詞や動詞にどんどん足していく
- 文法性は人間・神とそれ以外という区別
- 数は特にこだわらずそこまで義務的でもない
- 格は10格で能格言語(よくある主格・対格ではなく自動詞の主語と他動詞の目的語が同じ能格に、他動詞の主語だけが別の絶対格に、という文章だとなかなかイメージしづらいもの)
まあ言ってしまえば日本語のイメージに近いようなそうでもないような…となかなか難しいものなので、頭を切り替えてこれがシュメール語だ、という感覚を大事にしてほしい。
音
- 母音:a,i,u,e
- 子音:b,p,d,t,g,k,s,š,z,h,m,n,ĝ,l,r
あと言語をあれこれかじった人にはお馴染みの鬱陶しい存在、母音の同化と縮約が盛大に存在するぞ。
名詞
大体「名詞句―形容詞―所有接辞―複数接辞―接尾辞」の順番でくわえられる。
格語尾 | 人間 | 非人間 |
---|---|---|
能格 | -e | |
絶対格 | ― | |
与格 | -ra | |
属格 | -ak | |
位格 | -a | |
位置・終始格 | -e | |
奪格 | -ta | |
向格 | -še | |
共格 | -da | |
様格 | -gin |
格の詳しい説明は大体文字のニュアンスから察するか、ググって調べてくれ。
人称代名詞 | 単数 | 複数 |
---|---|---|
1人称 | ĝe-e | me-en-de-en |
2人称 | za-e | me-en-ze-en |
3人称 | e-ne(a-ne) | e-ne-ne |
所有接尾辞 | 単数 | 複数 |
---|---|---|
1人称 | -ĝu | -me |
2人称 | -zu | -zu-ne-ne |
3人称(人間) | -ani | -a-ne-ne |
3人称(非人間) | -bi | -bi |
その他 | 人間 | 非人間 |
---|---|---|
代名詞接辞 | -n- | -b- |
疑問詞 | aba | ana |
複数接尾辞 | -ene |
また複合名詞がやたらめったら多い。
ちなみに形容詞は前述したとおり、修飾する名詞の後ろにおいて、-aが付くこともある、またいっぱいいっぱいみたいに同じ単語を重複させて状態がすごいことになっていることを表す表現もあるぞ。
動詞
繋辞(~である) | 単数 | 複数 |
---|---|---|
1人称 | -me-en | -me-enden |
2人称 | -me-en | -me-enzen |
3人称 | -am | -me-eš |
前述した通り、膠着語のため動詞の説明は極めて難しい…だって語尾の変化表じゃなくていちいち接辞を説明しないといけないから。
おおよそ以下のようになる。
nu- | inga- | -i- | -a- | -e- | -da- | -ta- | -ni- | -n- | 動詞 | -e(-) | -de- | -en |
na- | -al- | -me- | -n- | -ši- | -a- | -b- | -enden | |||||
ha- | -ra- | -ra- | -b- | -e- | -e- | -enzen | ||||||
ga- | -na- | -eš | ||||||||||
ša- | -ne- | -ne | ||||||||||
u- | ||||||||||||
bara- | ||||||||||||
nuš- | ||||||||||||
iri- |
というわけだ淡白すぎてわかりづらい感はあるが、ざっくり言ってみようと思う。
接辞 | 意味 |
---|---|
nu- | 否定 |
na- | 禁止・報告 |
ha- | 願望・推量 |
ga- | 意志・願望 |
ša | (よくわかっていない) |
u- | 接続 |
bara- | 否定の推量 |
nuš- | 仮定の願望 |
iri- | (よくわかっていない) |
inga- | 列挙 |
i- / al- / mu- / ba- | 動詞の活用接頭辞(必ずいる) |
-a- / -ra- / -na- / -me- / -ne- | 与格接頭辞 |
-n- / -e- / -b- | 共格・奪格・向格の時の代名詞接頭辞 |
-da- | 共格接頭辞 |
-ta- / -ši- | 奪格 / 向格接頭辞 |
-ni- / -a- / -i- | 位格・位置・終止格接頭辞 |
-n- / -b- / -e- | 主語・目的語の代名詞接頭辞 |
動詞 | 仮に動詞が来るとしたら大体このあたり |
-e | 不完了接尾辞1 |
-de | 不完了接尾辞2 |
-en / -enden / -enzen / -eš / -ne | 主語・目的語の代名詞接尾辞 |
うん、表にするといまいちわかりづらいが、これは仕方のないことなんだ。
さらに複合動詞もあるのでもっとややこしいことになるが、気にするな!。この言語で一番めんどくさいのはまず文字を読むことだ!
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