ショウナンナデシコ(Shonan Nadeshiko)とは、2017年生まれの日本の競走馬。栗毛の牝馬。
史上7頭目(ホクトベガを含む)の古馬混合ダートGⅠ級を勝った牝馬である。
主な勝ち鞍
2022年:かしわ記念(JpnⅠ)、エンプレス杯(JpnⅡ)、マリーンカップ(JpnⅢ)、スパーキングレディーカップ(JpnⅢ)
概要
父オルフェーヴル、母ショウナンマオ、母父ダイワメジャーという血統。
父は説明不要の三冠馬。種牡馬としても多彩な産駒を送り出しており、ダート戦線でもマルシュロレーヌを筆頭に活躍馬は少なくない。
母はダートで3勝。本馬の従兄(半姉ショウナンアネーロ産駒)に重賞馬キョウヘイがいる。
母父はマイル~中距離で活躍し、種牡馬としても2~3歳のマイル戦を中心に堅実な成績を挙げている。
*サンデーサイレンスの3×3、*ノーザンテーストの5×4×4というわりときつめのインブリード。
2017年2月6日、日高町の天羽牧場で誕生。オーナーはショウナンパンドラ、ショウナンカンプなど「ショウナン」冠名を用いる国本哲秀。
湘南撫子
2歳~4歳・臥薪嘗胆の撫子
栗東・須貝尚介厩舎に入厩し、2歳9月にデビュー。新馬戦(阪神ダート1800m)は単勝15.5倍の6番人気とさほどの評価ではなかったが、デビュー1年目でまだ減量騎手だった岩田望来を鞍上に、逃げて7馬身差の圧勝デビューを飾る。
しかし、昇級初戦のもちの木賞で後に重賞戦線で戦うことになるレーヌブランシュの4着に敗れ、砂を被ることを嫌がる点や脚元に不安があったこともあり勝ち味に遅く、1勝クラス脱出は6戦目、3歳4月の平場の条件戦だった。その間には一度だけ芝も試されている(6着)。
その後、青竜S(OP)に出走し、牡馬が多数出走する中で紅一点となったが4着に健闘。後に勝ち馬デュードヴァンは重賞でも好走し、2・3・5着馬がオープン入りしていることからレベルの高い1戦だった。
牡馬相手にこれだけやれるならと関東オークス(JpnⅡ)を目標にするも、4頭の枠の内2枠を芝馬に埋められた上にショウナンナデシコと同じ2勝馬も多かったことから除外。勝ち馬はレーヌブランシュだった。
仕方なく2勝クラスに出走するも3着に敗戦。さらに繋靭帯炎を発症して5か月間の休養に入った。
復帰後も2勝クラスを抜け出すのは時間がかかり、前回の勝利から実に1年2ヶ月後の4歳6月に平場の条件戦を勝ち、ようやく準オープンに昇格を果たす。ちなみにこの間、後にJBCレディスクラシックを優勝するテオレーマに2勝クラスの西湖特別で敗れている。
3勝クラスは夏の休養後、2戦目の西脇Sを内の狭いところから差し切って突破。砂を被っても我慢して好位先行から抜け出しという競馬ができるようになり、4歳秋にしてようやく本格化。ここから今までの鬱憤を晴らすような快進撃が始まる。
11月のカノープスS(OP)も52kgの軽ハンデも活かし、好位先行から内の狭いところを抜け出して快勝。このレースから主戦騎手は吉田隼人となる。
続く年末のベテルギウスS(L)は55kgを負うことになったこともあり、逃げたアイオライトに突き放された2着に敗れたが、オープンでも牡馬相手に充分勝負になることを示したショウナンナデシコは、翌年から満を持してダートグレード競走戦線に参戦することになった。
5歳春・進撃の撫子
5歳となった2022年、初戦は重賞初挑戦となる1月のTCK女王盃(JpnⅢ)。内の4番手から上手く立ち回って直線抜け出したが、外から飛んできた前年のJBCレディスクラシック勝者テオレーマの末脚には追いつけず2着。しかし女王相手にクビ差にまで迫り、一気に牝馬ダート戦線の第一線に躍り出た。
それまで牝馬ダート戦線の主役だったテオレーマとマルシュロレーヌが相次いで引退する中、続く3月のエンプレス杯(JpnⅡ)は前走の内容も評価され1番人気。このレースも前走同様好位の内で仕掛けを待ち、直線で逃げ粘る8歳の古豪サルサディオーネと追う牝馬戦線の常連レーヌブランシュが叩き合っているところを、ぽっかり空いた内を掬って一気に抜け出すと、そのまま1馬身半突き抜けて勝利。念願の重賞制覇を果たした。
4月のマリーンカップ(JpnⅢ)は初の57kgを背負わされたこともあってか、前走2着に下したサルサディオーネ(ちなみにこっちは58kg)と分け合って2番人気。しかし逃げるサルサディオーネを2番手でマークし、直線早々に競り落とすとあとは独壇場。2着に粘ったサルサディオーネを実に8馬身突き放しての圧勝劇を見せる。なお、前走も今回も3着はレーヌブランシュで、2戦続けて同じ面子の同じ着順でワンツースリーという結果に。
この圧勝で、陣営は強気にかしわ記念(JpnⅠ)への出走を決定。パワーの要る日本のダートは牡馬と牝馬の実力差が大きく、中央・地方交流が始まった1995年以降、古馬の混合GⅠ級を勝った牝馬はここまでホクトベガを含めても、他にファストフレンド、ゴールドティアラ、ネームヴァリュー、コーリンベリー、サンビスタの合計6頭しかいない。かしわ記念も交流重賞となってから牝馬の勝ち馬は1頭もいないのだが、前走の圧勝ぶりと、牡馬のメンバーが手薄ということもあって、前売り段階では1番人気に支持される。最終的にはフェブラリーS2着のテイエムサウスダンに次ぐ2番人気となった。
この日は最内枠から好スタートを決めると、鞍上吉田隼人は抑えずに久々にハナを切る競馬を選択。テイエムサウスダンからぴったりとマークを受けるポジションにはなったが、道中緩みのないラップを刻んで逆に相手のスタミナをすり潰し、4コーナーで迫ってきたテイエムサウスダンを早々に振り切って、逆に差を開いていく。入れ替わって外から前年の同レース2着馬ソリストサンダーが追い上げたがこれも寄せ付けず、1馬身半差をつけて逃げ切り勝ち。3連勝でGⅠ制覇を成し遂げた。
オルフェーヴル産駒の交流GⅠ制覇はこれが初。マルシュロレーヌはJBCじゃなくてBCに行ったからね。そして何より、サンビスタの2015年チャンピオンズカップ以来7年ぶり、史上7頭目の牝馬による古馬混合ダートGⅠ級制覇(厳密にはホクトベガはGⅠ格付け前の勝利なのでそれを除くと6頭目)という快挙を為し遂げ、ダートの名牝として歴史に名を刻む勝利となった。
次走は帝王賞には向かわず、翌週のスパーキングレディーカップ(JpnⅢ)に出走。初めて58kgを背負うことになったが、単勝1.3倍の圧倒的1番人気に支持される。
レースはいつも通り逃げる2番人気サルサディオーネを2番手でマーク。直線入口でサルサディオーネを競り落とすと、後方からは3kg軽い3番人気レディバグが猛然と追い込んできたがきっちり凌ぎきり、58kgもなんのそので貫禄の重賞4連勝を飾った。
5歳秋~6歳・落日の撫子
秋は11月3日のJBCレディスクラシック(盛岡)を目標に、前月のレディスプレリュード(JpnⅡ)から始動。出走馬唯一の57kgながらも、当然ながら単勝1.4倍の圧倒的1番人気に支持される。
鞍上の吉田隼人は逃げるつもりはなかったというが、先行集団から押し出されるように逃げる形に。向こう正面で江田照男のテリオスベルが捲ってきて先頭を譲り、3コーナーからは外のフラーレンと並んで2番手につける形になった。最内を回して直線でテリオスベルを捕らえて一度は先頭に立つも、外から伸びてきた2番人気プリティーチャンスにかわされ、さらに内を突きすぎたか伸びを欠き、テリオスベルにも差し返されてまさかの3着。
そして迎えたJBCレディスクラシック(JpnⅠ)。前哨戦でまさかの黒星を喫したとはいえ、絶対的大本命の地位は揺らがず単勝1.7倍の1番人気。2枠2番だったが1番のゴールデンヒーラーが出走取消になったため最内枠、しかも隣の3枠3番がサルサディオーネなので、これまでのように外からサルサディオーネをマークするという位置が取りにくい枠で、道中の位置取りが焦点という感じだったのだが……。
いつも通りサルサディオーネがハナを切り、外枠から3歳馬ヴァレーデラルナが2番手でマークする形。ショウナンナデシコはサルサディオーネの後ろで3番手につけた。が、サルサディオーネのペースがいつもより遅い上に、レーヌブランシュやグランブリッジ、プリティーチャンスらにガッチリとマークされ内に囲まれてしまう。4コーナーでは完全に前が壁になって身動きがとれない。直線に入ってサルサディオーネが沈んだが、進路は砂の深い最内にしかなく、そこに突っ込んだものの前を行くヴァレーデラルナに追いつけるだけの伸びはなく、さらに外から同じく3歳馬グランブリッジにもかわされ、なんとか3着に残すのが精一杯だった。
吉田騎手によれば返し馬の時点からいつもより元気がなかったそうなのだが、内容としてはサルサディオーネが飛ばさないという想定外の展開に加え、内枠とキツいマークとで完全に蓋をされてしまった形。普段のレースができないまま、ナデシコの勝ちパターンをヴァレーデラルナにやられてしまった感じの悔しい敗戦となった。
失ったダート女王の権威を取り戻すべく、引き続き11月末のクイーン賞(JpnⅢ)に出走。しかしハンデ戦のこのレースで57.5kgを背負うのはまあ仕方ないとして、JBCで先着を許したグランブリッジが3歳馬ということもあって54kg。この斤量差でグランブリッジと人気を分け合う形になり、ギリギリまで2番人気だったが最終的は2.2倍で同オッズの1番人気に支持される。
サルサディオーネがいないこともあり好スタートから先頭を伺うが、外からテリオスベルが上がってきたのでハナを譲り、そのままテリオスベルを2番手で追走する。しかし4コーナーでもうテリオスベルについていけなくなり、グランブリッジにかわされるとあとは突き放される一方。結局逃げ切ったテリオスベルからは9馬身、2着グランブリッジからも7馬身離されての3着。年内8戦目の疲れか、テリオスベルの捲りによる乱ペースと相性が悪いのか、あるいはそもそもピークを過ぎてしまったのか……。女王の落日という言葉がちらつく敗戦であった。
ファンの心配をよそに、陣営は年内9戦目として東京大賞典(GⅠ)への参戦を表明。鞍上には新たに横山武史を迎えた。4連覇のオメガパフュームやチュウワウィザードら実績勢が引退、テーオーケインズ・ジュンライトボルト・クラウンプライドのチャンピオンズカップ組も回避したためいささか手薄なメンバーではあるものの、帝王賞馬メイショウハリオ、JDD馬ノットゥルノ、転向からの上がり馬ウシュバテソーロらに紅一点として挑んだ。15.0倍の5番人気。
レースは目立った逃げ馬がいなかったこともあり、好スタートから果敢にハナを切る。向こう正面で外から捲ってくる馬がいる中でもハナを譲らず最内を回って直線を向き、後続を振り切りにかかる。残り200mまで先頭で粘ったが、最後は力尽きて6着。見せ場は作ったものの力及ばず、であった。
明けて6歳、引き続き横山武史とともにフェブラリーステークス(GⅠ)へ。有力勢がほとんど海外に行ったため、上がり馬レモンポップと4歳馬ドライスタウトが人気を分け合う手薄なメンバーではあったが、29.1倍の7番人気。
今回も他に逃げ馬がいないのでスタートから押してハナを切り、ミドルペースで直線まで引っぱったが、最後は直線で沈んでいきブービー15着。横山武史騎手も最後はあまり無理をさせていない様子だった。
進退については陣営から特に明言はされていなかったが、レース後、生産牧場の天羽牧場の代表がTwitterで「全27戦 お疲れ様でしたナデシコ!」と呟いたのを伏線として2月24日に登録抹消。現役引退、故郷の天羽牧場で繁殖入りすることになった。通算27戦9勝。
最後はやや尻すぼみな感じに終わってしまったが、5歳春の重賞4連勝、牡馬を撃破してのかしわ記念制覇は紛れもない砂の名牝の証である。今後は母として、その力を嗣いだ仔たちの活躍を楽しみにしたい。
血統表
オルフェーヴル 2008 栗毛 |
ステイゴールド 1994 黒鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
Wishing Well | |||
ゴールデンサッシュ | *ディクタス | ||
ダイナサッシュ | |||
オリエンタルアート 1997 栗毛 |
メジロマックイーン | メジロティターン | |
メジロオーロラ | |||
エレクトロアート | *ノーザンテースト | ||
*グランマスティーブンス | |||
ショウナンマオ 2009 鹿毛 FNo.8-c |
ダイワメジャー 2001 栗毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
Wishing Well | |||
スカーレットブーケ | *ノーザンテースト | ||
スカーレットインク | |||
*ショウナンハピネス 1995 黒鹿毛 |
Kris S. | Roberto | |
Sharp Queen | |||
Rambling Barb | Cormorant | ||
Bouncy Barb |
クロス:*サンデーサイレンス 3×3(25.00%)、*ノーザンテースト 5×4×4(15.63%)、Hail to Reason 5×5×5(9.38%)
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関連項目
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