銀河英雄伝説の戦闘 | |
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新帝国暦3年の親征 シヴァ星域の会戦 |
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基本情報 | |
時期 : 宇宙暦801年/新帝国暦3年 5月29日8時50分~6月1日 |
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地点 : 銀河帝国新領土 イゼルローン回廊方面 シヴァ星域 |
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結果 : 銀河帝国・イゼルローン共和政府間の和平成立 | |
詳細情報 | |
交戦勢力 | |
イゼルローン共和政府軍 | ローエングラム朝銀河帝国軍 |
総指揮官 | |
革命軍司令官 ユリアン・ミンツ中尉 |
皇帝 ラインハルト・フォン・ローエングラム |
戦力 | |
イゼルローン共和政府軍 艦艇9800隻 兵員56万7200名 |
銀河帝国軍 艦艇5万1700隻 兵員584万2400名 |
新帝国暦3年の親征 | |
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ハイネセン動乱 - (柊館炎上事件) - (エフライム街の戦闘) - シヴァ星域の会戦 - ルビンスキーの火祭り |
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ハイネセン動乱 エフライム街の戦闘 |
ルビンスキーの火祭り |
シヴァ星域の会戦とは、「銀河英雄伝説」の戦闘のひとつである。
概要
宇宙暦801年/新帝国暦3年5月末から6月1日にかけて、イゼルローン共和政府軍とローエングラム朝銀河帝国軍のあいだで生起した戦闘。
銀河帝国勢力下からイゼルローンへの亡命者の保護をきっかけに生じた不意遭遇戦とその後の膠着状態が両軍主力による会戦へと発展し、銀河の趨勢に関わる一大決戦となったものである。
戦闘中、帝国軍総旗艦<ブリュンヒルト>艦内に直接突入したイゼルローン軍司令官ユリアン・ミンツ中尉と皇帝ラインハルトの間に会見が持たれ、両軍間の交戦状態は終結した。この会見が最終的な決め手となり、銀河帝国の勢力下にあってもバーラト星系の内政自治権というかたちで民主共和主義政治体制が存続することとなる。
なお、同戦闘が終結した宇宙暦801年6月1日は、奇しくもイゼルローン共和政府成立のきっかけとなったヤン・ウェンリー暗殺事件よりちょうど1年の節目であった。
経緯
両勢力間の交渉
エル・ファシル独立政府の解散後にイゼルローン要塞と回廊を勢力圏として成立したイゼルローン共和政府は、民主共和主義を奉じる唯一の独立政体として活動し、宇宙暦801年2月の第十一次イゼルローン要塞攻防戦では優勢な帝国軍を誘引撃破してその存在感をアピールした。
その後、4月10日の帝国軍務尚書パウル・フォン・オーベルシュタイン元帥によるハイネセンへの召喚命令にイゼルローン共和政府が応じたため交渉が持たれかけたものの、ハイネセン動乱の余波で一時中断を余儀なくされた。5月上旬には帝国軍ナイトハルト・ミュラー上級大将とイゼルローン軍ユリアン・ミンツ中尉の間で外交交渉が再開されたが、両者の交渉がいまだ熟さぬうちに、偶発的に生じた遭遇戦がなし崩し的に拡大するかたちでシヴァ星域の会戦が生じることとなった。
前哨戦闘
遭遇戦の原因となったのは、900名以上の民間人を乗せ亡命を求めてイゼルローン回廊へと向かっていた旧同盟領の民間宇宙船<新世紀>号である。同船は帝国軍の哨戒網をくぐり抜けていたものの、動力部に故障をきたし、イゼルローン共和政府に救援の通信を送った。イゼルローン軍は急ぎ艦隊を救援に派遣した[1]が、<新世紀>号の通信は帝国軍にも傍受されていたため、イゼルローン軍部隊と同様に駆けつけた帝国軍哨戒部隊とが遭遇することとなった。
イゼルローン軍に遭遇した帝国軍は近隣の味方艦艇を遭遇地点に参集させ、ドロイゼン大将が率いる艦隊までもが駆けつけるに至った。ドロイゼン艦隊出現を受けたイゼルローン軍の側も大規模に動員をかけざるをえず、同地点において2時間のあいだ数千隻単位での交戦が発生する。ドロイゼン大将は戦術的勝利に固執することなく戦闘を中止したものの、追撃の姿勢を維持することで<新世紀>号を収容したイゼルローン軍の反転帰投を阻止しながら、さらに味方を集結させつづけた。
両勢力の対応
両軍の対陣が膠着した時点で、イゼルローン軍上層部は、この遭遇戦が皇帝ラインハルトの直率でハイネセンに駐留する帝国軍主力との決戦を招くのではないかと危惧した。しかしイゼルローン側としても、圧倒的な戦力を擁する帝国との交渉を一方的な臣従に終わらせないために、先んじて一戦を交え、民主共和政治の存続に対する覚悟のほどを皇帝ラインハルトに示す必要性を認識していた。また、決戦が不可避となってからは、もとより両勢力の戦略的環境からして理想的な戦機を整えることは不可能であり、戦いの中で勝機を見いだすよりほかないという判断がなされた。
いっぽう帝国軍側でも、5月18日16時前にイゼルローン軍のほぼ全力が回廊を出たとの通報が惑星ハイネセンに届き、皇帝ラインハルトは出戦を決断する。イゼルローン側が軍事的挑戦に出るのであれば、それを撃滅して全人類社会を統一する好機であり、帝国側に戦闘回避の理由はなかった。しいて不安要因に挙げられたハイネセン動乱以来の新領土のインフラ混乱も旧フェザーン自治領主アドリアン・ルビンスキーの逮捕後にいちじるしく収束しており、もとより戦力で圧倒的な帝国軍側に大きな問題はなかったのである。
この決定を受け、皇帝ラインハルトのもと、宇宙艦隊司令長官ウォルフガング・ミッターマイヤー元帥をはじめ、エルンスト・フォン・アイゼナッハ上級大将、フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト上級大将、ナイトハルト・ミュラー上級大将、幕僚総監エルネスト・メックリンガー上級大将らが帯同する大部隊がハイネセンを出撃し、イゼルローン回廊方面へと向かった。
両軍の戦力
帝国軍の戦力は艦艇総数5万1700隻、兵員584万2400名。中央を総旗艦<ブリュンヒルト>に座乗する皇帝ラインハルトが大本営とともに直率し、前衛にミッターマイヤー元帥、左翼にアイゼナッハ上級大将、右翼にビッテンフェルト上級大将の“黒色槍騎兵”艦隊、後衛にはミュラー上級大将が配された重厚堅牢な布陣であった。しかし、当時の皇帝ラインハルトは死病となる変異性劇症膠原病を発病(会戦当時は未発覚)してしばしば発熱を起こしており、体調不安が戦闘の経過に重大な影響をもたらすこととなる。
対するイゼルローン軍は艦艇9800隻、兵員56万7200名と、艦艇にして1/5、兵員では1/10に満たない圧倒的少数にすぎず、数的回復力の劣位は明らかであった。特に兵員の不足が著しく、本来100万人からの兵員が必要なところ、艦艇の1割を無人で運用するという大胆な対策のうえでもなおかなりの少人数で艦艇を運用せねばならなかった。
イゼルローン軍の最高指揮官は革命軍司令官ミンツ中尉であり、ダスティ・アッテンボロー中将、ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ上級大将ら諸将が支え、陸戦部隊としてワルター・フォン・シェーンコップ中将が率いる“薔薇の騎士”連隊も参加した。また無人艦は予備兵力に偽装して左翼後方に集中配置されたが、これは陽動や囮としての活用を期待されてのものであった。
戦闘経過
会戦序盤~中盤
両軍はシヴァ星域において接触し、帝国軍は距離3192万キロ(106.4光秒)でイゼルローン軍を発見、5月29日8時50分、シヴァ星域の会戦が開始される。
開戦15分後、イゼルローン軍左翼は早くも後退を開始し、対する黒色槍騎兵艦隊を誘引して十字砲火のうちに収めようと試みたが、これはビッテンフェルト上級大将が自重を指示し、むしろイゼルローン軍側の反撃に合わせて後退して誘引に乗らない慎重さを示したことで成功せず、10時10分に至って同方面を指揮するアッテンボロー中将は黒色槍騎兵の誘引策を断念する。さらにイゼルローン軍は全方面で前進し猛攻撃に出たが、帝国軍の強固な防御によって阻止される。また無人艦隊を帝国軍右翼やイゼルローン要塞方面への陽動に動かして帝国軍側の目を引き、対応戦力の用意を強いた。
対する帝国軍は、イゼルローン軍に間断ない攻撃を加え消耗させる正統的な戦法で圧力を加えつつ、一挙に敵を包囲撃滅する企図を持っていたが、宿将メルカッツ上級大将の参与するイゼルローン軍の布陣は本来の兵力以上に重厚であり、皇帝ラインハルトは全面攻勢の機をつかめずにいた。イゼルローン軍のほうも、皇帝ラインハルトが体調不安から慎重な用兵を行ったために、やや鈍重だが重厚で間隙のないものとなった帝国軍の戦列を詭計で混乱させる余地を見いだせない状態であった。
しかし5月30日23時30分、黒色槍騎兵艦隊がついに猛攻を開始する。アッテンボロー中将は濃密な弾幕で迎え撃ったが、ひととおり砲火を交わしてからは大きな消耗のため自軍を後退させざるをえなかった。イゼルローン軍退却の気配を見て取ったビッテンフェルト上級大将は翌31日2時40分、イゼルローン軍の退路を断っての包囲殲滅を皇帝ラインハルトに具申する。
皇帝ラインハルトの昏倒
寝室で仮眠中だった皇帝ラインハルトは、ビッテンフェルト上級大将の具申を受けて艦橋に戻ったが、直後に突如として昏倒した。皇帝不予・指揮不能の急報を受けた前衛の指揮官ミッターマイヤー元帥は情報漏洩を防ぐため一部通信封鎖の処置をとり、大本営を支える幕僚総監メックリンガー上級大将との無言の連係のもと戦闘を続行したが、左右両翼および後衛の各司令部への急報伝達が課題となった。
大本営での非常事態を知らされなかった帝国軍初部隊のうち、右翼の黒色槍騎兵は意見具申後も攻勢を続けており、帝国軍全体でもっとも突出していたが、5月31日5時15分にはメルカッツ上級大将に一時的に前進を阻止され、貴重な時間を得たアッテンボロー中将は6時までに部隊を再編することに成功している。これを受けたビッテンフェルト上級大将は大本営に対し予備兵力の動員による再攻勢を具申するが、メックリンガー上級大将は皇帝不予を秘したまま再三後退を指令したため、自制せざるをえなかった。
また、左翼ではアイゼナッハ艦隊が混戦状態で一進一退の戦闘をつづけていたが、アイゼナッハ上級大将は一時後退を命じ、イゼルローン軍の追撃を撃退して陣形を再編、即応体勢での待機に移っている。戦闘参加していない後衛ミュラー艦隊も、同様に待機状態であった。こうして各方面の帝国軍が精彩を欠くようになっていったことで、同日9時20分頃には交戦が続けられながらも膠着状態に陥った。
イゼルローン軍側の判断
対するイゼルローン軍では5月31日昼、戦闘艇スパルタニアン隊を指揮するオリビエ・ポプラン中佐より、混乱する通信の中で傍受された皇帝不予の情報が旗艦<ユリシーズ>の司令部へと届けられる。
報を受けた司令部では幕僚を招集(通信の混乱と戦局の膠着を受けメルカッツ上級大将とアッテンボロー中将も来艦)して対応策を協議した。その結果、帝国軍の動きの鈍さに乗じて撤退することは可能であるが、次に戦う機会ではより不利になるだけであろう、と判断され、シェーンコップ中将が提案した<ブリュンヒルト>への突入案が採用された。
突入部隊はシェーンコップ中将が直接指揮する“薔薇の騎士”連隊(ただし兵員数ではすでに大隊以下)を中核とし、ポプラン中佐のような本来は陸戦要員でない兵員、そして皇帝ラインハルトとの直接交渉のためミンツ中尉も参加した。また、突入するミンツ中尉が失われた場合にそなえた次代の革命軍司令官としてアッテンボロー中将が指名され、<ユリシーズ>に残留している。
<ブリュンヒルト>への突入
6月1日0時すぎ、イゼルローン軍は突入の準備として後退の気配を見せはじめる。当時<ブリュンヒルト>の帝国軍大本営にはミッターマイヤー元帥とミュラー上級大将が参集していたが、意識を回復した皇帝ラインハルトから一時的に兵権を引き継いだミッターマイヤー元帥はイゼルローン軍の撤退をむしろ僥倖とみなし、非常事態を悟られないようビッテンフェルト上級大将に追撃を指示した。
命令を受けた黒色槍騎兵艦隊は、右回りの弧線を描いてイゼルローン軍の撤退を阻止する巧妙な戦術行動で急進する。同日1時すぎ、イゼルローン軍は前進だけでなく迎撃まで中止してメルカッツ上級大将とアッテンボロー中将の巧妙な指揮のもと回廊方面への偽装退却をはじめ、対する帝国軍前衛部隊はその動きに誘引され急進して陣形を乱した。さらに1時40分、黒色槍騎兵は交戦中だったイゼルローン軍無人艦隊の自爆のため混乱状態となり、<ブリュンヒルト>周辺の帝国軍に間隙が生み出される。
この混乱を利用して、イゼルローン軍突入部隊の搭乗する強襲揚陸艦<イストリア>は<ブリュンヒルト>へと肉迫する。さらに総旗艦への誤射を警戒した護衛艦艇が砲火を減少させた間隙を衝いて突貫し、同日1時55分に至って、ついに<ブリュンヒルト>への侵入を果たすこととなった。
会戦の最終局面
こうしたイゼルローン軍の動きに対し、ビッテンフェルト上級大将は艦隊をまず<ブリュンヒルト>救援に動かし、<イストリア>を攻撃できない状態と知ると、2時10分には再出動して残るイゼルローン軍艦隊へと鋭鋒を転じ、怒気にまかせた熱狂的突撃を開始する。またアイゼナッハ艦隊は、黒色槍騎兵に追われたイゼルローン軍に側面から集中砲火をくわえられるよう扇状に艦列を展開した。
迎え撃つイゼルローン軍は一点集中砲火によって黒色槍騎兵に甚大な損害を与えたものの、すでに兵力が消耗しきっていたため、敷いた防御線を強引に突破された。事態を受け危険を察したメルカッツ上級大将は後退を指示したが、直後に座乗する旗艦<ヒューベリオン>に直撃弾を受け、戦死する。
いっぽう、予期せぬ突入を受けた<ブリュンヒルト>では、防御指揮官である副長マットへーファー中佐麾下の兵員と親衛隊が急ぎ態勢を整え[2]、早くも橋頭堡を得て進撃を始めたイゼルローン軍突入部隊を阻止しようとしたが、正面からの白兵戦では“薔薇の騎士”の伝説的勇猛にほぼ抗しえなかった。
陣容を再編した帝国軍は分断策をとり、2時25分ごろまでに、“薔薇の騎士”に対し3倍の損害を出しつつも突入部隊を各個撃破するに至った。特に剛勇なシェーンコップ中将とカスパー・リンツ大佐に対してはおそるべき兵員の消耗を余儀なくされたが、2時50分になってついに前者の戦死が確認され、後者も負傷と体力の消耗により戦闘続行不可能となる。しかし直後、意識を回復していた皇帝ラインハルトの居室に到達したミンツ中尉が交渉を申し出たことで戦闘終了が命じられ、シヴァ星域会戦は終結した。
結果
この戦いの結果、帝国軍とイゼルローン革命軍の間で講和が成立した。
戦闘後、ミンツ中尉は自身の構想する外交戦略についてフレデリカ・グリーンヒル・ヤン主席の承認を得たうえで帝国軍に随行し、ハイネセンをへて新帝都フェザーンへと帰投する皇帝ラインハルトとの交渉を重ねた。結果、イゼルローン要塞の帝国軍への引き渡し、およびハイネセンをはじめとするバーラト星系への内政自治権付与について、両者は完全な合意に至った。皇帝ラインハルトは7月26日に崩御したが、帝国・イゼルローン両政府は改めて合意の履行を約束している。
数に劣ったイゼルローン軍側の損害は著しく、メルカッツ上級大将、シェーンコップ中将など革命軍主要幹部の戦死を始めとして兵員の戦死者は全参加兵員の4割にのぼる20万人余、特に<ブリュンヒルト>に突入した“薔薇の騎士”連隊は生存者わずか204名、全員が負傷という結果であった(リンツ大佐も生還している)。なお、銀河帝国との講和に伴い、残兵はミンツ中尉とともに帝国軍に随行してハイネセンに赴き、同地でマリノ准将の管理のもと軍組織の解体が進められることとなった。
皇帝ラインハルトとシヴァ星域の会戦
体調不安の影響
シヴァ星域の会戦における帝国軍の用兵には、全体的に皇帝ラインハルトの変異性劇症膠原病(当時は未確定)による体調不安の影響があらわれている。
年来、激務も相まって皇帝ラインハルトは間歇的に発熱を生じていたが、自重策に近い正攻法が選ばれたのも、会戦開始直前にも自覚されていた微熱で集中力に影響が出ることをおそれたためであった。ミンツ中尉はこうした帝国軍の重厚な用兵を見て、単につけいる隙がないというだけでなく、予想より鈍重で皇帝ラインハルトらしいダイナミズムが不足していることに戸惑いを感じていた。また、体調が万全であれば、各方面に陽動するイゼルローン軍予備戦力が無人艦隊であることを看破していたであろうとされている。
皇帝ラインハルト昏倒後には、指揮を引き継いだミッターマイヤー元帥も、皇帝不予への動揺のために細心の注意をおこたり、イゼルローン軍撤退の動きが陽動である可能性を見過ごしてしまうこととなった。自軍の動きへの帝国軍の反応が予想の範疇にとどまるものだったミンツ中尉のほうでも、帝国軍の最高首脳に異常事態が生じていることを確信している。
イゼルローン軍突入に対する対応の意図
イゼルローン軍の旗艦突入を受けた皇帝ラインハルトは、突入部隊にミンツ中尉が参加していることを知ると、近侍するミッターマイヤー元帥とミュラー上級大将の介入を禁じたうえで、もしミンツ中尉が迎撃を突破して自分の前に到達したならば対等に要求を受諾してもよい、しかし皇帝たる自分の慈悲やその臣下の協力がなければたどり着けないというのであれば何を要求する資格もない、と断言した。
結果、皇帝ラインハルト自身も会見を期待しているにもかかわらず、そこに至るまでの過程に両軍将兵の凄惨な犠牲が生じることが当然予測されることとなった。ミッターマイヤー元帥は、この対応の理由について、イゼルローン軍が民主共和主義にいかほどの価値を認めているのか、中途半端な認識を許さず彼ら自身の流血によって証明せよという要求ではないかと推察している。
これについてはイゼルローン共和政府側も、会戦開始前に全面戦闘を決断した時点ですでに同様の見解に達しており、皇帝ラインハルトは交渉に先んじて「理想のために血を流しうるか否か」を問うてくるであろう、と考えていた。
このように、シヴァ星域の会戦と<ブリュンヒルト>艦内での凄惨な戦闘は、両者ともに必要性を認めたうえで生じたのである。
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原作では10巻『落日篇』第七章「深紅の星路」および第八章「美姫は血を欲す」で描写。
石黒監督版OVAでは第107話「深紅の星路」、第108話「美姫は血を欲す」で描写。
関連項目
脚注
- *イゼルローン共和政府の主義上、自由を求める亡命者を放置することはできなかった。帝国軍の破壊工作の恐れも検討されたが、皇帝ラインハルトの為人からみて可能性は低いと判断された。
- *この時、大本営と<ブリュンヒルト>司令部のどちらが艦内戦闘を指揮すべきか、若干の混乱が生じている。
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