ジェラルディーナ(Geraldina) とは、2018年生まれの日本の競走馬。鹿毛の牝馬。
主な勝ち鞍
2022年:エリザベス女王杯(GⅠ)、オールカマー(GⅡ)
概要
父モーリス、母ジェンティルドンナ、母父ディープインパクトという血統。
父は日本と香港でマイルを中心にGⅠを6勝した名馬。種牡馬としても初年度からピクシーナイトやジャックドールのみならず、シャトル種牡馬としての派遣先であるオーストラリアでも当地のダービー馬*ヒトツを輩出するなど、こちらでも国際的に大活躍中。ジェラルディーナもその初年度産駒の1頭である。
母は2012年の牝馬三冠馬。GⅠ7勝を挙げ2度の年度代表馬に輝いた、ディープインパクトの最高傑作の1頭。ジェラルディーナは第3仔となる。
母父は説明不要の大種牡馬。ただあまりにもその血が日本競馬を席巻しすぎたためか、ディープ産駒の牝馬はつけられる種牡馬が限られ、母父としての産駒は2014年から走っているが、国内GⅠ馬はジェラルディーナ以前には菊花賞馬キセキのみである。
というわけで、父と母の名前だけであとはもう説明不要レベルの超良血である。
モーリスは父母父が*サンデーサイレンスなので、*サンデーサイレンスの4×3のクロス持ち。他にもいろいろクロスがかかっている(血統表参照)。
2018年5月12日、ノーザンファームで誕生(誕生当時の写真)。オーナーはおなじみ、母と同じサンデーレーシング。これだけの良血馬なので、募集価格も1口175万円×40口(=7000万円)となかなかの高額であった。
馬名意味は「女性名より」と登録されている。直接の由来は特になさそうで、イタリア語で「鬼貴婦人」の意味だった母名と響きの似た女性名をつけたというところだろう。
なお余談であるが、一部の競馬ファンの間ではモーリス産駒は母馬の名前に「モ」を付けて呼ぶことがあり、本馬もモンティルドンナと呼ばれた。ただこれに関してはその後、一部でモーリスが超名牝に片っ端からつけさせてもらったのにその仔がいまいち結果が出ないことを揶揄する意味合いがついたので、少なくともジェラルディーナが結果を出した現在では使うべきではないだろう。2021年には同じ父モーリスの全妹も生まれたし。
オニフジンノムスメ
2歳
母と同じ栗東の石坂正厩舎に入厩。母の3~4歳時の主戦騎手だった岩田康誠を鞍上に、2020年9月12日、中京・芝1600mの牝馬限定の新馬戦でデビュー。ここはスタートがよくなく、後方から直線で追い込んだものの3着。
10月3日、同条件の混合戦の未勝利戦に向かったが、今度はスタートはぼちぼちだったものの序盤で思いっきり掛かる、直線では一度は抜け出したものの砲弾でも避けているかのようなジグザグ走行をすると気性面の幼さが丸出しの走り。それでも2着に残したので力があることは感じさせた。
3戦目は11月23日の阪神・芝1800m、牝馬限定の未勝利戦。北村友一が騎乗したここでは中団外目から進め、直線では相変わらずフラフラしながらも外から伸び、粘るトウシンモンブランをハナ差で差し切って初勝利を挙げる。
勝ち上がっての4戦目、陣営は強気に中2週の阪神ジュベナイルフィリーズに登録。無事に抽選を突破して出走権をゲットした。岩田康誠を鞍上に、血統面の期待からか8番人気とそこそこの支持を集める。レースはスタートで出負けして最後方からになり、直線で大外を上がり2位の末脚で追い込んだものの7着まで。430kg前後と身体もまだ成長途上の中、能力の片鱗と課題とを見せた感じのレースであった。
3歳
明けて3歳は2月のエルフィンステークス(L)から始動。再び北村友一を迎え、2番人気に支持されたものの、レース前にイレ込んで、スローペースを最後方から大外回しの展開となり、直線でもモタれて伸びを欠いて12頭立て10着に撃沈。
2月限りで石坂師が定年となったため、クロノジェネシスの所属する栗東の斉藤崇史厩舎に転厩。馬体も気性も明らかにまだ成長途上ということで、春の牝馬クラシックは断念し、条件戦からステップアップを目指すことになった。
というわけで復帰戦は6月の阪神・芝1800mの1勝クラス・城崎特別。福永祐一を鞍上に迎え、ここからは基本的に福永が主戦となる。しかしこのレースでは途中で右手綱の尾錠が外れ、3コーナー前でどんどん外にヨレながら先頭へ。そのままほとんど逸走寸前の超大外回しになり9頭立て8着に沈没。転厩初戦でいきなり斉藤師に過怠金が課されることになった。
気を取り直して中1週で小倉・芝1800mの1勝クラス・マカオジョッキークラブトロフィーへ。課題のスタートも上手く決めて中団に構えると、直線残り200mで大外から力強く抜け出して2馬身半差の快勝。直線でもちゃんと真っ直ぐ走り、気性面の成長もはっきりと見られる好内容の勝利だった。
続いて9月5日、同条件の2勝クラス・筑後川特別へ。前走の好内容、52kgという軽い斤量もあり1.7倍の断然の1番人気に支持された。大外枠から最後方でのレースになったが、大外から上がり最速33秒1の末脚を叩き出して1馬身半差で快勝。
この連勝で秋華賞に登録したが、賞金不足で抽選にも加われず除外。仕方ないので秋華賞と同日、10月17日の阪神10R・芝1800mの3勝クラス・西宮ステークスへ向かうと、ここも後方から大外を回して上がり最速の33秒3の末脚でイズジョーノキセキを振り落とし、1と3/4馬身差で完勝。3連勝であっという間にオープンに昇格した。勝ちタイムは直後の秋華賞の1800m通過より2秒以上速く、前年に同じく秋華賞を除外になったレイパパレのこともあり、一部では「幻の秋華賞馬」という声もあったりなかったり。
というわけで12月のチャレンジカップ(GⅢ)で古馬重賞戦線に参戦。断然人気のソーヴァリアントに次ぐ2番人気に支持され、最内枠から中団でレースを進めたが、直線で最内から上手く進路を確保できず末脚不発で4着に敗れ、3歳シーズンは終了。
4歳
明けて4歳初戦は2月の京都記念から始動。4番人気に支持される。ここは後方から外捲りで大外から末脚勝負という得意のパターンに持ち込んだが、稍重の馬場をまんまと逃げ切ったアフリカンゴールドに届かず4着。阪神JFでも戦った同期のオークス馬、1番人気のユーバーレーベン(5着)には先着を果たした。
続いては大阪杯に登録したが賞金不足で除外になり、翌週の阪神牝馬ステークスへ。ここは福永が1番人気のアンドヴァラナウトに騎乗したため幸英明がテン乗り。同期の同じく三冠牝馬の娘である秋華賞馬アカイトリノムスメとの、史上初の三冠牝馬の娘対決も注目されたが、アカイトリノムスメが競走除外で実現せず(そしてそのまま引退してしまったため今後の実現もなくなってしまった)。4.0倍の3番人気に支持されたが、最後方から外捲りという得意のパターンに持ち込もうとするも直線入口でも一番後ろ。上がり最速で追い込んだもののさすがに厳しく6着まで。
6月の鳴尾記念(GⅢ)は中京開催で、鞍上は福永に戻ったもののエルフィンS以来の左回りで苦手じゃないの?と思われつつも4番人気。外枠から中団につけ、外回しの末脚勝負のパターンに持ち込んだが、同じサンデーの長期休養明け・ヴェルトライゼンデの復活勝利に半馬身届かず惜しくも2着。
夏も休まず8月の小倉記念(GⅢ)へ。前走の内容も良かったため3.2倍の1番人気に支持される。今回は内目の枠から中団に構えたが、直線で馬群を抜け出したときには先行したマリアエレーナははるか前。結局5馬身突き放され、ヒンドゥタイムズにもハナ差競り負けて完敗の3着。
かくして重賞でも好走はするものの勝ちきれないまま迎えた9月のオールカマー。1番人気は長期休養から復活の気配を見せ、秋の完全復活を目指す1歳上の三冠牝馬デアリングタクト。一方、その先々代の三冠牝馬の娘であるジェラルディーナは、横山武史がテン乗り、初の中山、初の2200mへの距離延長、外枠から外回しが勝ちパターンなのに2枠2番の内枠とやや買いにくい要素が多く、単勝1桁の4頭からは離された19.5倍の5番人気に留まった。しかし、この内枠がレースの鍵となる。
内ラチ沿いの6番手という前目に位置取ったジェラルディーナは、4コーナーを抜けて直線でもそのまま最内に潜り込む。前は逃げ粘るバビット、横にはウインキートスがおり坂を上るまでは進路がない状態だったが、坂を上りきったところでこの2頭の間をこじ開けるように一気に加速。追い込んできたロバートソンキーを寄せ付けず1馬身半差をつけてゴール板に飛び込んだ。
三冠牝馬復活のレースのはずのところを、勝ったのは三冠牝馬の娘の方。内伸びで外が伸びない馬場で、得意の外回しではなく枠なりに内で我慢した横山武史の好騎乗。母のパワフルな走りを思わせるイン突きで、7度目の重賞挑戦での嬉しい重賞初制覇を挙げた。なお単勝1桁の4強は全て4着以下に沈み、内枠の2番・1番・3番で決着。3連単は24万6180円となかなかの波乱の決着だった。
この勝利で、同じ右回り2200mのエリザベス女王杯に参戦。前走に続きデアリングタクトとの再戦となったほか、古馬からは前年勝ち馬アカイイトなどが駒を進め、3歳戦線からも秋華賞馬スタニングローズと同レース2着のナミュールが揃って出走。そして当年のアイリッシュオークス馬Magical Lagoonが海外馬として11年ぶりに参戦し混戦模様となった。ジェラルディーナは8.1倍の4番人気である。
当日の雨で重馬場となった阪神競馬場。横山武史は主戦のナミュールに回ったため鞍上にクリスチャン・デムーロを迎えたジェラルディーナは、前走とは逆の大外18番からスタート。五分のゲートからスッと中団後方に控える。平均ペースで流れた3コーナー、荒れた内で失速する先行馬を見ながら3角で進出を開始。抜群の手応えで大外を捲り、5,6番手で直線に突入。各馬が総崩れとなる中で馬場の真ん中から抜け出した5番人気ウインマリリンを残り100mで競り落とし、さらに外から追って来た3歳勢の伏兵ライラックの追撃もものともせず、そのまま1馬身3/4突き抜けて完勝。重賞連勝でGⅠを勝ち取った。
ジェンティルドンナ産駒はもちろんGⅠ初勝利。そして母父ディープインパクトは意外にも2017年のキセキ以来5年ぶりとなるJRA・GⅠ2勝目となった。なお2着はウインマリリンと12番人気ライラックの同着となり、3連単は高い方で28万9250円(同着なので半額)と前走に続きなかなかの波乱となった。
クリスチャン・デムーロは「すごく乗りやすい。それと素晴らしい瞬発力が彼女のストロングポイントだ」とコメント。古馬になって馬体が逞しくなったのもあるが、若駒の頃の気性の幼さを考えれば、条件馬時代から福永騎手が辛抱強く競馬を教えた成果だろう。斉藤師も「(城崎特別で)手綱の尾錠が抜けてしまった時、福永さんが危険な中で馬にいろんなことを教えてくださった。その後から折り合いが良くなったので、それが今につながっています」とコメントしている。
斉藤師が「年内もう1戦したい」との意向を示し、年末の有馬記念に参戦。彼女を含めこの年の古馬中長距離GⅠ馬が全頭参戦、復権を目指すエフフォーリアやディープボンドも加わる豪華メンバーの中、オールカマーやエリ女の強い勝ち方と勢いが評価され、イクイノックスとタイトルホルダーに次ぐ7.4倍の3番人気に支持された。鞍上は引き続きC・デムーロ。
レースはCデム曰く「ゲートでリラックスしすぎて立ち遅れた」そうで、スタートで出遅れてしまい、菊花賞2着馬ボルドグフーシュと並んで後ろから2番手でのレースに。3コーナーから上がって行こうとするも反応は鈍く、直線入口では前に馬群がいる状態だったが、残り200m手前で外に進路を確保するとエンジン点火。集団をまとめて外からかわして追い込み3着に突っ込んだ。敗れたものの、出遅れさえなければ圧勝したイクイノックスにももっと食い下がれただろうと感じさせるレースであった。
エリ女の勝利に加え、オールカマーの勝利と有馬記念の好走も評価されたか、ヴィクトリアマイル勝ち馬のソダシを抑え、この年のJRA賞最優秀4歳以上牝馬を受賞した。
5歳
繁殖入りが近づく5歳初戦は大阪杯より始動。こちらもジェンティルドンナが現役の頃はまだGⅡだったレースという事で、母の知らない勲章をまた一つ獲りたいところである。
1歳下の二冠牝馬スターズオンアースや同父のジャックドールが出走する中、5番人気に。鞍上はテン乗りの岩田望来。
データ上不利とされる最内枠からのスタートとなったが、隣のマリアエレーナに前に入られるなどして後方4番手からの控えた入りとなった。その後内から前を狙うが内側に馬がかなり集まった結果、前へ行けるスペースはほぼなく、直線で内ラチ沿いの隙間を進んでいくが前方に行った頃には4馬身ほど先にジャックドールがレースレコードでゴール板を過ぎた後。1年ぶりの着外6着でレースを終えた。
その後はクイーンエリザベス2世カップを鞍上C・デムーロに戻しプログノーシスらと共に遠征へ。レースはジェラルディーナは出足が付かず後方からのスタート。全体がスローペースとなり終盤の上がり勝負となる中で位置も後ろ過ぎたのか、ロマンティックウォリアーやプログノーシスの追い込みに付いていけず6着に敗戦。
次走は帰国し宝塚記念へ。鞍上は団野大成の予定だったが直前で変更。宝塚4勝の武豊を迎えて臨むことになった。
人気は世界ランキング首位となったイクイノックスの完全一強ムード。ジェラルディーナは天皇賞馬ジャスティンパレスに次ぐ3番人気に支持されたが、単勝オッズは13.8倍と人気2頭からはやや水を開けられた。
近年好走歴が少ない6枠11番から発進。後方4番手でイクイノックスとほぼ並ぶように追走していたが、同じ競馬をしては勝ち目はないと踏んだか、武豊が早めに動き3角から捲り加減に進出。3番手まで押し上げて直線に向く。早仕掛けにもへばることなく粘ったが、直線を待って仕掛けたイクイノックス以下との末脚勝負には敵わず4着。しかし3着ジャスティンパレスとはアタマ差、春天2着のディープボンドは1馬身差の5着に封じ込め、GⅠ馬の底力を示した。
同期のクラシックホースたちから遅れて本格化を迎えたもう1頭の三冠牝馬の娘。現役三冠牝馬を破ってGⅠの勲章を手にした貴婦人の娘は、ここからどんな活躍を見せるだろうか。
血統表
モーリス 2011 鹿毛 |
スクリーンヒーロー 2004 栗毛 |
グラスワンダー | Silver Hawk |
Ameriflora | |||
ランニングヒロイン | *サンデーサイレンス | ||
ダイナアクトレス | |||
メジロフランシス 2001 鹿毛 |
*カーネギー | Sadler's Wells | |
Detroit | |||
メジロモントレー | *モガミ | ||
メジロクインシー | |||
ジェンティルドンナ 2009 鹿毛 FNo.16-f |
ディープインパクト 2002 鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
Wishing Well | |||
*ウインドインハーヘア | Alzao | ||
Burghclere | |||
*ドナブリーニ 2003 栗毛 |
Bertolini | Danzig | |
Aquilegia | |||
Cal Norma's Lady | *リファーズスペシャル | ||
June Darling |
クロス:*サンデーサイレンス 4×3(18.75%)、Lyphard 5×5×5(9.38%)、Danzig 5×4(9.38%)、Northern Dancer 5×5(6.25%)
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