ジェンダーフリーとは、「男らしさ」「女らしさ」に囚われない生き方をしようという考え方である。
概要
一般的に国が物質的・技術的に豊かになり、国民の市民的意識も成熟してくると、女性の社会進出が活発になってくる(もちろん例外もある。貧しい土地柄ゆえ性別に関係なく総出で労働するケースも存在する)。衣食住が充実し、家庭における作業も省力化され、仕事の内容も肉体労働から知識労働へと移行して、さらに男女同権の思想が広まることにより、男女がともに肩を並べて作業することが増えていくのである。
そういった流れの中、賃金の平等性や男性、女性としての生き方などの価値観が多様化し、多くの人間が「ジェンダー(性差)」という存在を生き方の枷として意識するようになり、ジェンダーフリー思想が広まっていくとされている。
尚、ジェンダーフリーという言葉は「ジェンダーを無視する」と英語圏では解釈されるので、厳密には実際の意味合いとやや異なる単語となる。
事実、国連や日本政府が公式に「ジェンダーフリー」という言葉を用いたことはない。
しかし既にそういった思想及び運動が「ジェンダーフリー」と定義されたこともあり、関連する市民団体などが用いることが多々ある。
いわば、国内でのみ通用するキーワードである。厳密には、「ジェンダーバイアス・フリー」「ジェンダー・イクォリティ」と呼称した方が、意味としては正しい。
影響と批判
ジェンダーフリーの考え方は今日における日本にも一定の影響を与えている。
特に教育機関では日教組が積極的にこの思想を取り入れた活動を行い、男女混合のクラス名簿が作成されたり、運動会の競技も混合で行ったり、体育着が男女兼用のハーフパンツになったりと、一定の「成果」を上げている。
しかしこれらの取り組みは「男女の身体的性差を考慮しないもの」「伝統的な文化を歪曲・破壊するもの」として保守派から批判され、多くの人々の反感を買う結果にもなった。
こういった背景もあり、2ちゃんねるを始めとするネット上では、ジェンダーフリーはフェミニズムと並んで嫌悪の対象となることが多い(但し全てのフェミニストがジェンダーフリーを推進しているわけではない)。
ジェンダーレスとの違い
上記のような事例からよく誤解されがちであるが、本来ジェンダーフリーとは、「ジェンダーに拘らない」ようにしようという考え方であり、「ジェンダーを否定する」考え方ではない。
性差の否定はジェンダーフリーの精神とは本来異なるもので、それはどちらかというとジェンダーレスという意味になる。
例えば、男性がジーンズを、女性がスカートを着用することが多い現状があるとしたとき、ジェンダーレスの考え方に基づけば双方ともジーンズないしスカートに統一するべきとされる。
一方でジェンダーフリー本来の考え方を実践するならば、男性・女性ともにジーンズとスカートの両方を選ぶ権利があり、それは他者からの強制を受けないよう配慮するべきだとされる。
つまり、ジェンダーフリーとは、ジェンダーバイアスによって生き方の選択肢が狭まることを防ぎ、多様な生き方を男女双方に可能にしようとする考え方であり、性差の撲滅・画一化と、それを目的とした新たな制限の創造は目的ではないのである。
よってネットでよく槍玉に挙がる「性差を考慮しない」「伝統・文化を破壊する」行為は、必ずしも「ジェンダーフリー」の精神に則っているわけではないとも考えられる。
各機関の対応
ジェンダーフリーを推進する立場
戦後の日本では何れの与党も男女共同参画社会の推進と同時に、ジェンダーフリーの思想に基づいた環境整備などを進めて来ている(但し一部のやり過ぎに関する批判も少なからず行っている)。しかし前述したとおり、「ジェンダーフリー」という語句は極力公式にて用いられないようにしている。
また、前述した日教組などのケースも含め、各NGOによる運動も活発に行われている。だがこれらの活動が時に問題を招いてきたこともまた事実であり、慎重な運用が求められるようになっている。
今後日本がより男女平等の社会になるにつれ、ジェンダーフリー的社会に移行していくのは避けられない現象だという指摘もある。
ジェンダーフリーを批判する立場
保守派の政治家や知識人、及び団体がジェンダーフリーを批判することは少なからずある。例えば石原慎太郎都知事は、「男女の違いを無理やり無視するもの」「男女の区別なくして人としての規範はもとより、家庭、社会も成り立たないのは自明の理」として厳しく批判している。
カトリック系キリスト教を始めとした宗教団体から批判されることも多い。統一教会では教義的立場からそれらの活動を強く非難しており、機関紙の世界日報においても度々攻撃的な記事を掲載している。
ノーベル平和賞を受賞したマザーテレサは、1995年の第四回北京世界女性会議に「男女の間の素晴らしい違いを否定する人たちがいるのが理解できない」 「彼らは世界に分裂と不幸をもたらし平和を破壊するだけ」「最大の世界に対する破壊である中絶にも賛同的」と、ジェンダーフリー(とフェミニズムも含むかもしれない)を批判する書簡を送ったとされる(但しこの書簡の初出も世界日報であるようで、公式機関からの発表は現在のところ未確認である)。
ただし、先述のような違いを掴み切らぬまま、ジェンダーフリーとジェンダーレスを混同している批判意見も少なからず存在する。
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