ジャイアントモアとは、ダチョウ目モア科に属する巨鳥、絶滅種。
概要
数百年前、この地球上にはなんと人間の身長を遥かに越える大きな鳥がいた。それこそ、かつてニュージーランドに生息していたと言われる、ジャイアントモアである。
その大きさたるや、発見された最大の種では3.8mもの巨躯を誇っていたらしく、現在の常識からすると驚くほかない。
そもそもこの種類自体が少ないモア科の生き物は、恐鳥とも呼ばれる巨大な体躯を持つ、飛べない鳥の一種である。
その中でもこのジャイアントモアは一際でかく、絶滅種を含めた鳥類の中でも最長の身長を持つ鳥と言われている。
マオリ族の伝承だけでこの鳥の存在が伝えられた際は、多くの学者が「どうせ御伽話」と気にもかけなかったが、化石を発見したことで真剣に研究するものが徐々に登場するようになった。
特にその化石を見せられ、長年研究してきたリチャード・オーウェン(恐竜の名付け親)は熱心に探求を重ね、嘲笑を浴びながらもさらなる化石を収集、標本を完成させたことでこの鳥が実際に生息していたことを証明した。
生態・特徴
ジャイアントモアはその異様なまでの巨体に見合って、独自の生態を持つ。
ただし、これらはあくまで化石や伝承の解読からわかることが主であり、実際どういった暮らしをしていたかは当時彼等を発見したマオリ族しか知らない。
鳥類はオスのほうが大きくなるものだが、モアは反対にメスがオスの1.5倍程度の大きさになる。逆に、メスが産み終えた卵はそのオスが暖めていたと言われているが、これは化石から推察される一つの説にすぎない。
食性は草食、なので人間が遭遇しても食事目的では襲われる可能性は恐らくなかったといえよう。ダチョウらとは異なり草原ではなく森の中で暮らし、キリンのように高い木の枝についた葉を食べていたと言われている。
体内には砂嚢を持っている。砂嚢とは、小石を溜め込む袋のことで、溜め込んだ小石で食べた草木を磨り潰すことで、胃の消化を楽に出来るのである。
また、陸上型の鳥類は、飛べなくても羽は持っているのだが、モアにはそれらしき部位が存在しなかったのも、鳥類としてはかなり珍しい点。
天敵は、巨大猛禽類であるハルパゴルニスワシ程度で、普段の生活は彼等にさえ目を付けられなければ平和そのものだった。そのためか繁殖力はそれほど高くなく、一回に生む卵は2~4個程度だったと言われている。
ちなみにご想像の通り、卵もデカかったそうで、ダチョウの卵よりも大きかったらしい。
普通に暮らしていれば別段その繁殖力の低さは些細なことだったが、とある天敵が増えたことにより、それは種の崩壊を招いた原因の一つとなってしまった。
絶滅した理由
ご存知のとおり、今地球上にジャイアントモアは存在しない。
絶滅したその理由は、決して天敵のハルパゴルニスワシのせいではない。
勿論天敵としてジャイアントモアを狩り取って生きていたのは事実だが、あくまで自然の摂理としての範疇内であった。
つまり、ジャイアントモアとハルパゴルニスワシとの間には、食物連鎖の関係がバランスよく構築されていたわけだ。
なら、絶滅した本当の理由はなんなのか?
恐竜と同じく隕石の説があるが、有力視されているのは自然の不運ではなく、人間の台頭による不運だった。
何を隠そう、彼等を根絶やしにしてしまったのは、伝承でモアの存在を語り継いできたマオリ族だったのである。
今でこそニュージーランドは牛肉の産地として知られている土地の一つであるが、マオリ族がニュージーランドに移住してきた時は、牛など食肉として有名な生き物が生息していなかった。
そうなるとこの土地では、ジャイアントモアこそがたんぱく質のとれる最大の獲物となる。
さらに移住時、彼等はジャイアントモアの生息地である森も切り開いており、生活の場も侵食していた。
マオリ族の狩りはジャイアントモアの習性を理解して行われた。先に記した砂嚢に石を貯める習性を見たマオリ族は、焼けた石を彼等に飲ませて殺していたという。
ちょっと残酷に見えるものの、当時の人間らしい賢い狩りの仕方であると言える。
さまざまな要因が重なった結果、ジャイアントモアは異例の速さで絶滅した。
一時期は発見から800年程度ジャイアントモアは生きていたと言われてきたが、マオリ族の移住の時期を考えるとそこまでではなかったとされ、再計算の結果、下手すれば50年生きていたかどうか怪しいと言われている。
詳しい絶滅時期は不明だが、1500年代にはもう存在していなかったようだ。
生存説
ジャイアントモア、というよりモア科の鳥類は、その有名さから信憑性の怪しい目撃談が数多く寄せられている。
これは絶滅動物にはさして珍しい話ではないが、ジャイアントモアともなると、その巨体から人間に見つからないほうがおかしいと言えるため、さらに信用出来ない話になる。
1993年には、とあるホテル経営者一行がそれらしい姿を撮影しているものの、ピンぼけしているうえに職業が職業だけに客寄せのためのでっちあげと言われている。
もし本当に生きていれば、動物好きとしては一目拝みたいと思われるところだが、少なくとも今の世において3メートル級の巨大なジャイアントモアが生きている可能性は、ゼロに等しいだろう。
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