ジャンルイジ・ドンナルンマ(Gianluigi Donnarumma、1999年2月25日 - )とは、イタリアのサッカー選手である。
フランス・リーグ・アンのパリ・サンジェルマンに所属。サッカーイタリア代表。
経歴
幼少期
イタリア・カンパニア州ナポリ県カステッランマーレ・ディ・スタービア出身。
4歳の頃からセリエCのクラブでGKとしてプレーしていた叔父に連れられ、地元のASDクラブ・ナポリでサッカーを始める。幼い頃から体が大きく、数々のプロGKを輩出した経歴を持つGKコーチのエルネスト・フェッラーロの指導を受けることでGKとして実力を付けていく。当時から常に2歳年上の子供たちとプレーしており、ただ体が大きかったため周囲から年下と思われていなかった。
もっとも、幼少期はマザコンだったらしく、カテゴリーが上がった後もゴール裏にママがいないと泣く程だった。当時からGKとしてプロの舞台で活躍することを夢見ており、同じファーストネームを持つイタリアのレジェンドGKジャンルイジ・ブッフォンに憧れを持っていた。プロデビューしてからのプレースタイルでもブッフォンの影響を受けていると語っている。
ミラン
14歳になった2013年にACミランの下部組織へ移籍する。当初、インテル・ミラノの下部組織と交渉をおこなっており、両親もクラブ・ナポリの会長もインテルと契約するつもりだった。しかし、現代理人のライオラのプッシュもあってドンナルンマの評判を聞きつけたアドリアーノ・ガリアーニCEOの命令のもと、より具体的なオファーを出したミランが交渉をまとめあげ、本人がミラニスタだったことも後押しとなり、ミランへ入団することになる。この時の移籍金は35万ユーロだと言われている。ちなみに、ミランには9歳年上の兄アントニオがGKとして1年前まで在籍していた。
入団してすぐにU-15に所属するが、すぐさまU-17、プリマヴェーラへと飛び級昇格を果たす。下部組織では、トップチームのGKコーチであるアルフレード・マーニが練習メニューを統括しており、高度な育成プログラムのもとで現代のGKに必要なノウハウを学ぶこととなった。
2015年2月22日にはセリエAの公式戦でトップチームでのベンチ入りを果たす。その3日後に16歳の誕生日を迎えると、すぐさまミランとプロ契約を結ぶ。
2015-2016シーズンのプレシーズンマッチで出場機会を得ることになり、このときのプレーをシニサ・ミハイロビッチ監督が評価したことでトップチームに定着し、第3GKとしてセリエA開幕を迎える。そして、10月25日のサッスオーロ戦でスタメンに抜擢され、イタリアサッカー史上2番目の若さとなる16歳8か月にしてセリエAデビューを果たす。この試合を無失点で試合を終えると、ミハイロヴィッチ監督から「イタリアサッカーの未来」と称されるほどの評価を受け、ディエゴ・ロペスからポジションを奪い、正GKの座を手にする。若き守護神の誕生は世界中のメディアから注目され、2016年1月31日のインテル戦では、ミラノ・ダービーに出場した史上最年少の選手となる。ゴールを任された後も16歳とは思えない落ち着いたプレーを披露し、公式戦31試合でゴールを守ることとなる。
2016-2017シーズンでは、すでにチームの顔のような扱いとなっており、低迷期が続き、クラブの売却話があがるようになっていたミランにとっての希望の星とも言えた。ところが、代理人となっていたライオラの影響もあって契約延長の交渉が進まず、一時はミランから退団する話まで出るようになり、試合中に偽ドルが投げ込まれるなどサポーターから懐疑的な目で見られるようになる。
揉めていた契約交渉もクラブへの忠誠を誓う形で折り合いが付き、契約を2021年まで延長。一方で、兄であるアントニオ・ドンナルンマがミランへ復帰しており、控えGKとしては高額なサラリーを受け取っていたこともあり、弟との契約を延長するためのコネ入団と噂される。2017-2018シーズンでは、前年に続いてセリエA全試合に出場。また、UEFAヨーロッパリーグでもゴールを守り、公式戦53試合に出場。2018年ホームのナポリ戦でセリエA100試合出場を19歳と49日という史上最年少で達成する。
2018-2019シーズンには、すでにセリエAでもトップクラスのサラリーを受ける選手となっていたが、それに恥じないだけのパフォーマンスを見せる。2018年10月25日のインテルとのミラノ・ダービーで致命的なミスを犯し、戦犯として批判されたこともあったが、すでに世界的なGKの一人として認知されるだけの評価を得ていたが、米国資本が経営するようになったクラブはまたしても低迷期から脱出できず。
2019-2020シーズンになると、ステファノ・ピオリ監督の就任、ズラタン・イブラヒモビッチの加入によってシーズン後半戦クラブは上昇気流を描くようになり、プロデビュー以来初めてチームに恵まれた時期を過ごすこととなる。2020年7月21日のセリエA第35節サッスオーロ戦では、21歳の若さにしてミランでの公式戦200試合出場を果たす。この記録はクラブのレジェンド中のレジェンドであるパオロ・マルディーニの22歳よりも早く達成した記録となっている。またこの頃からビルドアップ面でも大きく進化を見せておrり、攻撃の起点となるパスの頻度が増えるようになっている。
2020-2021シーズンでは、シーズン前半戦首位に立つなど、好調のミランの守護神として君臨。2020年10月26日に新型コロナウィルスの陽性反応が出るが、1試合のみの欠場後はこれまで以上のハイパフォーマンスを披露。2021年2月21日におこなわれたインテルとのミラノ・ダービーにおいてセリエA200試合出場を達成。21歳361日という若さでの達成は、ブッフォンの持つ24歳83日という記録を大きく上回る史上最年少での達成となった。後半戦に失速したチームはスクデットこそ逃したものの、シーズンを通して高いレベルを保ち、ミランの7年ぶりとなるUEFAチャンピオンズリーグ出場権獲得に大きく貢献。シーズンのセリエA最優秀GKにも選出される。しかし、水面下でおこなわれていた契約延長交渉は難航し、またしても移籍話が持ち上がることとなる。ミラニスタからも不満が集まるようになり、ラツィオに0-3で完敗した試合後にかつての同僚だったペペ・レイナと談笑していたことでサポーターからの怒りをぶつけられる。そして、5月27日パオロ・マルディーニTDから契約の折り合いが付かず、退団する見通しであることが明らかにされる。
パリ・サンジェルマン
2021年7月14日、フランス・リーグ・アンのパリ・サンジェルマンにフリーで移籍することが発表される。契約期間は5年。背番号は「50」。
2021年9月11日、リーグ・アン第5節クレルモン戦で新天地でのデビューを果たすが、これまで正GKを務めていたGKケイラー・ナバスが優先的に起用され、控えに回ることが多かった。9月28日、UEFAチャンピオンズリーグ グループステージ第2節マンチェスター・シティ戦でゴールを任され、自身初めてCLのピッチに立つと、好セーブを連発し、チームの完封勝利に貢献する。その後はナバスと併用で起用され続けるが、2022年3月9日のCLラウンド16 2nd legレアル・マドリード戦で痛恨のパスミスを犯してしまいカリム・ベンゼマのゴールを許してしまう。これがきっかけで2点のリードをひっくり返されて逆転負けを許してしまい、批判を浴びることに。その後もナバスとの併用が続くが、3月20日のリーグ・アン第29節ASモナコ戦で3失点を許して完敗するなど、不本意な移籍1年目となる。
移籍2年目の2022-23シーズンはナバスとのポジション争いを制し、正守護神としての待遇を受けるようになる。1月にはライバルのナバスが移籍したことで、チーム内での信頼をさらに得ることになる。しかし、2023年2月のCLラウンド16バイエルン戦では、自らのミスからキングスレー・コマンのゴールを許してしまう。3月の2nd legでもあっさり2失点を喫し、チームは敗退。その後もリーグ・アンでは格下のチーム相手にミスから失点を喫する不安定なプレーが見られ、メディアやサポーターから非難を浴びる。リーグ戦では全試合でゴールを守ったが、評価はさほど高いものではなかった。
2023-24シーズンも正GKを任されたものの、リーグ・アン第13節のASモナコ戦では信じられないミスから南野拓実にゴールを決められ、第12節のル・アーブル戦では前半10分で退場になるなど不安定なプレーが目立ち、地元メディアやファンから正GKを変えるべきという論調がなされるようになる。
イタリア代表
2014年からU-15イタリア代表としてプレーしており、2015年5月にはUEFA U-17欧州選手権2015にU-17イタリア代表の正GKとして出場。また、2015年には飛び級としてU-21代表に選出されるようになり、2017年6月に開催されたUEFA U-21欧州選手権でも18歳ながら正GKを務め、イタリアのベスト4入りに貢献する。
イタリア代表には、2016年8月に初めて招集され、9月1日のフランスとの親善試合でイタリア代表史上3番目の若さとなる17歳6か月でのフル代表デビューを果たす。
ロシアワールドカップ欧州予選敗退を受けてブッフォンが代表を引退。ブッフォンからも自身の後継者として指名され、ロベルト・マンチーニ監督が新たに就任したことにより、イタリア代表の正GKとして定着するようになる。2019年からのEURO2020予選では、5試合に出場しイタリアの全勝での予選突破に貢献する。
2021年6月に開催されたEURO2020でも正守護神を務め、グループステージを圧倒的な内容で突破したチームを最後尾で支える。準々決勝のベルギー戦では、ロメル・ルカク、ケヴィン・デ・ブライネのシュートを片腕1本で止めるビッグセーブを見せる。さらに、PK戦までもつれこむ死闘となったスペイン戦ではアルバロ・モラタのシュートを完璧に止め、イタリアの2大会ぶりの決勝進出に貢献。またもPK戦での決着となった決勝のイングランド戦でも4人目のジェイドン・サンチョと5人目のブカヨ・サカのPKを見事ストップ。22歳とは思えない歴戦の勇士のような佇まいでイタリアを53年ぶりとなるEURO優勝に導き、大会の最優秀選手に選出される。ちなみにサカのPKを止めた際に喜ばなかったのは、勝ったことに気付いていなかったからとのこと。
2021年10月6日のUEFAネーションズリーグ2020-21準決勝スペイン戦でサン・シーロへ凱旋するが、PSG移籍に批判的な一部のサポーターから大ブーイングを浴びてしまう。試合もスペインに2失点を喫して敗れ、イタリア代表の連続無敗記録は37試合で途絶える。さらに、2022 FIFAワールドカップ欧州予選プレーオフ準決勝の北マケドニア戦では、試合終了間際に失点を許し、本大会への出場権を逃してしまう。
個人成績
シーズン | 国 | クラブ | リーグ | 試合 | 得点 |
---|---|---|---|---|---|
2015-16 | ACミラン | セリエA | 30 | 0 | |
2016-17 | ACミラン | セリエA | 38 | 0 | |
2017-18 | ACミラン | セリエA | 38 | 0 | |
2018-19 | ACミラン | セリエA | 36 | 0 | |
2019-20 | ACミラン | セリエA | 36 | 0 | |
2020-21 | ACミラン | セリエA | 37 | 0 | |
2021-22 | パリ・サンジェルマン | リーグ・アン | 17 | 0 | |
2022-23 | パリ・サンジェルマン | リーグ・アン | 38 | 0 | |
2023-24 | パリ・サンジェルマン | リーグ・アン |
個人タイトル
プレースタイル
ゴールキーパーとして、恵まれた体格と規格外のフィジカルを有しており、それでいて俊敏さも持ち合わせており、抜群の反応と果敢な飛び出しでゴールを守る。メンタルの強さも目を見張るものがあり、契約問題でサポーターから叩かれていた時期でもピッチ上では堂々とした振る舞いを見せていた。乗っているときはゾーンに入ったかのようにあらゆるシュートをセーブしてしまう。一方、セーブしたボールが相手に渡ってしまう傾向があるのが欠点。
前かがみな姿勢でシュートに対して準備するのが特徴的で、その姿勢でセービングすることによって斜め前に出ることができる。また、準備の時に小刻みにステップを踏んでおり、これによってシュートのタイミングを図っている。
エデルソンなどと比べると足元の技術が特別高いというわけではないが、ビルドアップでも貢献できるタイプであり、冷静にフリーの選手を探してパスを付けることができる。
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関連項目
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