ジュード・ベリンガム(Jude Victor William Bellingham, 2003年6月29日 - )とは、イングランド出身のサッカー選手である。
スペイン・ラ・リーガのレアル・マドリード所属。サッカーイングランド代表。
ポジションはMF(センターハーフ、トップ下)。186cm75kg。利き足は右足。
概要
イングランド・ウェストミッドランズ出身。16歳38日という若さでプロデビュー。10代の頃からすでにトップレベルでプレーしており、攻撃と守備をどちらも高いレベルでプレーでき、文字通り何でもこなせてしまう万能型MF。
「イングランドの至宝」として早くから注目されてきた超逸材であり、プロデビューしたクラブであるバーミンガム・シティFCは、17歳でボルシア・ドルトムントに移籍した際に、わずか1シーズンしかトップチームでプレーしていなかったにも関わらず彼が付けていた背番号「22」を永久欠番に決めたという逸話がある。
2022-23シーズンにはブンデスリーガの年間最優秀選手に選ばれるほどの活躍を見せる。2023年6月にはスペインの名門レアル・マドリードへ移籍。レアル・マドリードでも加入してすぐにチームの中心となり、センセーショナルな活躍を見せ、2023-24シーズンは移籍1年目にしてラ・リーガ、UEFAチャンピオンズリーグの二冠獲得の立役者となる。
イングランド代表には2020年11月に17歳の若さで初選出され、2022 FIFAワールドカップでは全試合にスタメンで出場するなど中心選手として活躍。EURO2024では背番号10を背負って出場している。
高い身体能力と圧倒的な走力に加え、攻撃面で違いを生み出せる非凡な才能を兼ね備えており、チームにバランスをもたらすことを得意としている。レアル・マドリードに移籍してからはより攻撃的なポジションで起用される機会が増え、得点力にも磨きがかかっている。
現在では、その活躍ぶりから世界中が注目を集めている選手であり、今後サッカー界をもっと盛り上げてくれる存在になっていくと期待されている。
経歴
生い立ち
イングランドの中部バーミンガムから西に約20km程度の場所に位置するウェストミッドランズのダドリー地区で産声を上げる。父親のマーク・ベリンガムは地元の警察官として働きながら、ノン・リーグ(イングランドのアマチュアリーグ)と呼ばれるセミプロリーグでサッカー選手として活躍。
4歳の頃、父の友人が経営するスポーツクラブに顔を出した際、このクラブの指導者はベリンガム少年の類い稀な運動神経に驚き、父がサッカー選手だったことからサッカーボールをプレゼントされる。もっとも、当時のベリンガムは格闘技に熱中しておりサッカーボールにあまり興味を示さなかったという。その後、父親とそのスポーツクラブの経営者が地元にサッカークラブを作り、このサッカークラブでの活動がきっかけでベリンガム少年はサッカーにのめり込むようになっていった。当時からすでに体格に恵まれており、次第にサッカー選手としての才能を開花させ始める。
2010年、8歳のときにバーミンガム・シティFCのアカデミーに入団。プロサッカー選手を目指したキャリアをスタートさせると、着実に実力を付けていき、驚くべきスピードで成長を遂げていく。14歳のときに飛び級でU-18のチームに昇格すると、15歳のときには異例ともいうべきU-23チームへ超飛び級での加入を果たす。すると、デビュー戦でいきなり決勝ゴールを決める活躍を見せ、イギリスの『フォーフォーツー誌』が紹介するイギリスで最もエキサイティングな50人のティーンエイジャーに選出されるほどの評価を得る。バーミンガムの神童の存在は、イングランドのみならず国外にビッグクラブからも注目を受けるまでになる。
バーミンガム
2019年7月、EFLチャンピオンシップに在籍するトップチームと16歳にしてプロ契約を結ぶ。背番号は22。プレシーズンの親善試合で出場機会を得ると、ここでも首脳陣の期待を上回るプレーを披露。そして、8月6日のEFLカップ1回戦のボーンマス戦においてスタメンに抜擢され、プロデビューを飾る。当時の年齢は16歳38日でバーミンガムのクラブ最年少出場記録を樹立。さらに8月31日のチャンピオンシップ第6節ストーク・シティ戦では前半28分に投入されると、後半21分に決勝ゴールとなるプロ初ゴールを決める。ちなみに16歳53日でのゴールはクラブの最年少得点記録となった。一気にワンダーキッドとしてサポーターの心を鷲掴みにすると、続く第7節チャールトン・アスレティック戦で初スタメンを飾ると、2試合連続ゴールを決める。大きなインパクトを残したことでその後は中盤センターや右サイドの2列目でスタメンに定着。主力としてリーグ戦41試合に出場し、4ゴール2アシストを記録。シーズン終了後には、リーグの年間最優秀若手選手賞に選出される。
シーズン終了後、バーミンガムがプレミアリーグに昇格できなかったこともあり、ベリンガム獲得のオファーはさらに過熱。クラブは売却を決断するが、このときベリンガムが背負っていた背番号「22」を永久欠番にするという異例の決定を下している。
ドルトムント
2020年7月20日、ドイツ・ブンデスリーガのボルシア・ドルトムントと2025年までの5年契約を締結。移籍金は約42億円とされている。背番号はバーミンガム時代と同じ「22」。
17歳ながらも鳴り物入りでドイツへ渡ったベリンガムは、早々に定位置を掴むと、9月5日のDFBポカール1回戦デュースブルク戦でスタメンに抜擢され、公式戦デビューを飾る。この試合で早速移籍後初ゴールを決める活躍を見せ、ブンデスリーガ開幕戦でもスタメンで出場。アクセル・ヴィツェルとの中盤のコンビで攻撃的な役割を担い、ドイツでもそのポテンシャルの高さを発揮。10月5日にはUEFAチャンピオンズリーグ初出場を果たし、大会におけるイングランド人選手の最年少出場記録を塗り替える。また、2021年4月14日のCL準々決勝2nd legマンチェスター・シティ戦では史上2番目の若さでのゴールを決める。結局ブンデスリーガでの1年目は29試合に出場、5月13日のDFBポカール決勝RBライプツィヒ戦ではクラブの4シーズンぶりとなるタイトル獲得に貢献し、自身にとってもキャリア初のタイトル獲得となった。
2年目となる2021-22シーズンには、すでにチームには欠かせない不動の中心選手となっていた。本職である中盤センターのみならず二列目の右サイドや左サイドでもプレーするユーティリティ性を披露。チームはエースのアーリング・ハーランドがシーズンの大半を怪我で欠場したこともあってバイエルン・ミュンヘンの独走を許し、無冠に終わるが、公式戦44試合6ゴール14アシストを記録。ゴール前に飛び出し、チャンスメイクするセンスにさらに磨きがかかった。シーズン終了後には欧州のビッグクラブへの移籍の噂が浮上するが、ドルトムント残留を決断する。
2022-23シーズンは開幕から安定したパフォーマンスを披露し、すでにチームの中でも特別な存在となっていた。2022 FIFAワールドカップによる中断期間前のブンデスリーガ第15節時点では全試合にフル出場して3ゴール2アシストを記録。さらにCLではグループステージ開幕戦から4試合連続でのゴールをマーク。この活躍によってドルトムントを2シーズンぶりの決勝トーナメント進出に導いている。後半戦は4-1-4-1のインサイドハーフが定位置となり、よりゴールに直結するプレーが増える。チームは破竹の11連勝を記録するなど猛烈な追い上げを見せ、最終節を前に首位に立つが、自身は怪我で欠場した最終節でよもやの勝ち点での逆転を許し、あと一歩のところでリーグ優勝を逃す。このシーズンでは公式戦14ゴールを決めるなど、得点力が飛躍。そしてこれまで以上に移籍話が頻繁に取り沙汰され、いよいよ次のステップへと挑戦することを決断するのだった。
レアル・マドリード
2023年6月14日、スペイン・ラ・リーガの名門レアル・マドリードへの移籍が発表される。移籍金は1億300万ユーロ(約155億円)と報じられ、契約期間は6年の長期契約。背番号はクラブのレジェンドであるジネディーヌ・ジダンが現役時代に付けていた「5」。
8月12日、2023-24シーズンラ・リーガ開幕戦アスレティック・ビルバオ戦にスタメンで起用され公式戦でのデビューを飾ると、前半36分に初ゴールを決め、早速チームの勝利に貢献。8月20日の第2節アルメリア戦でも2試合連続ゴールとなる2ゴールと1アシストと3得点全てに絡むの活躍を見せ、8月25日の第3節セルタ戦でも3試合連続となる決勝ゴールを決める。カルロ・アンチェロッティ監督にはダイヤモンド型の中盤のトップ下で起用され、これまで以上に得点に関与する機会が増え、早くもチームの中心として存在感を発揮。10月7日、第9節オサスナ戦でも2ゴールを決め、リーグ戦で8試合8得点、公式戦でも10試合10得点とクリスティアーノ・ロナウド以来の得点率を記録。エル・クラシコ初出場となった10月28日の第11節FCバルセロナ戦では理不尽なスーパーミドルを含む2ゴールの圧巻の活躍で逆転勝利をもたらし、クラシコの主役となり世界中を震撼させる。同時にリーグ戦10試合目で10ゴールに到達。シーズン折り返し時点ですでにブンデスリーガ時代3シーズンでの総得点を超えてしまう。後半戦になると、怪我や2試合の出場停止もあってゴールのペースは落ちるが、2024年2月10日第24節のジローナFCとの上位対決では2ゴールで勝利に貢献。4月21日の第32節ホームのクラシコでは、試合終了間際に劇的な決勝ゴールを決め、前回に続いてクラシコの主役となる。古巣ボルシア・ドルトムントとの対戦となった6月1日のCL決勝では、ヴィニシウス・ジュニオールの2点目をアシストし、自身初のCL制覇を経験。23得点11アシストという成績を残し、二冠獲得にも貢献した最高の移籍1年目となった。
2024-25シーズンは開幕直後の2024年8月23日に練習中に足首を負傷したことが発表され、1か月近く戦線離脱となる。トニ・クロースの引退、キリアン・エムバペの加入の影響によって前シーズンよりも低い位置での起用となり、その分ゴールから遠ざかることになる。11月9日、ラ・リーグ第13節オサスナ戦で公式戦21試合目にしてシーズン初ゴールを決める。この試合以降、1列前のトップ下で起用されるようになり、眠っていた得点力が一気に蘇る。オサスナ戦から12月14日の第17節ラージョ・バジェカーノ戦までリーガでは6試合連続ゴールを記録。2025年最初の試合となった1月3日の第12節バレンシアCF戦では試合終了間際に値千金の決勝ゴールを決め、チームを首位に押し上げる。
イングランド代表
各年代のイングランド代表に選出されており、13歳のときに飛び級でU-15イングランド代表に選出されている。2018年にはU-15代表のキャプテンを務め、所属していたバーミンガム・シティのアカデミー選手に贈られる特別功労賞を受賞。
2020年にはU-17欧州選手権出場を目指すU-17イングランド代表に選出されるが、新型コロナウィルス感染拡大によって大会は中止になる。
2020年11月、ドルトムントでの活躍が認められ、イングランドのフル代表に初選出。11月12日のアイルランド戦で後半途中にメイソン・マウントとの交代で出場し、イングランド史上3番目の若さとなる17歳136日でフル代表デビューを飾る。
2021年6月に開催されたEURO2020本大会のメンバーにも選出。グループステージ初戦のクロアチア戦で途中出場し、17歳349日でのEURO史上最年少出場を果たす。この大会ではレギュラー確保までには至らなかったものの、3試合に途中出場し、準優勝したチームの一員として貴重な経験を積む。
2022年6月のUEFAネーションズリーグでは4試合のうち3試合にスタメンで起用され、これを境にガレス・サウスゲート監督の信頼を得るようになり、定位置を確保するようになる。
2022年11月にカタールで開催された2022 FIFAワールドカップではチーム最年少としてメンバーに選出。開幕戦のイラン戦でスタメンとして出場すると、チームの先制ゴールを決める活躍で勝利に貢献。その後も準々決勝までの5試合全てにスタメンで出場。19歳ながらも中心選手として質の高いプレーを見せたことで各国のメディアや関係者から高く評価される。
2024年6月にドイツで開催されたEURO2024では背番号10を背負って出場。初戦のセルビア戦では前半13分に決勝ゴールを決める。その後は低調なチームの中でレアル・マドリードで見せるようなパフォーマンスを披露できずに批判を受けるが、ラウンド16のスロバキア戦では試合終了直前に敗色濃厚となったチームを救うバイシクルシュートを決め、今大会2度目のMOMに選出される。決勝のスペイン戦では正確なポストプレーでコール・パーマーの同点ゴールをアシスト。しかし、この試合に敗れ準優勝に終わると、悔しさのあまりクーラーボックスを蹴り飛ばす姿が映し出される。
個人成績
シーズン | 国 | クラブ | リーグ | 試合 | 得点 |
---|---|---|---|---|---|
2019-20 | バーミンガム・シティ | EFLチャンピオンシップ | 41 | 4 | |
2020-21 | ドルトムント | ブンデスリーガ | 29 | 1 | |
2021-22 | ドルトムント | ブンデスリーガ | 32 | 3 | |
2022-23 | ドルトムント | ブンデスリーガ | 31 | 8 | |
2023-24 | レアル・マドリード | ラ・リーガ | 28 | 19 | |
2024-25 | レアル・マドリード | ラ・リーガ |
個人タイトル
プレースタイル
いわゆるボックス・トゥ・ボックスタイプのセントラル・ミッドフィルダーで中盤としての守備力、攻撃力どちらも高いレベルでプレーすることができる万能型のプレイヤーである。多才で予測不可能な選手であり、いかなるポジションで起用されても高い機動力を発揮できる。
素早いプレスからのボール奪取、高い空間能力と視野の広さから繰り出される、スルーパスや自陣から相手陣内へ一気に飛ばすことができる縦パスなどのチャンスメイク・多彩なパスセンス、ボールキープ力からの細かいタッチから繰り出される巧みなドリブルテクニック、そして、縦横無尽にピッチを駆け回る豊富な運動量と現代サッカーの中盤の選手が求められる能力をいずれもハイレベルで有している。
ボリバレントな選手であることも大きな特徴で、密集したエリアでのプレーを苦にしないほどの高い技術を備えているため中でも外でも問題なくプレーできる。ボールを受ければ、短いパスと相手の守備を切り裂く深いパスを使い分ける能力に長け、ギリギリのところで最適解を見出して状況を切り抜ける。またフットワークも軽く、相手マーカーの逆を突くターンやフェイクも得意とする。
守備面では、ベリンガムはパスコースを予測して、パスを奪い取るインターセプトが得意というよりも、プレスをかけてファウルにならない間合いから足を出してボールを奪取することが得意としている。
スピード不足が弱点ではあるが、スプリントの回数とポジショニングでカバーしているためさほど大きな穴になっていない。
エピソード・人物
- 自身の中盤での多才さと幅広いスキルを表す背番号10番、8番、4番の数字を足した背番号22番を好んでいる。レアル・マドリードでは既にアントニオ・リュディガーが22番であったこともあり5番を与えられたが、かつて同じ番号を着用したジネディーヌ・ジダンへの敬意を示しながらも「背番号5をつけていても、心の中ではまだ22番」と語っている。
- 前述のとおり、父親のマーク・ベリンガムは警察官を本職としながらノンリーグ(セミプロ)としてプレーしており、キャリア通算700ゴールというとてつもない記録を持っており、バーミンガムでは知らない人はいないという伝説的な選手だった。
- 2歳年下の弟であるジョブ・ベリンガムもU-18イングランド代表に選出されるなど将来を嘱望されている有望な若手で、兄と同じくバーミンガム・シティでキャリアをスタートさせている。
- 試合で着用しているソックスにわざわざ穴を開けている。理由は切れ目や穴を空けることでそれを緩和し、筋肉の緊張をほぐして痛みを防ぐことができ、ケガの防止にも役立つからとのこと。
- プロ初ゴールを決めた際、膝から芝に滑るパフォーマンスをしようとしたが、思ったよりも芝が滑らず前のめりになってしまい、前のめりでハイハイするようなかっこ悪いポーズになってしまう。
- 2024年3月2日のラ・リーガ第27節バレンシアCF戦の終了間際に決勝点を決めたかに思われたが、主審がゴールイン前に試合終了の笛を吹いたことで無効になってしまう。この不可解なジャッジに対し、主審に対して「It's a fucking goal」と暴言を吐いたことで退場となり、2試合の出場停止処分となる。
出場停止明けとなった第30節アスレティック・ビルバオ戦ではノーファウルの判定に対し、淡々とした表情で“お口チャック”のジェスチャーを披露。
関連項目
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