ジープ(Jeep®)とは、アメリカ、クライスラー(2021年現在ステランティスN.V.)の四輪駆動車ブランドである。
概要
英国ランドローバーと並び、最も古いクロスカントリー・ビークル、クロスカントリーカー、SUVと言える。
第二次世界大戦時、軍事車両として開発された小型四輪駆動車が始祖になる。連合軍の軍用車両として砂漠や熱帯地域の偵察や輸送などに広く使用され、高い耐久性と操作性、そしてメンテナンス性の高さから大戦後に軍用・民生用を問わず同種の四輪駆動車が世界的に広まるきっかけとなった。
アメリカの小型車メーカーであるアメリカン・バンタム社から最初のプロトタイプとして登場したオリジナルのジープから、戦中にウィリス・オーバーランド社、フォード社によって量産されたウィリスMB・フォードGPWに発展。そして戦後、現在に至るまで。その優れた設計と名声からライセンス生産、コピー問わず世界中でデザイン、コンセプトなど模倣したジープの亜種が多数製作されている。
日本でも三菱によって長年ライセンス生産され、昭和の漫画で「ジープ」は頑丈な車の代名詞でもあった。ジープをベースにした消防車を主人公とした絵本「しょうぼうじどうしゃじぷた」は現代に至るも読み継がれている。なお、トヨタもジープを作っていたが、これは戦時中にアメリカン・バンタムのジープを鹵獲した陸軍の依頼でトヨタがリバースエンジニアリング(要するにバラしてコピー品を作ること)をしたものの系譜である。後にウィリス社が「ジープ」の名を商標として登録していたのに引っかかり、名前を変えてトヨタ・ランドクルーザーとなる。
Jeepという呼称はGeneral Purpose(万能)、Government-use(政府用)の“G”とホイールベース 80インチの車両を表す識別符号の“P”から来た符号“GP”から「ジープ」と命名された。もしくは、漫画『ポパイ』に登場する「ユージン・ザ・ジープ」からとったという説もある、少なくとも1941年にはこの呼称が使われ始めていたらしい。
上記のアメリカン・バンタムの手になるジープがオリジナルであるが、弱小であった同社の生産能力に疑問を持ったアメリカ陸軍はウィリス社とフォード社に設計図を公開。三社での増加試作の結果、ウィリス仕様が制式採用となり、ウィリスとフォードが量産を担当することになった。本格量産から外されてしまったアメリカン・バンタムはトラックのような大型軍用車を生産するようになり、戦後には哀れにも倒産してしまった。
戦争が終わった後、ウィリス社は戦時中に「ジープ」の名を商標登録していたこともあって、ジープの本家本元を名乗り、民生向けに市販。これが成功することになる。しかし、やがてウィリスはカイザーという別の会社に買収され「カイザー・ジープ」社となる。カイザー・ジープ社は今度はアメリカン・モーターズ(AMC)に買収され、それが1987年にアメリカ自動車メーカービッグスリーの一角であったクライスラーに吸収された。
ところが、クライスラーも一時メルセデス・ベンツと一緒になってダイムラー・クライスラーになったりしたが長続きせず、投資会社の傘下になって倒産を経験したりして、結局イタリアのフィアットグループの傘下に収まる。これがFCAである。ところが、2021年にいたりFCAはフランスのPSA(プジョー、シトロエンなどのメーカー)と合併。ステランティスN.V.となった。長い説明になったが、2021年現在は「本家のジープ」を売っているのはこの会社ということになる。
ジープは故障が多い?
イギリスの保険会社ワランティ・ダイレクト社が行った調査により、2007年度「悪路で故障しやすいクルマ」ワースト1位であることが判明した。故障しやすいブランドランキングは、1位ジープ、2位シボレー(デーウ)、3位ジャガー、4位キア、5位スバル、6位ボルボ、7位スズキ、8位クライスラー、9位ホンダ、10位日産、・・・となっている。
イギリスにおける『悪路』という特殊な状況下での分母の曖昧な調査であり、なによりイギリス人の行った調査であり眉つばな部分も拭いきれないが、それにしてもいちばん丈夫そうな車がワースト1とは意外な結果である。
2015年製のグランドチェロキーにギアを「P」に入れても「N」に入るというシフトに欠陥が発覚、300件の事故が起きており、FCA側はリコールの通知を出していた。2016年6月に俳優のアントン・イエルチェン氏の所有するグランドチェロキーが傾斜で突然動き出し、イエルチェン氏本人が車と柵に挟まれて死亡するという痛ましい事故が起きた。ギアを調査した所「N」になっていたという。リコールの通知がされたのは5月でFCAが修理を始めたのは6月下旬であり、惜しくもイエルチェン氏の死亡事故が起きた直後であった。
主なモデル
関連動画
関連商品
外部リンク
関連項目
- 2
- 0pt