スカーレット隊(笑)とはOVA「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」第4話に登場する地球連邦軍所属の出落ち部隊である。
スカーレット隊、発進!
スカーレット隊はペガサス級強襲揚陸艦グレイファントムを母艦とする地球連邦軍の部隊である。
UC0079年12月25日、ガンダムNT-1(アレックス)を受領するためサイド6のコロニー「リボー」に駐留中、アレックスを秘蔵中のコロニー内の連邦軍施設がジオン軍のサイクロプス隊の駆るケンプファーによる襲撃を受けた事を受け、グレイファントムからジム・スナイパーⅡや量産型ガンキャノン、ジムコマンドを発進させてケンプファー撃破を試みるも、
発進直後に片っ端から機体を撃破され、たった数分間でケンプファー1機を相手に全滅するという憂き目を見た。
いくら相手が叩き上げのサイクロプス隊に所属するエースパイロットとはいえ、あまりにも情けないやられっぷりと、ジム・スナイパーⅡや量産型ガンキャノンといった最新鋭機を有しておきながら全滅という酷い有様から、ガンダムファンからは伝説の出落ち部隊、スカーレット隊(笑)などと言われるようになった。
スカーレット隊は無能部隊なのか?
上記のように最新鋭機を有しておきながら、ケンプファー1機に全滅させられてしまったスカーレット隊。無能部隊という意見もあるが、果たして本当にそうなのだろうか。
劇中での活躍はさておき、同隊はそもそも「リボー」にてニュータイプ専用MS「ガンダムNT-1アレックス(以下アレックス)」を受領する予定で、母艦はサラミスやマゼランではなくグレイファントムだった。
同艦は言わずと知れたガンダムタイプ搭載艦のペガサス級強襲揚陸艦の5番艦にあたる。(同型艦にはガンダム6号機マドロックを搭載していたブランリヴァルがある)したがって受領後は性能テストではなく、速やかにホワイトベースに同機体を引き渡す為、前線への配備が行われるものだったと思われる。
加えて一年戦争中では傑作機と言われる量産型ガンキャノンや連邦軍最高の量産型MSジム・スナイパーを複数所有していることから、同隊は一戦力としても軍内部の評価は決して低くなかったと考えられる。
では、それなのに何故あっという間に全滅してしまったのだろうか?
- 終戦を控えた地球連邦軍の思惑
サイド6は中立を宣言しているコロニーである。当然コロニー内や領宙内での戦闘は禁じられているが、「ポケットの中の戦争」の劇中では普通にコロニー内外で戦闘が行われ、やや形骸化している側面を持つ。しかし、ルビコン計画が行われたこの大戦末期の戦局は地球連邦軍の優勢が明らかとなっており、終戦までは時間の問題であると目されていた。つまり「リボー」で戦っているこの時点での連邦軍は既に勝ち戦も同然であり、コロニー内での条約に配慮する余裕があった。
中立地帯での戦闘は南極条約違反であり、サイド6の自治体から反感を買うことを意味する。間近に迫っているであろう休戦条約をジオンよりも有利に締結したい為、中立地帯での紛争などというスキャンダルは、先々の外交上不利になる可能性があるのは想像に難くない。
実際、「リボー」内部におけるMS戦はこの時が初めてではなく、「ポケットの中の戦争」第1話の段階でザク、ドムが侵入したためジムが出撃し戦闘を行っているが、その結果、住民の車両がMSに踏みつぶされたり、住宅街に撃破されたジムが倒れこんだり家屋に流れ弾が直撃する等の被害が出ている。またこの時はジムも応戦して発砲していたが、そのせいでザクの背後のガスタンクを誤射し大爆発を引き起こしている。したがって、ケンプファーが強襲する以前から既に連邦軍は「リボー」側から文句をつけられていた可能性がある。
その他にも、戦闘に限らず中立地帯でMSを運用すること自体に考慮したのか、コロニー内での戦闘で乗り捨てられたザクやジムは武装のみが回収されただけで抜本的な回収がなされずその場に放置されていたり、ケンプファーが行動を開始しても当初連邦側は基地周辺に近づくギリギリまでスカーレット隊を発進させず、リボーの治安部隊であるリーア軍の所有するプチモビや戦闘車両に単独で迎撃させるよう指示するなどといったシーンも見られた。
一年戦争は終局に向かいつつあり、かつこの戦闘では極力リボーの批判の矛先を避けようとする思惑もあり、スカーレット隊はむやみに市街地やコロニーのミラー上を移動するケンプファーに対して、発砲出来ない状況だったのかもしれない。実際、スカーレット隊がケンプファーとの戦闘で発砲する描写は一切無い。
またグレイファントムは最新鋭機を多数有する事から、配属されたパイロットもまた練度の高いエースなのではないかとする見向きもあるが、ここにも疑問が生じる。
というのも、グレイファントムの就役は一年戦争末期である説が有力(ホワイトベース以下にロールアウトし実際に就役したペガサス級は本艦以外にサラブレッドとトロイホースがあるが何れも大戦末期にジャブローから発進している)であり、多くのベテラン乗組員を欠いていたホワイトベース隊と同様に、決して練度の高いクルーが多く乗艦していたとは考えにくい。
実際、同じ後期型ペガサス級で最終的に星一号作戦に参加する事を目指す実戦を想定していたサラブレッド(こちらもガンダムを2機受領している)の艦長に、キルスティン・ロンバート中佐のようなベテランが着任していたのに対し、本艦はそのペガサス級でありながら大戦末期という当時の情勢にもかかわらず、チェンバロ作戦(ソロモン攻略戦)に参加することなく"アレックスを中立地帯で秘密裏に受領する"という、比較的安全な任務に就いていたという事実があり、そういった艦に果たしてベテランクルーを配属させていたのか?という疑問が生じる。
またグレイファントムは連邦軍の極秘計画G-4計画を実施するG-4部隊旗下の戦艦であるが、アレックスのテストパイロットはG-4部隊のクリスチーナ・マッケンジー中尉であり、士官学校を首席で卒業するエリートではあるが、彼女にしても入隊1年にも満たない新米であった。テストパイロットはフィジカルが重要であり、かつ天才的な素質を持つ彼女は適任ではあったが、彼女はコンピューター技師が本職で実戦経験が十分なパイロットではなく、そういった人物が回されないという事情とも取れ、スカーレット隊も練度の未熟なパイロットが少なからず居た可能性は否定できない。
大戦後期においては人材不足が両軍ともに深刻だということは「機動戦士ガンダム」の冒頭ナレーションでの言及もあり、実際ジオン軍のサイクロプス隊を支援していたグラナダ艦隊も、バーナード・ワイズマン伍長といった新米兵士にザクⅡ改という最新鋭機を与えていたのが実情であった。
また現場を指揮しておりグレイファントムに外部から指示を出していたG-4部隊の責任者スチュアート少佐に関しても、後述するこの戦闘の結果及び、その後の第6話でアレックスのパイロットであるマッケンジー中尉にリボー市民被害を考慮に入れない指示を出して背かれるなど、無能的な部分が強調された人物であり、特に後者の件を鑑みると、このスカーレット隊の戦闘に関しても実はスチュアート少佐から「どんどん発砲していけ!」という指示があったものの、現場の各々が「町中で戦闘はまずい」と発砲を独自に躊躇していたのではないか?と疑う余地がある程、無能という見向きのある人物であった。
しかしながら、それが結果的に部隊の全滅を呼び込み、更に撃破されたモビルスーツが市街地に墜落し地元警察によれば100名以上が死亡、更に大規模な停電も引き起こしているなど、完全に裏目に出てしまう皮肉な結果となった。
また、ケンプファーという機体がそもそも実弾兵装主体でステルス性の高い高機動型モビルスーツであり、加えて夜間の戦闘だったこと、何よりパイロットであるミーシャの技量もあり、捕捉すること自体が困難だった可能性がある。実際スカーレット隊のモビルスーツはほとんど背面からショットガンやバズーカ、シュツルム・ファウストを撃ち込まれており、相対する間もなくケンプファーにサクサク撃墜されている。 - 余裕のなくなったジオン公国の思惑
これに対し、敗色濃厚であるジオン軍は、星一号作戦以降も残った戦局で戦果を上げようと必死であり、そうした中の一つであるルビコン計画を指揮した当時のグラナダの軍部は、キリング中佐が暗躍し実質的に権力を掌握していた。
彼はギレン・ザビ総帥を心酔する過激派閥であるが、一方で対抗勢力であるグラナダの司令官キシリア・ザビ少将の配下にあった。しかし、この時期のキシリア少将は時期的に既にア・バオア・クー方面へ赴任しグラナダに不在となっており、当時のグラナダは彼の根回しが効きやすい環境下だったと推察できる。
このような状況下のジオン軍の標的となったアレックスは、強奪ないし破壊することが最優先とされた。いちいち条約に構っていられるほどジオン軍に余裕は無く、更にキリング中佐という過激な人物によって主導された作戦であるために、市街地のど真ん中にある偽装施設から町中を堂々と横断しアレックスを強襲、最終的にコロニー隔壁に穴をあけて宙域に脱出という非常に強引な作戦が執られたものと思われる。その上で、迎撃してきた相手が中立地帯の治安部隊であるリーア軍だろうとスカーレット隊だろうと、お構いなしに攻撃を行っている。
ルビコン計画が失敗に終わるとキリング中佐はグラナダの司令官を粛正して基地の全権を掌握。ケンプファー強襲の保険として核攻撃が控えているなど、連邦軍との思惑とは全く正反対であったことが伺える。
以上の理由などからスカーレット隊は一方的にやられてしまったのであって、もしも不利な状況に置かれなければ戦況はまた違っただろう……と、そんな想像も可能である。とはいえ、公式的な見解ではないので各々が持つ自論を尊重してほしい。
なお、ケンプファー相手に何も手出しが出来ずに全滅したスカーレット隊だが、この戦闘で貴重な弾を多く消費してしまったことが響き、ケンプファーは直後に交戦したアレックスにあえなく撃破されてしまった。スカーレット隊は、アレックスのケンプファー撃破を間接的に支援したと言えるかもしれない。
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