スコッチ・ウイスキーとは、イギリスのスコットランド州で生産されるウイスキーの総称である。
概要
スコットランドで作られることはもちろんのこと、下記のような定義がある。
- スコットランドの蒸留所でもろみ(ウォッシュ)を醸造すること。
- 上記の通り醸造したもろみを蒸留すること。
- 蒸留した原酒はアルコール度数が94.8度以下であること。
- 700L以下のオーク(カシやナラの仲間)で作られた木樽で熟成すること。
- スコットランドで3年以上熟成させること。
- イギリスの物品税倉庫もしくは許可された場所で熟成すること。
- 水、カラメル着色料以外の添加物を入れないこと。
- ボトリング時にアルコール度数が40度以上であること。
スコットランドといえども、地域や蒸留所、さらには使用するモルトや樽によって香りも味が異なり、地域においては、ハイランド、ローランド、スペイサイド、アイラ島、アイランズ(アイラ島以外の島嶼群)、キャンベルタウンという地域ごとに、異なる傾向がある。
また、日本のウイスキー(ジャパニーズ・ウイスキー)においても、ニッカウヰスキーの創設者でもある竹鶴政孝がいくつかの蒸留所で学んだこともあり、スコッチ・ウイスキーの影響を多大に受けている。
歴史
スコットランドではアイルランドからウイスキーの技術が伝搬し、二条大麦の醸造酒を蒸留して生産、愛飲されていた。当時は樽で熟成せず、蒸留したてのウイスキーを飲んでいた。ある意味ウォッカやジンなどに近かった。
しかし、イングランドに吸収されて連合王国になってからは多額の税金が課せられたため、多くの蒸留所は密造酒を作り、発覚を恐れて倉庫に隠していた。
それによって樽からの成分が原酒に染み込んで熟成され、現在のウイスキーの姿の原型となった。
19世紀前半に、時の国王ジョージ4世が、密造であったグレンリベットを愛飲したこともあり、酒税法が改正されてウイスキーは再び表舞台に立つことになった。さらにはグレンリベットを筆頭として、多くの蒸留所が政府公認となった。
その後、従来の単式蒸留器(ポットスチル)とは異なる連続式蒸留器が発明され、トウモロコシなどを原料にしたグレーン・ウイスキーが製造されると、安定して大量に製造できる目的で、従来のモルト・ウイスキーとブレンドしたブレンデッド・ウイスキーが19世紀後半に誕生した。
このブレンデッドスコッチウイスキーが世界中に普及していった。日本では岩倉具視の使節団を通じ、オールドパーが明治天皇に献上された。
しかし20世紀に入ると、大量生産を続けてきた蒸留所が、世界恐慌とアメリカの禁酒法によって大きな打撃を受け、ローランドやキャンベルタウンの蒸留所はほとんどが倒産するに至った。
その後第二次大戦になると、禁酒法が廃止されたアメリカを中心にスコッチ・ウイスキーが輸出され、愛飲したアメリカ軍の兵士を通じて再び隆盛することとなった。
20世紀後半からは、地酒の傾向が強いシングル・モルト・ウイスキーが着目されるようになり、先鞭をつけたグレンフィディックを発端に、世界中でシングルモルトが活況となっている。
主な地域
スコッチ・ウイスキーにおいては下記の地域が有名である。
- ハイランド:ダンディー ・グリーノックの想定線よりも北部を指す。もっとも蒸留所の多い地域である。非常に多いために、東西南北で分けられることもある。
- スペイサイド:ハイランド地方の中でもスペイ川流域の地域。特に蒸留所が集中している。青リンゴやナシのようなさわやかさがメイン。
- アイラ島:スコットランド西部のアイラ島にある蒸留所。独特のヨードや正露丸を思わせるピート香が有名。
- アイランズ:アイラ島を除く島嶼群にある蒸留所。島ごとに傾向が異なる。
- ローランド:ダンディー ・グリーノックの想定線よりも南部を指す。グレーンウイスキーの登場後は活況を呈す。
- キャンベルタウン:キンタイア半島の先端にある町周辺にある蒸留所。20世紀初頭に大打撃を受けた。
ブレンデッド・スコッチ
上記にあるような様々な蒸留所からモルト原酒だけでなくグレーン原酒もブレンドした製品。
シングルモルトが話題になりやすいが売上数量は圧倒的にブレンデッドがシングルモルトを上回る。
数十種類の様々な原酒をブレンドする事で複雑で深みのある味わいになるだけでなく、微調整が効きやすく品質を安定させやすいのも強み。
グレーン原酒を繋ぎに使う事でモルト原酒の個性が纏まり引き立つのだそう。
ブレンデッドも個性は様々なものの全体的にバランスが良く初心者にもおすすめ。
- 主な銘柄
ボトラーズ・ウイスキー
蒸留所から公式に販売されているものはオフィシャルボトルと言うが、蒸留所から独自に原酒を買い付け、独自にブレンドや追熟[1]を行って販売する業者をボトラーズ業者と言う。その製品がボトラーズウイスキー。
シングルモルトやブレンデッド、ブレンデッドモルトなど種類も豊富。どの蒸留所の原酒が使われているのか公開すらされないパターンもある。
シングルモルトがあまり売れなかった時代、使いにくい原酒を蒸留所非公開を条件にボトラーズ業者に売り付けて小銭を稼ぐのに利用されたらしい。評判が良かった場合はそれとなく名乗りを上げてオフィシャルの宣伝にも利用されたとか。消費者側にとっても格安で手に入る評判のいいボトラーズは人気を博した。
現在ではシングルモルトも人気が出てオフィシャル品が飛ぶように売れる為、わざわざボトラーズ業者に売る必要が無くなってしまった。多数のボトラーズ業者は廃業し、生き残った人気ボトラーズは安価どころかむしろ独自のブレンドや追熟を売りにする高級品が多い。
オフィシャルには無いバリエーションを楽しんだり、出どころが謎の銘柄をテイスティングで当てようとしたり、マニアックなウイスキー上級者向けのジャンルと言えるかも。
関連動画
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関連コミュニティ
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関連項目
脚注
- *樽から出した原酒を再び別の樽に詰めて追加で熟成させること。
- *一種類の樽から出したまま、ブレンド無しの原酒。混同されやすいシングルモルトも通常は蒸留所内の様々な種類の原酒をブレンドして作られる。シングルカスクはかなりばらつきも多く少量生産で高価になりやすい。
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