スタニングローズ(Stunning Rose)とは、2019年生まれの日本の競走馬。鹿毛の牝馬。
主な勝ち鞍
2022年:秋華賞(GⅠ)、フラワーカップ(GⅢ)、紫苑ステークス(GⅢ)
2024年:エリザベス女王杯(GⅠ)
概要
父キングカメハメハ、母ローザブランカ、母父クロフネという血統。
父と母父は説明不要、それぞれ2010年代の日本競馬史に特大の文字で特記される大種牡馬。父キングカメハメハは2019年を以って種牡馬引退に加え、同年8月に没したため、彼女の世代がラストクロップに当たる。
母は18戦3勝の条件馬だったが、彼女の血統上の最大の特記事項はこの牝系。4代母*ローザネイから始まる、薔薇を名前に冠した「薔薇一族」と呼ばれる牝系である。本馬の母母ローズバドが2001年にオークス・ローズS・秋華賞・エリザベス女王杯を4戦連続2着という珍記録を作るなど、この牝系は重賞クラスの活躍馬を輩出するものの、なかなかGⅠを勝てないことで知られた。2009年にローズキングダムが朝日杯FSを勝って悲願のGⅠ馬となったものの、そのローズキングダムがブエナビスタの降着による繰り上げで2010年ジャパンカップを勝って以降は、また10年以上GⅠを、というか重賞を勝てていなかった。
2019年1月18日、ノーザンファームで誕生。オーナーはおなじみサンデーレーシング。1口100万円×40口(=4000万円)で募集され、ショウナンパンドラやレイパパレで知られる栗東の高野友和厩舎に入厩した。同厩の同期にナミュールがいる。
魅惑の薔薇
2歳
仕上がりは早く、2021年6月6日、新馬戦がスタートした週の日曜日、中京・芝1400mの新馬戦でデビュー。吉田隼人を鞍上に、単勝1.9倍の断然の1番人気に支持されたが、3番手で先行したものの直線で外にヨレるところを見せ、5番人気ブレスレスリーに逃げ切りを許し2着。
中2週で6月26日の阪神・芝1600mの未勝利戦へ川田将雅を迎えて向かうと、ここは先行策から楽に抜け出して2馬身半差で快勝する。
続いて8月の新潟2歳ステークス(GⅢ)に参戦。鞍上は松山弘平、12.1倍の5番人気。レースはスタートで躓いて最後方からになり、直線で大外から追い込んだもののセリフォスの5着まで。
戸崎圭太を迎えた10月のサウジアラビアロイヤルカップ(GⅢ)では5.4倍の3番人気。中団からレースを進めたが、前を行った同じサンデーの勝負服、1番人気コマンドラインと2番人気ステルナティーアは届かず7頭立ての3着。
11月のデイリー杯2歳ステークス(GⅡ)ではデビュー戦以来の吉田隼人が鞍上に戻り、7.3倍の4番人気。好スタートからハナを切ったあとプルパレイに先頭を譲り2番手で進めたが、直線で伸びず7頭立ての5着。ちなみにこのときの1着もまたセリフォス。
疲れが見えたということで阪神JFには向かわず、1勝のみで重賞では詰めの甘い感じのまま2歳シーズンは終了となった。
3歳
明けて3歳は自己条件に戻り、2月の阪神・芝1600mの1勝クラス、こぶし賞から始動。また6頭立ての小頭数レースで1.7倍の1番人気。坂井瑠星を迎えたここは3番手で先行すると、雨の中逃げ粘るセイウンハーデスを最後にアタマ差かわして2勝目を挙げる。
続いてフラワーカップ(GⅢ)へ。2戦目以来の川田将雅を鞍上に迎え、4.4倍の2番人気。最内枠から逃げ馬を見る位置で先行すると、直線で外に持ち出し、前で粘るニシノラブウインクを差し切って重賞初制覇を挙げた。薔薇一族としてもローズキングダムの2011年京都大賞典以来、実に11年ぶりの重賞制覇である。
ローテがキツくなる桜花賞はパスして一旦放牧に出され、5月の優駿牝馬(GⅠ)へ。ダミアン・レーンを迎えたここでは、これといった同期牝馬の有力馬との対戦実績がないこともあり単勝28.2倍の10番人気に留まった。ここは最内枠から5番手あたりで先行し、4コーナーから直線入口で外に持ち出す。そこへさらに外から並んできたのが桜花賞馬スターズオンアース。並んで叩き合いとなり、前にいるアートハウスをかわして抜け出したが、スターズオンアースの末脚に屈して1と1/4馬身差の2着。
秋は紫苑ステークス(GⅢ)から始動。鞍上は坂井瑠星。オークスでの走りから2.8倍の1番人気に支持されると、大外8枠12番から枠なりに外目の好位で進め、直線で逃げ粘るサウンドビバーチェを最後の追い比べでクビ差かわして勝利。重賞2勝目を挙げる。
そして迎えた秋華賞(GⅠ)。故障明けながら三冠を目指すスターズオンアースが1番人気、オークス3着のナミュールが2番人気。引き続き坂井が手綱をとるスタニングローズは、オークスの時点では人気で遠く及ばなかったこの2頭に次ぐ5.7倍の3番人気に支持される。
レースはスターズオンアースがスタートで前を塞がれ最後方からになる中、スタニングローズは好スタートから5番手の好位を確保。直線で前を行く4番人気アートハウスを残り200mで捕らえて先頭に出ると、外から追ってきたナミュール、さらに馬群を割って猛然と追い込んできたスターズオンアースの追撃を振り切って1着でゴール板を駆け抜けた。
女王の三冠の夢を打ち破り、理想的な先行抜け出しのレースで、薔薇一族が12年ぶりのGⅠ制覇。鞍上の坂井瑠星も、地方JpnⅠは勝っているが中央GⅠはこれが嬉しい初制覇となった。2着はナミュールで、高野厩舎は2頭出しでワンツーフィニッシュという最高の結果に。
続いて坂井騎手とともにエリザベス女王杯(GⅠ)へ参戦。2歳上の三冠牝馬デアリングタクトに次ぐ、5.7倍の2番人気に支持される。しかし雨で重馬場の中、前走と同じく5番手での先行策を採ったのが裏目に出て、馬場の悪い内目を通ることになって消耗したようで、残り800mで手応えがなくなり、直線ではもう余力なく14着に沈没。
年末は香港ヴァーズ(香港GⅠ)への遠征を予定していたが、背腰に疲れが残っているということで辞退し、年内は休養。エリ女の負け方もよくなかったので致し方なしか。
4歳
明けて4歳は中山記念(GⅡ)から始動。シュネルマイスターやダノンザキッド、ヒシイグアスといった実績ある牡馬との戦いとなった。坂井瑠星がサウジに行ったため鞍上は吉田隼人となり、7.8倍の3番人気。
レースはゲートの出が良すぎて、前に壁を作れないまま3番手で進めることに。直線でも前の争いに食らいついていったものの、抜け出すには至らず5着。
目標の大阪杯は背中に疲れが残っているということで回避。ヴィクトリアマイル(GⅠ)へ向かうも、後方で何もできないまま12着。その後左前脚の腱周囲炎が判明。浅屈腱にも若干のダメージがある可能性もあり、そのまま休養へ入ることとなった。
結局そのまま4歳シーズンの残りは全休。
5歳
明けて5歳となり、大阪杯(GⅠ)で10ヶ月ぶりに復帰。鞍上には新たに西村淳也を迎え、果敢に逃げを打ったものの、最後の坂で止まって8着。続くヴィクトリアマイル(GⅠ)は3番手でレースを進めたが、直線で伸びきらず混戦の中で9着。北村友一を迎えたクイーンステークス(GⅢ)はGⅠ馬ということでトップハンデ57kgを背負うことになり、先行したものの直線で捕まって0.2秒差の6着。
気付けばすっかり影が薄くなってしまったまま、迎えたエリザベス女王杯(GⅠ)。鞍上には新たにクリスチャン・デムーロを迎えた。GⅠ馬は他に唯一の3歳馬レガレイラのみという手薄なメンバーだったこと、当日の京都が前残り傾向だったこともあってか、レガレイラが1.9倍の一本被りの中で9.5倍の3番人気に支持された。
大方の予想通り逃げ馬コンクシェルが逃げ、ハーパーとシンリョクカがそれを追うのを、スタニングローズは4番手で追走。レガレイラが馬群の中でもがいているうちに、京都の下り坂からロングスパートを仕掛けたスタニングローズは直線入口で前を捉えて堂々と先頭へ。後ろからラヴェルや2番人気ホールネスが追いかけてきたが全く寄せ付けず、2馬身差で押し切り完勝。秋華賞同様の好位から抜け出し押し切りという、2年ぶんの鬱憤を晴らすような完璧な勝利だった。
スタニングローズだ! スタニングローズー!
秋華賞馬2年ぶりの復活!
女王返り咲きスタニングローズ! クリスチャン・デムーロです!
丸2年間の苦闘を経た秋華賞馬が復活VでGⅠ2勝目。23年前、祖母ローズバドがハナ差届かなかった栄冠を孫が手にした。勝ち時計は、その23年前の2001年にトゥザヴィクトリーが叩き出した2:11.2を0秒1更新する2:11.1のレースレコード。ついでに言うと二冠牝馬が出た年の残り一冠を獲った牝馬が古馬GⅠを勝ったのはスタニングローズが初である。[2]ちなみに2着ラヴェル(川田将雅)もスタニングローズと同じく元は坂井瑠星が主戦で、3着はその坂井が騎乗するホールネスだったことが(坂井瑠星の今年のGⅠ8回目の3着とともに)ちょっと話題になった。
次走は招待のあった香港ヴァーズを辞退し、有馬記念(GⅠ)へ。6歳春で自動引退となるサンデーレーシング牝馬なので、これがラストランだろう。繁殖入り前の最後の一戦、牡馬相手にどこまでやれるか。
血統表
キングカメハメハ 2001 鹿毛 |
Kingmambo 1990 鹿毛 |
Mr. Prospector | Raise a Native |
Gold Digger | |||
Miesque | Nureyev | ||
Pasadoble | |||
*マンファス 1991 黒鹿毛 |
*ラストタイクーン | *トライマイベスト | |
Mill Princess | |||
Pilot Bird | Blakeney | ||
The Dancer | |||
ローザブランカ 2005 芦毛 FNo.1-w |
*クロフネ 1998 芦毛 |
*フレンチデピュティ | Deputy Minister |
Mitterand | |||
*ブルーアヴェニュー | Classic Go Go | ||
Eliza Blue | |||
ローズバド 1998 青毛 |
*サンデーサイレンス | Halo | |
Wishing Well | |||
ロゼカラー | Shirley Heights | ||
*ローザネイ |
クロス:Northern Dancer 5×5(6.25%)、Mill Reef 5×5(6.25%)
関連動画
関連静画
関連リンク
関連項目
脚注
- *stunは「気絶させる」の意で(スタンガンのスタン)、そこから転じて「唖然とさせる、うっとりさせる」という意味となる。
- *ホクトベガが勝った川崎記念、帝王賞、南部杯はいずれもダートグレード制導入前で統一格付けなし。牡馬ではライスシャワー、スペシャルウィーク、キタサンブラックが該当する。
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