『スター・ウォーズ ダークセーバー』(Star Wars: Darksaber)とは、『スター・ウォーズ』サーガの小説である。
「レジェンズ」作品群に属する。単巻。著者はケヴィン・アンダースン。
なお、当記事における人名・役職名など固有名詞の日本語表記は、原則的に本書邦訳に基づく。
概要
軍閥割拠していがみ合う残存帝国軍を結集しふたたび挑まんとするダーラ提督、ハットの犯罪王ダーガが建造する超兵器ダークセーバーという新共和国に迫る二面の脅威、そしてルーク・スカイウォーカーのロマンスを描く長編小説作品。
独立した作品であるが、バーバラ・ハンブリーによる『ジェダイの遺児』『黄昏の惑星』とあわせ、3作のヒロインの名をとって「カリスタ三部作」の中編ともみなされる。作中時系列で本作の後になる作品が発表済だった関係で、整合性をとるため『ジェダイの遺児』のみならずジェダイ・アカデミー三部作など時系列で先行する作品の要素を多数登場させた総決算的な構成となっている。
原著は長篇小説単巻(ハードカバー)で1995年刊行。邦訳にあたっては文庫版上下巻構成で1997年に竹書房より出版された。日本語訳は富永和子による。邦訳本表紙イラストはドリュー・ストルーザンによる原書のものを使用した。
ストーリー
エンドアの戦いから8年、スローン大提督の反攻から3年。新たに修業を終えたジェダイ騎士キップ・デュロンとドースク81を送り出した師ルーク・スカイウォーカーは、恋人であるカリスタが失ったフォースを取り戻すため、ふたり旅に出る。いっぽう銀河帝国では、残党が辺境で四分五裂し軍閥相争う有様となっていた。復讐に燃えるダーラ提督は、銀河中核界の軍閥に新共和国に対する共闘を呼びかけてまわるが、軍閥を率いる大将軍たちは内部闘争に汲々とし、帝国軍の団結はなお遠かった。
軍閥の争いの場で、命を賭してダーラは呼びかける。帝国軍は仲間割れをやめ、新共和国と戦うときだ、と。生前のスローン大提督の腹心で大将軍の配下となっていたペレオン中将も彼女に共感し、協力を申し出る。ふたりは主だった大将軍たちを集め、残存帝国軍を統一するための会議を開くが、なおいがみ合うばかりの大将軍たちに協調など望むべくもなかった。失望したダーラは大将軍をすべて抹殺し、残存帝国軍の主要戦力はことごとくダーラの一手に統べられることとなる。
帝国軍の蠢動を知らぬ新共和国に、さらなる脅威が迫る。ハットの犯罪王ダーガの手駒が、首都コルスカントからデス・スターの設計図を盗み出したのだ。ダーガはこの設計図をデス・スターの開発者ベヴェル・レメリスクに与え、デス・スターを縮小した超兵器を建造せんとしていた。スーパーレーザーを発射する細長い筒の形をしたその超兵器を、レメリスクはこう名付けた――「ダークセーバー」と。
以下、中盤以降はネタバレ回避のため格納。
銀河中核界へと旅立ったキップとドースク81は帝国軍残党の情勢を探り、分裂していたはずの帝国軍がダーラのもと結集し、巨大な艦隊となって新共和国に襲いかかろうとしていることを知る。ジェダイの潜入に気づいたダーラは、スター・デストロイヤーの大艦隊を繰り出し華々しく逆襲を始動。最初の犠牲はドースク81の故郷コム、そして全艦隊をヤヴィン4に集結させジェダイ騎士団を滅ぼす計画だった。
新共和国情報部は、メイディン将軍のもとダークセーバー計画の存在を突き止めるが、破壊のため自ら侵入したメイディンは武運つたなく殺されてしまう。しかし、ダーガの野望が叶うことはなかった。吝嗇なハットが低質な材料と劣悪な労働力で作り上げた超兵器は、見事な欠陥品となっていたのだ。頼みのスーパーレーザーはついぞ作動せず、ダークセーバーは小惑星に押しつぶされ藻屑となりはてた。
ルーク不在のなか、ペレオンの率いる帝国軍の攻撃に一丸となって抵抗する若きジェダイたち。彼らは全員のフォースを集め、ペレオンの大艦隊をヤヴィン星系のはるか外まで吹き飛ばすが、フォースの照準レンズの役を果たしたドースク81もまた世を去った。その直後、ホスで遭難していたところをハン・ソロたちに助けられたルークとカリスタ、そして新共和国艦隊がヤヴィン4へと駆けつける。
第二陣として到着したダーラはペレオンがいないことをいぶかるが、ダーラの乗るスーパー・スター・デストロイヤーはなおも新共和国艦隊を圧倒した。しかしカリスタが侵入して艦の機関部を爆破すると、ダーラの旗艦はガス惑星ヤヴィンへと墜落しはじめ、帝国軍は統制を失って大敗を喫する。ダーラは生き延びたが、自分の招いた敗北に打ちひしがれ、帝国軍の未来をペレオンに託す。そしてカリスタも、ルークのもとを旅立った――いつの日かフォースを取り戻し、ふたたびルークと並び立つ日のために。
残存帝国軍
かつて圧倒的な勢力を誇った帝国軍だが、皇帝の死後、首都コルスカントの陥落、スローン大提督の大反攻の挫折や蘇った皇帝の敗北のすえ衰微しきっている。銀河中核界のような辺境[1]に退いた帝国軍人たちは、分裂して中小の軍閥と化し、ひたすら身内の勢力争いを繰り返すありさまとなった。新共和国のほうももはや彼らを脅威視しておらず、積極的な討伐は行っていない。
軍閥を率いるのは「大将軍(ウォーロード)」と総称される軍人たちで、それぞれ「高モフ(ハイ・モフ)」や「名誉卿(オーナード・オーバーロード)」などという意味もない大げさな称号を名乗り、互いに憎み合い、軍事力を貯め込んで相争っている状況。それでも彼らが涵養し、無価値に消費している戦力がひとたび合一すれば、スーパー・スター・デストロイヤーをはじめ無数のスター・デストロイヤーや戦闘機、地上兵力が連なり、新共和国に対するきわめて大きな脅威となりえる。
ダーガとダークセーバー
ハットの星ナル・ハッタに本拠を構えるダーガは、鉱物資源開発企業オルコ・スカイマインを隠れ蓑とし、巨大な犯罪組織を作り上げたハットである。
ダーガは新たな野望として、自身の支配力を強化し、超兵器により銀河を脅かすためデス・スターのような超兵器を手に入れようとした。そこで彼は、デス・スターを設計した科学者ベヴェル・レメリスクを庇護し、情報を集めて新共和国からデス・スターの設計図を盗み出し、集合意識を持つ低知性生物トーリルを労働力として手に入れた。
かくしてホスの小惑星帯で作り上げられたのが、超兵器ダークセーバーである。デス・スターからスーパーレーザーだけを取り出して筒状の外殻に収め、小さな居住スペース(それでも何百人のハットを使用人ごと収容できた)と航行機能を取り付けた。完成の暁には向かうところ敵なし、星系を人質にとり、ダーガは保護料や税金を好きなだけ集められるであろう。
その他組織・集団等
新共和国
皇帝を斃したエンドアの戦いの後、反乱同盟軍が樹立した新たな国家。首都星はコルスカント(コルサント)。幾度とない帝国軍残党との戦いを経て、旧共和国の再建として確固たる政体を確立した。
いまだ各地に残る残存帝国軍が分裂と衰退の一途をたどるいっぽうで、安定した統一国家として繁栄の時代に入ろうとしている。物語当時の主席(元首)は第二代、レイア・オーガナ・ソロ。
ジェダイ騎士団
ルーク・スカイウォーカーが再興した新たなジェダイ騎士団。かつて初代デス・スターを破壊した地である密林衛星ヤヴィン4を拠点とし、訓練施設ジェダイ・プラキシウムを設立。銀河じゅうからフォースの強い者を集めてジェダイを育てている。
マスターであるルーク自身も師として未熟で、いまだ総数数十人という小さな集団ではあるが、古代のシス卿エグザ・キューンとの戦いなどの苦難の道を経て第一世代のジェダイたちが育ち、新共和国を支える銀河の守護者はまさに蘇ろうとしている。
登場人物
ジェダイ騎士団
- ルーク・スカイウォーカー Luke Skywalker
- 人間・男性。新たなジェダイ騎士団を率いるジェダイ・マスター。
ジェダイを再興すべく訓練生を指導するいっぽう、以前の戦いで救出したジェダイ騎士カリスタと恋に落ち、彼女が失ったジェダイの力を取り戻すため尽力する。 - キップ・デュロン Kyp Durron
- 人間・男性。ルークに師事するジェダイ訓練生。活発で過激なところのある若者。
かつて暗黒面に堕ち、惑星を滅ぼした過去を強く悔やんでいる。一人前のジェダイ騎士と認められ、いまだ新共和国の脅威となりうる帝国軍残党の情勢を知るべく旅立つ。 - ドースク81 Dorsk 81
- コマイト・男性。ルークに師事するジェダイ訓練生でキップの親友。内気で自信のない性格。
1000年にわたりクローニングで子孫を残してきた種族に、フォースに敏感な突然変異体として生まれた。変化を望まない故郷コムの同胞を揺さぶり、意識を変えることを目指している。 - カリスタ Callista
- 人間・女性。旧共和国時代のジェダイの生き残りで、ルークの恋人。
帝国軍の実験兵器を阻止するため霊体で生き延びていたが、命を落としたルークの弟子から身体を受け取って復活し、ルークと恋に落ちた。しかし復活時、フォースの感知能力を失う代償を払った。ジェダイの道に戻りたいと望んではいるが、その過程で暗黒面に触れることを恐れてもいる。
新共和国
- レイア・オーガナ・ソロ Leia Organa Solo
- 人間・女性。ハン・ソロの妻で三児の母。新共和国の主席(元首)。
新共和国を切り回す元首として、コルスカントを外交訪問したダーガを迎える。ハットに内心辟易しつつもナル・ハッタのダーガの屋敷を電撃訪問するなど、ダーガの企みを探る新共和国軍を支援する。 - ハン・ソロ Han Solo
- 人間・男性。レイアの夫で三児の父。<ミレニアム・ファルコン>船長。
今回はあまり表舞台に立たず、ルークやレイアの行動に帯同し、側から助ける役割。後半では別行動していた相棒チューバッカと合流し、ルークの危機を救うことになる。 - ウェッジ・アンティルス Wedge Antilles
- 人間・男性。新共和国の将軍。旗艦は<ヤヴァリス>。
ヤヴィンやエンドアで活躍した名パイロットで、今は艦隊を指揮する身。ハットへの示威行動のためナル・ハッタ星系でアクバーとの模擬宇宙戦に臨み、さらにダークセーバーに対処する。 - アクバー Ackbar
- モン・カラマリ・男性。新共和国軍の総司令官・提督。旗艦は<ギャラクティック・ヴォイジャー>。
エンドアの戦いを指揮した新共和国の宿将で、先だってもダーラ提督の反攻を見事に打ち砕いた。ナル・ハッタでの模擬宇宙戦でウェッジの対戦相手を務め、ふたたびダーラとの戦いに臨む。 - クリックス・メイディン Crix Madine
- 人間・男性。新共和国の将軍で、情報部の最高司令官。
かつてはエンドアの戦いに参加したベテラン。ダーガが超兵器を作ろうとしているのを察知し、自ら工作チームを率いてダークセーバーへの潜入を試みる。 - キウイ・ズークス Qwi Xux
- オムワッティ・女性。若き天才科学者で、かつて帝国の秘密研究所で超兵器を開発していた。
天才ゆえに隔離されて世間知らずに育ち、自身の発明が超兵器になっていると知らなかった。新共和国に保護されてからは、数々の超兵器がもたらした惨禍を深く悔やんでいる。ウェッジとは恋仲。
銀河帝国
- ダーラ提督 Admiral Daala
- 人間・女性。帝国軍史上初の女性提督。かつてのグランド・モフ・ターキンの腹心。
隔絶された秘密研究所を長く守備していたが、帝国の現状を知り出撃し新共和国を恐怖させた。大敗後も諦めることなく新共和国への復讐に奔走し、銀河中核界で割拠する軍閥をまわり残存帝国軍の統一を呼びかけるが、利己的な大将軍たちに失望し自ら指揮を執る。 - ペレオン中将 Vice Admiral Pellaeon
- 人間・男性。帝国軍将校で大将軍テラドクの部下。かつてスローン大提督の旗艦の艦長だった。
スローンの死後に艦を失い、テラドクのもとに身を寄せ「クリムゾン・コマンド」を指揮する。残存帝国軍の現状を憂慮し、ダーラの呼びかけに賛同・協力。副司令官として大部隊を率いる。 - ハースク上位大将軍 Supreme Warlord Harrsk
- 人間・男性。銀河中核界で残存帝国軍の軍閥を率いて割拠する大将軍のひとり。
「上位大将軍(シュプリーム・ウォーロード)」を称する。大将軍たちの例にもれず巨大な自尊心の持ち主。ダーラの訪問中にテラドクの攻撃により旗艦を撃沈され、恥をかかされたと激昂して逆襲を命じる。 - テラドク高位提督 High Admiral Teradoc
- 人間・男性。銀河中核界で残存帝国軍の軍閥を率いて割拠する大将軍のひとり。
「高位提督(ハイ・アドミラル)」を称する。多数のヴィクトリー級スター・デストロイヤーからなる高速部隊「クリムゾン・コマンド」を有し、ハースクとの抗争にあけくれている。 - デルヴァードス上位将軍 Superior General Delvardus
- 人間・男性。銀河中核界で残存帝国軍の軍閥を率いて割拠する大将軍のひとり。
「上位将軍(スパーリア・ジェネラル)」を称する。莫大な軍事費をつぎこみ、秘密裏にスーパー・スター・デストロイヤー<ナイト・ハンマー>を建造していた。 - クロヌス大佐 Captain Cronus
- 人間・男性。デルヴァードス上位将軍の副官で、有能で精力的な軍人。
デルヴァードスの死後、その戦力をダーラにさしだし指揮下に入る。統一された帝国軍戦力のうち、<13X>を旗艦とするヴィクトリー級スター・デストロイヤーの大部隊を任されることになる。
ダーガ・ザ・ハットの犯罪帝国
- ダーガ Durga
- ハット・男性。ハットの闇の帝国を支配する犯罪王。
鉱物資源開発会社オルコ・スカイマインを所有する企業家で、かつては巨大犯罪組織ブラック・サンの幹部。ひそかに超兵器「ダークセーバー」を建造し、銀河の支配を企む。 - スルマー将軍 General Sulamar
- 人間・男性。有能で高名な帝国軍の将軍だというが、軍服を着ると貧弱に見える陰気な男。
ダーガの配下としてダークセーバー・プロジェクトを指揮する人物。帝国軍人だという立場を活かして必要物資の調達などに携わるが、レメリスクからは無能者とさげすまれている。 - ベヴェル・レメリスク Bevel Lemelisk
- 人間・男性。皇帝のもとでデス・スターを設計したマッド・サイエンティスト。キウイとは旧知。
天才的な兵器開発者だが、失態により皇帝に7回も残虐に処刑され、そのたびにフォースの秘術で蘇らされてきた経験を持つ。ダーガの庇護下で鉱業機械や兵器を開発し、ダークセーバーを設計する。
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関連項目
スター・ウォーズ レジェンズの邦訳小説 (作中時系列順) |
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前作 | 本作 | 次作 |
ジェダイの遺児 (12ABY) |
ダークセーバー (12ABY) |
黄昏の惑星 (13ABY) |
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