ステゴサウルスとは、ジュラ紀に生息していた恐竜の一種である。
名前の意味は「屋根のあるトカゲ」。
概要
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目 | 鳥盤目 |
亜目 | 装盾亜目 |
下目 | 剣竜下目 |
科 | ステゴサウルス科 |
属 | ステゴサウルス属 Stegosaurus |
種 | S.アルマトゥス S. armatus S.ステノプス S. stenops S.ロンギスピヌス S. longispinus S.ウンギュラトゥス(?) S. ungulatus(?) |
中生代ジュラ紀末の北アメリカに生息していた中型~大型の植物食恐竜。
全長は最大約9mに達するが、個体によっては4m程度。近縁のヘスペロサウルスなどを含めることもある。
発見と命名、展示
「恐竜戦争」のさなか、模式種S.armatusが1877年にマーシュによって命名された。当時は背中の骨板や尾の棘がどのように生えていたか全く分かっておらず、ワニの背中を覆う皮骨板のようなものと考えられて「屋根のあるトカゲ」という意味で命名された。当時の復元画では背中を屋根瓦のように覆う骨板の間から棘が生えている。
生存時の骨の位置関係が保存された化石はまれであるうえ、骨板は他の骨と直接関節していなかったので、骨板や棘の配置に関する議論は現在まで続いている。
国内では国立科学博物館や東海大学自然史博物館、豊橋市自然史博物館などで復元骨格が見られる。大阪市立自然史博物館のステゴサウルスは国内で初めて展示された骨格レプリカである。
背筋の曲がり具合など骨格の組み立て方が難しい恐竜の一つなので、基にする論文などによってポーズはかなり異なってくる。
形態の特徴
縦に大きな胴体や小さな頭部、短い前肢を持つ代表的な剣竜類ではあるが、骨板が飛びぬけて大きいなど独特な特徴も多い。
五角形をした巨大な骨板は剣竜類の中でも最も幅広く大きい。尾の付け根にある最大のもので長さ・幅ともに60cmに達する。反面、厚みには乏しく、骨の強度は低い。基部はやや分厚くなっていた。
また表面には上下方向に深い溝が走っており、基部で最も溝が深くなっていた。これは血管や、脊椎としっかり結合するためのコラーゲン繊維が収まっていた跡だと考えられる。また生前は分厚い角質で表面が覆われていて、骨自体より大きくなっていたと考えられる。
脊椎に対して軟組織により固定されていたため死後腐敗すると骨板と胴体は遊離してしまい、よほど条件の良い化石でなければ胴体との位置関係は分からなくなってしまう。このため、骨板は背筋に沿って一列に並んでいたとする説、二列に並んでいたとする説があり、さらに二列並び説でも左右の骨板が向かい合っていた(左右対称)という説と互い違いだった(左右非対称)という説がある。
しかし保存状態の良い全身化石が発見されたことで、二列・左右互い違い説が広く支持されるようになった。また喉に砂利のような骨からなる装甲があったことも判明した。
骨板の用途は体温調節のために日光または風に当てる、外敵からの防御、外敵やライバルに対する威嚇、異性や仲間に対するアピール、個体識別などが考えられる。おそらく実際には複数の機能を担っていた。
薄くて強度がないためいわゆる鎧としては役に立たないが、相手の攻撃してくる方向を限定する程度には防御に役立ったかもしれない。上記の血管の働きにより真っ赤に充血させることができたという説もある。復元画では色や模様、表面の様子などに考え方の違いが現れるところである。
2対ある尾の棘も長さ60cmに達したうえ生存時は角質でさらに長く鋭くなっていたが、こちらも軟組織で固定されていたため正確な向きなどは不明だった。
以前は上向きに生えていたと考えられていたが、現在ではほぼ横向きだったと考えられている。実際そのほうが敵を撃退する凶器としては有用である。棘の生えていた尾自体も左右の柔軟性の方が高かった。
当時の肉食恐竜アロサウルスの尾椎や肩甲骨のなかには、ステゴサウルスの棘がぴったりとはまるような穴が開いたものがある(棘が刺さった状態で見つかったわけではない)。
幼いうちは棘も骨板と同じようにもろかったが、成熟すると身の詰まった丈夫な骨になることが分かった。成長しきるまで尾の棘なしでどのように身を守っていたかは不明。
頭部は体に対して非常に小さく、また細長かった。他の鳥盤類同様口の先端はクチバシだったが発達してはおらず、また歯や咬筋も貧弱なものだった。のちの鳥脚類や角竜類が強力なクチバシや咬筋、頑丈な歯を持っていたことと対照的である。
脳函もまた非常に小さく、脳の大きさはクルミ程度だった。ここを指摘してステゴサウルス(ひいては恐竜全体)を愚鈍で劣った生物だったとする言い方もされてきたが、多数の化石が残っているということはステゴサウルスの生態に見合った充分な知能は確保されていたのだろう。また現在、脳の大きさは知能の指標にはならないとされる。
脊髄の通り道に沿った腰部に空洞があるため、ここに脳の働きを補助する神経節(通称「第二の脳」)があったとする説が唱えられたが、現在ではこれは鳥類にもみられるグリコーゲン体貯蔵スペース(神経の燃料タンク)だったとされている。
胴体は縦に大きく盛り上がっている反面左右の幅は狭かった。脊椎が大きくアーチを描き、肋骨は後下方に向かって伸びていた。骨盤は前後に長い。
前肢は非常に短いが、後肢は逆にかなり細長く前肢の2倍の長さがあった。しかし膝の裏にある腱の収まる溝は発達しておらず、それほど脚を速く動かすことはできなかった。
推定される生態
あまり集団で見つからないことから、群れを成したとは考えられていない。また縦長の体形から狭い森でも行動できたともいわれる。
主食はかなり柔らかい植物だったと考えられる。固い球果(松ぼっくり)などは食べず、細い口で好みの植物を選ぶように食べていただろう。
明らかに武器として有用な尾の棘、逃げるには向かない脚の構造、アロサウルスの化石に残された傷跡から、外敵が現れたら尾の棘で撃退を狙って戦ったと思われる。いわゆる「おとなしい草食獣」のイメージには程遠かっただろう。
そのほかの剣竜類
スクテロサウルス
分類:装盾亜目スクテロサウルス科 全長:1.2m 時代:ジュラ紀前期 地域:北米
剣竜類と鎧竜類の共通の祖先に当たるグループ、または原始的な鎧竜ともされるが便宜上ここで紹介する。まだ体がごく小さく身軽で二足歩行を行っていたという原始的な状態で、首から腹部、尾にかけて並んだ細かい装甲を除くと小型鳥脚類によく似ていた。
スケリドサウルス
分類:装盾亜目スケリドサウルス科 全長:4m 時代:ジュラ紀前期 地域:ヨーロッパ
スクテロサウルス同様剣竜類と鎧竜類の共通の祖先とされる。胴体はまだ背が低くて幅広く、小さな骨板やスパイクで覆われていた。
ファヤンゴサウルス
分類:装盾亜目剣竜下目ファヤンゴサウルス科 全長:4m 時代:ジュラ紀中期 地域:中国
ごく原始的な剣竜。まだ胴体の幅が広く、頭骨に高さがあり、後肢はあまり長くなかった。背中の装甲はすでに後の剣竜とよく似た少し幅のある骨板と長いスパイクになっていた。また肩からもスパイクが生えていた。
ミラガイア
分類:装盾亜目剣竜下目ステゴサウルス科 全長:5.5m 時代:ジュラ紀後期 地域:ヨーロッパ(ポルトガル)
やや変わった剣竜で、首が長く180cm・全長の3割に達し竜脚類を思わせるシルエットだった。頸椎は17個あり、器用に動いたかもしれない。背中にはかなり小さな骨板が並んでいた。
トゥオジャンゴサウルス
分類:装盾亜目剣竜下目ステゴサウルス科 全長:7m 時代:ジュラ紀後期 地域:中国
骨板を発達させた剣竜の一つ。三角形の薄く長い骨板と、肩に棘を持つ。前肢は特に短く、地表の植物を食べたとされる。
ケントロサウルス
分類:装盾亜目剣竜下目ステゴサウルス科 全長:4.5m 時代:ジュラ紀後期 地域:アフリカ(タンザニア)
スパイクを発達させた剣竜の一つ。前半身には骨板があったが後半身には非常に長いスパイクが生えていた。尾のスパイクは身を守るのに有効だったとする解析結果がある。また肩にも棘があった。
角竜の一種セントロサウルスと名前がかぶっており、こちらはKで始まるためケントロサウルス、角竜はCで始まるためセントロサウルスと表記する(本来なら両方ともケントロサウルス)。
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非常に原始的な装盾類であるスクテロサウルス。後の剣竜類や鎧竜類はこのような二足歩行の姿勢から二次的に四足歩行に戻った。
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「これぞ恐竜」と言わんばかりの装飾的な外見により非常に人気がありグッズも多い。
関連項目
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