ストッピングパワーとは、銃弾の威力の考え方の一つである。
日本語では本記事のようにカタカナで表記される事が多いが、停止力、制止力というように直訳される場合もある。
銃創そのものに関しては「銃」の項目を参照。
概要
銃器より発射された弾丸は、十分な速度を持った状態で人体に当たれば、そのエネルギーで衝撃波を発生させながら骨肉を引き裂くように貫き、筋肉や臓器、血管を破壊し、人を死に至らしめる。
が、じゃあそれで銃弾を先に撃ち込んだ方は戦いに勝利したのか?となると話は別である。
極端な話だが、致死クラスの銃創でも意識があり、失血や神経系統損傷による機能停止が起きる前であれば体はまだ動くのである。その時間がわずかでも最期に
- 自爆スイッチを入れるくらいはできる。(ボタンを押すだけ、紐を引くだけ)
- 当たり所が甘ければ、手榴弾や新たな武器を取り出して使用する猶予もある。
- 人質に向けられた拳銃や、フルオートのライフルを持っていれば引き金を引く事もできる。
- (敵の)仲間がいれば止血や安全な場所へ後送され命が助かる事もある。
- 隠密作戦においては、敵の発砲(銃声)によって周囲の敵に異常を察知される。
もしも…
- 自爆された際、周りに味方や人質がいたら?
- フルオートで発射された弾丸が、自分や味方、人質、護衛対象に当たって死傷させたら?
- 隠密作戦において異常を察知され、重要目標に易々と逃げられたり重要証拠を破壊[1]されたら?
- 大勢の敵や増援に囲まれてしまい、任務達成どころか脱出すら困難な状況に追い込まれたら?
- 敵の仲間に助けられたのが、暗殺目標のテロ組織の幹部だったら?
それはもう勝利とはいえないだろう。
最後に至ってはせっかく見つけた標的を取り逃し雲隠れされ、新たなテロなどの脅威や被害を生むリスクを孕んでしまう。
たとえ敵に命中しても、命中時の角度や装備品・装着品・個々の骨格や筋肉など、条件次第では致命傷どころか軽く怯ませる程度にしかならない場合も稀にあるため絶対ではない。
そういう返り討ち(反撃)、仕留め損ないを考えた時、いかに一撃(一瞬)で活動を停止、すなわちストップさせる事ができるか?という考え方がストッピングパワーである。
把握が難しい場合にも
大規模な戦争や銃撃戦においては砲爆撃もあり状況・指揮が混乱しやすい上に既存の死体も多くなりがちで、誰がどの敵を撃ったか、間違いなく倒したか?といった把握は難しく、ちゃっかり死んだふりをして虎視眈々チャンスを伺う…といった手もなくはない。「念には念を」という部分もある。
ストッピングパワーの歴史・現在
古くはイギリス人騎士「ジョージ・シルバー」が、1599年に出版した『パラドックス・オブ・ディフェンス』と呼ばれる本に記載されている、古流剣術の概念が初めてとされる。
掻い摘んで言うならば「相手を殺せなくとも攻撃できなくすれば安全に倒せる」「致命傷を与えても相手に力が残っていれば反撃されて相打ちとなってしまう」といった内容であった。
その約300年後、当時まったく売れずに大英博物館の倉庫に埋もれていたのを、イギリス軍のシリル・マッセイ大尉が、古流剣術の指南書として販売、ベストセラーとなる。
その本がアメリカ大陸に渡り、アメリカ陸軍の銃技術者、ジュリアン・ハッチャー将軍の元にまで渡る事となった。
1899年~1902年、アメリカがフィリピンを植民地にするべく、原住民と戦った「フィリピン・アメリカ戦争」の際、当時のアメリカ陸軍の拳銃では原住民を止める事が出来ず、拳銃で致命傷を与えても槍で反撃を受けてしまい、兵士に多大な損害が出てしまった。
その案件を解決しようと当時のハッチャー氏に持ち込まれ、その際に氏が考案したのが、拳銃の威力を数字として出した『ハッチャー・スケール』であり、上記の本を基に敵を無力化する概念としての『ストッピングパワー』が考案された。
これを受けて、当時の.38ロングコルト弾を使用するリボルバーを、コルトガバメント等の大型拳銃へと変更した事で、原住民の反撃を受ける事無く無力化に成功した。
…しかしそれから60年後、アメリカが介入したベトナム戦争では、拳銃やライフルで無力化される数秒間に、敵兵がトリガーを引いてしまい反撃され被害が出てしまう事となった。
それ以降も戦争や犯罪において、一撃で相手を無力化できずに多大な被害が出てしまい、「反撃されない一撃を与える必要がある」と、さらなるストッピングパワーのある武器=大口径高初速化の流れが生まれてしまい、現在でもその「ストッピングパワー信仰」とも呼べる流れが続いている。
どんな弾がストッピングパワーにおいて優れるのか?
例えば、よく同じエネルギー量でも大口径弾の方が傷口や打撃範囲が大きく殺傷能力が高い、小口径弾は打撃を与えにくく殺傷能力が低いと言われる。
まず、同じエネルギーだとしたらその分速度で同程度の打撃与えられるとか、大口径信奉の原因になった38口径はそもそも弱装の弾でとかそう言う話は置いておいて、特に拳銃弾等の絶対的なエネルギーの少ない弾の場合、逆に抵抗の為に銃創が浅くなり易く、弾道上に主要臓器や脊髄、血管などがあったとしたら小口径弾の方が即死、活動の停止をさせられる可能性は高いという場合もある。
つまり割りと当たってみるまで分からんと言う事である。
その為、絶対的に敵をダウンさせていく能力が高いと言えるのは単により大きなエネルギー、運動量を持つ弾だけと言え、更にいかに急所を射抜くかと言う技術も射手には求められる。
確実に相手を殺害するならば…
- 確実に殺傷でき防弾装備のない頭部を狙い撃つ。
- 人質事件・暗殺任務における狙撃などにおいては顕著。
- 被弾し倒れた敵の頭部を撃ち抜き確実にトドメを刺す。(ヘッドショット)
- 敵の呼吸や意識の有無は問わず、死んでいるように見えても行う。
- 複数発の弾丸を命中させる。
- 銃剣で刺す。
- 敵が潜んでいた場所や兵器に手榴弾や火炎瓶を投げ込む。
※手間と時間・弾薬が必要なため、状況によって絶対に行うわけではない。(撤退中など)
・・・ってあれ?それストッピングパワーとか以前に当たり前じゃん?
と言う事で、ストッピングパワーと尺度として考えていくという行為自体微妙なんじゃないかという意見も多い。
また敵は複数人が潜んでいる可能性もあるため、とりあえず制圧できた、確実にトドメを刺したからと気を抜くのはリアル死亡フラグ。大勢の人質の中にあらかじめ武器を隠し持った共犯者が紛れているパターンもある。
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関連項目
脚注
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