スノーフォール(Snowfall)とは、2018年生まれの日本生産アイルランド調教の競走馬である。
概要
父ディープインパクト、母*ベストインザワールド、母父Galileoという血統。
父ディープインパクトは説明不要レベルの日本の七冠馬。
母ベストインザワールドは凱旋門賞馬Foundの全妹で血の閉塞を避けるためにクールモアが日本のノーザンファームに送り込んだ繁殖牝馬。母父は言わずと知れた21世紀の欧州を席巻し続けるトップサイアーである。
立場的には、もし2007年以前にジャパンカップなど日本のレースに出走した場合、出走表には父内国産馬を表す「マル父」と外国調教馬を表す「カク外」の印が併記されるという、特殊な立場にいる馬である。
日本で生まれたこの牝馬はアイルランドに送られ、スノーフォールという名でアイルランドの超名門エイダン・オブライエン厩舎に預けられた。
雪が降る
2歳(2020年)
スノーフォールは6月10日の未勝利戦で14頭立ての3着に敗れ、28日の未勝利戦でも9頭立ての8着と惨敗した。初勝利を挙げたのは3戦目の7月19日の未勝利戦だった。
しかしオブライエン師はこの馬に期待していたようで、重賞を使われ続けたが、シルヴァーフレッシュS(GIII)4着、デビュタントS(GII)5着、モイグレアスタッドS(GI)9着、フィリーズマイル(GI)8着といいところなくこの年のレースを終えた。
なお、フィリーズマイルでは3着に入線したはずが、後になって同厩のMother Earthと騎手とゼッケンが取り違えられたまま発走していて、本物のスノーフォールは8着入線だったことが判明。裁定の結果、本来の馬の入線順どおりMother Earthが3着、本馬が8着で確定した。ちなみに、ブックメーカーの多くはどちらの馬の複勝馬券も払い戻しに応じたという。
また、3着に好走したのにあやうく大敗にされかけたMother Earthは翌年にイギリス1000ギニー(GI)を勝つことになる。
3歳(2021年)
冬の間にスノーフォールは変わり身を見せ、5月12日、ヨーク競馬場でのミュージドラS(GIII)では3馬身3/4差で快勝し、期待していたレベルであることを証明して見せた。
6月4日のオークスステークス(GI)では名手ランフランコ・デットーリ騎手鞍上で出走。道中やや後方から直線に入ると、「熱したナイフでバターを切るように」楽に抜け出し、そこから先は「あまりにも早く抜け出たのでゴーグルを脱いで残りの5ハロンを贅沢な旅行に行く気分だった」と表現することになった16馬身の圧勝劇を演じることになった。この着差は1983年のSun Princessの12馬身を更新する英オークス史上最大の記録だった。また、この勝利でオブライエン師はイギリスクラシック40勝を達成し、ジョン・スコット師(史上初の三冠馬West Australianなどの管理調教師)が1827年から1863年にかけて作った記録に並んだ。
次走はキングジョージVI世&クイーンエリザベスステークスなども取り沙汰されたが、最終的に7月17日のアイリッシュオークス(GI)に出走した。オブライエン厩舎のファーストジョッキーであるライアン・ムーア騎手騎乗で出走した本馬は、8頭立ての上に目立った実績を持っている馬が他にいないというのもあり単勝1.25倍の圧倒的人気に支持された。そしてレースでも直線あっさり抜け出して勝負を決め、2着に入った同厩のDivinely(凱旋門賞馬Foundの全妹、つまり本馬の叔母)に8馬身半という差をつけ圧勝した。
英愛オークス制覇はかのEnable以来となり、愛オークスはオブライエン厩舎にとってはSeventh Heaven以来5年ぶり6勝目、ムーア騎手にとってはすんごい脚のSnow Fairy以来11年ぶり2勝目となった。
続いて8月19日のヨークシャーオークス(GI)に出走。初の古馬混合戦で、相手にGI2勝を含む重賞4連勝中の4歳馬Wonderful Tonightもいたが、それでも単勝1.5倍の圧倒的1番人気に推された。レースでは7頭立ての後方2番手からの競馬となったが、直線に入って仕掛けられると楽々と先頭に立ち、そのまま4馬身差を付けて悠々勝利した。英愛オークスおよびヨークシャーオークスを勝利したのはEnable以来8頭目で、勝ち時計2:26.61もヨーク競馬場での開催では歴代3位という好内容であった。
この勝利により、ブックメーカー各社の凱旋門賞の前売りオッズは単勝3倍台に下落した。現段階では凱旋門賞への登録がない本馬だが、オブライエン師が凱旋門賞の前に1戦挟むことを示唆したため、今後の動向に更に注目が集まることとなった。
叩きのレースの候補には愛チャンピオンSやメイトロンSが候補に挙がっていたが、最終的に凱旋門賞と同じコースのヴェルメイユ賞(GI・2400m)に出走した。現地では単勝1.1倍(!)という人気に推されていたが、7頭立ての5番手から直線を迎えて伸びてきたものの、乗り替わったデットーリ騎手曰く「後ろから行き過ぎた」とのことで先に抜け出したTeonaを捉えることが出来ず2着に敗れ、連勝は4で止まった。勝ったTeonaはミュージドラSで3着、英オークスでは10着に破っていた馬であった。
レースの結果を受け、ブックメーカー各社では軒並み1番人気だった本馬の評価が一部のブックメーカーでは下げられ、例えばPaddy Powerでは前日の愛チャンピオンSで2着だったTarnawaおよび英ダービーとキングジョージを制した3歳馬のAdayarに次ぐ3番人気に下落するなど、一強とはいえない情勢となった。
敗戦から数日後、オブライエン調教師は馬体などに異常が見られなかったため凱旋門賞の出走を表明。本番まで残り1か月を切り、一気に混戦模様となったレースを制し父ディープに捧ぐ勝利を挙げられるか。
10月3日、凱旋門賞。直線で追い出すが6着に敗れる。オブライエン師は「エプソムでの走りを見れば道悪は彼女にとって何の問題もない」と言っていたものの、近年でも極悪の重馬場には対応できなかった。父ディープの雪辱とはならず無念の結果となった。
このレースと前後して、引退・繁殖入りした後は先に種牡馬入りした愛チャンピオンSなどの勝ち馬St. Mark's Basilicaとの配合プランが既に挙がっていることが明らかとなった。
凱旋門賞の後は2週間後のチャンピオンズフィリーズ&メアズS(GI)に出走した。しかし直線で伸びきれず、いずれもヨークシャーオークスで歯牙にかけず破ったEshaadaとAlbafloraの後塵を拝し3着に敗れた。
この年は後半一息だったが7戦4勝・GI3勝となった。また、カルティエ賞最優秀3歳牝馬を受賞した。
急死
3歳時をもって引退するかが明言されていなかったこともあり今後の動向が注目されていた2022年1月11日(現地時間)、骨盤に致命的な故障を負ったために安楽死措置が執られたことが報じられた。エイダン・オブライエン師によると「数週間前に負傷し、数日前から容態が悪化した」「昼間に厩務員がカイバを食べさせ、その1時間後に戻ってくると馬房の中で負傷していた。正確に何が起きたかは不明」とのことである。
吉田直哉氏のツイートによると、キャスト(壁の真横に馬が寝、誤って壁側に寝転んで立てなくなり、半ばパニックになったように暴れること)により骨盤を負傷したと推測される。このキャストはスタッフが細心を尽くしてもゼロにはできない不運な事故とされる。
血統表
ディープインパクト 2002 鹿毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
*ウインドインハーヘア 1991 鹿毛 |
Alzao | Lyphard | |
Lady Rebecca | |||
Burghclere | Busted | ||
Highclere | |||
*ベストインザワールド 2013 鹿毛 FNo.1-m |
Galileo 1988 鹿毛 |
Sadler's Wells | Northern Dancer |
Fairy Bridge | |||
Urban Sea | Miswaki | ||
Allegretta | |||
Red Evie 2003 鹿毛 |
Intikhab | Red Ransom | |
Crafty Example | |||
Malafemmena | Nordico | ||
Martinova |
クロス: Northern Dancer 5×4×5(12.50%)
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関連項目
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