スプライトとは、
- ビデオゲームの描画方式の一種。本稿で解説。
- 炭酸飲料。コカ・コーラより販売されている清涼飲料水。
- 西洋の妖精、子鬼の一種。
- ユーザー生放送の配信者の一人→スプライト(生放送主)
- アダルトゲームのブランド →sprite(ゲームブランド)
- 遊戯王のカテゴリ・カード群→スプライト(遊戯王)
1.の概要
予め決められた1ブロックの画像データ(スプライト)を任意に設定された位置にハードウェアで書き込む方式で、CPUは表示させる画像の番号と、表示する位置のXY座標を処理するだけなので負荷が軽く、数種類の画像データを切り替えることでアニメーションさせることも容易になる。[1]
大きなキャラクターはスプライトを複数枚並べることで表現でき、キャラクターの顔のスプライトのみを変更することで表情を変更したり、小物のスプライトを手の位置に重ねることで手に物を持たせたり、スプライトを動かすことで簡単にアニメーションさせたりできる。スプライトを使い回すことで画像データを格納しておくためのメモリも節約できる。
このスプライトに「BG」(Background。小さい画像ブロックをタイルのように敷き詰めて表示する。スクロールさせることができるが、特定のタイルを少しだけ動かす、といった使い方はできない)を組み合わせたものが1980年代におけるビデオゲームの表示方式のスタイルとなった。
1990年代からビデオゲームはアーケード、家庭用ともに3DCGに移行し、ハードウェアでスプライトを表示する方式は一部の携帯ゲーム機などを除き、殆ど見られることはなくなった。だが、ゲームプログラミングにおいて2D画面上のキャラクタを「スプライト」と呼ぶなど、その概念はまだ健在といえよう。
歴史
スプライト方式は、Atari社によって1978年にビデオゲームの新しい表示方式として考案された。それまでは画面上のキャラクターを動かす場合、新しい位置へのキャラクターの描画と移動前のキャラクターを消去する処理をCPU(プログラム)で行っており、動きの激しいゲームでは処理の限界に達していたが、Atari社のスプライトは、見栄えのする画面表示を「高速に」「多くの動き回る表示物を」「CPUに負荷をかけずに」実現できた。[2]
日本においては、Atariの「ナイトドライバー」にラインバッファ方式のスプライト処理回路を採用したことを受けてナムコがスプライト処理回路を開発し、「ギャラクシアン」に搭載した。[3]
初期のスプライトハードウェアは、画面上で横方向(ブラウン管上で走査線が描画する方向)に並べることができるスプライトの数に制限があった。例えば、スプライトを横に4個まで並べることができるゲーム機があったとすると、ゲームにおいてスプライトが5個以上並ぶシチュエーションが発生しても5個目以降のスプライトは表示されない、いわゆる「スプライト欠け」が発生してしまう。
このため、ゲームをデザインする際は、スプライトが横一直線に並ぶことがないように様々な工夫を凝らすことになった。[4] ハードウェアの限界を超えた数のスプライトが出ているように見せかけたり、BGとスプライトを組み合わせることで巨大な動くキャラクターを表現したり、スプライトを点滅させる(スプライトを表示させる優先順位をCPUで高速に変更する)ことで半透明のように見せかけるなど、制約の中から多くの表現が生まれた。※スプライト欠けは後にフレームバッファ方式(後述)が実現することで解消された。
アーケードゲームでは処理チップの能力が向上することでキャラクターや背景の拡大縮小が可能になり、「ポールポジション」のようなドライブゲームでは走行に伴い前方のキャラクターが次第に拡大されるようになった。何枚か重なり合うスプライトの移動速度をずらすことで立体感を出す「多重スクロール」(アイレムの「ムーンパトロール」以後、「源平討魔伝」や斜めスクロールを加えた「メルヘンメイズ」などでも採用されて効果を上げた)や、画像の回転(「撃墜王」では敵機が回転するだけだったが、「アフターバーナー」では画面全体の回転へと発展した)も実現した。[5]
フレームバッファ方式
走査線(ライン)1本単位での書き換えだったラインバッファ方式に対し、画面(フレーム)単位での書き換えを行うようにしたのがフレームバッファ方式である。バッファで画面が作成され、画面1枚分(垂直帰線期間から、次の垂直帰線期間まで)の間に処理されるため、ラインバッファ方式に比べてかなり時間の余裕があった。FM TOWNSに採用されたが、当時はラインバッファ方式が主流であったことから擬似スプライトと呼ばれた。
横方向にスプライトを並べられる数に制限がなく、ラインバッファ方式を遥かに上回る最大表示個数を実現することが出来たが、大量のVRAMと高速な描画能力が必要であり、FM TOWNSは「最大1,000枚のスプライトを表示可能」と誇示していたが、実際には200枚程度しか表示出来なかった。
関連動画
関連リンク
- ストリートファイターIIをベースに当時のアーケード基板「CPS-1」の何が優れていたのかをエンジニアが解説
2021.12.24 ※カプコンの「CPシステム」
関連項目
脚注
- *「ゲームに活きる画像技術」遠藤雅伸 日本写真学会誌2014年77巻第3号
- *「業務用ビデオゲーム表示技術の変遷」
三部 幸治
- *伝説の業界関係者達が語った“デジタルゲーム登場以前のゲーム業界”とは? 「日本デジタルゲーム学会 2010 年次大会」基調講演をレポート
2010.12.20
- *なぜマリオはキノコを取ったとき縦に伸びるのか - ドット表現の限界への挑戦
2015.11.9
- *「それは『ポン』から始まった」 赤木真澄 アミューズメント通信社 2005 p.362
- *【DiGRA公開講座】不可能を可能にする~メタルギアにおける制作コンセプト~
2009.3.31
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