モバイル向けプロセッサではSoC(System-on-a-Chip)と呼ばれるCPUやGPU、ベースバンドチップ等々を統合したプロセッサが多い。これにより消費電力の削減や機器の小型化がしやすくなるが、通信機能の有無や方式の違いなどでバリエーション違いのものなどが出ることになる。
また、大きなシェアを占めているARM系のSoCでは、工場を持たない、いわゆるファブレス企業の英国ARM社から、ARMアーキテクチャのCPUを製造するライセンスを購入したプロセッサメーカーで製造する。これと統合するGPUもARM社や同じくファブレス企業の英国PowerVR社などからライセンスを買ってきたり、独自開発のGPUやベースバンドチップなどを組み合わせたSoCを設計する。実際の製造は自社工場でなくTSMCやサムスンといった大手ファウンドリに委託することが多い。
スマートフォンやタブレット向けのアーキテクチャではARMの他にx86やMIPSなどもある。
Qualcomm Snapdragon
携帯電話用チップの王者、米国クアルコム社のARM系のSoCシリーズ。ARM社のCortexシリーズを採用せず、ARMv7から発展させた独自のCPU、GPUコアを使用している。また、クアルコムの強みである通信機能(ベースバンド)の統合でも先行しており、携帯電話向けでは大きなシェアを握っている。
Texas Instruments OMAP
米国TI社のARM系SoC。携帯電話ではSnapdragonほどではなく、タブレットではTegraほどではない感じで双方でそこそこのシェアを持っている。CPUはCortex、GPUはPowerVRを採用している。
NVIDIA Tegra
PC用のGPUで有名な米国NVIDIA社のSoC。同世代の中では先行して商品が出ることが多く、モデムなどといった通信機能の統合はされていないため、3G/4G(LTE)などを搭載しないWi-Fiモデルのタブレット端末等で多く使用されている。そのあたりは痛し痒しで、通信機能必須でバッテリー容量の限られる携帯電話などでは採用は少ない。搭載するGPUは当然ながらGeForceの名を冠した独自の物。
Samsung Exynos
大手のファウンドリでもあり、スマートフォンやタブレットといった搭載製品も販売する、韓国サムスン社のARM系SoC。あまり外販で供給しておらず、自社の看板スマホ/タブレットのGalaxyシリーズなどに搭載している。CPUはCortex、GPUはExynos3ではPowerVRだったものの、Exynos4以降はARMのMaliを採用している。
Apple Ax
米国Apple社のARM系SoC。自社のiPhone、iPad、iPod Touch、Apple TVなどにのみに搭載されている。CPUはCortex、GPUはPowerVRを採用している。
ST-Ericsson NovaThor
瑞西STエリクソンのARM系SoC。出たばかりのブランドではあるが、ソニーやサムスンのミドルクラスのスマートフォンへの供給されている。ベースバンドチップの大手のひとつでもあり、今後が注目される。CPUはCortex、GPUは当面はMaliだがPowerVRに移行していく模様。
Renesas R-Mobile
日本のルネサスエレクトロニクスのARM系SoC。供給能力が限られているためか、採用製品は多くないがローエンドからミドルクラスでコストパフォーマンス重視の製品を出している。ノキアから買収した無線モデム部門を持っており、わりと早くLTE統合SoCを発表するなどで注目されている。CPUはCortex、GPUはPowerVRを採用している。また、CortexとSuperHのマルチコアなどという変わり種もラインナップしている。
Intel Atom
言わずと知れた半導体の王者、米国Intel社製のx86なCPU(SoC)。最大の強みはx86ゆえの既存ソフトウェアとの互換性、Windowsタブレットの多くはAtomを採用している。難点は消費電力。インテルの強力な製造能力を背景にしたシュリンクで化けるか、x86版Androidに活路はあるのか、ARM版Windows8で止めを刺されるか、果たしてAtomの未来やいかに。
関連項目
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