スーパーフォーミュラとは日本最高峰のフォーミュラカーレースである。正式名称は「全日本スーパーフォーミュラ選手権」。略称はSF、格式は国際。運営母体はJRP(日本レースプロモーション)。
概要
日本独自のカテゴリであった「フォーミュラニッポン」が、2013年に海外展開することを目標に名称が変更されたものである。また欧州のF1、アメリカのインディカーに次ぐアジアのトップフォーミュラになるという目標も打ち出された。
コーナリングを重視したテーマ(クイック&ライト)や、「オーバーテイクシステム」での一時的なエンジン出力上昇といった駆け引きが売り。
2019年現在も海外開催は実現していないが、F1に匹敵するほどの競争力を持つことから海外の有力ドライバーが毎年参戦してきており、世界的な認知度は徐々に高まってきている。
2020年シーズンから、全日本フォーミュラ3選手権が「全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権」と改名して開催される。シャシーはダラーラ320、タイヤは横浜ゴムのワンメイク。SFライツ年間王者には次期SFルーキーテスト参加権とタイヤ費用補助が与えられる。
一方、同年から「スーパー耐久」の運営元・K2プラネットが開始するリージョナルF3規格の新レース「全日本フォーミュラリージョナル選手権」に対して、JRPが運営協力を行う。シャシーは童夢F111/3、タイヤはダンロップ。
マシン紹介
SF14(2014~2018年)
- シャシー:ダラーラ・SF14
- エンジン:トヨタ or ホンダ製 / 2.0L 直4 ターボ(10000~10700rpm, 550bhp以上)
- タイヤ:ブリヂストン(2014,2015年)、横浜ゴム(2016~2018年)
- 燃料タンク:90L
- ギヤボックス:リカルド製6速シーケンシャル、パドルシフト
シャシーはワンメイク、エンジンはマルチメイク。2013年のみFN09、タイヤは2015年までブリヂストンが用いられていた。
欧州の自動車産業で流行している「過給ダウンサイジング(小型低燃費ターボ)」というコンセプトを取り入れた新エンジン、NRE(Nippon Race Engine)を搭載している。NREはSUPER GTのGT500クラスでも用いられており、基礎研究はトヨタ、ホンダ、日産の三社が共同で行った。馬力では旧型のV8NAに劣るものの、低速時のトルクと燃費の良さによる燃料タンクの軽さで加速を稼げるため、実際は上記の数字以上に強力なエンジンである。
シャシーは「クイック&ライト」がテーマとなっており、ドライバーたちからは「コーナリングスピードは2014年のF1よりも速い」という声が多い。またマシンの外見と音もF1より格好いいと評判である。
燃料リストラクターによって燃料流入量が制限されているため、燃費の良いエンジンがより有利になるようになっている。またSF13のオーバーテイクボタンが回転数を上げる物だったのに対し、SF14は燃料の流入を増やす仕組みになっている。オーバーテイクボタンを押すと5秒後にピコピコ光るランプはFN09から受け継がれており、ポイントリーダーの車両のみ赤色のランプ、他の車両は白色で表示される。
2015年にはハイブリッドシステムであるSystem-Eが導入される計画があったが、コストの問題や「クイック&ライト」にそぐわないとしてひっそり廃案となっていた。
唯一の弱点はオーバーテイクの少なさ。空力依存度が高く乱気流に弱いこと、日本の狭いサーキットではスピードが速すぎることなどが原因で、鈴鹿と富士以外はほとんどオーバーテイクが見られない。
しかし2018年に横浜ゴムが2種類のコンパウンドのタイヤを用意し、タイム差を明確にしたことで、オーバーテイクがしやすくなった。
SF19(2019年~)
- シャシー:ダラーラ・SF19
- エンジン:トヨタ or ホンダ製 / 2.0L 直4 ターボ(10000~10700rpm,550bhp以上)
- タイヤ:横浜ゴム
- 燃料タンク:90L
- ギヤボックス:リカルド製6速シーケンシャル、パドルシフト
2019年以降も引き続きダラーラのシャシーが採用された。F1のトレンドや先行リリースされたF2 2018同様に、フロントノーズが低くスラントした形状に改められている。
シャシーのホイールベースが50mm短縮され、フロントタイヤも20mmほど幅が広がったことで、コーナリングスピードが向上している。
また、なるべくボディでダウンフォースを稼げる空力構造となり、オーバーテイク時の乱気流(タービュランス)を抑えた構造になっている。
そのほか、F1で先行採用された、頭部防護のためのハロ(Halo)もつけられた。
オーバーテイクシステムも、従来は20秒間作動を5回使えるものだったのを、合計100秒間有効なものをドライバーの好きなだけ利用できるものに変更された。ただし1度使うと、その後100秒間は利用できない。
ロールバーのランプも一新され、使用可能状態では緑色に点灯、使用時は激しく点滅、使用不可状態はゆっくり点滅、残り20秒になると赤く点灯、そしてOTSを全て使い切ると消灯する仕組みになっている。
なお開幕前に「グランツーリスモSPORT」にて、トヨタ、ホンダそれぞれのエンジンを搭載したSF19が追加リリースされ、家庭でもSF19を体感できる様になっている。
しかし、ソフトとミディアムのタイヤ性能差が大きすぎることから、決勝レースではミディアムタイヤでスタートしたのち、1周走っただけでピットインし、そのままゴールまでソフトタイヤで走りきる戦略をとるチームが多かった。このため2019年シーズンの第6戦からルール変更があり(参照)、タイヤ交換義務について「先頭車両が10周回目第1セーフティカーラインを交差した時点から、先頭車両が最終周回に入るまでに完了しなければならない」と定められた。スタートから10周回目に入るまでの間にタイヤ交換することは可能だが、その場合は交換義務を果たしたと認められないため、改めてピットインする必要がある。
2020年シーズンからはFCY(フルコース・イエロー)を導入予定だったが翌年以降に延期された。またドライタイヤのスペックがソフト1種類のみに変更された。更にレース中の給油は禁止となる。決勝距離の短縮も重なり、特に開幕戦はタイヤ交換義務もなかったことからノーピットのスプリントレースになった。
選手権ポイントシステム
開催年 | 決勝順位 | 予選順位 | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
優勝 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | 8位 | 9位 | 10位 | PP | 2位 | 3位 | |
~2019 | 10 | 8 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | - | - | 1 | - | - |
2020~ | 20 | 15 | 11 | 8 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 3 | 2 | 1 |
- 最終戦優勝時のボーナスポイント3点(合計13点)は、2019年シーズン限りで廃止した。
- 2020年・2021年は全7戦中5戦分の有効ポイントを競った。
- 2022年は有効ポイント制を廃止し、全7戦の合計ポイントを競う。
対象レース | シーズン総合順位 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | 8位 | 9位 | 10位 | ||
SF | 25 | 20 | 15 | 10 | 7 | 5 | 3 | 2 | 1 | - | |
SFライツ | 15 | 12 | 10 | 7 | 5 | 3 | 2 | 1 | - | - | |
参 考 |
SUPER GT | 20 | 16 | 12 | 10 | 7 | 5 | 3 | 2 | 1 | - |
全日本FR | 18 | 14 | 12 | 10 | 6 | 4 | 3 | 2 | 1 | - | |
FIA-F4 | 12 | 10 | 7 | 5 | 3 | 2 | 1 | - | - | - |
レースカレンダー
Rd. | Race | Date | 開催サーキット | PP | FL | WINNER | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Rd.1 | 第1戦 | 4/9 | 富士スピードウェイ① | ||||
第2戦 | 4/10 | ||||||
Rd.2 | 第3戦 | 4/23-24 | 鈴鹿サーキット① | 二輪レース併催 | |||
Rd.3 | 第4戦 | 5/21-22 | オートポリス | 二輪レース併催 | |||
Rd.4 | 第5戦 | 6/18-19 | スポーツランドSUGO | ||||
Rd.5 | 第6戦 | 7/16-17 | 富士スピードウェイ② | ||||
Rd.6 | 第7戦 | 8/20 | モビリティリゾートもてぎ | ||||
第8戦 | 8/21 | ||||||
Rd.7 | 第9戦 | 10/29 | 鈴鹿サーキット② | ||||
第10戦 | 10/30 |
参戦ドライバー
Engine | TEAM | No | DRIVER |
---|---|---|---|
HONDA M-TEC HR-417E (10台) |
TEAM MUGEN | 1 | 野尻智紀 |
15 | 笹原右京 | ||
DOCOMO TEAM DANDELION RACING | 5 | 牧野任祐 | |
6 | 大津弘樹 | ||
ThreeBond Drago CORSE | 12 | 福住仁嶺 | |
B-Max Racing | 50 | 松下信治 | |
TEAM GOH | 53 | 佐藤蓮 | |
55 | 三宅淳詞 | ||
TCS NAKAJIMA RACING | 64 | 山本尚貴 | |
65 | 大湯都史樹 | ||
TOYOTA TRD Biz-01F (11台) |
KONDO RACING | 3 | 山下健太 |
4 | サッシャ・フェネストラズ | ||
KCMG | 7 | 小林可夢偉 | |
18 | 国本雄資 | ||
docomo business ROOKIE | 14 | 大嶋和也 | |
carenex TEAM IMPUL | 19 | 関口雄飛 | |
20 | 平川亮 | ||
Kuo VANTELIN TEAM TOM'S | 36 | ジュリアーノ・アレジ | |
37 | 宮田莉朋 | ||
P.MU/CERUMO・INGING | 38 | 坪井翔 | |
39 | 阪口晴南 |
- ホンダ陣営の参戦体制発表時点では、チーム郷の1台がドライバー未定だった。またB-Maxが51号車に外国人ドライバーの起用を計画していた。
- 今季にWECと重複参戦するのは可夢偉・平川(どちらもLMH)の2名。
GT、WECとの掛け持ち参戦が多いのが特徴。2022年シーズンは小林可夢偉、平川亮の2選手がWECと並行してフル参戦を予定している。
また海外からは元F1ドライバーのナレイン・カーティケヤン(2014)、ヴィタントニオ・リウッツィ(2014)、GP2王者のファビオ・ライマー(2015、参戦発表後にキャンセル)、ストフェル・バンドーン(2016)、ピエール・ガスリー(2017)、FR3.5王者のベルトラン・バゲット(2015)、マカオGP連覇&欧州F3王者のフェリックス・ローゼンクビスト(2017)など有力ドライバーが毎年参戦してきている。これにはF1のシート獲得が困難化していることが背景にある。また欧州フォーミュラのタレやすいタイヤと異なり、毎周プッシュできるのも評判が良い。
フォーミュラニッポンでは外国人ドライバーが猛威を振っていたため「外国人ドライバー選手権」と揶揄されてきたが、スタートした2013年から2018年まではすべて日本人ドライバーがチャンピオンとなり、国内ドライバーの活躍が目覚ましい。
ホンダ米国法人のスカラシップについて
ホンダ・パフォーマンス・デベロップメント(HPD:ホンダ米国法人が設立した、北米地域でのレース活動支援企業)は、2021年のフォーミュラリージョナル・アメリカズ(FRA)年間王者に対し、翌22年SFへの参戦費用を援助する計画を表明した(HPDの発表)。しかし21年のFRA王者だったケフィン・シンプソンは、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う渡航制限の影響を考慮してSF参戦を断念(関連記事)。
HPDは22・23年も同様のスカラシップを提供する予定(関連記事)。
歴代チャンピオン
- 2013年:山本尚貴
- 2014年:中嶋一貴
- 2015年:石浦宏明
- 2016年:国本雄資
- 2017年:石浦宏明
- 2018年:山本尚貴
- 2019年:ニック・キャシディ
- 2020年:山本尚貴
- 2021年:野尻智紀
- 2022年:野尻智紀
- 2023年:宮田莉朋
関連動画
関連チャンネル
関連リンク
関連項目
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- 0pt