スーパーGIIとは、GI級の有力馬が毎年多数参戦する、ハイレベルなGII競走のことである。
概要
2023年現在、日本競馬には38のGII競走が存在しているが、開催時期や距離・出走条件などによってレースレベルにはばらつきがある(これはGI・GIIIについても同様)。無論、年度ごとに出走馬は変わるのでレベルは毎年上下するのであるが、中には毎年のように有力馬が参戦し、一部のGIにも匹敵する、あるいは上回るレベルになるGIIレースが存在する。このようなレースを俗にスーパーGIIと呼び、GIの前哨戦として高い人気を誇っている。
誕生経緯
現代においては外厩の発達などによって有力馬は最大目標のGIへと直行することが増えてきたが、21世紀初頭までは放牧明けから本番に至るまでの調整や試走の意味合いを兼ねて、本番レースの1ヶ月程度前に似た条件のレースを事前に走ることが一般的であった。
一方、成長が遅かったり体質や怪我などの問題を抱えるなどの理由で早い時期からは活躍できなかったものの、古馬となって成長してきた馬がGIへの出走の足掛かりとして収得賞金の加算や出走権の獲得を狙ったり、GI馬との力量差を図る機会としたりといった目的で出走させることもまた多かった。
このため例年開催時期や距離的にちょうどいいレースに有力馬が集まる傾向が強くなり、やがてそれらのレースが自然発生的にスーパーGIIと呼ばれるようになったのである。
スーパーGII誕生の条件?
誕生経緯の項にも一部書いたが、スーパーGIIと呼ばれるレースは自然発生的に生じたものである。その発生条件としては以下のようなものが推察される。
- GIレースに近い条件であること
いうまでもないことだが、スプリントGIに出る前に中距離の前哨戦を使う馬はまずいない。京都大賞典とジャパンカップ(共に2400m)の間にスワンステークス(1400m)走ったメジロパーマーェ…距離、もしくは関東/関西における開催といった条件が一致することが最低条件になる。 - GIから逆算して都合の良い時期であること
スーパーGIIに出てくる有力馬にとっては当該レースはあくまで前哨戦であるため、ここで力を使い過ぎて本番までに戻すことができなければ大きな問題である。そのため本番となるレースの1~2ヶ月程度前に開催されるレースであることが多い。
上記の理由により、スーパーGIIの代名詞ともいうべき毎日王冠は本番とされてきた天皇賞(秋)まで中2週[1]と現代感覚ではやや厳しいローテになるため、近年ではブリーダーズカップ・マイルやマイルチャンピオンシップに出走する馬の前哨戦へと姿を変えつつある。 - 定量戦orグレード別定戦であること
※負担重量の項目も参照のこと。
GII以下のレースのうち、獲得賞金に応じて斤量を増やすレース(賞金別定戦)や馬の力量差から斤量差をつけるハンデ戦だと有力馬は往々にして背負う斤量がきつくなり、勝てないばかりか馬へのダメージが大きくなる(最悪の事態に至ったのがテンポイントである)ため出走が避けられることになる。
一方でいずれの馬も同じ斤量を背負う[2]定量戦や、グレード競走の勝利経験によって斤量差をつけるグレード別定戦の場合はそこまで厳しいハンデにならないため有力馬も出走しやすくなる。
ちなみに現在、定量戦であるGIIレースは札幌記念と阪神カップの2レースである。
なお、2025年現在、賞金別定戦の中央競馬の重賞は皆無である。ハンデ戦のGIIは日経新春杯・目黒記念・アルゼンチン共和国杯の3つであり、これら5つ以外のすべての中央GIIは馬齢重量戦もしくはグレード別定戦である。 - GIへの優先出走権が存在すること
通常はレースの出走権は収得賞金順に決まるが、一部のレースでは上位に入った馬に特定のレースへの優先出走権が付与される[3]。そのため、こうしたレースへは、たとえば成長が遅かった馬などが、権利取得を狙って集まりやすくなる。 - 賞金が高いこと
毎日王冠(6700万円)や札幌記念(7000万円)といったレースは、他のGIIと比較して高めの賞金が設定されている[4]。賞金もさることながら、出走権獲得に必要な収得賞金も大きく加算できるため、多くの有力馬が参加することになる。
スーパーGIIと称されることの多いレース(かっこ内は本番レース)
※この項は作成者の主観が強いです。「このレースがない!」と思う方は追記ください。
※各レースの詳細は各レースの項目をご覧ください。
毎日王冠(天皇賞(秋)、マイルチャンピオンシップなど)
レースレーティング: 114.75(2020年)→115.25(2021年)→117.25(2022年)
1950年創設。1981年より天皇賞(秋)の前哨戦となり、1984年から現在の東京・1800mのレースとして定着した。その1984年にいきなり三冠馬ミスターシービー・この年のジャパンカップで日本馬初の優勝を果たしたカツラギエース・南関東三冠馬サンオーイが激戦を繰り広げると、その後も89年のオグリキャップ・メジロアルダン・イナリワン、98年のサイレンススズカ・グラスワンダー・エルコンドルパサーといった激戦の連続によりスーパーGIIの筆頭格になった。
近年は中2週という間隔の狭さから秋天の前哨戦としての立場は後述の札幌記念に奪われつつあるが、代わりに1ヶ月~1ヶ月半程度の間隔があるためマイルチャンピオンシップやブリーダーズカップ・マイルの前哨戦として今もなお高いレベルのレースが繰り広げられている。1800mという、日本競馬で当該距離のGIがないことから特にGI昇格要望が出ることの多いレースでもある。
札幌記念(天皇賞(秋))
レースレーティング: 116.50(2020年)→117.00(2021年)→117.25(2022年)
1965年創設、当初はダート・2000mだったが札幌競馬場で芝レースが開催できるようになった1990年からは芝・2000mのレースとなった。格付け当初はハンデ戦のGIIIだったが、高松宮杯(後述)に代わる夏競馬最大のレースとして1997年に別定戦のGIIへと昇格。以降は比較的冷涼な札幌での開催、天皇賞(秋)まで2ヶ月という間隔の良さ、2006年から定量戦となり斤量が重くならないこと、7000万という高額な賞金などからGII最高のレースレーティングとなることが常態化している。
またこのレースで初古馬戦を迎える3歳馬(ソダシ、アドマイヤムーン、トップナイフなど)や、札幌競馬場が洋芝であることからこのレースをステップに海外遠征に赴く馬もいる(凱旋門賞を目指したハープスター・ゴールドシップ、BCフィリー&メアターフを目指したラヴズオンリーユーなど)。
一方でニコニコでは2005年の酷いファンファーレ(いわゆるプペペポピー)でも有名
阪神大賞典(天皇賞(春))
レースレーティング: 111.50(2020年)→109.00(2021年)→111.50(2022年)
かつては年末開催だったが、1987年から古馬王道路線の始動戦として日経賞(中山・2500m)・産経大阪杯(阪神・2000m)と並んで定着した。その3レースの中でも阪神・3000mと最も距離が長く天皇賞(春)のレース条件(京都・3200m)に近いため特に有力馬が集まる傾向にあり、2023年までの37年間の勝ち馬からのべ12頭(メジロマックイーンが連覇)もの春の盾を制した馬を輩出している。特に有名なレースとしては1996年のナリタブライアンとマヤノトップガンの一騎打ちがある。あとオルフェの2012年阪神大笑点
近年は長距離需要の低下にともないレーティングは低下傾向にあるが、それでもディープボンドやジャスティンパレスといった勝ち馬がGI戦線で奮闘を続けている。
中山記念(ドバイミーティング・大阪杯など)
レースレーティング: 117.25(2020年)→111.25(2021年)→112.25(2022年)
1957年から現在の距離に定着し、かつては安田記念や天皇賞(春)、香港のクイーンエリザベスⅡ世カップを目指す馬の始動戦として知られていたが、1996年にドバイデューティーフリー(現・ドバイターフ)の創設によりその前哨戦としての価値が上昇。2014年にジャスタウェイ・2016年にリアルスティール(3着)・2022年にパンサラッサが本レースをステップにドバイターフを制した。さらに2017年には大阪杯のGI格上げによりその前哨戦としての意味合いも持つようになり、レベルがさらに上昇している。
富士ステークス(マイルチャンピオンシップ)
レースレーティング: 113.00(2023年)→116.00(2024年)→118.25(2025年)
2020年にGⅢからGⅡに昇格したばかりのレースであるが、マイルチャンピオンシップの前哨戦としての地位を早くも獲得している。特に2025年は、ジャンタルマンタル、ソウルラッシュ、ガイアフォースといった国内トップクラスのマイラーが激突し、レーティングが118.25にまで急上昇した。
なぜGII止まりなのか?
国によってはレースグレードの昇格/降格を頻繁に繰り返す例もあるのだが、グレード制導入後の日本においてはスーパーGIIと称されたレースを同一条件のままGIに昇格させた例は産経大阪杯→大阪杯とホープフルステークスの2例しか存在しない。
(秋華賞・ジャパンカップダート(現・チャンピオンズカップ)・ヴィクトリアマイルは新設GI。昇格組のうち高松宮杯(現・高松宮記念)とNHK杯→NHKマイルカップは距離が大幅に変更されている。残るスプリンターズステークスとフェブラリーステークスは、もともと同一条件では最高格付けだったレースの昇格ではあるが、スーパーGIIが昇格したというよりは短距離GI/中央ダートGIの創設という趣が強い。)
そのためこれらのスーパーGIIをGIへと格上げする待望論もしばしば上がるのだが、GIの増加によって有力馬の参戦先が分散し、参加する馬の頭数やレベルが下がるという懸念(現に欧州では少数頭でのGIという事象が発生している)から現状JRAにGIを増やす予定はないようである。そのほか要望の多い札幌記念については、そもそも札幌競馬場の施設がGI開催には小さすぎて来賓を迎えられないという問題や札幌競馬場がある札幌圏は三大都市圏に属していない事情もある。JRAのG1は基本三大都市圏に所在する競馬場しか開催されていない。[5](Jpn1も含めても三大都市圏以外で開催されるG1は南部杯(盛岡競馬場で開催)しかない。(持ち回り開催のJBCを除く))
スーパーGIIがGIになった例
高松宮杯
1967年に中京大賞典として砂2000mのレースとして創設、1971年に優勝杯の下賜を受けて競走名を変更し芝2000mのレースとなった。
皇族の名が冠されたことからも分かるように中京競馬場として、また夏競馬としてはもっとも高い格を有するレースであり、早い段階で全国発売競走(日本全国から当該レースの馬券を買うことができ、また関東馬・関西馬の両方が出走可能なレースのこと。グレード制導入(1984年)前に全国発売競走だった他レースには、八大競走や宝塚記念・安田記念・エリザベス女王杯・ジャパンカップ・中山大障害といったGI競走が並ぶ)。グレード制導入時にも夏競馬では唯一となるGIIに設定された。
その後スプリント路線拡充のために本レースの条件を大幅に変更(距離2000m→1200m、開催時期7月上旬→5月中旬)したうえで1996年にGI昇格。夏競馬のGIIとしての立場は札幌記念に、中京競馬場の中距離GIIとしての立場は同年にGIIIから昇格した金鯱賞に引き継がれた。
ホープフルステークス
1984年にGIIIラジオたんぱ杯3歳牝馬ステークス(阪神・芝1600m)として創設。1991年に牡馬・騸馬限定戦への変更と2000mに距離延長を行った上で、ラジオたんぱ杯3歳ステークスと改称。中山で開催されていた朝日杯3歳ステークス→朝日杯フューチュリティステークスでは距離が短かったり輸送が必要になったりする有力馬が集うGIIIながら非常にハイレベルなレースとなった。特に2000にはアグネスタキオン・ジャングルポケット・クロフネという翌年の3歳春GIを獲る3頭が共演している。
その後2歳中距離路線の拡充のために、開催地を朝日杯と取り換える形で中山競馬場に変更・1着賞金を朝日杯とさほど差のない6500万円へと増額し、レース名も中山2000mで実施されていたオープン競走のホープフルステークスへと改称。(このあたりややこしいが旧ホープフルステークスを重賞に格上げしたわけではない)改称初年度からGII格付けを受けると、期待通りレイデオロなどの有力馬を集めて2017年にGI昇格を果たした。
※ニコニコにはGII時代のがないのでGIII時代のと旧OPのホープフルステークスを紹介
産経大阪杯
1957年に創設され、1972年から古馬王道路線の始動戦として定着した。しかしながら距離がほかの前哨戦と比べて短いため、特に阪神大賞典と比べると春天の前哨戦としての価値は高くなかった。
一方で中距離を得意とする馬にとっては始動戦としてちょうどよい時期にあり、長距離需要の低下もあって参戦する馬のレベルはGIに匹敵するものとなっていた。(真の一流の中にはドバイミーティングに参戦する馬もいたが)
その後天皇賞(春)・宝塚記念と共に春古馬三冠を創設するためにGI昇格を果たした。
スーパーGIII
当然ながら、ハイレベルなGIIがあればハイレベルなGIIIというものも存在する。
前述のラジオたんぱ杯3歳ステークスの他、近年では3冠馬コントレイルを筆頭にワグネリアンやディープブリランテなど数多くのダービー馬・GI馬を輩出した東京スポーツ杯2歳ステークス(2021年にGII昇格し、その年はイクイノックスが優勝)、ダート短距離路線の年初の始動戦として、国内路線の有力馬と年末の地方重賞ラッシュで賞金を積み上げた実力馬が激突する根岸ステークス、G1馬を多数輩出している共同通信杯、歴史が浅いながらG1馬を多数輩出しているアルテミスステークスなどがあげられる。
レースレーティング
※重賞の記事も参照のこと。
こうしたスーパーGII・スーパーGIIIでは、しばしば他のGII・GIIIよりもレースレーティングが高くなる傾向がある。ちなみにレースレーティングとは、当該レースの上位4頭が同年に獲得した最高レートの平均値のことである。
例えば2022年の札幌記念の場合、上位4頭が同年中に獲得したレートの最高値は下記の通りで、その平均値117.25ポンドが2022年の札幌記念のレースレーティングである。
- 1着 ジャックドール → 118ポンド (金鯱賞1着、札幌記念1着、天皇賞(秋)4着)
- 2着 パンサラッサ → 120ポンド(天皇賞(秋)2着)
- 3着 ウインマリリン →114+4ポンド※ (香港ヴァーズ1着)
- 4着 アラタ → 113ポンド(札幌記念 4着)
※牝馬の場合、牡馬牝馬混合競走でレーティングを獲得(4着以内に入る)した場合は4ポンドプラスして計算される
日本においては[6]、 一定の期間レースレーティングが一定の値[7]を上回ったレースは、より高い格付けをすることができるようになる。また逆に、一定の期間レースレーティングが一定の値[8]を下回ったレースは降格となる[9]。
レースレーティングと実際のレースレベルは必ずしも一致するものではないが、近年はこのレースレーティングが毎年のようにGIを上回っているレースがスーパーGIIと呼ばれる傾向にあるようである。例えば上述の2022年札幌記念のレースレーティングは、レーティングが高くつきやすい中距離レースという理由もあるが、同年に開催されたGI競走のうち牝馬三冠や春秋スプリント、天皇賞(春)などの11競走を上回るレーティングとなっている。
関連項目
脚注
- *2025年からは、これではよくないとされ中3週に改められている
- *厳密には牡牝の差や3歳馬が古馬戦に出てきた場合の斤量差があるが
- *クラシック戦線における弥生賞や神戸新聞杯などのトライアルレース、古馬戦線における阪神大賞典や毎日王冠など。
- *これらのレースはすべて3で述べた、定量戦もしくはグレード別定戦である
- *例外として2002年と2014年のスプリンターズステークスは三大都市圏以外の競馬場である新潟競馬場で開催されている。(前者は東京競馬場の改修工事、後者は中山競馬場の改修工事に伴う日程変更に伴う。)
- *格付けの方法は国や各地域のパターン委員会ごとに異なる。例えばアメリカ地域では格付けの決定にレースレーレティングは利用されない。
- *例えば古馬の混合GIならば115ポンド、2歳GIは110ポンド、2023年より牡馬三歳混合GⅠならば113ポンド。牝馬限定GIはアローワンス加算がない代わりにそれぞれ4ポンド低い
- *日本などアジアでは原則3ポンド、3歳限定戦は2ポンド、基準値から低い場合(GIIであればGIより5ポンド低い基準である)
- *ただし、GI・GIIに関しては国際的な話し合いのうえで降格すべきとされた場合のみ降格となる
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- 2
- 0pt

