センチネル巡航戦車とは、オーストラリアが第二次世界大戦中に開発、運用した戦車である。
正しくは「Australian Cruiser Tank Mk.Ⅰ」で、センチネルは番兵または歩哨の意味を持つ愛称である。
概要
迫り来る日本軍に備えるためオーストラリアが初めて作った戦車であり、オーストラリアが自国で量産した唯一の戦車でもある。
アメリカとイギリスの戦車設計を基礎として、当時あまり工業力が高くなかったオーストラリアの限られた設備でも量産できるように考慮されて設計されているのが特徴である。
開発経緯
20世紀初頭、オーストラリアは平和そのものであった。周囲に脅威となる国がないので軍備もあまり必要ではなく、装甲車両はほとんど持っていなかった。
軍の出番といえば、イギリス国王への忠誠心からイギリスの戦争に兵士を送る位であった。
そして第二次世界大戦が勃発すると、
オーストラリア 「イギリスさん、今度も手伝うよ。今は戦車が必要なんでしょ?ヨーロッパに派兵する用と
日本が攻めてくるかもしれないから自衛用に戦車ください。」
イギリス 「やべ、ドイツ軍強過ぎ。ダンケルクに武器置いてきちゃったから自分のとこで手一杯なんだわ。
ゴメン」
オーストラリア 「アメリカさん、戦車ください。」
アメリカ 「今はイギリス用で手一杯なんだわ。ゴメンな。でも作るの教えるのならできるよ。」
オーストラリア 「まじか。自動車しか作ったこと無いけど大丈夫かな?ちょっと考えてみるよ。」
このようなやり取りがあったかは不明だが、オーストラリアの戦車開発はだいたいこんな感じで始まる。
初めての戦車開発
真剣に考えた末、1940年11月にオーストラリア陸軍は、国産戦車について以下の開発計画を立てる。
- 装甲厚は50mm、重さは16トンから20トン。
- 最高速度は時速30マイル(48.27km/h)、航続距離は150マイル(241km)。
- 主砲はイギリスのオードナンス QF 2ポンド砲、機関銃は1、2丁ほど。
- 乗員は4,5人。
- 1941年7月までに月産70両で生産開始し、最終的には2000両を生産する。
という経験も設備も無い上でさらに時間も無いような無謀な計画だったが、計画は政府と軍により承認され、自国で戦車を作ることを決断する。ひとまずアメリカに技術者を1人派遣し、イギリスに頼んで技術者を送ってもらうこととした。
当初、カナダのラム巡航戦車のように、アメリカのM3中戦車のオーストラリア仕様を作ろうとしたが、オーストラリアの現状では無理なことが判明。限られた設備の中ですぐに大量生産できるように設計や製造方法やら部品を簡略化していくことになった。
- 車体 - 今まで装甲板を作った経験も大規模な量産設備も全く無かったので新規に鋳造設備を作り、鋳造で作った板をつなげて作る方向で決定。
- エンジン - 自動車用のV8エンジンを流用。エンジン3つをつなげることでパワー不足を補った。
- トランスミッション - 複雑なシンクロなどを簡略化。
とまあ、こんな感じで現状で生産しやすいように改められ、計画に多少遅延をしつつも、1941年10月には車体を作るめどが立った。
が、1941年12月に日本が真珠湾を攻撃し参戦。ものすごい勢いで進撃してくる日本軍に対してオーストラリアは焦ることになる。
翌月の1942年1月には試作車1号が完成するのだが、時間短縮のため試験と生産ラインの構築を同時進行で行うことを決定。試験結果を生かしつつ、生産が開始された。
生産
1942年8月には念願の量産型第一号が完成し、「センチネル」の愛称がつけられた。これは番兵や歩哨の意味で、オーストラリアのすぐ近くまで日本軍が迫ってきていたことに由来するそうな。
主砲の2ポンド砲では火力が足りなかったらしく、改良型の25ポンド榴弾砲搭載型や、17ポンド砲搭載型も生産される予定で、さらなる増産の為に生産工場を増やして大量生産する計画が立てられた。
しかし、1943年7月に突然計画どころか生産すらも打ち切りとなる。
アメリカ 「新型のM4中戦車が大量生産できるようになったぜ。どんどん送れるから戦車こっちにすれば?」
オーストラリア 「まじで?やっぱそっちにするわ。その新しい戦車くださいな」
こんなやりとりがあったか定かではないが、こうしてセンチネル巡航戦車は生産および開発中止となっってしまった。
生産数はAC Ⅰが65両、「E」シリーズと呼ばれる試作車が3両である。
配備
完成車両のほとんどは実戦に投入はされず後方で訓練用に使用された。それ以外では1943年に映画「トブルクの鼠」にて、ドイツ軍の戦車風に仮装された車両が撮影に使用されたくらいであった。
終戦後は一部の車両が予備兵器としてストックされ、1956年には全車両が退役している。
3両が現存し、博物館などで展示されている。
バリエーション
- AC Ⅰ - 2ポンド砲搭載の最初の型。
- AC Ⅱ - アメリカ製のトラックのエンジンと変速機を搭載する計画案。重量増から取り止めとなった。
- AC Ⅲ サンダーボルト - 25ポンド榴弾砲搭載型。主砲が大きくなったので砲塔と砲塔リングを拡大。車体の機関銃と機関銃手を省略し、空きスペースに燃料タンクを追加した改良型。
- AC Ⅲ 17ポンド砲試験型 - 17ポンド砲発射の衝撃に耐えられるかテストするため、砲塔に25ポンド榴弾砲を2門装備した試験車両。試験の結果良好で、AC Ⅳが開発される
- AC Ⅳ - 17ポンド砲搭載型。試作段階で計画中止。
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関連項目
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