ソールオリエンス(Sol Oriens) とは、2020年生まれの日本の競走馬。鹿毛の牡馬。
概要
父キタサンブラック、母*スキア、母父Motivatorという血統。
父は王道路線を突き進んでGⅠ7勝を挙げた2010年代を代表する名馬の一頭。種牡馬としてはステイヤーと見られたこともり評価が不安視されていたが、初年度産駒からいきなりイクイノックスを送り出して種牡馬としても評価が急上昇中である。ソールオリエンスは2年目の産駒にあたる。
母はフランスからの輸入繁殖牝馬で、自身は2011年のフィユドレール賞(GⅢ)を勝利している。ソールオリエンスはその第6仔。既にこの馬の前には半兄(父ディープインパクト)にあたるヴァンドギャルド(2020年富士S(GⅡ)優勝・2021年ドバイターフ2着・2022年同競走3着)を出していた。
母父モティヴェイターはMontjeuの初年度産駒で、2005年のダービーステークスの勝ち馬。種牡馬としては凱旋門賞連覇のTreveを送り出した。日本ではなんといってもメロディーレーン・タイトルホルダー姉弟の母父としておなじみである。
2020年4月4日、社台ファームで誕生。兄ヴァンドギャルドらと同様にそのまま一口馬主クラブの社台レースホースの所有馬となり、一口150万円×40口(=6000万円)で募集された。
馬名意味は「ラテン語で『朝日』。母名から連想」。母スキアは古代ギリシャ語で「影」「日陰」といった意味である。
ちなみにアイルランドに、1941年のアイリッシュダービーを勝利した同名の馬がいたりする。
黒い影に朝日が昇る
2歳(2022年)
デビュー
フィエールマンやウインマリリン、ユーバーレーベンなどで知られる美浦の名門・手塚貴久厩舎に入厩。
デビューは2022年11月13日、東京・芝1800mの新馬戦。戸崎圭太を鞍上に、単勝1.4倍の断然の1番人気に支持される。レースはゲート内でよそ見をした瞬間にゲートが開き、スタート直後に何度も隣の馬とぶつかってしまった上に、やや掛かり気味に前に出て行き、となんとも危なっかしい感じでスタートしたが、外の3番手から直線で戸崎騎手が追い出すと、2番人気のレーベンスティールと馬体を併せての追い比べに突入。最後はクビ差振り切ってデビュー勝ちを飾る。
上がり3Fは33秒3。敗れたレーベンスティールが続く未勝利戦を3馬身半差で楽勝したため、レベルの高い接戦を制したとソールオリエンスの評価も高まった。
3歳(2023年)
京成杯
年末の2歳GⅠには向かわず、2戦目は明けて3歳、1月の京成杯へ。鞍上は横山武史に交代。出走馬中唯一のキャリア1戦ながら、ホープフルSで3番人気6着のセブンマジシャンと人気を分け合い、2.7倍の同オッズで2番人気に支持される。レース当日は中山競馬場の馬房で寝ていたという。
そしてここでソールオリエンスは、色んな意味で驚愕のパフォーマンスを繰り出した。
レースは1000m62秒2というスローペースの展開となり、ソールオリエンスは中団から進めたが、事が起きたのは4コーナー。調教で右に倒れる感じがあったので気を付けていたという武史騎手だったが、そのせいで手前変換のタイミングが合わず、逆手前のままコーナーに入ってしまった結果、ソールオリエンスは直線入口のところで盛大にドリフト。ほとんど逸走せんばかりに外に大きく膨らんでしまう。観客からは悲鳴も上がった。
直線の短い中山で、4角でこれだけ派手に距離ロスをすれば当然大きな不利である。ところがなんと、そこからソールオリエンスは大外を力強く一気に加速。あっという間に他馬を置き去りにして突き抜け、2馬身半差をつけて圧勝してしまったのである。あれだけ派手に膨らんで上がり3Fは断然の34秒5。まさに衝撃の完勝だった。
武史騎手は「他馬に迷惑を掛けて申し訳ない気持ちでいっぱい」と反省しきりだったが、「まだ緩いのでこの馬場はすごく心配でしたし、3コーナーで手応えが怪しくなりましたけど、今日は能力ですべてカバーしてくれて、改めて強い馬だと認識できました」とコメント。
ところでこのレースを見ていた多くの競馬ファンは、同じ中山2000m、4角で派手に吹っ飛んだ馬が圧勝した、あのレースを想起したはずである。そう、「これほどまでに強いのか!」と言わしめた、ドゥラメンテの2015年皐月賞だ。
初年度産駒のイクイノックスがその鋭い末脚から「父より同期のドゥラメンテに似てる」とよく言われているが、今度は2年目の産駒がドゥラメンテばりのレースを披露してクラシックに名乗りを挙げた。ドゥラメンテ産駒のタイトルホルダーが逆にキタサンブラック似の逃げ馬なことといい、いったいどんな因果なのか。
ともあれ2023年のクラシック戦線に色んな意味で衝撃の名乗りを挙げたソールオリエンス。京成杯後は疲労がみられたため、皐月賞へ直行することとなった。
皐月賞
かくしてキャリア2戦で迎えた皐月賞。鞍上は引き続き横山武史である。2歳GⅠ馬がそれぞれ別路線へ向かったため不在であり、近年稀に見る大混戦ムードとなった。事前予想では1番人気だったソールオリエンスだったが、1枠1番という枠が発表されると、少頭数しか経験がないことへの不安(実際前週の桜花賞で同じくキャリア2戦・多頭数経験なしの2番人気ライトクオンタムが内枠で揉まれて撃沈していた)に加え、土曜日の雨で内馬場が荒れたこともあって人気を下げ、最終的にはファントムシーフに続く5.2倍の2番人気に落ち着く。
日曜日も降ったり止んだりで乾ききらずそのまま重馬場となった。稍重より悪化した馬場での皐月賞はウィナーズサークルが勝った不良馬場の1989年以来34年ぶりとなる。レース本番。トップナイフが大きく出遅れ、逃げ宣言のグラニットが重馬場にもかかわらず1000m58秒5の超ハイペースで逃げる展開。ソールオリエンスは後方に待機する。そのまま4コーナーで最後方から大外をブン回したソールオリエンスは、大外から一気に加速して馬群を斬り捨て猛然と追い上げる。直線に入って先に抜け出し押し切ろうとした弥生賞馬タスティエーラ、これを追って馬場の真ん中から押し上げていた1番人気ファントムシーフさえ止まって見えるようなとんでもないロングスパートの末脚で一気に前を撫で切り、1と1/4馬身差でゴールへと突き抜けた。……トライアル回避・休養明け・若干人気落ち、からの後方から大外ぶん回しておいて快勝……本番でもここまでドゥラメンテに似せなくても。
キタサンブラック産駒・初のクラシック制覇。上がり3ハロンは35秒5。レース全体の上がりが37秒2、上がり2位はファントムシーフらが記録した36秒4だったのでソールオリエンスがコンマ9秒も速い。まさに別次元の瞬発力を発揮していた。さらに4コーナー通過は18頭中17番手。あの1993年の「鬼脚」ナリタタイシンですら12番手からであり、直線の短い中山の皐月賞で文字通りの最後方からほぼ全頭ブチ抜いての勝利は前代未聞である。
武史騎手は2021年のエフフォーリアに続いての無敗での皐月賞制覇。GⅠ勝利自体1年4ヶ月ぶりで、2021年の5勝から22年0勝の悔しさを味わったこともあり、ゴール後にひとしきり歓喜の雄たけびをあげた後、馬に対して「流石やお前!!」と絶叫した。
生産者の吉田照哉氏曰く「ダービーの方がもっと似合うと思います」という事で、次走はもちろん日本ダービー(GⅠ)。皐月賞同様に父キタサンブラックが勝てなかった二冠目の制覇を目指す。鞍上の武史にとってはエフフォーリアでの無念を晴らす絶好の機会。管理する手塚師はクラシックで未勝利なのはダービーのみであり、勝てば61年ぶり史上5人目のクラシック完全制覇となる。オークスを圧勝し牝馬二冠を為したドゥラメンテ産駒リバティアイランドに続き、二冠に挑む同期キタサンブラック産駒ソールオリエンス。決戦に向けて邁進する。
日本ダービー
2冠制覇を目指し迎えた第90回日本ダービー。ゲートは3枠5番。グレード制導入以降の無敗の皐月賞馬はこれまでシンボリルドルフ、ディープインパクト、コントレイルと5番枠に入っているがいずれも無敗三冠を達成、三冠馬オルフェーヴルもこの5番枠で勝利というデータ[1]、皐月賞で見せた圧巻の走りもあって、単勝人気は1.8倍。2番人気の同父の青葉賞馬スキルヴィング以下に圧倒的な差を付け大きな支持を集める。
皐月賞と打って変わって良馬場で迎えたレース。先行策を取り好位5番手に付けたが、先行すると見られていたホープフルS勝ち馬ドゥラエレーデが落馬し、パクスオトマニカが大逃げを見せるもののレース予想とは一変したスローペースに。最終直線では前を行くタスティエーラを交わそうとしたもののタスティエーラ鞍上のダミアン・レーンに絶妙に進路を塞がれ、内には複数の馬がいて向かえず、外からは向こう正面から上がってきたハーツコンチェルトが横におり中々抜け出せない。僅かに一時スペースが空くものの、一瞬のキレ味がないソールオリエンスには突破は出来ず厳しいレース展開に。残り100m近くになって進路が開いてスパートするものの、時すでに遅し。先に抜け出していたタスティエーラを捉えられずクビ差の2着。皐月賞の逆襲を許す形となり、無敗三冠の夢は散った。鞍上の武史も二年前の雪辱を果たせず人馬共に悔しい一戦となった。
その後は放牧に出され、秋はセントライト記念から始動することが発表された。
余談
皐月賞勝利の裏で
本馬の皐月賞制覇は、戦後ではハギノトップレディ、フサイチコンコルド、デアリングタクトに並ぶ最少となるキャリア3戦目でのクラシック制覇である。さらに京成杯馬のクラシック制覇はエイシンフラッシュ以来13年ぶりとなる。
鞍上の横山武史にとっては2021年エフフォーリア以来の皐月賞2勝目だが、このレースでは一つの偶然が起こった。勝ちタイム2:00.6はエフフォーリアの皐月賞と同タイムだったのである。一年ぶりの武史GI制覇ということもあり、当日のTwitterではエフフォーリアの名前がトレンド入りした。ちなみにこの時、社台SSで繋養中のエフフォーリアとキタサンブラックの馬房は隣同士だった。
23年度クラシックから始まった、JRAによるG1騎乗騎手へのジョッキーカメラ装着企画。
先週の桜花賞でのリバティアイランド・川田将雅騎手に続き、皐月賞ではファントムシーフとソールオリエンスの上位人気2頭の騎手(クリストフ・ルメール&横山武史)がカメラ役となったのだが、レース後は先にファントムシーフのカメラが公開され、何故か勝ち馬であるソールオリエンスの映像の公開はやや遅れていた。
ルメール騎手の乗るファントムシーフカメラ / 武史騎手の乗るソールオリエンスカメラ
それもそのはず、先団を進んだルメール騎手のカメラは左をぶち抜いていくソールオリエンスをばっちり捉えていたのに対して、最後方を進んだ武史騎手のカメラは前を行く馬たちによって跳ね上げられた泥水で早々に塞がり、ゴール後しばらくは彼の絶叫と馬を叩く音だけが聞こえるラジオ状態になってしまったのだ(このためレース中継のワイプを併映する処置が行われている)。
結果、風切り音や歓声が響くレース中の武史、レースが終わった後に荒い息遣いを見せる武史、叫び声が音割れしまくっている武史、ミルコ・デムーロに何度もお礼する武史、「とにかく外に膨れる」と周囲に語りまくる武史、雄たけびにビビったソールオリエンスに謝罪する武史、厩舎の人と興奮気味にソールオリエンスや将来の展望について語り合う武史と、こと視聴者には肝心のソールオリエンス視点のレース映像が全く伝わらないのに、武史の興奮と感動ばかりがこれでもかと伝わってくる内容となっており、横山武史ファンにとっては聴き所満載の映像?に仕上がってしまった。誰が呼んだか「横山武史ASMR」。
血統表
| キタサンブラック 2012 鹿毛 |
ブラックタイド 2001 黒鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
| Wishing Well | |||
| *ウインドインハーヘア | Alzao | ||
| Burghclere | |||
| シュガーハート 2005 鹿毛 |
サクラバクシンオー | サクラユタカオー | |
| サクラハゴロモ | |||
| オトメゴコロ | *ジャッジアンジェルーチ | ||
| *テイズリー | |||
| *スキア 2007 鹿毛 FNo.1-k |
Motivator 2002 鹿毛 |
Montjeu | Sadler's Wells |
| Floripedes | |||
| Out West | Gone West | ||
| Chellingoua | |||
| Light Quest 2000 鹿毛 |
*クエストフォーフェイム | Rainbow Quest | |
| Aryenne | |||
| Gleam of Light | *デインヒル | ||
| Gold Runner |
関連動画
関連リンク
関連項目
脚注
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- 0pt



