タイカレーとは、代表的なタイ料理のひとつで、香辛料を利かせたスープのことである。「カレー」と呼ばれているが、これは外国人がカレーに似ているということで勝手にそう呼んでいるだけで、インド発祥のカレーとはまったく別物である。正式名称はゲーンという。
概要
先に書いたとおり、「タイカレー(ゲーン)」はインドのカレーと別物である(正確に言うと、インドにも「カレー」という名の料理はない)。おそらく同じアジアであること、香辛料の利いた汁物であるということから混同されたのであろう。共通点なんてそれくらいなもので、それ以外の点ではインドカレーとはまったく違う代物である。スプーンを使って、ご飯を浸して食べるという点では、日本の「カレーライス」のほうがまだ似通っているかもしれない。
東南アジア料理の特徴的な「辛さ」「独特の香り」という要素が実に強く出ており、いかにもタイ料理っぽいものを食べたい時にはオススメである。逆に言うと、結構人を選ぶ料理なので、「何食べたい?」と聞いて「なんでもいい」と答える類いの人にはあまりオススメできない。
なお、タイカレーはココナッツミルクの脂肪分がたっぷり含まれた高カロリー食品で、それをご飯という炭水化物にぶっかけて食べるものである。「カプサイシンで脂肪燃焼!」とか言う人もたまにいるが、そういう副効果には期待しないほうがいい。
タイカレーの種類
- レッドカレー(แกงเผ็ด、ゲーン・ペッ)
- タイ語の名前は「辛いゲーン」の意味。オレンジ色~赤色の辛そうな見た目は赤唐辛子の色である。
- 見た目通り実際に辛いのだが、日本人向けのものは辛さを抑えていることがある。
- グリーンカレー(แกงเขียวหวาน、ゲーン・キャオワーン)
- 「緑の甘いゲーン」の意味。緑がかった色は青唐辛子などの色。甘いといっても甘口カレーのように辛さ控えめというわけではなく、しっかり辛い。
- イエローカレー(แกงกะหรี่、ゲーン・ガリー)
- 「カレーのゲーン」の意味。ガリーを巻き舌で発音するとそれらしく聞こえる。 カレーとしてはおなじみの香辛料、ターメリックが入っていて黄色い。
- ちなみにタイ語では日本のカレーのことを「ゲーン・ガリー・イープン」(イープン=日本の)と呼ぶ。
- マッサマンカレー(แกงมัสมั่น、ゲーン・マッサマン)
- マッサマンは元々タイ語ではなく、「イスラムの」を意味する ペルシア語のムスルマンが語源である。 名前の通りイスラム教の戒律で許されている(ハラール)種類の食材が使われることが多い。
- 2011年にはCNNGoの「世界で最もおいしい食べ物50」に選出された。
その他のタイカレー
- ゲーン・ソム(แกงส้ม) 「酸っぱいゲーン」。タマリンドという果実を使ったゲーン。オレンジカレーと呼ばれることも。
- ゲーン・ケー(แกงแค) 「這胡椒のゲーン」。ケーという胡椒の葉を使ったタイ北部のゲーン。
- ゲーン・パー(แกงป่า) 「森のゲーン」。ココナッツミルクが入っていない。
- パネーン(พะแนง) 名前の由来はマレーシアのペナン。見た目はゲーン・ペッに似ているが汁気が少なく味もマイルド。
タイカレーの中身
何度も言ったように、タイカレーはインドのカレーとはほとんど共通点が無く、材料もインドカレーではそうそうお目にかかれないようなものが並んでいる。
- シュリンプペースト
- 塩漬けにした海老をすり潰したペースト。これをベースに唐辛子や香味野菜を混ぜて、一般的なカレールーに相当する「カレーペースト」を作る。
- 香草
- すり潰してカレーペーストに混ぜたり、具も兼ねて汁の中に入れたりする。タマネギやにんにく、生姜などの日本でもよく見るものから、レモングラスやバイマックルー、パクチー(コリアンダー)などの独特の強烈な香りが付くものまで色々が材料に使われる。ここらへんが大いに好みの分かれるあたり。
- 唐辛子
- これだけは万国共通。唐辛子も赤唐辛子か青唐辛子かで分けたり、辛さも様々調節される。辛さを出すときは、「プリッキー・ヌー」という強烈な辛さの唐辛子がよく使われる。
- ナンプラー
- タイ料理の基本。魚を漬け込んで作った醤油(魚醤)で、醤油のように旨みを持たせるが、臭いが強い。料理に入ってしまえば案外分からないものだが、やはり好みの分かれるところ。
- ココナッツミルク
- タイには牧畜の文化が無かったので、動物の乳の代わりとしてココナッツミルクが使われてきた。ほとんどのカレーにはこのココナッツミルクが使われており、まろやかさとコクを出している。
- 肉・魚介
- タイには牧畜の文化が無かったので、牛肉を使った料理があまり発達しなかった。このため、タイカレーに入る肉と言えば基本的に鶏か豚である。また水産物のカレーも多く、ティラピアなどの川魚を使ったものもある。
- 野菜
- 煮込みに使える野菜であれば、何でもタイカレーの材料になり得る。定番なのは、タケノコ、きのこ類、ナス、ピーマン、ジャガイモ、カボチャなど。
- タイ料理に特徴的な食材として、マクア・プワン(和名スズメナスビ)というグリーンピースのような小粒のナスがよく使われる。
タイカレーを食べる
料理店で食べる
タイ料理はエスニック料理の中ではまだメジャーな部類なので、大都市圏に出れば、割と見つかることだろう。参考までに、食べログ登録店では東京都に571店舗、大阪府に90店舗、愛知県に56店舗がある。地方だと少し難しいかもしれない。登録分類上タイカレーとして登録しているが、実際にはマレーシアやインドネシアなど近隣外国の料理だったりする店もある(それぞれもタイカレーのような料理があり、それらもまた美味)。
面白いのが各店のお品書で、タイ語で「ゲーン・パッ」などと書いている店もあれば、英語で「レッドカレー」などと書いている店もあったりする。特にタイ語表記はわかりにくいことこの上ないので、筆者みたいに通ぶって失敗しないよう、ちゃんと内容を確認の上で注文されたし。
香辛料の塊なので、基本的に辛いものだと思っていた方がいい。辛さはお店の人に相談すればある程度何とかなったりするので、一度は掛け合ってもらいたい。お店によりけりだが、だいたいはレッドカレーが一番辛く、次いでグリーン、イエローといった感じ。
インド料理屋でインドカレーを食べたことある人ならわかるかもしれないが、タイ料理屋で食べるタイカレーもあまり安くない。ココイチのような価格を期待していくと面を喰らうだろう。ちなみに、タイ料理屋にはどこでもタイ料理の代表・トムヤムクンが置いてあるが、多くの場合でカレーより高いのが難点。
レトルトで食べる
タイカレーのレトルトカレーも存在する。一般的なタイカレーに比べてどろっとしてるので、ご飯に盛るのも問題ない。
また、タイカレーの缶詰というものもある。お好みで炒めた野菜を加えてどうぞ。
自分で作る
レトルトで満足できなければ、自分で作るしかない。タイカレーも普通のカレー同様に、案外簡単に作れるものである。自分好みに調節できるのが何よりの強み。ただしメインとなるペーストなどを売ってるお店も限られるので注意。
- カレーペースト - 少し大きめの食料品店・スーパーなどで手に入る。色で迷ったら、とりあえずグリーンで。
- ココナッツミルク - これも食料品店・スーパーなどで。缶詰入りが多く、他に粉末状、紙パック入りも。
- ナンプラー - 大きめの食料品店でないと扱っていない。「ニョクマム」や「しょっつる」でも代用可。
- 具 - 定番は鶏とタケノコだが、好みで好きなものを入れればいい。ナスやズッキーニもおすすめ。
- ご飯 - 本場タイでは長細いインディカ米とのことだが、よほどのこだわりがなければ普通のご飯でおk。
- 砂糖 - 辛いのが大好きな人でも、味を整えるためにとりあえず入れると吉。
- 唐辛子 - もっと刺激が欲しい人向け。
- 香辛料 - お好みでこだわりの香辛料を添える。イエローカレーならカレー粉を足すのもありかも。
以下はグリーンカレーペーストの一例。左の50gのペーストに対して、ココナッツミルク缶400gを使うくらいが基本。
もう少し手軽なセット品も存在する。
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
- 6
- 0pt