タイムマシンとは、未来または過去に移動することのできる(今のところ)架空の道具、またはその道具を題材にしたH・G・ウェルズの小説のタイトルである。
曖昧さ回避
概要
タイムマシンとは、イギリスのSF作家H・G・ウェルズが1895年に発表した『タイム・マシン』で初めて登場させて以来、SF作品では定番と言っていいほどよく登場する道具の一つ。
現在から見て未来または過去に時間移動するが、本人が乗り込む乗り物形だったり、本人や物だけが移動する転送機のようなものだったりその種類は色々ある。
「タイム・マシン」のあらすじ・及ぼした影響など
主人公(語り手)の友人である「時間旅行者」は、時間を第4の次元と考え、時間の移動を可能とする機械「タイムマシン」を発明する。彼はそれを使って八十万年後の未来へと旅立つが、そこでは人類は支配階級の成れの果てで肉体の衰えた「エロイ」と労働階級の成れの果てで強靭な肉体を持つ食人族「モーロック」という二つの種族に分かれていた。当時の状況を踏まえた社会批評的な側面の大きいディストピア小説である。
なお、ウェルズ以前にも過去に戻る話・未来を見る話、さらに時間を移動する機械を物語の中で書いた人間は存在するが、「科学的手段で時間を飛び越える機械」という概念を世に広め定着させた功績は大きい。
1960年と2002年にそれぞれ二度の映画化が行われており、どちらも時間移動中のマシン外部の描写(前者は特殊効果と微速度撮影、後者はさらにコンピューターグラフィックスが加わる)がウリである。2002年版ではH.G.ウェルズのひ孫であるサイモン・ウェルズが制作にかかわっている(ちなみに原作では過去に行くエピソードはなく、2002年版冒頭のエピソードは映画オリジナルの展開である。ただし、ウエルズ自身は『タイム・マシン』以前に『時の探検家たち』で過去へのタイムトラベルを扱う予定だったようだが未完に終わっている)
また、本作と世界に繋がりを持たせた他作者による派生作品もいくつかある。ウエルズの遺族に承認をとった続編小説「タイム・シップ」のほか、小説「スペース・マシン」「時の地図」、映画「タイム・アフター・タイム」、漫画「リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン」など。時間旅行者ご本人が出てくる作品もいくつかある。また、もはや「古典」と化している本作品の存在がキーワードとなる作品も多い(例:世にも奇妙な物語「太平洋は燃えているか」)。そして、ウエルズに影響を受けてタイムトラベルを研究する物理学者までいる(例:ロナルド・L・マレット)。
タイムマシンの例
乗り物型
- タイムマシン (漫画・アニメ「ドラえもん」)
- 多分日本人に最も馴染みのあるであろうタイムマシン。通常の時空とは異なる超空間を移動しているらしい。ちなみにドラえもんが持っているものは定員5人まで。空間移動機能も併せ持つため、(故障やトラブル等が無ければ)好きな時代の好きな場所に自由に行くことができる優れもの。ドラえもん劇中では、2008年に開発されている。
なお、ドラえもんの時間に関する秘密どうぐは他にも複数ある(例:どこでもドアの「時差調整ダイヤル」、「タイム電話」など。 「タイムふろしき」も広義のタイムマシンと言えるかもしれない。また、「タイムベルト」は実質的に定員1人空間移動機能なしのタイムマシンで、タイムマシンの下位互換と言える。) - デロリアン (映画「バックトゥーザフューチャー」)
- 車型。実写で一番有名な乗り物型のタイムマシンかもしれない。元々のエネルギー源は核エネルギーだが時間移動のたびにちょくちょく改造された。開発は1985年。デロリアンとはベース車両である「DMC-12」を製造したメーカーのことであり、その愛称。
- ウェルズ型 (小説・映画「タイム・マシン」)
- 本編内では「タイムマシン」としか呼ばれないため、便宜上この名を使用する。
この型が登場する小説はタイムマシンを扱った小説の中ではもっとも最初に書かれたものであるため、タイムマシンの元祖とも言われる。ドラえもんのやデロリアンとは違い場所移動は出来ない。
映画では、時空移動中に周りの出来事が早回しで見えるという演出がなされた。 - 航時機 (漫画・アニメ「キテレツ大百科」)
- 日本製かつ素材が木というタイムマシン。飛行能力を有するが、木製なためかよく壊れる。「大百科の記述をもとに現代のキテレツが製作」→「江戸時代の奇天烈斎がそれを元に大百科に記載」となっているので、実は真の発明者はハッキリしない。またアニメ版では複数の話に登場したが、漫画版では一話限りの登場。
- シルバード (ゲーム「クロノ・トリガー」)
- 古代魔法王国ジールの三賢者の一人「理の賢者」ガッシュが開発してプレイヤーキャラクターらに託した「時の翼」で、乗り込み式のタイムマシン。プレイヤーが名付ける事ができ、デフォルトネームは「シルバード」。元々は時間移動機能しかなく場所の移動はできなかったが、あるイベントで勝手に翼を取り付けられて飛行能力を獲得する。
- デンライナー (特撮「仮面ライダー電王」)
- 「人間の記憶」を元に時間を航行する列車。時間の正常な運航を目的としている。普段は異空間を走っているが、現実世界を走る際は路線が勝手に出てくるため空中や海上を進むことが可能。複数の戦闘車両が接続されている。
転送機型
- タイムカプセル (ゲーム「ポケットモンスター金・銀」)
- 人間ではなくポケモンを別の時間に送る装置。ストーリーには直接関与しないが、主人公はこの装置を使って3年前のトレーナーとポケモン交換を行うことになる。かがくのちからってすげー!なお、転送先の時代に発見されていない種類のポケモンや発見されていないワザを覚えたポケモンは転送することが出来ない。
- クロノス・ジョウンター (小説・漫画「クロノス・ジョウンターの伝説」)
- 物質過去射出機。「時間軸圧縮理論」に基づき、人間を過去のある時点に打ち出す装置。だが、過去に長期間滞在することはできず、戻った時間に比例して元の時間より未来へと弾き飛ばされてしまうという欠点がある。
- TDE/Time Displacement Equipment (映画・ドラマ「ターミネーター」シリーズ)
- 人類の抹殺を試みた人工知能・スカイネットが人類側レジスタンスのリーダーであるジョン・コナー抹殺のために、またジョン・コナーが自身の抹殺の阻止のために使用したスカイネットの中枢部分で建造された転送装置。なお、生体しか転送できないため、転送される人間やターミネーターは必ず裸になってしまうけしからん問題がある。
- タイムトンネル (ドラマ「タイムトンネル」)
- アメリカ政府の極秘計画「チックタック計画」で開発された任意の時間・空間と現代を繋げる時空転送機。指令室から転送者をモニターできるが、そのためには時空上の位置をトレスするため特殊な放射線を浴びる必要がある(この技術が無かった他国・他機関の計画は転送者が行方不明になり失敗に終わっている)。
通信機
人間や物ではなく情報を運ぶもの。そのため、制約が乗物型などに比べて大きい。
- 電話レンジ(仮) (ゲーム「Steins;Gate」)
- 元々は捨てられていた電子レンジをX68000などと接続して魔改造した、「携帯電話から遠隔操作できる電子レンジ」という役に立たない発明品だったが、偶然にも特定条件下で「過去へメールを送る機能」が存在することが発見された。ただし、36バイトの電子情報(半角なら36文字、全角文字なら18字の文章)しか送信することができない。
- タイムウインドウシステム (映画「デジャヴ」)
- 米国防総省が開発を進めていた極秘の監視システム。複数の衛星から受信したあらゆる周波数の電磁波をコンピューター内で分析処理することで、特定エリア内の情景をあらゆる角度から見ることができる。ただし合成に時間がかかるため、「4日と6時間3分45秒前」の映像を一度しかストリーミング再生することしかできない。
- 無線機(映画「オーロラの彼方へ」)
- 主人公が父の遺品のハム無線機を使ったところ、偶然にも30年前の過去に存在する同じ無線機に繋がるというもの。詳細は不明だが、同時期に大規模なオーロラが発生しており何らかの宇宙規模の異変が関係しているとみられる。通常の無線通信のように音声以外はやり取りすることが出来ず、なおかつ繋がる場所もその1点に限定されている。
その他
上記分類に当てはまらないものやファンタジー系のものについて示す。タイムトラベルを扱う作品では、別にタイムマシンのような機械的なものに頼らず、「自身の特殊能力が発現した」「超常現象が起こった」とする場合も多い。
前者の代表としては「時をかける少女」「バタフライ・エフェクト」「仮面ライダーカブト」「魔法少女まどかマギカ」、後者の代表としては「戦国自衛隊」「ファイナル・カウントダウン」「ジパング」「仁-JIN-」などがある。加速・停止・巻き戻し等の時間操作能力を広義のタイムトラベルと見る人もいる。
- TPDD (小説・アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」)
- タイム・プレーン・デストロイ・デバイスの略、日本語に訳すと「時間平衡破壊装置」といったところ。使用する朝比奈みくる曰く、「装置」というのは語弊があり、脳内に無形で存在しているらしい。長門有希曰く「不確かで原始的、許容範囲内であるがノイズも生じる」。
- ターディス/TARDIS (ドラマ「ドクター・フー」)
- Time And Relative Dimension In Space。ドクターの相棒である次元超越時空移動装置。時間と空間を自在に移動する能力をもつが、自意識を持つ一種の生き物でもあるため「マシン」と言うには語弊がある。元は擬態機能があったが壊れてしまい、60年代イギリスのポリスボックス(交番兼警官呼び出し用電話ボックス)の外形で固定されている。内部には外見から想像もつかない広い空間が広がっており、非常に快適。
- タイムマシン(CookieClicker)
- ただクッキーを生産する、それだけのゲームに登場する超絶生産施設。過去から「食べられる前のクッキー」を持ってくることで毎秒9万個以上ものクッキーを製造出来る。どうやらこの世界の住人は、クッキー生産のためならタイムパラドックスを守る気など更々ないらしい。また、こんな恐るべき機械をクッキー生産「以外」の用途に使うこともまれらしい。どこか見た目はドラえもんのそれに似ている。
タイムマシンは実現可能か?
現在の技術ではタイムマシンはSFの域に留まるが、将来的に実現可能なのだろうか?
未来へ行く場合
帰ることを考えなければこれが一番実現の可能性が高い。
アインシュタインの特殊相対性理論により、超高速で物体が移動した場合その内部の時間は、通常空間よりも時間の流れが遅くなることが分かっている。
すなわち超高速で移動する乗り物に乗れば、搭乗者にとっては数日の時間が、通常空間では数年~数十年経過することも可能になる。映画「猿の惑星」を思い返していただければ分かりやすいだろう。この現象について、日本では一般に浦島太郎になぞらえて「ウラシマ効果」と呼ぶ。ただしこの方法で時間移動しても元の時代に戻ることは不可能。「過去へのタイムトラベルが発明されるまで待つ」、というなら話は別だが。
また、別の方法としては低温状態に体をおき、新陳代謝を抑えることで長時間の昏睡状態に入って未来に覚醒させる「人工冬眠」(作品によりコールドスリープ・ハイバネーションという呼び名もある)という技術が考えられている。
超低温状態で昏睡状態に陥ったために遭難事故から助かった事例などが報告されており、やり方次第では長期の宇宙航行や治療法が確立されていない病気への対処などが期待できるとされる。これも一方通行のタイムトラベルであり、現代へ戻ってくることは出来ない。人工冬眠は「夏への扉」「2001年宇宙の旅」などに登場し、これもSF世界ではお馴染みの設定である。日本では「氷の中に閉じ込められていたのを蘇生させた」という設定も良く使用される。
過去へ行く場合
あくまでも理論上では光の速さを超える速度で移動できれば過去に戻ることは可能であると言われる。
これは相対性理論によるものだが、相対性理論は同時に物体が光の速さを越えることは出来ないとしている。光速を超える粒子「タキオン」の存在を予想する人もいるが、まだ仮説以上の存在ではなく、存在を否定する意見も多い。他にもワームホールを利用したものなどが仮説として存在するが、そもそも「時間の流れ」の定義そのものが曖昧である現代の物理学では到底実現不可能であることは間違いない。そして、過去への旅行には必ず「タイムパラドックス」の問題がついて回ることになる。
物理学者スティーブン・ホーキング博士は過去へのタイムトラベルが可能な時空構造は場のエネルギーが無限大になるので宇宙がその存在を認めないとする「時間順序保護仮説」を唱えている。また自身の講演会では「未来人がこの時代にいない以上、将来的に実現する可能性は無い」と(半ば冗談で)主張したこともある。
ただ、これまで様々な宇宙論予想で他の学者との賭けをしてきたホーキング博士であるが「タイムトラベルの実現に関して賭けはしない」とも発言している。(※毎回自分が考える説と「逆」に賭けるポリシーの持ち主だそうなので、流石に自説を曲げ、現代物理全てをひっくり返す「タイムトラベルは実現する!」と言う気にはならないようだ)。
また、時間が変われば宇宙における位置(座標)が変化してしまうという問題もある。地球は自転しながら太陽の周りを秒速約28kmで公転をしている。さらに太陽系は銀河系(天の川銀河)内を秒速約240kmで周回、これとは別に銀河系自体も秒速約600kmで宇宙空間を移動していると考えられている。(もっと大きなスケールで見ると、宇宙自体が絶えず膨張し続けている。)例えば、自転周期にあわせて24時間前(後)の同じ場所にタイムトラベルしようとした場合、前述の通り地球は常に宇宙空間を移動し続けているため、宇宙の真っ只中にタイムトラベルすることになってしまう。これは公転周期の1年前(後)にあわせてタイムトラベルした場合でも同様の結果となる。これを克服するには、タイムトラベルを行なう機能とは別に、その時間においてその場所が宇宙座標のどこにあるかを計算しその場所に移動できる機能をタイムマシンに持たせる必要がある。(そもそもそんなマシンが開発されるより、ワープ装置が開発される方が早いのは気のせいでしょうか……)
→タイムトラベルが実現不可能だと言う理由を端的に説明する画像
現在考案されているタイムマシンの理論の一例
基礎的なタイムトラベル理論とその問題点に関しては「タイムトラベル11の理論」も参照のこと。
- 超光速粒子タキオンの利用
- 特殊相対論的効果(亜光速における時間の遅れ)の利用
- 一般相対論的効果(重力による時間の遅れ)の利用
- ブラックホールの利用
- ワームホール(時空の虫食い穴)の利用
- 宇宙ひもの利用
- ティプラーの円筒(シリンダー)
数学者フランク・ティプラーが考案。中性子星のような超高密度物質で作られた無限の長さの円筒状物体を超高速(光速に近いスピード)で回転させると、その周囲で時空が歪み、「閉じた時間線(CTL)」が形成される。その周りを周回することでタイムトラベルが可能となる。無限でなくても良いという理論もあるが、無限の長さで無いと縦に潰れて「円筒」ではなく「円盤」になってしまう可能性が高い。
ただし、閉じた時間線は「円筒が作られて回転させられた時点」までしか存在しないので、そこまでが戻ることができる限界になる。一方本質的な問題として、宇宙ステーション1個すら大変なのに、「そんな巨大な質量の円筒をどうやって製造し、動かすのか」という問題がある。 - 量子論的タイムトラベル
以下詳しい人求む
関連動画
関連項目
- タイムトラベル11の理論
- SF
- ドラえもん
- タイムボカンシリーズ
- バックトゥザフューチャー
- 朝比奈みくる
- ジョン・タイター
- タイムパラドックス
- パラレルワールド
- 現在 / 過去 / 未来 / 未来人 / 未来組
- 時間移動
- タイムリープ
最後に
「人は誰でもタイムマシンを持っている。過去へ連れ戻すのは記憶、未来へ連れていくのは・・・夢」
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