タガノビューティー(Tagano Beauty)とは、2017年生まれの日本の競走馬。鹿毛の牡馬。
タガノ軍団に35年目の悲願をもたらした馬。馬名から牝馬と間違われることがある。だが男だ。
概要
父*ヘニーヒューズ、母スペシャルディナー、母父スペシャルウィークという血統。
父はアメリカでGⅠを2勝。持込馬やマル外として日本に来た産駒の活躍で優駿スタリオンステーションに輸入され、ダート種牡馬として2024年現在も活躍している。タガノビューティーは輸入3年目の産駒。
母は4戦1勝ながら、2008年のフラワーCとフローラSにも出走した。非常に仔出しが良く繁殖入り初年度から13年連続で無事に仔を産み、うち9頭が中央で勝ち上がるという優秀な成績を残しているが、2022年で用途変更となっている。タガノビューティーは第8仔。
母父は言わずと知れた1998年クラシック世代の「日本総大将」。母父としてはなんといっても代表産駒のシーザリオが3頭のG1馬を出し日本競馬に大きな存在感を示しているが、シーザリオ産駒以外にもクラリティスカイ、ディアドラ、ジュンライトボルトなどを輩出している。
半兄に2014年のNHKマイルカップ2着馬タガノブルグ(父*ヨハネスブルグ)がいる。
2017年3月16日、新冠町の新冠タガノファームで誕生。オーナーはそのタガノファーム創業者である「タガノ」冠名のオーナーブリーダー・八木良司。
性格はかなりのきかん坊だったようで、追込一辺倒の脚質もそのあたりが理由だったようだ。主戦の石橋脩いわく「ヤンチャでね。調教や道中など普段は進んでいかない。ただ、やるときはやる」とのこと。
砂塵に多賀の美しき
2歳~4歳(2019年~2021年)
栗東・西園正都厩舎に入厩したタガノビューティーは、2019年8月10日、新潟・ダート1800mの新馬戦にて石橋脩を鞍上にデビュー。16.7倍の8番人気という微妙な評価で、スタートで前を締められてしまいキックバックを食らって最後方まで下がってしまったが、3角から大外をグングン捲っていき、上がり最速の脚を繰り出して豪快に差し切り勝ち。
続く10月の東京・ダート1600m、プラタナス賞(1勝クラス)も最後方からぶっちぎりの上がり最速で差し切り、2馬身半差で快勝。
2戦2勝で全日本2歳優駿に登録したが、あえなく補欠2番手で除外となってしまう[1]。しょうがないので和田竜二を迎え、なんと芝の朝日杯FS(GⅠ)に参戦。61.6倍の9番人気というまあしょうがない評価だったが、ここでも後方から上がり2位の脚を繰り出してサリオスの4着に健闘し、以降しばらく和田が相棒となる。
これで芝の可能性を探るべく、明けて3歳はシンザン記念(GⅢ)に向かったが、3番人気に支持されたものの直線伸びずあまり見せ場なく6着。これですっぱり芝を諦め、ダートに戻ることになった。
しかしヒヤシンスS(L)は後方から猛然と追い込むもカフェファラオに悠々振り切られて2着、1番人気に支持された青竜S(OP)も後方から大外追い込みも届かず3着。ユニコーンS(GⅢ)は3角前で躓いて和田騎手の脚が鐙から外れてしまい、なんとか立て直したものの後方から全く伸びず13着に撃沈。一旦ここで休養に入る。
秋は自己条件の2勝クラスから出直しとなったが、2着、3着、2着といまいち勝ちきれず。11月、4戦目の東京・ダート1600mの平場2勝クラスにて鞍上が久々に石橋脩に戻ると、得意の大外一気で差し切り準オープンに昇格して3歳は終了。以降、石橋が主戦として固定されることとなった。
明けて4歳、初戦の東京・ダート1400m、銀蹄S(3勝クラス)は初の1400m戦ながら、アタマ差差しきって準OPを一発回答、無事オープン入りを果たす。オープンではバレンタインS(OP)は逃げ馬に届かず2着、ポラリスS(OP)は前残りの展開の中追い込むも2着と同タイムの5着と追い込み馬らしい勝ち切れなさを発揮してしまったものの、1600mに距離を戻したオアシスS(L)を豪快に差し切ってオープン初勝利を飾る。続く1400mの欅S(OP)も大外一気の末脚で追い比べを制して差し切り勝ちし連勝。
ここでお休みに入り、半年弱休んで11月の武蔵野S(GⅢ)で復帰。1番人気に支持されたが、4角でごちゃついてしまい直線で前が壁となり、末脚不発で無念の6着。12月のギャラクシーS(OP)では大外から追い込んだが、ゴール板前でさらに後ろから差されて3着。
5歳~6歳(2022年~2023年)
明けて5歳は根岸S(GⅢ)から始動(ここのみ津村明秀が騎乗)。例によって最後方から追い込むが届かず3着。続くポラリスS(OP)も大外一気で届かず4着。名古屋のかきつばた記念(JpnⅢ)で交流重賞に初挑戦したが、インを追い込んだものの届かずイグナイターの4着。連覇のかかる欅S(OP)はレモンポップに悠々ちぎられて2着。天保山S(OP)は例によって前残りの展開で大外一気が届かず4着。一休みして10月のグリーンチャンネルC(L)も直線一気が届かず3着。ああ毎回毎回末脚は見せるのに、大外一気が届かない、勝ちきれない追い込み馬の宿命……。
ギルデッドミラーvsレモンポップの武蔵野S(GⅢ)は見せ場なく6着。チャンピオンズカップ(GⅠ)でダートGⅠに初挑戦したが、いつも通り後方から追い込むも前に同等の脚を使われてしまってはどうにもならず10着。トップ層の壁に跳ね返されて5歳を終える。
6歳となり、この年も根岸S(GⅢ)から始動。例によって末脚は見せるがレモンポップには届かず4着。気付けば2年近く勝利から遠ざかっていたが、続くコーラルS(L)でようやく末脚が届き久々の勝利を挙げる。
この賞金で1年ぶりの交流重賞となるかしわ記念(JpnⅠ)に参戦。直線の短い船橋で追い込みは厳しいでしょ、と5番人気に留まったが、さらに後ろから進出してきたメイショウハリオと轡を並べて捲っていき、直線ではハリオとの激しい追い比べに。最後まで食い下がったもののクビ差競り負けて惜しくも2着。敗れたとはいえ賞金を確保したし、単なる直線一気だけでなく、小回りの地方でも4角捲りで勝ち負けになることを示した大きな2着だった。
ところが世の中上手くいかないもので、続くプロキオンS(GⅢ)でレース中に歩様異常を起こしてしまい直線で失速、14着撃沈。幸い馬体に異常はなかったのでマイルチャンピオンシップ南部杯(JpnⅠ)に向かったが、レモンポップには全く手も足も出ず、大差圧勝の後ろでひっそり4着。武蔵野S(GⅢ)はいつも通り直線一気で追い込むもドライスタウトには全く届かず2着。結局は重賞では勝ちきれない末脚芸人というポジションから脱却できないまま6歳を終えた。
7歳(2024年)
明けて7歳も根岸S(GⅢ)から始動したが、3角のペースダウンに上手く対応できず、前残りの展開にどうにもできず13着撃沈と幸先の悪い滑り出し。
続くフェブラリーS(GⅠ)ではドンフランキーらがブッ飛ばして前潰れという追い込み馬の彼には絶好の展開だったが、前にいたペプチドナイルに振り切られ、最後ゴール板前でガイアフォースとセキフウにもかわされてしまい4着。
かしわ記念(JpnI)は昨年同様に後方から捲っていったものの、ハイペース逃げのシャマルが止まらず、2年連続の2着。これでタガノエスプレッソを上回り、タガノ軍団の獲得賞金トップに立つことになった。
JpnⅠに昇格したさきたま杯(JpnⅠ)もレモンポップ、イグナイター、シャマルの先行馬3頭の争いに、浦和で後ろからでは割って入れず4着。ああ、勝ちきれない追い込み馬の哀愁……。
秋初戦のMCS南部杯(JpnⅠ)もレモンポップとペプチドナイルの激闘を遠くから眺めるばかりで6着。
重賞未勝利のまま、続いて向かったのは佐賀1400mでの開催となったJBCスプリント(JpnⅠ)。ドンフランキーやリメイクはアメリカに行ったため、相手関係はおなじみシャマルとイグナイターに、東京盃でその2頭を下した3歳馬チカッパという面々となった。タガノビューティーはこの3頭から少し離された9.2倍の4番人気である。
レースはシャマルが逃げ、イグナイターがそれをマーク、その後ろにチカッパという人気馬3頭が先行する展開。中団につけたタガノビューティーと石橋騎手は、スローペースと見て向こう正面から早めに押っつけ進出を開始する。大外を捲って4角で先頭に取り付いたタガノビューティーは、シャマルやイグナイターをあっさりとかわして抜け出した。しかし内からはインを通ったチカッパが抜け出して来て、2頭のマッチレースに突入。石橋騎手の左鞭でタガノビューティーは内にササってしまい、チカッパを押すことになってしまったが、馬体を併せての熾烈な追い比べを最後ハナ差で制してゴール板に飛び込んだ。
綺麗な勝ち方ではなかったため石橋騎手は勝利インタビューでの喜びもちょっと控えめではあったものの、7歳にして重賞初制覇がJpnⅠのビッグタイトル。1989年から馬主を始め、2003年に新冠タガノファームを開設してオーナーブリーダーとなった八木良司オーナーは、馬主生活35年目で悲願のGⅠ級初制覇。タガノテイオーやタガノトネール、タガノエスプレッソが惜しくも届かなかったGⅠの頂きに辿り着いた。
8歳(2025年)
念願のGⅠ馬となったタガノビューティー。8歳シーズンは根岸SからフェブラリーSへ向かい、それをラストランとして現役引退、日本軽種馬協会で種牡馬入りすることが発表された。
ところが根岸ステークス(GⅢ)はスタート直後に躓いて石橋騎手を落としてしまい、まさかの落馬競走中止。カラ馬のまま外を回って直線で内に刺さりながら加速、いろんな馬に迷惑をかけながら"3番手入線"というなんともはやな事態に。石橋騎手に怪我がなかったのがせめてもの救いか。
そしてラストラン予定のフェブラリーステークス(GⅠ)はいつも通り後方追走から追い込みを図るも見せ場なく8着。
やや不完全燃焼の結果に終わったためか、オーナーの意向で引退を撤回、現役続行が決定。さらなるタイトル獲得を目指したが、さすがに寄る年波には勝てなかったか、JBCスプリントで燃え尽きたか、自慢の末脚はもう見られなかった。かしわ記念(JpnⅠ)は直線全く伸びず後ろから地方勢2頭にもかわされて7着。さきたま杯(JpnⅠ)もシャマルの逃げ切りを見送るばかりの5着。
秋へ向けて9月に韓国のコリアスプリント(GⅢ)に向かうも、ここも中団から伸びず5着に留まり、これを最後に現役引退、種牡馬入りが発表された。
通算43戦8勝[8-8-5-22]。獲得賞金は4億円に届き、タガノ軍団最多、定年間際の西園師の管理馬でも最後の最後でサダムパテックを抜いて最多となった。西園師は引退に際し「うるさくて、本当に手間のかかる馬ではありましたが、私の調教師人生で最も印象に残る馬です」と語った。
引退後
引退後は日本軽種馬協会の七戸種馬場(青森)で種牡馬入り。青森の馬産を支える活躍を期待したい。
血統表
| *ヘニーヒューズ 2003 栗毛 |
*ヘネシー 1993 栗毛 |
Storm Cat | Storm Bird |
| Terlingua | |||
| Island Kitty | Hawaii | ||
| T.C. Kitten | |||
| Meadow Flyer 1989 鹿毛 |
Meadowlake | Hold Your Peace | |
| Suspicious Native | |||
| Shortley | Hagley | ||
| Short Winded | |||
| スペシャルディナー 2005 鹿毛 FNo.5-j |
スペシャルウィーク 1995 黒鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
| Wishing Well | |||
| キャンペンガール | マルゼンスキー | ||
| レディーシラオキ | |||
| *ソフトパイン 1993 黒鹿毛 |
Woodman | Mr. Prospector | |
| *プレイメイト | |||
| Ladyago | Northern Dancer | ||
| Queen of Song |
クロス:Northern Dancer 5×4(9.38%)、Raise a Native 5×5(6.25%)
関連動画
関連リンク
- 競走馬情報 タガノビューティー Tagano Beauty(Jpn)- JRA
- タガノビューティー | 競走馬データ - netkeiba.com
- タガノビューティー|JBISサーチ(JBIS-Search)
関連項目
脚注
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- なし
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- アイオライト(競走馬)
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