タブブラウザとは、タブを切り替えることで複数のWebページを1つのウィンドウで見ることが出来るウェブブラウザである。
概要
新しいページを開く際に新規ウィンドウではなく新規タブを開く。そのためウィンドウの数が増えず、メモリを節約したりツールバーの圧迫を防ぐなどの効果があり、視覚的にも分かりやすくなる。
MDIから生まれた「タブ」ブラウザ
初期のウェブブラウザは1つのウィンドウに1つのウェブページだけを開く方式であり、複数のページを同時に開く場合には複数のウィンドウを開いていた。だがこの方法ではウィンドウを多く開くとメモリが大量に消費され、また多く開いたウィンドウを管理することにも難があった。
そんな中、MDI(Multiple Document Interface : マルチプル・ドキュメント・インターフェイス)の手法、すなわち「ブラウザ本体が1つの親ウィンドウとなり、その親ウィンドウの中で複数の子ウィンドウ(ドキュメント)を並べたり重ねたりすることで、複数のページを1つのウィンドウ内で表示する」という機能を取り入れたブラウザが出始めた(後述する世界初のタブブラウザ「InternetWorks」や、「Opera」など)。
しかし複数のウェブページを並べて同時に表示することが必要な状況は、ページを見比べつつ作業しなければならない場合などの特殊なケースに限られる。殆どの状況では現在見ている子ウィンドウのみが前面にあればよく、他の子ウィンドウは背面で待機していて必要な時にそちらに切り替えることができれば十分である。
そのため、「現在見ているウェブページを担当する子ウィンドウのみが親ウィンドウいっぱいに大きく表示されている」「親ウィンドウの端の方には、それぞれの子ウィンドウのタブ(小さなつまみ、小札)が表示されている」「そのタブをクリックするとそれに対応する子ウィンドウに切り替えることができる」というインターフェイスが基本となっていった。これが「タブ」ブラウザという呼称の由来である。
その後は、「それぞれの子ウィンドウ(ドキュメント)を親ウィンドウの中で並べて表示する」という元来のMDI形式の表示方法は搭載しないタブブラウザも多くなっていった。並べることが必要となる場面が少なく、もし必要となった際にもその時だけ別ウィンドウで開けば事足りるためである。
そうして各々のページを「子ウィンドウ」として表示することが稀になっていくにつれて、元々は「子ウィンドウに付いている小札」だけを意味していたはずの「タブ」という用語は、表示ページ自体をも意味するようになっていった。「新しいタブを開く」「タブを閉じる」といったような言葉はその好例だろう。
歴史
世界初のタブブラウザはおそらく1994年の「InternetWorks」だとされている。その後1997年の「NetCaptor」や、日本国産のものとしては1999年の「MDIWeb」や「DonaWebBrowser」などが登場してくる。
これらを草分けとしてタブブラウザのメリットは知られていき、それに伴ってユーザー数も増えていった。OSに標準で付属するブラウザにはタブ機能が無かった時代でもあり、そのニーズに応えるように00年代初頭にはタブブラウザの開発は過熱し、多数かつ多様なソフトウェアが開発された。
ニコニコ大百科に記事があるもののみを例にとっても、Opera[1]、FireFox、Donutやその多数の派生ソフト(unDonut、Donut RAPT、Donut Qなど)、Sleipnir、Lunascape、Avant Browser等々と数々のタブブラウザが生まれていった。選択肢が多様化する中で、それぞれのタブブラウザは自らの特色を打ち出してユーザーにアピールしていた。
とは言え、やはりデフォルトでWindows OSに組み込まれているという利点は圧倒的であり、ウェブブラウザのシェアトップは第一次ブラウザ戦争の覇者だったInternet Explorerから揺らぐことはなかった。
だがそれでもこれらのタブブラウザのうちFireFoxやOperaなどは大きな伸びを見せたし、その他の数あるタブブラウザもある程度のユーザーを得ていた。
しかしその後、Safari(2003年正式リリース)、Konqueror 3.1(2003年)、そして前述したInternet Explorer 7(2006年)など、OSに付属する標準のウェブブラウザもタブ機能を取り入れていき、標準ではないブラウザへの強いニーズは消えた。
またFirefoxやGoogle Chrome(やや遅く、2008年正式リリース)等の有名かつ高性能なタブブラウザは拡張機能によってどんどんとカスタマイズ性を増していき、OS標準のブラウザに満足できないユーザーも、多くはそれらの主流タブブラウザへと集中していくことになる。
欠点
数少ない欠点として、1つのタブがフリーズやスクリプトの不具合による動作遅延を起こしたりすると他のタブにまで影響が及んでしまう、という点が指摘されることがある。
これを嫌って、例えばGoogle Chromeではそれぞれのタブに別々のプロセスを割り振り、1つのタブの不具合がブラウザ全体に影響することを避けている(ただしこの方法ではメモリの消費量は増える)。
多くのタブブラウザではブラウザごと強制終了せざるを得なくなった時に備えて、次に開いたときに直前に開いていたタブ群を開く機能を備えている。
関連動画
関連項目
脚注
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