『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(D&D)とはウィザーズ・オブ・ザ・コースト社の発売するTRPGである。
現在の最新版はD&D第5版。RPGというジャンルの開祖であり、現在も世界で最もプレイ人口の多いTRPGとして知られる。
概要
世界最初のRPGだけあって、基本的には戦闘やクエストをこなし経験値を得てレベルを上げていく、いわゆる『普通のRPG』の図式通りのルールである。
実際のルールの詳細は版によって大きく異なるものの、ウォーゲーム発の戦闘重視のルール、クラスシステム、6つの主要能力値といった骨子は変わらずに受け継がれている。
日本では知名度はあれど人気のあるシステムとは言い難いが、本国アメリカではD&Dは非常に支配力が強く(他のRPG対D&Dのような構図になってしまい)現行D&Dのルールへの客観的な判断自体が難しい場合すらある。
それもあって、ユーザーによるD&Dのエディション間での対立も絶えず、特に3.5版から4版への移行は大きな波乱を招いたことで有名である。
ダンジョンズ&ドラゴンズのエディション
オリジナル・ダンジョンズ&ドラゴンズ
1974年、ゲイリー・ガイギャックスとデイブ・アーンソンによって制作され、TSR社から発売された。この最初のD&Dは現在では「オリジナル・ダンジョンズ&ドラゴンズ」と呼ばれる。事実上世界初のロールプレイングゲームとなった。
この版はガイギャックスを中心とするホビイストたちの間で遊ばれていたルールを原型としている。
その成立過程は複雑だが、基礎としてガイギャックス自身のミニチュア・ウォーゲーム『Chainmail』があることはよく知られている。
ボックスセットには『Men&Magic』『Monsters&Treasure』『The Underworld&Wilderness Adventure』の3冊が含まれていた。
今日からすると奇妙なルールもあり、ウォーゲーマーの暗黙知に期待しているために説明不足な点も多い。また、戦闘を処理するには別途『Chainmail』を、野外冒険の処理にはアバロンヒルの『アウトドア サバイバル』を参照する必要があった。
翌年には最初のサプリメント『Greyhawk』によって独自の戦闘ルール、盗賊とパラディンのクラス、およびディスプレイサー・ビースト、ブリンクドッグ、ビホルダーなどのD&D特有のモンスターが追加され、上の問題はある程度解消された。
最終的にサプリメントは『Greyhawk』『Blackmoor』『Eldritch Wizardry』『Gods Demi-Gods』の4冊が発売され、1976年に創刊したTSR社のDragon誌でもイリュージョニスト、バードといったクラス、武器専門化など、様々な追加ルールが掲載された。
アドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ
ルールが別々の書籍に分散している状態を解消し、同時にガイギャックスとTSRの主催するコンベンションGen Conでの公式ルールを定めるために1977年から『アドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ(AD&D)』の刊行が開始された。詳しくは該当記事を参照。
クラシック・ダンジョンズ&ドラゴンズ
AD&Dが登場すると、無印ダンジョンズ&ドラゴンズの名義は入門者向けとして継続することになるが、1981年以降は両者の連携は薄くなり、独自のバージョンとして成立することになった。このD&Dは日本では「クラシック・ダンジョンズ&ドラゴンズ」と呼ばれる。日本で初めて公式に翻訳されたD&Dでもある。
これも詳細は該当記事を参照。
アドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ第2版
ゲイリー・ガイギャックスがTSR社を追放された後、1987年、AD&Dの第2版が発売された。
1980年代初頭からブランドにつきまとっていた反社会的イメージを払拭するため、悪魔タイプのモンスターがリストから排除され、中心となる世界設定がグレイホークからフォーゴトン・レルムに移行した。
マイナーなルールを除いた第1版といった体裁で、保守的な内容とも言える。
ただし、第1版よりヒロイックな方向性になっており、「悪」系のクラス・種族であるアサシンやハーフオークの除外に始まり、後期に出版された『Player's Option』では総じてキャラクターのパワーが強化され、『Dungeon Master Option: High-Level Campaigns』では高レベルの超常的戦闘がルール化されるなど、第1版時代の「9レベル以降は前線から退いて砦を建てる」世界観とは様相が大きく異なっている。
日本では株式会社新和が1991年から(CD&Dの発刊を中断し)日本語版の刊行に取りかかったが、数冊が邦訳されたのみで頓挫してしまった。
ダンジョンズ&ドラゴンズ第3版
1998年、マジック:ザ・ギャザリングの発行元のウィザーズ・オブ・ザ・コーストが、TSRを買収した。2000年に新たなD&Dを作成するにあたり、クラシックD&Dの展開を止め、AD&Dの第3版が「ダンジョンズ&ドラゴンズ第3版」の名前で発売されることになった。
AD&D1e以来のルールの多くが見直され、d20と銘打たれた汎用的なルールを基礎にシステマチックな再編成が行われた。その結果、TRPGの人気が下降していた中で確かな存在感を発揮し、ルールの改変・複製を許すオープン・ゲーム・ライセンスと合わせて、2000年代のRPGの標準とも呼べる存在となった。
方向性としては第2版後期を引き継いでおり、柔軟なマルチクラスシステムの下、より強力なキャラクターを作り出すことができる。キャラクタービルドの可能性は膨大にあり、またシステムの穴も膨大な数存在するため、それらを活用して自分だけのマンチキン最強キャラを作れるかどうかはプレイヤー次第である。
あまりにもアンバランスな部分は2003年発売の第3.5版で修正され、この版は新版の登場以後も大きな支持層を有している。
また、ここに来てようやく安定した日本語版の供給が実現し、株式会社ホビージャパンより書籍が多数出版された。
ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版
2008年、ルールを大きく変更した「ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版」が発売された。日本語版は引き続き、株式会社ホビージャパンより出版された。
2→3版の比ではないレベルでルールが抜本的に変更され、英語圏では激しい論争を巻き起こした。2009年、それまでD&Dの公式誌を出版していたPaizo Publishingから第3.5版を継承する「パスファインダーRPG」が発売され、十分な支持を得られたことは、第4版に反対したユーザーの数の多さを裏付けている。しかし同時に新規ファンを獲得し、各種イベントにも最も力を入れていた部分は否定できず、そのノウハウ等の一部は後述の5版にも引き継がれた。
ダンジョンズ&ドラゴンズ第5版
「ダンジョンズ&ドラゴンズ第5版」は2012年からプレイテストを開始し、2013年に正式リリースされた。現行の版である。
前エディションの反省を生かして従来のユーザーを幅広く意識したルールを策定、オープン・ゲーム・ライセンスへと復帰した。結果、人気の復活に成功、これを受けて当初は見送っていた多言語対応も始まった。日本語版は第4版同様、ホビージャパンが出版している。
完成度の高い版として各方面で評判である。日本版は6000円超とか貧乏人には手が出ないぞ助けて海外と同じ装丁のために少々値が張るものの、基本的なルールは無料のpdf形式でダウンロードできる。興味のある人は試してみよう。
2022年より、長年D&Dの日本語展開に携わってきたホビージャパンからD&Dの展開が終了。一時は日本語展開の存続が危ぶまれたが、ウィザーズ・オヴ・ザ・コースト社から直接の日本語展開が決定。日本独自のCM作成やゲームマーケットへの出展など、日本での展開に注力している様子がうかがえる。
コンピューターゲーム
D&Dはウィザードリィなどのコンピューターゲームにも多大な影響を与えたが、後にD&Dそのものを原作とするコンピューターゲームも数多く作られた。ニコニコ動画のダンジョンズ&ドラゴンズタグにおいては、TRPGよりも、これらコンピュータゲームのプレイ動画が大半を占める。
「バルダーズ・ゲート」、「アイスウインド・デイル」、「ネヴァーウィンター・ナイツ」、「アイ・オブ・ザ・ビホルダー」、「デーモンストーン
」など、フォーゴトン・レルムの世界を利用した作品が特に多い。
MMORPGとしては「ダンジョンズ&ドラゴンズ・オンライン」などがある。
日本では「クラシックD&D」を題材にしたアーケードゲーム、「タワーオブドゥーム」と「シャドーオーバーミスタラ」が登場した。
関連動画
その他関連商品
関連コミュニティ
関連項目
- アイ・オブ・ザ・ビホルダー
- バルダーズ・ゲート
- バルダーズ・ゲート3
- アイスウインド・デイル
- ネヴァーウィンター・ナイツ
- ダンジョンズ&ドラゴンズ ―ミスタラ英雄戦記― (タワーオブドゥームおよびシャドーオーバーミスタラの記事)
- ダンジョンズ&ドラゴンズ・オンライン
- ネヴァーウィンター
外部リンク
- ダンジョンズ&ドラゴンズ日本語版公式サイト
- 旧ダンジョンズ&ドラゴンズ日本語版公式サイト
- Dungeons & Dragons Roleplaying Game Official Home Page
(英文)
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