ダーウィン賞(Darwin Awards)とは、最高位の栄誉である。
概要
ダーウィン賞の概要を説明する前に、まずは当記事をご覧の皆様に1つ質問したい。
Q.人類が賢く進化するには、どうすればいいと思いますか?
A.バカがこの世からいなくなれば良い。勝手にいなくなってくれれば、なお良い。
ダーウィン賞とは、自業自得としか言いようが無いマヌケな行為を実行する事で自らの遺伝子を絶ち、マヌケの遺伝子を後世に残さない事で人類の進化に貢献した者に贈られる、というブラックユーモア全開の催しである。
1985年に「信じられないほどアホな死に方をした奴の話」を取りまとめた電子メールがメールリストとして出回ったことに端を発する。この時点で「ダーウィン賞」と命名されていたようだ。
1993年ごろ、当時スタンフォード大学で分子生物学を専攻していたウェンディ・ノースカットという人物がこの賞に注目し、研究の合間に学内のサーバーに多くのストーリーを公開。アクセス数は伸び続け、2000年には書籍化されるに至る。これがベストセラーとなり、続編が多数出版され、なんと映画化までされてしまった。何冊かは日本語版にも翻訳されている。
現在、ノースカットが管理するサイトにて歴代の受賞者を確認することができる。各国のダーウィン賞愛好家によって「作品」が投稿され、モデレーターによる審査・ユーザー投票による評価を経て、ノースカットによって毎年の受賞者が発表される。その性質上、当然授賞式や賞品がある訳ではなく、完全な皮肉とジョークである。
人の死というデリケートな事柄を扱っているという点で、「不謹慎だ」や「削除しろ」といった意見も当然ながら存在する。彼女のもとには遺族や友人からのメールが届いたこともあるらしいし、本人曰く、数千通単位で批判のメールが届いたこともあるとのこと。それでもエピソードをサイトから削除しないのは「あまりにも馬鹿げているからだ」とし、「これを読んだ子供たちは、爆発物の周りではもっと気をつけるようになると思います」とも述べている。このように、人の振り見て我が振り直せという考えがサイト運営の根底にあるのだろう。
- ガソリンの入ったドラム缶を、ライターを付けて覗き込んだ。
- サファリパークにて、車に乗った観光客向けに(各国の言葉で)「絶対に窓を開けるな、外に出るな」と書かれた標識が立っていたにも関わらず、虎のいる洞穴の近くで車を降り、しかも車のドアをロックした。
- コブラに手を噛まれたにもかかわらず、病院に行かずバーで酒を飲みながら「俺ついさっき、コブラに噛まれたんだぜ」などと吹聴していた男。なお、コブラの飼い主である友人に「病院に行かなくていいのか」と聞かれると彼は「俺は人間だ、自分で何とかする」と答えたという。(1997年ノミネート)
……彼らがこの後どのような結末を迎えたかは、ここで述べるまでもないだろう。
受賞資格
砕けて言えば「常人が頭を抱えるようなバカバカしい方法・経緯であの世へ行ったor生殖能力を失った」というもの。
具体的には以下の条件を満たした人物がダーウィン賞を受賞できるのだが、これを読んで「自分もチャレンジしてみようかな」などと考える人が出ない事を切に願う。
- 遺伝子プールから抹消されること
- まずダーウィン賞の目的は「劣化した遺伝子を自ら遺伝子プールから排除した」事を讃える賞であるため、受賞者は死亡するか、繁殖が永遠にできない状態になるかのいずれかのケースになる必要がある。既に子供を作ってしまっている場合は、子孫も全滅している場合のみ受賞対象になる。後述するようなバカげた行為に走りながらもしぶとく生き残った場合は、その遺伝子は良くも悪くも後世に残す価値がある(と思われる)からだ。ぶっちゃけ遺族に訴えられないための項目である。
- 常人には考えもつかない、驚くべき愚行を実行したこと
- ダーウィン賞関連の本の著者(関連商品参照)ウェンディ・ノースカット曰く、「自分の子孫が、このバカの遺伝子を受け継いだ奴と関わりを持つような事にならなくて本当によかった」と心の底から思えるほどの、極めつけのバカをやらかす事」とされる。
- 自分の意志で、自分の命(生殖能力)を絶つこと
- 自分の意志で、と言ってもただの自殺志願者の場合は対象外。「受賞者はその行為により、自分が死ぬ(かもしれない)などという事を1ミリも考えていない」事が前提となる。更に、受賞者自身の手で引き起こされた事件である必要がある。例えばドアの壊れた部屋に居る際に放火されて死んだだけではダーウィン賞は受賞できないが、自動車泥棒が盗んだ車を処分しようと車内から放火したものの、ドアハンドルが壊れているのを忘れており、脱出できずに焼死、というケースなら受賞の対象となる。
- まともな判断を下せるだけの思考能力を(一応)備えていること
- 「このコーヒーは熱い」という情報を普通の人ならカップの熱や湯気などから推測できるところが、ダーウィン賞受賞者はその事実が解らない。ただし思考能力が正常ではないと思しき人(高齢者、子供、精神病患者など)は対象外。なお、犯罪者の場合は時効を過ぎていないといけない。
- 真実であること
- メディア等で報道された、目撃者が存在する等、裏が取れる話である事も条件の一つであるとされる。基本的に都市伝説や作り話と思わしきものは対象外である…だが、元々ダーウィン賞自体、都市伝説を集めたメールによって誕生したものである。そのため、裏が取れなくとも「面白い」と評されたエピソードは『都市伝説』として紹介される場合もある。たとえば、「ジェットエンジンを車に取り付けて発進させた結果、崖に突っ込んで埋まった」という話は作り話であることが確認されたが、「いかにもありそうなエピソード」だとして実際の本に採用された。また、投稿作品である以上、どうしても枝葉末節の部分は面白くなるように編集されることもある。(後述する「ニコ生主富士山滑落事故」はこの例に該当する。)世界中の話を収集するという関係上ある程度は仕方ないのかもしれない。
ダーウィン賞受賞者のケース・一例
以下に、ダーウィン賞を受賞またはノミネートされた人々のバカバカしいエピソード輝かしい功績を一部紹介する。これらを読んで呆れるか、頭を抱えたくなるか、爆笑できれば、貴方は正常な思考の持ち主です。
念を押すが、これらはいずれも全て実話である。
また、毎年受賞が出る訳ではなくノミネートだけで終わる場合もある。本来は喜ばしいことなんだけれど。
以下に例を挙げていくと、
- 銃口から弾を装填するタイプの銃身を、ライターの火の灯りで覗き込んだ。
- 車を走らせながらカーセックスしてたカップル。カーブを曲がりきれず壁に激突。
- ハリケーン到来を知り、暴風雨が目前まで迫った湾岸で「ハリケーン歓迎パーティー」を開催。(1993年ノミネート。事件は1969年の出来事)
- 超高層ビルの窓ガラスの強度・安全性を証明しようとビル24階の窓ガラスに体当たり。確かにガラスは割れなかったが、窓枠が外れて当人は転落死。(1993年ノミネート)[1]
- 井戸の中へ落ちたニワトリを助けようと、農夫とその家族総勢6人が相次いで井戸へ飛び込み、全員溺死。(1995年次点)[2]
- 飲み仲間と「男らしさ」についてヒートアップ。チェーンソーで自分の爪先を切った相手に張り合い「俺がヨーロッパ一強い男だ」と、チェーンソーで自分の首を切断。(1996年受賞)
- 「女にペニスを切られた」と主張していた男性。実は自分で切っていた。(1997年受賞。生存)
- 20mの高さの橋の上からお手製の紐でバンジージャンプした男性が転落死。なお彼は「ゴム紐を付け忘れる」事はせず、橋の高さよりも短いものを用意していたが『ゴムは引っ張れば伸びる』という大前提を忘れていた。(1997年ノミネート)
- 夫婦喧嘩中の男が妻をアパートの8階から放り投げたが、妻は送電線に引っ掛かって生存。男は何を思ったか、自分もバルコニーから飛び降り転落死。(1998年受賞)[3]
- ストリップショーを見に来た男性が酔った勢いでダンサーのおっぱいを覆うスパンコールを歯でむしり取り、飲み込んで窒息死。(1998年ノミネート)
- 夏時間(サマータイム)と通常時間を間違えて時限爆弾を設定し、爆弾運搬中に爆死したテロリスト。(1999年受賞)
- 酔っぱらいがテーブルの下に旧式の対戦車用地雷を置き、順番に踏んでいくロシアンルーレットを行い、爆死。(1999年次点)[4]
- 爆薬の入ったバケツのそばで煙草を吸った挙句、そのバケツに吸殻をポイ捨て。(1999年ノミネート)
- 恋人の前でカッコつけて、セミオートマチック式の銃でロシアンルーレットを実行。(2000年次点)[5]。
- 洞窟の天井からクリスタルを盗掘しようとした男。盗掘には成功したがクリスタルの真下に立っていたため、落ちてきたクリスタルの下敷きに。(2001年受賞)
- 手榴弾でジャグリング。(2001年ノミネート)
- 1.5リットルのシェリー酒をセルフ浣腸し、急性アルコール中毒で死亡したアル中。(2007年受賞)
- トラック運転手向けの霊的な休憩所を作るための資金集めとして、風船おじさんよろしくデッキチェアに1000個の風船を付けて飛び立った神父。海上から救助要請を出すも、持っていたGPSの使い方がわからなかったためレスキュー隊は位置を特定できず、数カ月後遺体となって発見された。(2008年受賞)
- 2人組の泥棒がATMを爆破しようとしたが、火薬の量を誤って自分ごと吹き飛ばす。(2009年受賞)
- 洪水警報が発令された中、バイクでビールを買いに行き川に流された女性が一度は警察に救助されたが、あろうことかバイクを拾いに再度川へ向かい溺死。(2009年ノミネート)
- エレベーターに乗損ねたことに腹を立て、電動車椅子で扉に突撃した男性。(2010年受賞。関連動画参照)
- 2人の男が燃料の入った樽の上に跨り、樽の尻に点火して前方へロケットのように飛び出そうとしたら樽が大爆発し、片方が死亡。この男性はレーシングチームのチーフ・クルーだったとか。(2010年ノミネート)
- 濃霧の中カップルが車を停め、中でイチャついていたが、停めていた場所が走行車線のど真ん中だったため、トラックに突っ込まれた。(2010年ノミネート)
- サッカーの試合後、駅にて興奮した2人のファンが度胸試しと称し、1人は列車が自分の上をスルーするように枕木部分に、もう1人はレールの横の轢かれないギリギリのところに寝そべったが、列車は2人が思っていた以上に床が低く、幅が広かったため両方轢かれた。(2014年受賞)
- コックリングが取れなくなり、ペニスを失った男性。病院に行くまでの3日間うっ血した状態で放置していた上、リングがチタン製だったため病院でも外すのに一苦労。(2014年受賞。生存)
- シートベルト未装着&下半身裸でエロ動画見てシコりながら運転していた男性。車が横転し、車外へ投げ出されて死亡。(2016年受賞)
- SNSのプロフィール画像を撮影しようと滑走路で自撮りしていた女性2人。着陸する小型機に気づかず、翼で頭を打たれ死亡。(2017年受賞)
- 北センチネル島にキリスト教を布教しようと乗り込んだ自称冒険家の男性。2回弓矢を放たれて攻撃されるなど失敗しているにもかかわらず、3回目で上陸を強行し、島民に殺される。(2018年受賞)[6]
- 跳ね上がった状態の跳ね橋へ助走をつけて車で飛び越えようとした二人組。当然失敗して車ごと川に落ちて溺死。(2019年受賞)
- 小型機を操縦中、燃料漏れが発生してコックピットに溜まり始めるもこれを放置、立ち寄った空港の整備士の注意を無視してフライト続行。念のため電気系統を切って離陸したが、足元の燃料に気を取られ失速して墜落死したパイロット。なおこの人、飛行時間10000時間を超えるベテランだったとか。(2019年受賞)
- パイロット訓練を受けていた訓練生が「教官の許可がないと夜間飛行不可」「有視界方式飛行のみ可」「許可機種(セスナ172)のみ可」という条件で単独飛行を許可されたが、夜の曇り空を、初めて乗る機種(パイパーPA-28)で飛んで墜落死。(2021年受賞)
- ウクライナの戦地でMacBookを盗み出したはいいものの、バッグがなかったため防弾ベストの防護プレートと入れ替えて持ち運んでいたロシア兵が、ちょうど入れ替えた部分を撃ち抜かれ戦死。遺体が発見されて彼の所業がSNSに晒された結果世界中の笑い者に。(2022年受賞)
このように末代の恥といわんばかりの死に方が揃っているが、2015年には「カナダの総選挙で、イスラム教徒の女性がスカーフなどで顔を隠すことの是非が問われる中、抗議の為にポリ袋をかぶって投票しようとした若者が窒息死」という事例が受賞したが、これは後に嘘ニュースと解って受賞取消となった。
また日本でも近年「友達と大食い競争をしていた学生が喉にパンやサラダなどの食べ物を詰まらせて窒息死した」というケースもある(これは対象が未成年の為、上記の条件4に反する)。
そして2017年にはフォークリフトにパレットを37枚積んで電球交換作業をしていた男が転落死した事故が日本人初の受賞案件に、2020年には日本人がまたもこの賞を受賞してしまった(ニコ生主富士山滑落事故[7])。
この賞はあくまでブラックジョークであるという事を理解して楽しんでください。
関連動画
関連静画
関連商品
ダーウィン賞の受賞者達についてが網羅。 バカの思考を貴方はどれだけ理解できるか? |
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映画 |
関連項目
- 公式サイト
- 進化キャンセル
- ブラックユーモア
- 自殺
- 馬鹿
- 恥ずか死
- Dumb ways to die
- ただのバカ
- 愛すべき馬鹿「愛すべき」ではなくただの馬鹿
- 君はじつに馬鹿だな
- どうしてこうなった
- 現場猫
- 風船おじさん(2008年受賞事例とほぼ同じ)
- 韓国エレベーター落下シリーズ(2010年受賞)
- ニコ生主富士山滑落事故(2020年受賞)
脚注
- *この人物、同業者の間ではエリート中のエリートと謳われた敏腕弁護士だったそうな。
- *ちなみに落ちたニワトリは生存。
- *助けに行くつもりだったのか、トドメを刺しに行くつもりだったのかは不明。ちなみに妻は救助された。
- *店員と他の客は勿論、全員店内から避難していたため、彼ら以外に死者は出ず。
- *セミオート式は撃鉄を引くと弾が自動装填される
- *北センチネル島の記事にも書いてあるが、ここの先住民族はいわば「よそ者絶対殺すマン」で、言語も独自のものを用いているので意思疎通がどうやっても不可能。インド政府ですら匙を投げて島に近づくこと自体を違法化するほどの危険地帯。
- *ちなみに同年に宝探しをしようとした男がユタ州とコロラド州にまたがる険しい山へ軽装備で挑み、一度救助されるもまた挑んで死亡したという、類似した事例も受賞案件になっている。
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