チェチェン(チェチェン共和国/Чеченская Республика)とは、ロシア連邦内にある共和国である。
概要
ロシア連邦北カフカース連邦管区に属する。北と言うがロシア連邦全体で見ると南西に位置する。国土の広さは四国程度で、実はかなり小さな国である。
現在の共和国が成立したのは1991年で、首都はグロズヌイ。
国名は先住民族のチェチェン人に由来するが、チェチェン人は自らをノフチー(Нохчий)と称する。
人口の大半を占めるチェチェン人はロシア人とは人種的にも言語的にも異なり、伝統的にイスラム教(スンニ派)を信仰している。ロシア人=白人=キリスト教と思っている人は反省すること。
古くは18世紀からロシア(ソ連)による度重なる侵攻・迫害により、従属を余儀なくされてきた。
決定的だったのは第二次世界大戦中で、対独協力を恐れたスターリンの政策により、約50万人がシベリアなどに強制移住となる。1957年に母国への帰還を許されたものの、生きて故郷の土を踏めたものは多くはなかった。
そういった背景もあり、現在に至るまでロシアに対しては良い感情を持っていない。
独立運動が始まったのは1990年、ソ連崩壊の約1年前である。
ソ連からの独立、およびチェチェン・イチケリア共和国(イギリスに亡命中、ウクライナに拠点がある。2022年10月、対露分離工作の一環としてウクライナが国家承認したが、まだ他国の追随は得られていない)の樹立を謳ったが当然ソ連はそれを認めず、ソ連崩壊後のロシア連邦も独立を認可しなかった。
この時過激派によって民族浄化と称した虐殺が行われ、チェチェン在住のロシア人が多数犠牲となっている。
1994年、エリツィン大統領の命令によってロシア連邦軍が派遣、第一次チェチェン紛争が勃発する。
数で劣る独立派はゲリラ戦で抵抗、これを「ジハード」と見たイスラム過激派と共闘した。アフガニスタン紛争帰りの元ソ連軍兵士及びムジャヒディンを中心とする熟練兵を多数抱えていたチェチェン軍は、ソ連崩壊によって逆に熟練兵のほとんどを失い再編途中だった新兵主体のロシア軍を、士気と練度、実戦経験の差で圧倒して押し返す局面もあった。しかし、結局は数で押され、翌年首都グロズヌイが制圧。初代大統領ジョハル・ドゥダエフはロケット弾の攻撃によって死亡された。
これが決定打となって停戦合意に至るが、この時の犠牲者は10万人以上とされている。
その後、1999年に停戦合意を破り、独立派の強硬派が隣国のダゲスタン共和国に侵攻した。更にモスクワで爆弾テロが相次ぎ、同年に就任したばかりのプーチン大統領は「便所にいても捕まえて、やつらをぶち殺してやる」と記者会見で表明、ロシア軍を再度派遣。これを第二次チェチェン紛争と呼ぶ。
翌年、首都グロズヌイは再び制圧。ロシア政府は親ロシア派の政治家、アフマド・カディロフを大統領に担ぎ上げて親露政権を樹立、独立派は一転して野に追われる事となる。しかし内戦は泥沼化し、アルカイダなどのイスラム過激派と手を結んだ独立派はテロリズムに走った。
これにより「モスクワ劇場占拠事件」「ベスラン学校占拠事件」といった人質事件や爆破事件、ハイジャックなど、一般人にも被害が及ぶ痛ましい事件が連続している。カディロフ大統領も標的とされ、2004年に対独戦勝式典に出席した所を、会場に仕掛けられた爆弾によって多数の要人と共に殺害された。
プーチン政権はこれに対し、未承認のチェチェン・イチケリア共和国大統領に就任した独立派リーダー3名を次々と殺害。抵抗するチェチェン軍を壊滅させ、首都グロズヌイを徹底的に爆撃した上で「テロには屈しない。断固として鎮圧する」と立場を明確にした。
その一方で2005年に共和国議会選挙を開催するなど政情の安定をはかり、2009年に終息宣言を発表する。この第二次チェチェン紛争による犠牲者は20万人以上、実に1/4のチェチェン人が死亡したとされる。
現在、依然としてチェチェン国内では厳戒態勢によってテロを監視している。
その一方でロシア政府も融和政策にシフトしつつあり、経済振興を計っている。石油産業を主体とする経済効果も手伝って復興が進み、治安も安定しつつあり、近年ではさほど大きな事件は起きていない。
だが2013年、アメリカ・ボストンマラソンにおいて発生した爆弾テロ事件の犯人がイスラム過激主義のチェチェン人だったと報じられた。「根本的な問題は解決していない」と、改めて問題視する向きもある。
そもそも何故独立を拒否するのか
ロシア連邦は多民族国家であり、チェチェン以外にも多数の共和国によって構成されている。
ここでチェチェンの独立を認めてしまえば芋蔓式に独立が続き、ロシア連邦存続が危ぶまれるというのが第一の理由とされる。
またチェチェンはカスピ海から黒海にかけて繋がる石油パイプラインの通り道にあり、立地的に手放す事が出来ないという事情もある。
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