ツシマヤマネコとは、動物の一種である。
概要
ネコ科の動物で、アジアに広く生息するベンガルヤマネコの亜種。英名は「Tsushima leopard cat」、学名は「Prionailurus bengalensis euptilurus」。その和名どおり長崎県の対馬にしか分布していない固有種であり、島の森林や田畑、水辺に生息している。
頭胴長は50~60cmで、体重は3~5kgほど。イエネコと比べると胴長短足で、尻尾は太くて長い。また耳の先は丸まっており、耳の裏側には白い斑点がある。
エサは島の森林に生息するネズミや鳥類、昆虫。しかしながら島の開発に伴う森林伐採や人工林化により、その生息環境は悪化。それに加え、自動車に轢かれる交通事故、害獣捕獲用の罠での事故死、飼い猫からのFIV(ネコエイズ)感染も相まって個体数は著しく減少した。
日本の野生のネコはイリオモテヤマネコとツシマヤマネコの2種しかおらず、どちらも環境省のレッドリストでは「絶滅危惧IA種(CR)」に選定されている。ただ発見が大々的に報道されたイリオモテヤマネコと比べるとその知名度は低く、前者は特別天然記念物なのに対し、後者は天然記念物に留まっている。
こうした知名度の差に反して、繁殖計画はツシマヤマネコのほうが順調に進んでいる。その主要因は、国内の動物園にある。まず怪我などで保護したツシマヤマネコを用いる繁殖が福岡市動物園で2000年からスタート。その後飼育法や繁殖法が概ね確立され、伝染病や災害での全滅を避けるために全国各地の動物園に分散された。また効率的な繁殖を行えるよう、動物園間でツシマヤマネコを貸し借りする「ブリーディングローン」も盛んであり、近親交配を避ける・高齢で繁殖できない個体は園内で展示されている。2020年には、よこはま動物園・横浜市繁殖センターによって、人工授精による繁殖にも成功している。
しかし人工的な繁殖には成功しているものの、野生復帰の目処は立っていない。対馬に戻しても自生できるのか怪しいこと、島内の生息環境が回復していないことが主な理由である。このまま野生の個体が減少していけば、絶滅の一歩手前となる「野生絶滅(EW)」と評価される事態になりかねないだろう。
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関連項目
外部リンク
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