テコンドー(ハングル: 태권도、漢字: 跆拳道、英語: Tae kwon do, TKD)とは、空手の松濤館流を元に形成された韓国の格闘技である。一時期、「テースド」という名前になったことがある。
概要
テコンドーは足技主体の格闘技であり、飛び蹴りや後ろ回し蹴りの派手な飛び技が多い。
ただし、カポエイラなどと違って足技のみと言う訳ではなく、きちんと手技も存在するので注意。
(跆拳道の跆は足による技を指し、拳は文字通り拳による技を意味する。)
足技主体である事と下段攻撃への制限が厳しい事(「主なルール」参照)から「足で行うボクシング」と形容される事が多い。
テコンドーの主要団体は1966年発足のITF(国際テコンドー連盟)と1973年発足のWTF(世界テコンドー連盟)との二つに大別ができ、それぞれで級位・段位のシステム、技や型やルール、道着のデザインなどに差異がある。(簡単に書くとITFは格闘技重視、WTFはスポーツ重視と言われ、後者が前述の「足で行うボクシング」により近い)
WTFは世界160カ国以上が加盟し、競技人口は5000万人程度。
そのうち韓国と北朝鮮が競技人口の9割以上を占める。2010年広州アジア大会には37カ国・地域から247人が参加しており、中国武術、空手を大きく引き離している。
テコンドーは先述の通り「格闘技」であるが、そのルール(特にWTF)の特殊性や異種格闘技戦における成績などから「スポーツである」と見る向きが少なくない。
夏季オリンピック実施競技の一つ(スポーツ性を追求したWTFのテコンドーが採用されている)。
1988年ソウルオリンピックで公開競技として登場し、1996年アトランタオリンピックで一度外されたが、2000年シドニーオリンピックで復活、以来正式競技として実施されている。
主なルール
テコンドーは格闘技の例に漏れず1対1で戦うが、以下に他の格闘技と異なる特徴的なルールを列挙する。
- ポイント重視ルール
テコンドーも一応ノックダウンによる決着はあるが、殆どポイントによる判定決着である。
- 以上のような理由により、そもそも相手に触れられない為に踏み込みの浅いヒット&アウェイが中心となり、また攻撃を当てる機会を作っても有効なダメージにし辛いため、ダメージで倒すスタイルを諦めてポイントを取りに行くスタイルにならざるを得ない。
- 下段攻撃の禁止
「ポイント重視」の項目にもあるが、足技主体であるが、金的攻撃は当然としても、いわゆるローキックなどの相手の下半身への攻撃が軒並み反則行為とされている。 - 手技の厳しい制限
手技ももちろん下段攻撃は禁止であるが、それに加えてWTFでは顔面への攻撃も禁止されているため、実質的には胴への突きしかないのに近い。(ITFでは顔面攻撃は認められている) - クリンチの禁止
クリンチとは相手に抱きつく等して相手の攻撃を中断させたり時間を稼いだりするテクニックである。多くの格闘技ではクリンチはあまり良いイメージを持たず観客からヤジが飛んだりする事があるとは言え明確な反則とされていない場合が多く、せいぜいK-1において「明らかな守りのクリンチ」に対して反則が宣言される程度である。
しかしテコンドーでは守りか攻めかに関わらず、相手に抱きついた時点で反則となる。 - 防具の着用
テコンドーに限った話ではないが、基本的に足による攻撃は一発が重い。そのためテコンドーにおける試合では道着の上に厚い防具を身に付けることになっている。
ITFでは手足のみだが、WTFでは頭部や胴体も着用する。
歴史
テコンドーの発祥については、テコンドーは空手から派生した格闘技であると言う見方がグローバルスタンダードであるが、韓国内では「三国時代から存在した韓国の古来武術"テッキョン"がテコンドーの源流であり、日本の空手もテッキョン(もしくはテコンドー)から派生した武術である」と言う説が一般的である。
当然ながらこれについては否定する意見が多数存在する。
- テコンドー創始者でITF元総裁の崔泓熙(チェ・ホンヒ)氏は「日本で空手を学び、テコンドーを創始した」と語っている。
- 韓国国技院副院長・李ゾンウ氏は『テコンドーはテッキョンが源流である』と言う本を執筆しているが、それについて「テコンドーを海外に普及させるに際し、韓国古来の武術と名乗った方が都合が良かったからで、テッキョンがテコンドーの起源であると言うのは想像力を駆使しても無理がある。実際はテコンドーは空手の派生である」と述べている。
- 月刊『秘伝』2001年5月号において、テッキョンの韓国人間国宝の人が「テッキョンとテコンドーは何の関係も無い」と述べている。
- テッキョンが存在したとされる時代の韓国は弓技こそ盛んであったがそれ以外の武術が軽んじられていたと言う文化的背景があったため、テコンドーが出来上がるであろう時代までテッキョンが残っていた可能性が低い。実際、現代で演じられているテッキョンの演武は現代になってから創作されたものであり、古来武術としてのテッキョンの実像は全く不明である。
- 朝鮮半島に関する歴史書にはいずれもテッキョンに関する記述が全く出てこない。(これについては日韓併合時代に抹消された、と主張する者も居るが…。)
以上の事から、朝鮮半島圏を除いてテコンドーは空手から派生した格闘技であると言う見方が主流であり事実である。 韓国起源説も参照。
異種格闘技戦でのテコンドー
格闘技の興業化により、異なる格闘技と闘う機会が増えている。
テコンドーもそのうちの一つであるが、現在の所異種格闘技戦でのテコンドー選手の成績は余り芳しくないと言わざるを得ない。
テコンドーは格闘技ではなくスポーツである、と言われる理由の一つでもあるが、テコンドーが異種格闘技戦において振るわない理由としては以下のような要因が考えられる。
- 相手にダメージを与える攻撃に慣れていない
テコンドーのルール自体がダメージを与える事を二の次とし、派手な技でポイントを稼ぐスタイルになっているため、ダメージによる決着が基本である異種格闘技戦では著しく不利である。 - ダメージを受ける事に慣れていない
テコンドーのルールの関係上、テコンドー選手は相手の攻撃は全て避けるのが前提となっており「打たれて耐える」と言う事を殆どせず、テコンドー同士ならば厳しい攻撃部位の制限からそれでも何とかなってしまう事が多い。
しかしそういった制限の無い異種格闘技戦では相手の攻撃を避けきる事は非常に難しく、そして打撃を受けてしまうとダメージに耐えられずにすぐに倒れてしまう事が多い。 - 重心が安定しない
テコンドー自体がヒット&アウェイを基本としてよく動き回る事、飛び回し蹴りなどの地面に足をつけない闘い方が多い事から、相手のローキックや足払い1発でダウンしてしまうと言った状況が多い。(例えダメージを受けていなくても、スリップでないダウンは心象的にもポイント的にも大きく不利であり、ルールによってはダウンの回数が決着に繋がってしまう事もある)
軍隊格闘技でのテコンドー
テコンドーの競技人口は5000万人を数えるがこれにはトリックが存在し、韓国と北朝鮮ではテコンドーが軍隊の訓練として採用されていることが理由である。どちらも徴兵制による国民皆兵の国であり、一部の老人や徴兵前の青少年を除けば男子は必ず基礎的なテコンドーを習得している。
特に韓国軍はテコンドーの発展に大きな影響を及ぼしており、現在体系化されたテコンドーの技の中には韓国軍の初期に軍隊格闘技として考案された技も含まれているなど、相互に影響を及ぼし合っている面がある。
なおどちらの国も軍隊格闘技にはテコンドーがベースのものが採用されている。が、多くの技が実戦向きではない(特に重心が安定しないことが大きい)ため敵歩兵との徒手格闘において不利である欠点がある。一方で、そもそも現代の軍隊における格闘技は最後の悪あがきにしかならず、むしろ訓練において自信を付けたり、トレーニングを行うことによる身体づくりといった側面が主でもある。そのため、実際にはテコンドーを採用するデメリットはあまりない。
なお、両軍とも近接格闘の機会が多いとされる特殊部隊などの精鋭は、CQCにテコンドーを使用していない。
主な不祥事
- 2008年テコンドー東日本チャンピオンは強姦致傷の罪で服役している。
- 日本におけるテコンドーの主な団体の全日本テコンドー協会は、度重なる不正経理の末に2014年に公益財団法人の認可を取り消された。
- 2014年頃から本場の韓国における八百長が深刻化している。その結果、世界大会において朝鮮半島以外の出身者が優勝するなど大きな悪影響を与えていると報道されている。
フィクションのテコンドー
フィクション作品にもテコンドー使いとされている人物は存在する。
有名なのはテコンダー朴『餓狼伝説』および『KOF』の登場人物、キム・カッファンであろうか。
格闘ゲームプレイヤーの中にはキム・カッファンを見てテコンドーと言う名前を知ったと言う人も少なからずいると思われるが、キム・カッファンのテコンドーは現実のものとは大きくかけ離れたアクロバティックなものであるのに注意。
現代競技のテコンドーでは間違いなく反則になるであろう「足元への攻撃」「地面が揺れるほどの強打」や足払い、組み付いての投げ技があるだけでなく、挙句の果てに空を飛んだりする。
ただしこれは餓狼シリーズやKOFシリーズで行われる試合が異種格闘技戦であること、ゲーム上の都合があることにも留意されたし。(ボクシングも下段攻撃が使えたりする場合があるし)
なお彼には息子が2人おり、息子らもそれぞれテコンドーを使うが、雷を出したりと常人ではなくなっているので、ゲームでテコンドーを知ったプレイヤーはやはり注意が必要である。
そもそもテコンドーが格闘ゲームにあまり登場しないのは、やはり韓国が国としては他の国よりインパクトが薄く、諸共封殺されていたという点からである。KOF発売元であるSNKはアジア、特に韓国市場に強かった為、必然的に韓国人でテコンドー使いのキャラクターが生まれることとなったわけである。
そして、KOFシリーズ等SNK作品の韓国での発売元にしてキム・カッファンの由来となった同名の社長の取り締まる韓国ゲーム会社ビッコムがSNKに協力をされながら開発した、テコンドー使いだけの格闘ゲーム『ファイトフィーバー(正式名称:王中王)』なるものが製作されたが・・・。
ちなみに「ファイトフィーバー」で登場したテコンダー達の一部名前や技、ラスボスの空手健児の技名等は、のちにジョン・フーンというキム・カッファンのライバルキャラクターとしてパロディ的に再構成されてKOFに登場した。
ナムコも韓国市場を視野に入れており、3D対戦型格闘ゲーム「鉄拳」シリーズでは「鉄拳2」より白頭山(ペク・トー・サン)が、「鉄拳3」より花郎(ファラン)が登場した。ファランに関してはITFテコンドーの選手だった黄秀一氏がモーションキャプチャーを担当しており、リアルな動きと当時の開発スタッフが重視した「華やかさ」が実現している。
この他、ソウルエッジやソウルキャリバーといった『ソウル』シリーズも韓国系キャラが登場しているがテコンドーとかけ離れるので割愛。
また、かつてSNKと格ゲーメーカーとして双璧を成していたCAPCOMから、「ストリートファイターⅣ」にて韓国人でテコンドー使いの悪役女性、ハン・ジュリが登場した。こちらも韓国から「我が国での市場展開を考慮して韓国人をお願いします」と要望があった為。そこで「どうせなら韓国の人たちが怒って抗議に来るような強烈なキャラにしよう」と悪女キャラにしたCAPCOMも凄いが。その結果どういうわけか韓国でもハン・ジュリは好評である。
他、「DEAD or ALIVE5」に登場するカナダ人のリグもテコンドーの使い手である。
これは現実のテコンドー史において、1973年に崔泓熙がカナダへ亡命しITFの本部もトロントに移したという出来事があり、リグがカナダ人テコンドー使いという設定なのもこれと関連しているのかもしれない。
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関連項目
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