テンジン・ヒラリー空港とは、エベレストへのネパール側の玄関口にある空港である。
概要
旧称は所在地の集落であるルクラから名づけられた「ルクラ空港」。エベレスト初登頂を成し遂げたネパール人のテンジン・ノルゲイと、ニュージーランド人のエドモンド・ヒラリーから名前をとって、2008年に改称された。
ヒマラヤ山脈の中では貴重な山の中腹の平地の1つである、ルクラに設置された空港。空港の滑走路の片方(西南西側)に崖、もう片方(東北東側)には壁、その上にレストランの建物、背後に大きな山がある状態になっている。そのため、崖がある西南西側からしか着陸できない。
さらに、滑走路が11.7%の傾斜付き、かつ500m程度の短さとなっている。参考までに日本の地方空港の滑走路の長さはおおむね2000m台が多く、セスナ機を中心に発着する調布飛行場でも少なくとも800mある。
加えて、滑走路の手前にも山があり、これを右旋回で回避して離着陸しなければならない。標高約2800mの高地にある関係で周辺の天候も変化しやすく、悪天候で5時間遅れになった時には「5時間で済んでよかった」という声が上がるほどである。
このような状況であるため、世界一危険な空港と称されることも多い。実際、2004年・2008年・2010年・2019年には死亡事故が起こっており、これらの事故での死者は38名に及ぶ。
離陸時は傾斜を利用して加速し、着陸時は逆に上り坂で減速をする。
Microsoft Flight Simulatorにも収録されている。空港の横幅も小さいため、軽飛行機でない通常の飛行機で着陸すると家が付近に映ってしまい、着陸後の車窓が電車のようになるほか、翼が空港の外に生えている木を貫通する。
滑走路が短いため、現実の空港で着陸できるのは軽飛行機やSTOL機、ヘリコプターに限られる。パイロットにも基準が課されており、一例として短距離離着陸の100回以上の経験に加え、ルクラでの飛行訓練を10回合格しなければならないなどの規定が挙げられる。
需要
一方で、毎日ネパールの首都のカトマンズとの定期便が運航されている。これはエベレストのネパール側の主要な玄関口となっているためである。
ルクラの周辺には自動車が通れるような道路はない。Google Mapにも他地域に通じる道路自体が南の小集落の"Surke"から先には描かれておらず、ルクラからエベレストにかけての地域がほぼ陸の孤島と化しているため、テンジン・ヒラリー空港を使うのが最も容易な来訪・物資輸送手段となる。
エベレスト登頂を目指す登山家だけではなく、ナムチェバザールなどの麓の集落のトレッキングやヒマラヤ山脈・氷河などの眺望、資料館・博物館の見学、ホテルでの宿泊などを求めてやってくる観光客もいるため、空港の需要は集落の人口規模と比べて高い。コロナ禍前の2010年代後半の年間利用客数は10万人ほどである。参考までに、2019年の調布飛行場や種子島空港の乗降客数は8万~9万人台である[1]。
関連動画
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関連項目
脚注
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