ディベートとは、言い争い討論のことである。
ディベートって何?
それはさておき、国語辞典にはどのような意味が書かれているだろうか?
おそらく「1つのテーマについて、複数の立場に分かれて討論する」ということが書かれているのではないだろうか?
あるいは英和辞典では「討論、議論」と書かれているかもしれない。
これらをまとめると、以下のようになる。
1.については解説は不要であると思われるので、2.3.について解説していく。
形式が決まった議論とは?
国語辞典の定義を思い出してほしい。定義を要約すると以下の通りになる。
- ひとつの論点
- 複数の立場
この条件に当てはまるもの(当てはまってほしいもの)としては、裁判、国会(特に党首討論)、大統領選挙における候補者討論会(アメリカ)等がある。いずれも一つのテーマ(有罪とすべきか否か、与党・大統領の方針を採択すべきか)と複数の立場(原告VS被告、与党VS野党、共和党VS民主党)の両方を満たしている。
※ よく3の関係者が「国会はディベートじゃない」とブツブツつぶやいているが、それは「国会は(私が求めるような)議論をしていない」という不平不満であると考えれば分かりやすい。例えば「乱闘国会」や「議長の制止を無視した質疑」等は多くの人にとって不快なものであろう。
これらについては教育目的で行うディベートと比較して、実社会ディベートと呼ばれることもある。上のようなお堅いものでなくても、「単位をとるか睡眠をとるか」「朝食と試験勉強のどちらを優先すべきか?」「残業するか帰るか」を考えることもこの定義ではディベートに入る(とする考え方もある)
※ 「一人で複数の立場になって考える」ことを複数の立場と考えるかどうかで変わってくる。「複数の立場である」と考えれば「ディベート」と見なすことになるだろうし、「一つの立場である」と考えれば「ディベート」とは見なされない。
教育ディベート
3については教育ディベートと呼ばれているようなので、見出し以下「教育ディベート」とする。
「ディベート=教育ディベート」と考える人もいるかもしれないが、上で述べたようにこの認識は誤りであるし、少なくとも正しいとは言えない。
日本における教育ディベートとしては、以下のようなものがある(は選手としての参加に制限がある団体)
重視するもの※ | |||
英国式:表現技法 | |||
言語 | 日本語 | ||
HEnDA(高校)、NFLJ(高校)、NAFA、NDAJ | HPDU(高校)、JPDU |
※重視するとはいえ、それ以外を無視するわけではない。評価項目にちゃっかり入っていることもある。
この4分割表をまたぐ際には、くれぐれも「こんなのディベートじゃない!」と文句をつけることだけは避けてほしい。むしろ「なんでこんなに違うんだろうか?」と比べながら考える方がためになるだろう。
各団体は随時セミナー等を開いている。興味があればそれぞれのホームページで情報を入手するとよいだろう。
以下各分野について説明をしていく
通称「アカデ(academic)」アメリカのディベートを模範にしたディベートである。
各大学のESSに「ディベセク(debate section:ディベート部門)ありますか?」と問い合わせれば、存在する場合50%ぐらいの確率でこちらに当たる(残り50%ぐらいは英国式である。「アカデですか?パーラですか?」と聞いてみよう)
「ロジック重視」が特徴である。「(訓練されているジャッジに伝わる限り)何でもあり」という色合いが強く、一般人には聞き取れない高速スピーチや「そんなのあり!?」という議論が飛び出すこともある※。そのため、「ディベート=ゲーム」と考える人にとっては面白いともいえるだろう。
※ もちろん一般的によく言われる議論を出しても構わないし、むしろそのような議論の方が多い。要するに「証明できるかどうか?」ということが最重要であり、一般的な議論でも相応の証明が要求されるし、変な議論でも相応の証明が出来れば判定の際に考慮される。なお、「相応の証明って何ですか?」ということについては議論があり、一概には言えない。その点「常識って何ですか?」とという質問によく似ていると言えよう。
米国式の流れを汲む教育ディベートとしては最古の分類に当たる。そのため、日本語の関係者と話をすると「昔は英語だったけど今は日本語をやっています」「両方に関わっています」という人も多い。また、米国式日本語ディベートの創設にも関与している。
年に数回全国大会が開催されている他、日米交換ディベートが開催されている。
最近では高校でも全国大会が開催されている。HEnDAの大会では「スピーチの速度制限」「提出する議論の制限」等、大学生以上と比べると教育的な配慮が行われているが、本質的には米国式の流れを汲んでいる。興味があれば高校のESSに聞いてみよう。最近では米国のディベート団体であるNFLが日本支部を作って大会を開くことになった。加えてNFLでは中国、韓国にも支部を設けており、アメリカの本選と合わせて世界大会を開く予定である。そのため、今後ますます発展していくことであろう。
通称「パーラ((Parliamentary Debateの略)」名前の通り英国議会をモチーフにした教育ディベートである。
世界的な歴史は米国式よりもずっと古いが、日本では米国式よりもずっと浅い。最近は規模が大きくなっているため、接する機会は増えていると言えるだろう。なお、世界的には英国式の方が普及している。
英国議会をモチーフにしているため、「答弁中の質疑」や「ユーモアに加点する」「即興でのスピーチが要求される」「聴衆を意識したスピーチが要求される※」等米国式とは大きく異なる部分が存在する。「ディベート=スピーチ力を鍛える」ということであれば面白いと言えるだろう。
※ 例えば日本の国会でよくある「原稿を棒読み」というようなスピーチをするとそれだけで評価が下がる。
世界大会が存在することも英国式の特徴であるとアピールされる。「世界に一番近い」という視点では英国式が一番近いともいえるだろう。
通称…は特にない。何の断りもなく「ディベート」と説明する関係者もいるが、誤解を招きやすい表現である。
各高校では「弁論部」「ディベート部」等の名前で活動していることが多い。一方で大学ではチームの愛称がついていることが多い。A.B.と違うところは、大学生以上の大会にて通称「野良ディベーター」と呼ばれる「特定のチームに所属せずにその時その時で好きな人とチームを組んで出場する」という人が多いことであろう。その一方で、中高生の大会については教育上の配慮があるため、学校をまたいだ混成チームは少ない。
議論自体は素直な議論(=新聞や専門家の意見として登場しそうな議論)が多い。これは「実社会で通用する能力を鍛える」という方針からそうなっていると思われる。その一方で「議論の幅が狭い」というのも事実であり、「全国大会で見た試合が全部似たような議論だった」「各論点が整理しつくされており、重箱の隅をつつくような議論しかなかった」という感想を漏らす人もいる。
※ 必ずしも「議論の幅が狭い=悪い」とは言えない。「細かいところまでよく詰めている」とも言える。
米国式英語ディベートの関係者を招いている経緯があるため、ルールや用語、時間に共通する部分が見られる。しかし、競技自体は「日本語と英語で違うとは聞いていたけど、言語以外も天と地ほど違う」という感想を漏らす人が多い。ただし、速いことだけはどうやら共通のようである。
(全国大会に限って言えば)大学生以上の大会よりも中高生向け大会の方が早く開催されている。通称「ディベート甲子園である。英語と同様にスピードや議論に多少の制約があるが、それでも普段耳にする日本語と比べると速いという声が多いのは事実である。大学生以上の大会では中高生大会の方が歴史が古いことが影響してか、「中高でも(米国式日本語)ディベートをしていました」という人が多いことが特徴であるとも言えるだろう。
世界とのつながりでは、台湾・韓国にて日本語ディベート大会が開催されており、日本との交流もある。とはいえ世界的に見るとマイナーな言語であることから、国をまたいだ大会はどうやらなさそうである。
1.2.と比べると、参加団体は少ないが徐々に増えている。そのため、今後はより接点も増えると思われる。
教育ディベートに参加する方法
ここでは3.について参加する方法を紹介する。
こんなページをこんなところまで見ているということは、あなたは「(肯定的・批判的を問わず)教育ディベートに興味を持っている人」ということであろう。教育ディベートを擁護する・批判する※、どちらのスタンスでも構わない。しかしながら、そのためには「教育ディベートとは何か?」を知ることは不可欠であろう。実態を知らずに擁護・批判することは無責任であり、将来のディベートにとって百害あって一利なしだからである。
※ 教育ディベートに批判的な意見があることは事実であり、教育ディベートの関係者にはそれを真摯に受け止め、改善、あるいは誤解を解く責任が存在する。その点において、「外部の意見を取り入れる」ということは重要であろう。「やりたいやつだけやればいい」「来たいやつだけ来ればいい」というのは無責任な態度であり、将来のディベート界を歪めるないしは衰退させる原因にしかならない。
参加する方法は「大学生以上」と「高校生以下」で大きく異なる。以下では大学生以上の場合について説明するので、高校生以下で参加したい諸君は、自分で調べた上で親か先生にお願いしてみるのがいいだろう。
1.試合の映像を見てみる
各団体ではそれぞれ試合の動画を公開している。まずはそれを見てみよう。自分がディベートに対して抱いているイメージと合っているかどうか?※を確かめる手助けにはなる。
※ あくまでも「ビデオのようになれる」というだけであり、「ビデオのようになる」というわけではない。ディベート界にも色々な人がいることは事実である。是非試合会場に足を運んでほしい。
なお、なぜかニコ動にはアップされていないので、youtubeに行ってみよう。
2.大会会場に行ってみる
各団体はそれぞれ大会を開催しているのでその会場に足を運んでみよう。ディベーター(ディベートをやる人)と言えども色々な人が存在し、様々な喋り方・議論※が存在することがわかる。
※
様々な喋り方:カタコト英語/ネイティブ英語、ゆっくりスピーチ/速いスピーチ・・・
様々な議論:まっとうな議論/思ってもいなかった議論、議論の幅/議論の質・・・
なお、「英語をしゃべることが出来ない※」「ルールがわからない※」という場合には、各団体にメールを送ってみよう。関係者がつきっきりで試合を説明してくれるはずだ。なお、中高生向けの試合に大学生・社会人が見学に行くのも構わないし、その逆でも構わない。
※ 最初から試合を見て理解し、楽しめる人はまずいないし恥ずかしいことではない。例えば実況・解説なしでラグビーを見て楽しめる人はいないだろう。いるとすればラグビーを知っている人だけである。
3.試合に参加してみる
2.で「面白そうだ」と感じた人は、試合に参加してみよう。ただし、いきなり試合会場に行っても試合には参加できない。「申し込み」という運営上の都合もあるが、何よりも大半のディベート大会では「1チーム複数人(最低2人)で構成すること」という制限があるためである。この制限により、案外「チームメイトを集める」という点で挫折する人が多い。そのような人が多いことは各団体も承知しており※、ディベーターの斡旋を行っているので、問い合わせれば対応してくれるだろう(多分)
※ 関係者は多かれ少なかれその手の問題と格闘した経験がある。そのため、リクルート活動や部員のモチベーション維持については関係者の仕事として重視されている(はずである)
なお、「ディベートの準備って何をすればいいか?」については「一概には言えない」とだけ答えておく。各ディベーターの環境※によって相当な違いがあるため、「これが正解」というものはない。
※ 例えばABCのスタイル、住んでいる場所、所属する大学・学部、経済状況等で大きく変わると言われている。例えば「北海道に住んでいる人が、1週間に何度も国立国会図書館に通う」ということは現実的ではないだろうし、「授業で忙しい学部の人が毎日図書館にこもる」ということも無理だろう。
何よりもA.B.Cによってやることが全然違う。そのため、一概には言えないのである。
とはいえ初心者がそのようなことを悩むことは各団体も承知しており、参考資料やお手本原稿の配布、コーチ派遣、練習試合の開催等を行っている。そのため、「何をすればいいか?」を悩む機会は次第に減少していると言えるだろう※
※ 団体によっては昔は「習うより慣れよ」「失敗して身に着ける」「見て覚える」「ある程度のレベルになったら支援する」というスタンスだった時代もある。しかしながら、そんな殿様商売がいつまでも続くわけがない。現在ではサービスの内容に多少の差はあれど、初心者の支援を行っている。
このようなサービスを利用して準備・練習をすると、概ね3ケ月、遅くとも6ケ月程度で「大会に参加して、一応試合にはなっている」レベルになると言われている。なお、ビデオに映っている選手は3ケ月どころか何年も練習している。それぐらい続ければビデオのような高度な試合ができるのである。
関連動画
定義1のディベート
関連商品
ここでは3について紹介する。
関連コミュニティ
関連項目
ディベートする上で知っておくといいこと
- 議論:ディベートはこの中の1カテゴリーである。
- 論破:3では「論破」は出来ない。「絶対に間違っている主張」や「絶対に正しい議論」が存在するなら、議論をする意味がないし議論しても勝負にならないため。各大会のテーマ(論題)もその辺には注意して決められており、例えば「地球は太陽の周りをまわっている。真か偽か?」であったり、「殺人罪を廃止すべきである。是か非か」のようなものは採用されない。前者は「偽」ということがおそらく不可能であろうし、後者は「是」と言うほうが極端に不利である。
- 詭弁:やると相手選手やジャッジに突っ込まれるが、たまに見逃されることも…
- 常識:ないとディベート出来ない。しかし「ジャッジの常識をどの程度尊重すべきか?」については議論の余地がある。特にジャッジの常識と選手のスピーチが衝突すると問題になる。
- 捏造:絶対にやってはいけないこと。2.の場合は各所で晒されて炎上するし、3.の場合は程度によって「反省文を書かされる」「試合に負ける」「失格になる」「失格になった上追放される」「大会の閉会式等でチーム名を名指しにされて晒される」等の厳罰が下る。3.の場合は世間の捏造に比較的意味が近く「存在しない証拠資料をでっち上げる」ことはもちろん「証拠資料の文意を捻じ曲げる引用を行う(例えば不都合な文言をスピーチで引用しない、都合のよい言葉だけを拾ってスピーチする)」果ては「書いた人間を第三者が証明できないブログを引用する」「文献を引用する際に必要な事項を1か所タイプミスした」ことすら処分の対象になる。
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