デグスビイ(Degsby)とは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。
CV.納谷六朗(石黒監督版OVA)、遊佐浩二(Die Neue These)。
概要
地球教の主教。宇宙暦798年(帝国暦489年)時点で「まだ三〇歳になってはいないだろう」とされる。
肉づきが薄く異様に青白い顔をしており、唇は薄く、長い黒髪は手入れされていない。狂信的な教条主義者と評され、熱気はあれど不快な熱帯雨林の太陽のごとき光を宿した青い目からは理性と信念の不均衡がみてとれはするものの、全宇宙に暗に勢力を広げる宗教の幹部として相応の知性を有した人物。
フェザーン自治領主アドリアン・ルビンスキーを監視するため地球教よりフェザーンに送り込まれた敬虔な聖職者であるが、自治領主補佐官ルパート・ケッセルリンクによる陰謀に巻き込まれて堕落させられた末、フェザーンを脱出する船の中で死去した。
経歴
陰謀と堕落
デグスビイがフェザーンに来訪したのがいつ頃かは不明だが、宇宙暦798年初頭には自治領主府にルビンスキーを訪ねている。このときはすでに数日にわたってルビンスキーと密談を重ねており、前日に伝えられた対帝国協力・援助の比重増という新たな方針について、従来の勢力均衡策を覆すものとして糾問した。ルビンスキーからはラインハルト・フォン・ローエングラムに銀河を統一させたうえで統一国家の中枢をおさえるという新たな策略を提示されたが、理解しつつも疑念を隠さず、するどい指摘をもさしはさんでいる。最終的には国家論を語るルビンスキーの力説に皮肉で応じ、用意された饗応を固辞して退出した。
しかし、その後のデグスビイは、ルビンスキーを打ち倒すという野心を抱くルパート・ケッセルリンクに目をつけられることになる。デグスビイの弱みをにぎり、手駒にしようとしたケッセルリンクの手によって、彼は薬漬けにされ、酒と麻薬と女に溺れさせられることとなった。それでもデグスビイはルパートの「総大主教にとってかわり、地球教を掌握しろ」という提案を一蹴して嘲弄したが、彼の瀆神と堕落は当然すべて録画されており、露骨に脅迫されたデグスビイはもはや弱々しい罵倒を返すしかなかった。
フェザーンからの脱出
同年12月に帝国軍がフェザーンに侵攻すると、ケッセルリンクはドミニクに、フェザーンからデグスビイを脱出させるよう指示する。ケッセルリンクは帝国への抵抗を糾合するべくいよいよルビンスキーを排そうとしており、ルビンスキーを地球教の癒着の証人としてデグスビイを必要としたのである。ドミニク自身の密告によりケッセルリンクが反撃を受け殺害されてのちも、彼女はその指示の通りにデグスビイの脱出を手配した。
いわくつきの聖職者であるデグスビイの身柄は複数の商人に忌避されたが、結局は独立商船の事務長をつとめるマリネスク(少将じゃない方)に拾われ、同盟方面への密航をもくろむ貨物船ベリョースカ号へとおちつく。だが、薬物とアルコールの過剰摂取は彼の内蔵をいちじるしく衰弱させており、すでに死期が近づいていた。そしてベリョースカ号が帝国軍駆逐艦ハメルン4号を逆に拿捕し移乗した直後に死去した。遺体は宇宙葬にふされた。
地球教の主教にして背教者をも自認していたデグスビイは、同様にフェザーン脱出を企図してベリョースカ号に搭乗した同盟軍駐在武官ユリアン・ミンツ少尉の関心を引いていた。デグスビイは死ぬ前にルビンスキーとケッセルリンクの相克についてユリアンに伝え、最期に社会の裏側に隠された地球教の勢力について重大な示唆をあたえた。いわく、「すべての事象の水源は地球と地球教にある。過去と現在の裏面を知りたかったら地球をさぐれ」、そして「地球にたいする恩義と負債とを人類は忘れてはいけないのだ」と。
この示唆を受けたユリアンは、バーラトの和約ののち、ボリス・コーネフらとともに地球へと赴くこととなる。
人物と影響
まちがいなく地球教の狂信者ではあったものの、彼はケッセルリンクのいう「禁欲の権化」でもあり、厳格に律された生活をおくる清教徒的な宗教家であった。
ケッセルリンクのために薬物によって堕落させられはしたものの、彼は奥底に強固な信仰心を維持していたといえる。事実、ケッセルリンクを「瀆神の徒」と罵倒し、その提案を怒気をふくんだ嘲弄でもって笑い飛ばしたあげく、
きさまごときの野心と浅知恵で、総大主教猊下に対抗しようというのか、お笑い種だ。最下等の笑い話(ファルス)だ。犬は犬なりの夢をみろ。象に対抗しようなどと思うな。それが身のためだぞ
と嘲り、圧倒的に優位にあるはずのルパートの平静さをわずかながら失わせている。
ベリョースカ号に乗り込んでからは、瀆神をなした自分自身をもはや聖職者ではなく背教者であるとユリアンに語っている。ユリアンには、デグスビイが身体の異常がもたらす激痛を背教への罰として受け入れ、なかばは自殺のようなかたちで死去したように感じられたという。
その死については総大主教ら地球教上層部にも伝わっており、「不肖者のデグスビイ」が末期に秘密を洩らしていないかどうかが危惧されている。デグスビイがいかなる感情のはてに地球教の暗躍について示唆したのかは定かでないが、このことはユリアンや話を聞いたヤンをして、フェザーンと地球教との関係、ひいては地球教の裏面に関心を持たせるきっかけとなったのだった。
関連動画
関連項目
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