デュドネイとは、『銀河英雄伝説』に登場しているのかしていないのかわからないキャラクターである。
存在について
登場しているのかわからない?いや、登場してたじゃないか、ランテマリオ会戦の時に……と思ったアナタ、では「風雲篇」を見てみよう。
八四〇隻からなる同盟軍デュドネイ分艦隊は、わずか三時間のうちに一三〇隻まで撃ち減らされていた。ワーレンの艦隊が、虚空に広げた翼の一端でデュドネイ分艦隊をひと撃ちしたのである。
おわかりいただけただろうか。(おもむろに流れ出すX-Filesのテーマ)
そう、この「デュドネイ」、地の文にて「デュドネイ分艦隊」という部隊名でしか言及されないのである。よって人物なのかどうかすらわからない。もし人物なら登場しているといえるかもしれないが、惑星ハイネセンが登場したからといってアーレ・ハイネセンが登場したとはいえないわけだし、戦艦レオニダスが登場したからといってレオニダス王が登場したことにできるわけでもないのだから、もし部隊名が「デュドネイ分艦隊」なのだとしたら、それは登場しているといえるのだろうか。
とはいえ、銀英伝において「◯◯分艦隊」と呼ぶときの「◯◯」は例外なく指揮官を指しているので、「デュドネイ」が人名であるのはほぼ確実。「デュドネイ分艦隊」が部隊名ではなく「デュドネイ司令官の率いる分艦隊」という意味ならば、デュドネイ氏が登場しているといってよいだろう。石黒監督版OVAでははっきり「デュドネイ提督の分艦隊」と呼ばれているので、こちらでは間違いなく「デュドネイ」というキャラクターであると解釈されているし、まあ名前だけとはいえ登場していると言ってしまえる。
そういうわけで、「デュドネイ」は作中に登場しているかしていないのか結局ハッキリとは断言できない、ひょっとするとそもそも存在しないのかもしれないキャラクターではあるのだが、この記事ではまあOVAでも人名扱いだし人物であろうという認識のうえで「デュドネイ」を説明することにする。
でも『銀河英雄伝説事典』の「人名事典」にはデュドネイの項目そのものがなかったりするし、もしかすると人物じゃないのかもね……(もう一度流れ出すX-Filesのテーマ)
人物としての概要
”神々の黄昏”作戦を控えた同盟末期、当時の貴重な残存兵力として存在した幾つかの警備艦隊の一つを指揮していたと思われる。宇宙暦799年2月8日、ランテマリオ星域会戦に参加。会戦中盤の16時、帝国軍ワーレン艦隊の猛攻を受け、もともと840隻を数えた麾下の艦艇を19時までのたった三時間で130隻にまで撃ち減らされて集団としての能力を失ってしまった。
ワーレンはさらに同盟軍左側面に回り込んで同盟軍の分断を図ったが、幸い宇宙艦隊司令長官アレクサンドル・ビュコック元帥の的確な指示により第14艦隊司令官ライオネル・モートン中将が守備を固めたため、同盟軍左翼の全壊は免れた。その後デュドネイ提督がどうなったかは不明。
OVAでもスーン・スールズカリッターによる報告でのみ存在が確認されるため登場はないという、末期同盟モブ提督勢の中でもっとも存在が希薄な人物といえる(存在していればの話である)。だが――
デュドネイ艦問題
石黒監督版OVAでは、スーン・スールズカリッターによる報告シーンの前半部において、スールの台詞をバックに猛攻撃を受ける同盟艦隊が映っている。直後の<リオ・グランデ>艦橋内のシーンでは戦術スクリーンに右翼前方の部隊が撃ち減らされてゆく様子が映っていることから、(原作とは左右が異なるが)この部隊がデュドネイ分艦隊であると考えられる。
ここで問題が発生する。この艦隊の真ん中に、一隻のアイアース級(パトロクロス級/アキレウス級)旗艦級大型戦艦が映っているのである。この艦については、初期の設定であるパトロクロス級設定に「デュドネイ艦」として挙げられているのみ。以降の新設定であるアキレウス級・アイアース級の資料ではまったく言及されなくなってしまった。デュドネイ自身に関しても本編中の記述以外になんらの設定もないため、この一隻の旗艦級戦艦は、錯綜する同盟軍戦艦設定の間に取り残された謎の存在と化してしまったのである。
このような謎の旗艦級戦艦はドーリア星域の会戦のシーンをはじめとして作中各所においても何隻か見られる(登場場面がバンクシーンとして利用されてしまっている場合すらある)のだが、このデュドネイ艦は一応の設定がわずかながら存在し、しかもシーン上はデュドネイ提督の旗艦にしか見えないために目立っているといえよう。
なお、同シーンでは艦隊向かって左から攻撃を受けており、そこまでの描写を見るかぎり明らかに右翼で右から攻撃を受けているはずのデュドネイ艦としては実は変であるということを付記しておく。その場合、ランテマリオ会戦に参加したことが確定している旗艦級戦艦の中では艦影が似た第15艦隊旗艦<ディオメデス>が辛うじて該当するが、同シーンで<ディオメデス>が登場する必然性がまったくないという問題が新たに発生してしまう。
関連動画
関連項目
- 0
- 0pt