トスカ(Tosca)とは、
- 人名。ファミリーネームとファーストネーム双方で存在する。ファーストネームの場合、女性に用いられる。
- ラ・トスカ(La Tosca) - フランスの脚本家ヴィクトリアン・サルドゥによる戯曲。トスカとは主人公の女性の名である。1887年にパリで初演された。その際の主演は大女優サラ・ベルナールで、彼女を描いた宣伝ポスターの作者はアルフォンス・ミュシャ。批評家からは厳しい反応を受けたが興行的には大成功し、その後数十年にわたり世界各国で上演された。日本にもその評判は届き、落語や歌舞伎に翻案されている。
- トスカ(Tosca) - 上記2.を原作としてジャコモ・プッチーニが作曲したオペラ作品。本記事で詳述する。
「トスカ(Tosca)」とは、ジャコモ・プッチーニが作曲したオペラである。
情熱的な美貌の歌姫トスカとその恋人カヴァラドッシ、警視総監スカルピアの愛憎劇。
全3幕。オペラ史における重要な転換点の作品として高い評価を受けている。
概要
初演は1900年。原作は前年にパリで発表された戯曲である。
ミラノにおいてサラ・ベルナールが主役を演じる舞台を観劇したプッチーニは本作をいたく気に入り、ただちにオペラ化の為の権利を手に入れようとしたが、契約問題が前後して一度は権利を逃してしまう。その後ヴェルディの仲介もあり、紆余曲折を経てプッチーニは作曲の権利を入手、3年をかけて台本作家とカンカンガクガクやりながら作品を完成させた。
オペラの舞台でもあるローマでの初演においては当時の首相を始め、名だたる名士や作曲家がこれを観劇。批評家の下した判断は厳しかったが、聴衆は熱狂的にこれを賞賛したと伝えられている。
あらすじ
政治犯アンジェロッティは逃亡する最中、自分の一族が礼拝する教会にやって来る。そこでは画家のカヴァラドッシが教会の注文で絵を描いていた。
仕事の最中、カヴァラドッシは物音でアンジェロッティが隠れている事を知る。二人は旧知の間柄で、アンジェロッティはローマ教皇領の牢獄・サンタンジェロ城から逃げてきたと告白。カヴァラドッシは彼を堂内に匿い、外から自分を呼ぶ恋人のトスカに応じて出ていく。
落ち着かない様子のカヴァラドッシを不審に思い、別の女と密会していたのではないかと疑うトスカ。カヴァラドッシが描いていたマグダラのマリア像を見て、ますます疑いを濃くする。だが恋人のとりなしでひとまず納得して立ち去るのだった。
アンジェロッティはカヴァラドッシの助けを借り、変装して脱出を図る。間一髪、彼らが逃走した後に追手の捜索隊が現れ、更に警視総監のスカルピアが登場。礼拝堂を探索して疑いを強め、どうやら画家が一枚かんでいると推測。戻ってきたトスカの証言でいよいよ確信を抱き、美しい歌姫に対する恋心を密かに吐露するのだった。
カヴァラドッシは捕らえられ、アンジェロッティの行き先を吐けと拷問にかけられる。宴席の為にスカルピアの官邸に招かれたトスカは捕らわれの恋人を救う代わり、スカルピアのものになるよう迫られた。遠くから聞こえる恋人の悲鳴に激しく揺れるトスカ。
そこへアンジェロッティは逃れられない事を知って自殺したという知らせが入る。更にカヴァラドッシは政治犯幇助の罪で処刑される事となってしまった。スカルピアは重ねてトスカに告げる、言うことを聞けばカヴァラドッシを処刑する時に空砲を撃って命だけは助け、更にイタリアを出国できるよう通行証を書くと。観念し、トスカは遂に首を縦に振る。
通行証にサインし、いよいよ我が物にしようと迫るスカルピアだったが、トスカの返答はナイフだった。「これがトスカの口づけよ!」そう叫んでスカルピアを刺殺し、通行証を奪ってその場から立ち去る。
サンタンジェロ城の屋上の刑場では、カヴァラドッシの処刑が行われようとしていた。彼はトスカへの別れを告げる手紙を書くが、朝が来たら殺されるという絶望に泣き崩れる。
そこへトスカが現れて状況を説明。処刑は見せかけで終わること、全て終われば二人で逃げられることを告げ、二人は愛を再確認する。
いよいよ処刑の時となり、カヴァラドッシは刑場に引きずり出される。横一列に並んだ兵士達が一斉に発砲し、崩れ落ちる恋人にトスカは声をかけるが、彼は既に息絶えていた。スカルピアは最初から約束を守るつもりなどなかったのだ。
絶望して泣き叫ぶトスカの許に、スカルピアが殺害されていた事を知った部下達が駆けつけ、逮捕しようとする。だがトスカはその手を逃れ、スカルピアにあの世での復讐を誓い、サンタンジェロ城の屋上から身を投げたのだった。
補遺
- 20世紀最高のソプラノ歌手と称えられるマリア・カラスの十八番として知られる。
- 第三幕でカヴァラドッシが歌う「星は光りぬ」はドラマティックで悲壮な曲で、テノール歌手の実力を推し量る上で欠かせない。
- 他にも名曲が多く、フィギュアスケートで楽曲を多く使われている。過去にはエフゲニー・プルシェンコ、アレクセイ・ヤグディン、イリーナ・スルツカヤらが使用している。
- 漫画『動物のお医者さん』に、主人公ハムテルの母がオペラ歌手で、地元の公演で「トスカ」を演じるという話がある。だがナイフがなかった為に急遽スカルピアを絞め殺す羽目になり、更に話の内容を理解していないハムテル達エキストラによってめちゃくちゃな展開になるという内容。
- これに類似して、モンセラート・カバリェがニューヨーク・メトロポリタン歌劇場でトスカを演じた時のハプニングが伝わっている。
それによるとラストに城壁から飛び降りる際、本来はマットレスを敷くべきところをトランポリンで代用した。いよいよラスト、ソプラノ歌手の宿命として恰幅の良いカバリェが城壁から飛び降り、トランポリンの上に落ちる。当然ぽよんと跳ね返って城壁の上に浮上、悲劇のラストであるにも関わらず聴衆は噴き出したという。 - 他にも「銃殺隊のエキストラが酔っぱらって出番に現れず、仕方がないのでカヴァラドッシがうーんと呻いて死んだ」というエピソードもあり、元の話が悲劇だけにかえって面白い話になっている。
関連動画
関連項目
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