トヨタ・カムリとは、トヨタ自動車が1980年より製造をしている乗用車である。カローラと並び世界的に知られるトヨタ車である。
この車固有の形式記号は初代のみカリーナと同じ「A」で、以降は4代目までは「V」、5代目以降は「XV」である。
概要
車名の由来は「冠(かんむり)」から。トヨタの車名はカローラがラテン語で「花冠」、トヨペット店のメインだったコロナは「太陽冠」、2代目コロナの輸出仕様の名前のティアラは「宝冠」、トヨタ店メインのクラウンは「王冠」と言う具合に「冠」にちなんだ名称が多く、カムリもそれに沿ったものである。
日本では同じクラスにマークXがある事や海外基準の大きさと上位機種としては高級感が欠けることが裏目に出て、国内の売上は今一つだが、逆に海外の売り上げは多く、全世界で累計販売台数1000万とセダンの中で最も売れている。特に北米では日産・アルティマ(ティアナ)、ホンダ・アコードと共にこのクラスの人気争いのトップに入るほど。
日本では現在はトヨタ店以外販売店で販売されている。特にトヨペット店ではマークXの後継車両と目されていたが、駆動方式の差やサイズの関係から、マークXも並行販売されている。かつてはカローラ店専売だったことから、一時期はウィンダム(=レクサス・ES)亡き後のカローラ系列の最上位機種にあたり、実際にウィンダムの後継を標榜した感じであった。
初代(1980年~1982年)
カリーナのカローラ店向けとして1980年より発売。セリカの4ドアセダンバージョンとして登場した為、その車名も「セリカ・カムリ」と名乗ったのだが、元々急ごしらえ感が否めず、僅か2年のみであった。
元となったカリーナは1981年にモデルチェンジを行ったが、カムリはその翌年まで生産された。使用された顔つきはカリーナの輸出仕様である。[1]
2代目(1982年~1986年)
1982年に駆動方式をFF化した二代目モデルが登場。このモデルより単に「カムリ」となり、セリカの派生車種から外れた。このことから実質的な初代モデルとも言える。FF化によって余裕のある居住性をアピールし、同時に販売店違いのトヨタ・ビスタとは姉妹車となる。そして北米では今に続くベストセラーとなった。[2]
3代目(1986年~1990年)
1986年に3代目へ移行。「ハイソカーブーム」の潮流の中で影響を強く受け、貧層だった内外装にマークII並みの質感を与えて高級感をアップ。ワインカラーの内装に白い車体は「FFのマークII」と呼ばれた。また、このモデルからはピラーレスハードトップとセダンの2本立てとなる。
派生車種も多く登場し、V6エンジンを搭載した高級仕様のプロミネント、1989年に北米で誕生したレクサス店向けのレクサス・ES(プロミネントのハードトップ仕様をレクサス向けに仕立てたモデル。後述)、ステーションワゴンが設定された。北米仕様は顔つきがビスタに準じたものになっている。また、北米やオセアニアではステーションワゴンが従来の5ドア車の代替としてラインナップされていたが、日本ではラインナップされてなかった為に知名度は低い。
この他にもオーストラリアではGM系の現地メーカーであるホールデンにOEM供給され、「ホールデン・アポロ」として販売された(逆にホールデン側からフルサイズセダンの「コモドア(コモドーレ)」をトヨタ・レクセンとして販売した)
カムリ・プロミネント
V6エンジンを搭載した上級車種として登場。北米仕様に準じた仕様が選択され、セダンとハードトップがあったが、一般的にはハードトップが知られていた。
レクサス・ES
1989年の北米におけるレクサスブランド立ち上げの際にLS(日本では当時「トヨタ・セルシオ」として発売)と共にラインナップされた車種である。「LSだけでは心もとない」という事で、プロミネントのハードトップモデルをベースに意匠をLSへ合わせたモデルである。ステアリングやホイールはLSのものと同一であり、装備も本木目にOPで本革シートと言う具合にレクサスの名に恥じないものであった。
しかし、北米に衝撃を与えたLSの存在が大きく、ESはその陰に隠れがちであった。また、生産年数もプロミネント同様2年程度であり、販売台数もそれほど多くはない。
その後、2代目以降は日本においてはトヨタ・ウィンダムとして、またレクサスブランドでもミドルクラスの車両として大人気を博した。
4代目(1990年~1994年)
1990年に登場。ここから5代目までは日本仕様と北米仕様で全く異なるサイズのボディが採用された。ドアパネルなどは双方のモデルで共通だったりするが、北米仕様は大きさが3ナンバーサイズに拡幅され、日本へトヨタ・セプターの名前で輸入(ワゴン・クーペモデルのみ。セダンは国内製造のもの)される事になった。バブル期の設計の為、質感の高さに定評がある。また4WSも設定されていた。
プロミネントも引き続き設定されたが、ハードトップのみのラインナップへ縮小。また、ハードトップ車自体の設定がこの代までとなり、5代目以降はサッシドアを採用したセダンへ集約されている。
日本仕様は基本的に日本国内のみの流通であるが、中古車として流通した際に注目される車両と言うわけでもないので、日本車人気の高いロシアなどの地域へ輸出されるケースが増えている。日本車の頑丈さ+バブル期の車輛と言う所もポイントであろうか。
5代目(1994年~1998年)
1994年に発売。当初は北米同様の3ナンバーボディで開発されていたとされるが、バブル崩壊のあおりを受けてほぼ「サッシドア版のビスタ(型式は共通)」と化し、引き続き5ナンバーサイズを固持することとなる。曲線基調だった4代目と比べると直線基調に変化している。
6代目(北米カムリ)とは生産中止となる1998年まで並行生産されていた。
6代目(1996年~2001年)
セプターとして日本で販売された北米向けカムリだが、モデルチェンジした際に国内向けとして「カムリグラシア」の名前を付け発売する。セプターの後継車種となるため、大きさは当然3ナンバーサイズであり、エンジンも大型のものが搭載されている。注目点は再びV6エンジン搭載車がラインナップされた事である。なお、このモデルからダイハツにOEM供給する事になり、「ダイハツ・アルティス」を名乗る。
ワゴンは既にセプターとしては登場していたものの、「カムリ」の名前では初登場となった。1997年にマークIIワゴンの後継車である「マークIIクオリス」のベースとなる。
1998年には5代目が生産を終了。セダンのみ「グラシア」のサブネームが外れ、ワゴンボディが「カムリグラシアワゴン」から「カムリグラシア」へ変更されたことで、単に「カムリグラシア」と表記した場合はワゴンを指すことになった。これによりセダンが名実ともに6代目カムリへ昇格し、型式も北米カムリ(セプター)とレクサス・ES(ウィンダム)と共通になったことで、これまで姉妹車だったビスタとも袂を分けた。
面白いモデルとして「REMIX」があるが、これは「北米仕様のパーツを取り付けたカムリグラシア」で、いわば“公式USDMカスタム”である。北米仕様カムリはバンパーの形状が微妙に異なり、具体的には日本のナンバープレートに合わせた凹みや、フォグランプの装着といった日本独自の部分がなく、サイドモールの形状も微妙に異なったものとなっている。
7代目(2001年~2006年)
2001年にモデルチェンジ。それまでの直線的なデザインから、ダイナミックさ溢れるデザインへと変更となる。日本向けでは同じカローラ店で販売していた兄弟車のウィンダムとの差別化を図るため、V6エンジンを廃止し2400ccの直列4気筒エンジンのみとなる。しかし、大胆なデザインと大きさが祟ったのかウィンダム共々日本国内での売れ行きは芳しいものではなく、あまり路上で見かける事はない。
世界的に(特に北米で)ステーションワゴン人気が下火になった関係から、この代よりステーションワゴンのラインナップが存在していない。また、海外向け(とりわけアジア向け)は顔つきが大きく異なる。
海外向けにラインナップされていたV6エンジンは、当初アルファードのV6と同じ(3000cc)であったが、後にハリアー同様の3300ccにアップされた。
8代目(2006年~2011年)
2006年にモデルチェンジ。大型化がさらに進み、セルシオに迫らんばかりの大きさとなっていた。無論、これもメインの市場である北米向けの要求であるのだが、日本では当然もて余すサイズとなっていた。しかし、ウィンダムがモデル廃止となった事でウィンダムの代替モデルとして、本革シートの採用など内装に高級感を出す施策が取られた。
日本仕様はエンジンが2400ccの直列4気筒のみでシンプルなラインナップでありながらも、ウィンダムの需要を取り込む為に比較的ラグジュアリーな方面に振っているが、北米仕様はさらに高出力な3500ccのV6エンジンやハイブリッド仕様を導入している。またスポーティーグレードをラインナップに組み込み、幅広い層へのアピールを行っている。それを指し示すかのようにNASCARへの参戦にあたって、ベース車に選定されている。
オーストラリアでは顔つきやエンジンこそ日本と同じであるが、それに加えてスポーティーな「スポルティーポ」と言うグレードが登場している。さらに後年にはハイブリッドも追加となっている。さらにこのモデルより上級仕様の「トヨタ・オーリオン」が登場し、こちらはV6エンジンのみである。なおアジア向けのカムリはオーリオンのものを使用している。
9代目(2011年~2017年)
2011年9月に9代目としてモデルチェンジ。この代から日本仕様はハイブリッド専用車種となる。元々、世界的な知名度が高いながらも日本では印象が薄いカムリの存在感を強くするため、敢えてハイブリッドオンリーで登場させたと言われる。なお、日本以外の国ではHV機構なしのガソリン車も存在する。
日本向けの前期デザインや北米・オセアニア向け以外のハイブリッド仕様は程度の差はあれど、オーストラリアで販売されているオーリオンとほぼ同一となっている。また、ガソリン車のグリルは横線の細かいグリルで、シンプルながらもシックなデザインとなっている。最初に公開された国がウクライナであった事から、このアジア向けのガソリン車用グリルを日本のカムリ好事家の間では「ウクライナグリル」と称し、標準のオーリオングリルと交換するケースも見受けられる。
>余談ながら同時期、レクサス・HSの姉妹車として登場したトヨタ・SAIがあった。同じハイブリッド専用車種として全店舗で販売されるSAIと比べると、いくらばかりかシャーブにはなったが、全体的にカムリはコンサバティブであり、タクシーでの導入が多くなっている。
北米仕様・オーストラリア仕様は若々しさを演出したシャープなものとなっており、大きくそのデザインも異なる。北米仕様は3500cc・V6エンジン搭載車/2500cc・直列4気筒車/HVと言う具合に幅広いラインナップを展開する一方、オーストラリア向けは2500cc4気筒とハイブリッド仕様が導入されている。
2014年9月にマイナーチェンジ。北米カムリにも似たシャープなデザインを導入、しかし後部のデザインはそのままなので言わば折半のようなデザインとなっている。また非常に細かい所であるがウインカーの音やリバース時の音はクラウンなど上位車種の物を採用している。
一方、北米仕様・オセアニア仕様は多くの部品を入れ替える程のビッグマイナーチェンジを敢行し、より一層の若々しさとアグレッシブさを演出したモデルとなっている。一方でオーストラリアではオーリオンは日本で言う所の前期カムリと同じなので言わば2種類のカムリがある様なものである。また、タイのカムリは日本仕様の後期モデルをベースとしているが、特別モデルとして北米仕様・オセアニア仕様の「新型」カムリをベースとした「ESPORT」をラインナップに据えている。
10代目(2017年~)
2017年7月にモデルチェンジ。今回のモデルも日本ではハイブリッドのみのラインナップとなったが、販売店がトヨタ店(東京トヨタ除く)以外の全店舗での取り扱いになり、カムリ発売後に生産終了となったSAIの後継の立ち位置も務める。なお、当初はマークXの後継ではないかと目されていたが、実際はハイブリッドをラインナップに入れていないマークXのハイブリッドバージョン的な立ち位置となっている。またトヨタ店はクラウンにハイブリッド仕様がある為、バッティングを危惧してラインナップに入らなかったと想像される。
足回りはTNGAが採用となり、またエンジンも新世代のA25-FXS型を採用するなど大部分でコンポーネンツを一新した格好となった。
外装は近年のトヨタの潮流であるキーンデザインを採用、より若々しいデザインとなった。また、先代では割合に差があった海外仕様との差異がほとんどなくなった。
北米仕様は変わらずガソリン仕様とハイブリッド仕様の2本立てであり、ガソリン仕様にはV6エンジン+8速ATが用意され、赤を基調とした内装といった具合に若々しさをさらに強調している。また日本仕様には用意されていないJBL製オーディオのオプション採用がなされている。
特別なカムリ
近年、モータースポーツに絡む仕様のカムリが多い。これはメイン市場たる北米向けへのアピールである。但し、これらはワンオフでり、市販されてはいない。
日本におけるカムリのイメージはおっさん車であり、そのイメージとのギャップに驚かされる事が多い。
カムリNASCARエディション
2010年、アメリカの改造車見本市であるSEMA(Special Equipment Market Association)ショーに出品されたのがこのカムリである。
2007年よりNASCAR参戦を行っており、それをイメージした仕様となっている。ベースは8代目となっており、NASCARのレギュレーションに合わせて2ドアに改造してある(これまでカムリに2ドアが設定された事はない。カムリ・ソラーラはあくまで派生であり、独立した車種である)
それだけに飽き足らず、駆動方法はFFからFRへ変更し、6速MTを採用。エンジンはNASCARで採用されているエンジン(3UR-FEのOHV変更版)を採用し、中身はまるで別物になっている。
スリーパーカムリ
2014年、アメリカの改造車の見本市であるSEMAショーで出品されたのがこのスリーパーカムリ。スリーパーとはアメリカの自動車関係の俗語で見た目はどノーマルで地味なのに中身はかっとびカリカリチューンされている車を指す。日本で言う所の「羊の皮をかぶった狼」と同義語である。
見た目は完成直前に行われたマイチェン後の北米カムリの姿そのままであるが、中身はパイプフレームにフルサイズピックアップのタンドラに搭載されている5700cc・V8エンジン(3UR-FE)にスーパーチャージャーを組み合わせ、850PSと言う化け物みたいな性能を誇るまるっきり別物マシーンになっている。当然、駆動方式もFFに変化している。ドラッグレースを念頭に置いている為の設計であるが、申し訳程度にドア部分の内装などがあったりするので、ドアがきちんと開閉し、またパワーウィンドウの操作が可能である。
モータースポーツ
FFの大型セダンで一見すればモータースポーツとは無縁のようにも見えるが、北米ではNASCARに参戦をしている。無論、NASCARに使用されるストックカーは名ばかりの代物でカムリではありえないFRやV8エンジンが搭載されている。
北米でおそらく人気ナンバー1のモータースポーツであるNASCARに参戦する事は北米における販売で大きなPRとなるからと思われる。過去、アメリカ系以外のメーカーの参戦はNASCARの黎明期にこそ存在していたが、近年においてはほぼ半世紀ぶりの参戦となった。トヨタではこれと同時に同じくNASCARのピックアップクラスにもトヨタ・タンドラを導入している。
高度に規格化された車体には市販車のグリルなどを模したシールがある程度で、実質は鉄のガワとパイプフレームで構成された純然たるレースカーである。エンジンはタンドラなどに搭載されている5700ccの3UE-FEをベースにしているが、ルールに適合させる為に元々DOHCのエンジンをあえてOHVにした物を搭載していると言われる。
そして2008年3月、アメリカで人気No.1のレース、スプリントカップにおいて国産車史上初の優勝を勝ち取る。
この他、モータースポーツとは厳密には異なるが、中東で流行しているドリフト走行(サウジドリフト)のベース車にも使われる事がある。
ダイハツ・アルティス
従来、ダイハツにはアプローズというセダンがラインナップされていたが、旧態依然としていたのでこれに代わるセダンとして6代目の末期になる2000年に登場。以降、カムリのモデルチェンジと合わせてモデルチェンジを行っている。
エンブレム以外はカムリそのものであり、またラインナップもカムリほど豊富ではない。アルティスの車名のエンブレムは東南アジア地域で販売されるカローラ・アルティスのものをそのまま使用している。
関連動画
関連商品
関連項目
- トヨタ自動車
- トヨタ・カローラ
- トヨタ・セリカ
- トヨタ・カリーナ
- トヨタ・ビスタ
- トヨタ・カムリプロミネント
- トヨタ・カムリグラシア
- トヨタ・セプター
- トヨタ自動車の車種一覧
- ダイハツ・アルティス
- ホールデン・アポロ
脚注
- *この当時における姉妹車は輸出仕様のものを使用するケースが多く存在した。例として、スプリンターがあり、スプリンターの前面は海外仕様のカローラが採用しているフロントを使用している。
- *なお、このカムリ以前における北米のこのクラスの車輛はコロナがその任を担っていた。
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