トヨタ86とは、トヨタ自動車が富士重工業(スバル)と共同開発したスポーツカーである。
型式名は「DBA-ZN6」。
概要
トヨタ86(ハチロク)は、トヨタ自動車がスバル(富士重工)と共同開発し、富士重工業が生産、トヨタ自動車が販売するFRレイアウトのスポーツカーである。
「86(ハチロク)」という名前になったのは、息の長い人気を誇るハチロク、AE86の「自分だけの1台を楽しみながら育てる」精神を継承し、「お客様とともに進化する」スポーツカーを目指すという意味を込めて命名された。
車両コンセプトやパッケージングの企画、全体デザインをトヨタが、確認作業、生産を富士重工が、開発はトヨタと富士重工が共同で担当した。
デザインを決めるクレイモデル制作時には、2000GTをデザイン部門の部屋に置いて作業を行い、2000GTをモチーフに、ウインドウラインや前後フェンダー形状、前面投影面積を減らし、空気抵抗の低減とボディ剛性を考慮した形状としてデザインされた。
エンジン系統の開発時には、富士重工業の水平対向エンジン「FB20型」と、トヨタの直噴技術「D-4S」を組み合わせ、開発した「FA20型」を搭載し、低重心化を追求したFR車として、開発が進められた。
トヨタの提案でスバルのスポーツカーの主流だったターボ・四輪駆動・ハイグリップタイヤに頼らない設計となっており、タイヤはプリウスと同じエコタイヤが標準装備となっている。サスペンションもちょうどよい加減になっているので、サーキットなどでの走行が非常に楽しい設計となっている。Top Gearのジェレミーは86を大絶賛し、「ノーマルで乗りたい」と語るほど絶妙なバランスで仕上がっている。
そして、2012年2月にトヨタ、富士重工業より正式発表され、同年4月より、トヨタからは「 86 」、富士重工業からは兄弟車で、フロントデザインや足回りのセッティング、ボディカラー等が異なる「 BRZ 」が「 86 」よりも少し早い3月末より販売開始となった。また、同年10月にTRDよりワンメイクレース用「 86 Racing 」が登場。こちらはレースに必要な設備が整っている状態となっている。
2014年6月には一部改良された86が登場。塗装やボルト、ショックアブソーバーなどが変更。ボルト類は今まで出ていた86に対しても追加パーツとして付けられるので、オーナーは安心して手を加えることができる。また、コンセプト時代から予定されていた18インチホイールも同時に発売開始となった。
韓国、マレーシア、インドネシア、オーストラリアでは日本と同じ「 86 」の名称で販売されるが、北米市場でサイオンから「 FR-S 」、ヨーロッパ市場ではトヨタから「 GT86 」と名称が異なる形で販売されている。また、86、FR-S、GT86、スバルBRZのいずれもスバル、富士重工業群馬製作所本工場で生産されている。
その他、社外品やショップなどが数多くの部品、商品を展開し始めている。最初にも述べている「自分だけの1台を楽しみながら育てる」というのが浸透してきている。
コンセプトモデル
トヨタは2009年の10月24日に開催された第41回東京モーターショーで、クルマ本来の運転する楽しさ、所有する歓びを提案する小型FRスポーツカーのコンセプトモデルとして、出展した。
それが、「 86 」の名を冠する新型スポーツカー「 FT-86 Concept 」である。
トヨタからは、久々となるスポーツカー。そして、スポーツカーが衰退していく中で出展されたことに話題を呼んだ。
独立したトランクを有する3ボックス・ノッチバックスタイルでサッシュレスドアを採用しており、ED2(Toyota Europe Design Development)がデザインを担当した。
その後の2011年に少しデザインを変え、発売される実車に最も近い外見となったコンセプトモデル「 FT-86Ⅱ Concept 」を発表した。
2013年3月、ジュネーブモーターショーにて、86のオープンモデル。「 FT-86 Open concept 」が出展され、かなり期待が寄せられたモデルとなった。このコンセプトカーはFT86 Concept 時代から計画があった。予め屋根に負荷がかからない設計となっており、重さも多少増えるが、車体バランスはしっかり考えているとのこと。同年10月、オーナーズクラブ「 86S 」が不定期で行う道路貸切イベントにて、日本仕様である右ハンドルのFT-86 Open concept が登場。また11月に開催された東京モーターショーにも登場している。しかし2017年現在市販化はされていない。
2016年にはビッグマイナーチェンジ版のKOUKI 86が登場。モータースポーツに参戦した経験からのフィードバックを受けて、エアロや足回りに大幅な改良がされた。
特別店舗・イベント
トヨタは、一般販売店舗とは一味違う、トヨタ86に手を加えて、楽しむ仲間が集う「スポーツカー好きのたまり場」をコンセプトとするショップ「AREA 86」を展開した。この「 AREA 86 」には、展示車・試乗車を設置し、専門スタッフを常駐させている。
また、2012年10月~12月に、箱根にある TOYO TIRES ターンパイク で「 86 PIT HOUSE 」を展開。「大人のための健全な早朝ドライブの提案」をコンセプトに、フレンチトースト専門店「 LONCAFE 」とコラボし、朝食、軽食を提供していた。現在は、本店にてコラボした軽食を提供している。
インターネットを通じ、トヨタ86オーナー同士で情報交換ができるように「 86 SOCIETY 」というSNSサイトも作られ、力を入れている。
それらだけでは収まらない。FT-86を出展した翌年、2010年より「 Fuji 86 Style 」というイベントを開催。86が発売開始となった2012年は、多くの来場者、メーカー、パーツ店などが出たり、数々の開催イベントがあり、大いに賑わった。2013年のイベントでは、BRZも加わり「Fuji 86 Style with BRZ 2013」となり、更なる大イベントとなった。
また、2012年10月にメーカー初となるオフィシャルオーナーズクラブ「 86S 」が TOYO TIRES ターンパイク にてイベントを開催。道路を歩行者天国状態にし、色々なイベントを行った。また、このイベントで色々な撮影が行われ、その撮影された映像を2013年の駅伝にてCMとして放送。86初のTVCMとなった。その後もイベントを各地で開催。大変楽しいイベントとなっている。
2013年10月、「 トヨタ ガズーレーシング フェスティバル 2013 」にて86、BRZによるパレードランが行われた。2008年に行われたフェラーリのパレードラン台数、490台を越そうと企画されたこのパレードラン。インターネット申し込みでは、あまり数が集まらなかったのか、当日申し込みも可能とした。その結果、集まった台数は608台となり、フェラーリの490台を大きく上回り、会場を驚かせた。
モータースポーツ
販売開始の2012年よりニュルブルクリンク24時間耐久レースに初参戦。この年は、GAZOO Racingより2台参戦。主なトラブルもなく1台がSP3クラスでのクラス優勝を果たした。2013年は、モリゾウこと豊田社長もドライバーとして参戦し、SP3クラス2位。2014年にも参戦し、3クラス制覇の立役者の一台となった。
国内では2015年から導入されたマザーシャーシに外観が用いられており、2016年にはつちやエンジニアリングのVivac86がGT300クラス王者に輝いている。また市販車としてのレースとしてはワンメイクレース、スーパー耐久、全日本ラリー、ドリフト、ダートトライアルなどジャンルを問わず用いられており、コストの低さと素性の良さが窺える。クラス優勝・王者もしょっちゅうである。
なおグループR規定車としてGT86 CS-R3も開発され、TMGがプライベーター向けに販売している。
スペック
全長 | 4240mm |
全幅 | 1775mm |
全高 | 1300mm |
ホイールベース | 2570mm |
最小回転半径 | 5.4m |
地上最低高 | 130mm |
車両重量 | 1230kg~1250kg(グレードにより異なる) |
装備重量 | 1450kg~1470kg(グレードにより異なる) |
エンジン型式名 | FA20 |
総排気量 | 1998cc |
エンジン種類 | 水平対向4気筒DOHC |
内径×行程 | 86mm×86mm |
圧縮比 | 12.5 |
最高出力 | 200PS/7000rpm |
最大トルク | 20.9kgfm/6400-6600rpm |
燃料供給装置 | 気筒内直噴・ポート燃料噴射装置(D-4S) |
燃料タンク容量 | 50L(ハイオクガソリン指定) |
燃費(JC08モード値) | 12.4km/L |
トランスミッション | 6速AT/6速MT |
サスペンション | 前:マクファーソンストラット式コイルスプリング 後:ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング |
ブレーキ | 前後ともベンチレーテッドディスク |
価格 | 199万円~305万円 |
GR86(2代目)
2021年7月29日にデビューした2代目BRZに遅れること3ヶ月、10月28日に86の2代目モデル「GR86」が発表された。トヨタのワークスレーシングブランドである「Gazoo Racing」の略号を頭に冠したモデル名となった。
先代同様、トヨタと富士重工が共同で開発し、プラットフォーム・パワートレイン・内外装の基本部分は共通となっている。ヘッドランプ内部の構成やフロントバンパーの形状などが外観上の差別化ポイントである。
エンジン系統は先代の2000ccから400cc拡大した水平対向4気筒エンジン、「FA24」となっている。パワーは235PSにアップし、トルクも25.5kgmとなった。先代の弱点であった中低速域のトルクを大幅に上げている。これでコーナーリング中のアクセルコントロールでの微妙な荷重移動がよりやりやすくなった。トランスミッションは6MTか6ATが組み合わせられる。(「RC」は6MTのみ)
足回りは基本メカニズムはやはり共通である。ただし、フロントのハウジング(車軸受)部分が鋳鉄製となっており、アルミ製で軽量化を優先したBRZに対し、こちらはより剛性を重視している。リアサスペンションについてもスタビライザーの取り付け位置がBRZではサポートフレームを挟んでボディにマウントされるが、GR86ではサスペンションメンバーに取り付けられることになる。これらメカ的な違いばかりか、セッティング・チューニングが先代より明らかに差別化する方向に振られており、よりスタビリティ重視でオン・ザ・レールのグリップ走行を基本とするBRZに対して、GR86は積極的にクルマの姿勢を動かしてドライバーの制御テクニックに委ねる方向の味付けとなっている。
グレードのラインナップは最高級が「RZ」、標準モデルが「SZ」となっている。カーナビ・オーディオはがらんどうの「レス」仕様が標準。そんなものは走りに必要ないと言わんばかりの思い切りのよさだ。
そして、モータースポーツベースグレードとして「RC」も用意されている。これは納車後即チューンナップされることを前提に、16インチの鉄チンホイールとグレードの低いタイヤを装備。内装の防音材も一部を省略している。ただ、先代の「RC」のように前後バンパー無塗装・エアコンレス仕様・内装パネルが無くてオーディオの後付も不可…などという極端なことはなく、普通に納車後そのままドライブに乗って出かけても不都合を感じることはない。防音材がない分少々メカノイズやロードノイズなどが侵入してくるが、どうせタイヤとホイールはすぐに履き替えるし、それこそ楽しく走れりゃいいって人にはこのグレードも選択肢のひとつだ。
関連動画
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関連コミュニティ
外部リンク
関連項目
- 自動車
- トヨタ自動車
- トヨタ自動車の車種一覧
- 2000GT
- ハチロク
- トヨタ・スプリンター / トヨタ・カローラ
- スバル(富士重工) / スバルBRZ
- FR(フロントエンジン・リアドライブ)
- MFゴースト
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