トランス脂肪酸とは、植物油から部分硬化油を精製する際などに産まれる不飽和脂肪酸。一般的には、マーガリンやショートニングに含まれ、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増加させ心疾患のリスクを増大させることで知られている。
概要
トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸のうち、結合がトランス型になっている不飽和脂肪酸。通常不飽和脂肪酸は天然に存在する場合折れ曲がる(シス脂肪酸)のだが、これが折れ曲がらない形になっているのがトランス脂肪酸である。
で、なんでこんなもんが産まれてしまうのかというと、マーガリン等の精製の際に不飽和脂肪酸に水素を加えることで、腐りにくい飽和脂肪酸にしようとしたとき、その副産物で産まれてしまうのである(エライジン酸等)。他にも、天然にもわずかにトランス脂肪酸は存在している(共役リノール酸やトランスバクセン酸等)ほか、調理時[1]にシス脂肪酸がトランス脂肪酸になってしまうケースも有る。しかし一般的に人間の口に入る主要因はマーガリンやショートニングの摂取である。
人工トランス脂肪酸はメタアナリシスにおいて、天然のトランス脂肪酸に比べても有意に心疾患を起こすリスクが多かった。これはLDL(悪玉)コレステロールの増加を齎したり、αリノレン酸がDHAやEPAに変化させることを防ぐ効果が人工トランス脂肪酸にあったからであると考えられている。
なぜ問題になったのか
マーガリンやショートニングは主として西洋人の食生活においては非常によく使われる。マーガリンはバターの「健康的な」代用品として広まったことが由来であるし、ショートニングはカラッとした食感を齎すのでフライドポテトやスナック菓子類などにしばしば使われてきたからである。これは西洋人の食生活においてはトランス脂肪酸を大量摂取してしまうことを意味する。アメリカではこのこともあり、トランス脂肪酸を使わないようにとスナック菓子メーカーを相手取った訴訟まで行われた(企業側が代替を探すと約束したことで和解)。
そのため、各企業は食品に含まれるトランス脂肪酸を低減、あるいはなくすためにトランス脂肪酸が少ない油脂に切り替える、ショートニングを使用しないなどの対策を行っている。また欧米ではトランス脂肪酸の含有量表示を義務付け、また一定量以下にトランス脂肪酸を制限する法律が施行された。WHOも、人間が摂取する全カロリー中のトランス脂肪酸の摂取量を1%未満にするように勧告を出している。
他にも、トランス脂肪酸が少ないバターに回帰するなど消費者の消費行動にも影響が見られた。
日本におけるトランス脂肪酸の扱い
日本においては西洋とことなり、トランス脂肪酸に関する法規制はない。表示に関しても消費者庁によるガイドラインがあるくらいであり、法律上の義務ではない。これは「日本が欧米に比べて遅れている」のではなく、「そもそも日本人は西洋人ほどマーガリンもショートニングも摂取しない」ためである。日本人の主食は米飯であり、パンにたっぷりとマーガリン(あるいはバター)を塗ったりなんてことはしない。日本においては主要なトランス脂肪酸摂取源はお菓子や電子レンジ調理がメインとなる。
とはいえ、製造者側は(安心な、あるいは健康的な製品ですとアピールできるためか)トランス脂肪酸の低減には割りと積極的で、日本国内で販売されているマーガリンのトランス脂肪酸含有量はバターのそれの半分程度になっている。つまり「マーガリンはトランス脂肪酸が多いからバターにしよう」というのは、日本においてはもはや真逆なのである。
……なおあたりまえだが間食しまくってたり、ファストフード店通いになっているような人は西洋人と同じようにトランス脂肪酸を過剰摂取してしまう危険はある。だがそれはもはやトランス脂肪酸心配する以前にいろいろと健康的な問題があるはずなので、まず食べ過ぎをやめよう。
関連リンク
- SCP-123-J - アニヲタWiki(仮) - マーガリンのトランス脂肪酸についてよく書かれているアニヲタWiki(仮)の記事。……でもこれSCPの解説項目だったはずなんだけどなあ。
- トランス脂肪酸のご心配について 食品製品 事業内容 ミヨシ油脂株式会社
- トランス脂肪酸に関するQ&A
関連項目
脚注
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
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