トロリーバスとは、軌道を必要としない電車である。日本の法令上では「無軌条電車」と呼ばれ、あくまでも鉄道(の1種)である。
概要
「バス」と付くがバスではない。空中に張られた+・-2本の架線(Trolley)から、トロリーポールで電力の供給を受け、モーターを回転させてゴムタイヤで走行する、電車とバスの合いの子である。運転には力行ペダル(電車におけるマスコン)、ブレーキペダル(ブレーキハンドル)、ハンドルを利用する。折り返しにはループ線を用いる。
- 線路を敷設する必要がないため低コストで敷設できる
- 路面電車と変電設備を共用できるため低コストで路線網を拡大できる
- ゴムタイヤ駆動のため加速性能や制動性能、登坂性能に優れる
- 他の自動車と車線を共有できるため、道路の中央に安全地帯を設ける必要がない(歩道に寄せられる)
- 続行運転など柔軟な運用が容易
- 若干架線からの左右動が利くため、万一路線内に支障物があっても避けて運行を継続できる
などの利点がある。
一方デメリットとしては、
- 構造上パンタグラフ集電が難しく、空中が架線だらけになってしまう
- トロリーポールの架線からの離線のおそれがあり、ポールを監視しながら運転しなくてはならない
- ディーゼルバスと比較した場合、架線や変電所の維持管理コストが掛かる
- 架線のある区間しか運行できない
などが挙げられる。
歴史
1882年に原型となるものがドイツのジーメンスによって開発され、1901年にはドイツとフランスで営業開始されたといわれる。現在も欧米や中国など日本国外においては、都市交通として使われている事例が多く見られる。
日本においては1928年8月に新花屋敷温泉の遊園地と阪急宝塚線花屋敷駅(1964年廃止)の間約2kmに「日本無軌道電車」として開業したのが発祥である(同線は1932年に廃止)。
その後、1932年には京都市の四条大宮~西大路四条に開業、1943年に名古屋市に開業し、戦後までに東京・大阪・川崎・横浜にも登場したが、戦後の自動車交通量の増大に伴って路面電車ともども次々と廃止、残り一例となっていた立山トンネルトロリーバスが2024年に廃止、電気バスに切り替えられた。
路面電車より知名度は劣るものの、昭和レトロアイテムとして「タイムスリップグリコ」のオマケになったこともある。
立山黒部のトロリーバス
立山黒部アルペンルートには、日本国内に残った貴重なトロリーバス路線が2路線存在した。いずれも長大トンネル内で、一般車両が存在しないことと、長大ゆえにエンジンの排気ガス対処が難しい点などを考慮し採用された。しかし少数事例であるため、部品供給などメンテナンスに支障が予期されたことなど、様々な理由から存続が断念された。
立山トンネルトロリーバス(立山黒部貫光 無軌条電車線/廃止済)
室堂~(雷殿)~大観峰 3.7km 所要時間10分 直流600V
1971年の開業から立山トンネルバスとして走行していたディーゼルバスを1996年4月23日にトロリーバス化したもの。全線がトンネル内であり、標高差134mを3.7kmで走破、最急勾配は5%の急勾配路線である。室堂駅の標高は2450mであり、アルペンルート内で、また日本の鉄道の中で最も標高の高い地点であった[1]。途中駅として雷殿駅があったものの、登山道の崖崩れにより営業休止を経て廃駅となった。
1996年の転換時に、関電300型をベースに8000型8両が製造され、運行終了まで使用された。最大4両での続行運転が可能であった。
2024年11月30日を最後に運行を終了し、翌年4月からは電気バスに切り替えられた。
関電トンネルトロリーバス
(廃止済)
扇沢~黒部ダム 6.1km 直流600V
長野県と富山県をまたぐ、関西電力運営の路線(電力供給は中部電力)であった。1958年に黒部川第四発電所建設のために掘られた関電トンネル(全長5400m)を利用して1964年8月1日に開通。
開通時から100型(2+2列クロスシート)10両が、1969年から200型(ロングシート)5両が使用されていたが、1993年からすべて300型(1+2列クロスシート)15両に置き換えられた。GTO素子VVVFインバータ制御であり、三菱自動車製の足回りに東芝製の電装品を搭載していた。車庫や検査工場内は架線が張られていないため、短距離走行用としてバッテリーが搭載されていた。7~8両で続行運転を行っており、トンネル内を走行するため非冷房であった。
2018年11月30日を最後に運行を終了し、翌年4月からは電気バスに切り替えられた。
付記(名古屋ガイドウェイバス)
いわゆるトロリーバスとしての車両・設備(架線から電力供給を受けて走行する)ではないものの、名古屋ガイドウェイバス志段味線(ゆとりーとライン)も法令上トロリーバス(無軌条電車)に分類されている。こちらは動力は通常のバスと同様にディーゼルエンジンで動くものの、案内軌条に合わせて走行するという鉄道に近い性質を持っている。
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関連項目
脚注
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