トング(tongs)とは、主に食べ物をつかむときに使うはさみ状の道具である。
概要
二本の棒から構成されているが、その棒が片方でつながり、「>」のような形になっているものをトングと呼ぶ。ものを挟むような構造になっているが、切るためではなく、つかむための道具であるので、刃物ではない。
歴史は長く、木製のトングが紀元前から存在していたとされている[1]。火のついた薪を移動させるには素手では難しかったため、それを可能にするために作られたと思われる。
現在は様々なトングがある。パンや揚げ物、ケーキをつかむ用途が最も一般的で、この形状のトングを「万能トング」と呼ぶ。何もしていない状態だとトングが広がってしまうのでスペースをとってしまうのが難点だが、それを防止するために付け根の部分にある長方形の金具でトングをギュッと固定するタイプもある。また、広がった状態のトングをかけておく「トング掛け」がいっしょに置かれることもある。
バーベキューや焼肉でもトングが使われる。生肉を鉄板に置いたりひっくり返したりする際にはトングを使い、完全に焼けた肉を皿や口に運ぶ際は箸を使う。これは雑菌の繁殖による食中毒を防ぐためのものであり、厚生労働省も推奨している。
なお、英語表記は「tongs」であり、「tongue(舌)」ではない。焼肉で使うのがtongs(トング)、食べるのがtongue(タン)である。「scissors(はさみ)」と同じく、「tongs」と複数形で書くのが一般的。
色々なトング
ここで挙げるトングの分類はあくまで一例である。
スパゲッティトング
先端が5つ股に分かれているトング。スパゲッティなどの麺類がつかみやすい。洋麺で使われることが多く、日本や中華料理の麺では手づかみやザル・テボなどの網、箸が使われる。
サラダトング
片方がスプーン、もう片方がフォークのようになっているトング。キャベツの千切りなど、バラバラになりやすいサラダを安定してつかむのに適している。
ブレッドトング/ケーキトング
先端部の滑り止めが少なく、平坦な板状になっているトング。食パンやケーキなど、比較的傷つきやすいが摩擦力が十分にある料理をつかむのに適している。
シュガートング
ほかのトングより小型のトング。先端がスプーンのようになっていることが多い。ボロボロになりやすい角砂糖をこぼさないように運ぶのに適している。
アイストング
先端部がギザギザしており、閉じるとギザ歯のように見えるトング。非常に滑りやすい氷をがっしりとつかむのに適する。
レトルトトング
細長い棒状になっており、一見するとつかむ箇所が見当たらないトング。カレーなどのレトルト食品の袋を細長い棒で挟み、中の物をしぼって出し切るのに使う。
その他
似たような道具として、「火ばさみ」などと呼ばれる、たき火のときの薪や炭をつかんだり、ゴミを拾ったりするための道具もある。構造はトングと似ているが、地面に落ちているものを拾うため、トングよりやや柄が長い傾向がある。これをトングに入れるかどうかは特に定まっていない。
威嚇
我々人類のうちいくらかの者は、パン屋でパンをつかむためのトングを持った時になんとなく「カチカチ」と数回鳴らしてしまう。
日本語圏のインターネット上の一部では、この行為を「パンに対する威嚇」と表現する場合がある。
この表現の明確な起源は不明だが、「トング 威嚇」などをキーワードに軽く検索で調べた限りでは2010年12月に
とツイートした人物がいたようで、それが2019年7月31日現在見つけられた最古の記録だった。
実際には、異常性のない通常のパンは人類の脅威ではないため、威嚇を行っているとは考え難い。そもそも明確な意図があって行っている行為ではないと思われるが、「さあ、パンを選んでやるぞっ」といった「意気込み」などが無意識にこの「カチカチ」につながるのかもしれない。単にトングが壊れていないかのチェックをしているだけの人も居るだろうが。
関連動画
関連静画
威嚇するさま
関連項目
脚注
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