最強馬相手の大金星を挙げたことで知られ、現役引退後は忠犬ならぬ「忠馬」としても有名になった馬。
※馬齢表記は当時のものに合わせ、2000年以前は数え年馬齢、2001年以降は満年齢馬齢で表記。
「あの日」まで
父メジロライアン 母サクラササヤキ 母父*ノーアテンション
父であるメジロライアン・母父であるノーアテンション絡みの馬というと、メジロブライトやスーパークリーク、テンジンショウグンといった先達から長距離血統感もあるが、そうでもなく本馬は中距離中心で戦った。
デビューは旧4歳1月で、3戦目の未勝利戦こそ勝ち上がるがそこからは伸び悩んで500万下の条件馬として春を終え、クラシック戦線とは縁がなかった。
しかし、12月に復帰すると一気に調子を上げてオープン馬に。重賞初挑戦となった明け新4歳2月の京都記念では5着に入着した。そして、あの日が来る。
「トーホウドリーム大金星!エイプリルフールではありません、本当にオペラオーが負けました!」
陣営が次走に選んだのは産経大阪杯。この産経大阪杯にはトーホウドリームと同世代の二冠馬・エアシャカールとダービー馬・アグネスフライトが出走。しかし主役は何よりも前年年間グランドスラムの大記録を樹立したテイエムオペラオーだった。
この他にもアメリカンボス、アドマイヤボス、ジョービッグバンなどメンバーが揃ったことから、鞍上に安藤勝己を迎えたトーホウドリームは単勝9番人気に留まった。
レースはタマモヒビキが引っ張る展開。トーホウドリームはテイエムオペラオーと並ぶように中段からレースを進める。アドマイヤボスにつつかれ、3コーナーから押すようにして進出していき、直線に向いていつも通り抜け出すようにして先頭に立つオペラオー。しかし外からアドマイヤボス、エアシャカールが強襲しこの両頭との叩きあいに。抜け出したらそのまま先頭を守るオペラオーだが、この日は今ひとつ伸びず沈んでいく。そんな中でエアシャカールが先頭に立ったところ、大外一気の足でやってきたのがトーホウドリームであった。
そのままエアシャカールを一気にかわし去り、ゴール板を駆け抜けた。
実はこの時のオペラオーは調整不足もあったし、アドマイヤボスやエアシャカールが徹底してオペラオーマークだったこともあったとはいえ、「アンカツマジック」で乾坤一擲の大金星を挙げたトーホウドリーム。しかし、阪神競馬場は大穴の激走、そして「オペラオーが負けた(4着)」ことで大きなどよめきに包まれた。その中で馬場鉄志アナウンサーの実況の言葉を見出しとして用いた。
「夢」のその後
陣営は次戦に宝塚記念を選択。しかし、10着とメイショウドトウのオペラオーへの逆襲を後ろで見るにとどまる。その後もいいところを見せられたのは北九州記念3着と福島民友カップ(OP)1着のみ。
福島民友カップを最後に岩手競馬に転出したが、そこでもいいところなく引退となった。
一発屋のイメージが強かったためか、種牡馬にはなることはできず、引退後は福島県南相馬市在住のある家族に引き取られ、相馬の地域行事「相馬野馬追」行事に使われる乗馬というお役目をもらったトーホウドリーム。しかし、2011年の東日本大震災と福島第一原発事故に遭遇。津波に流されたり、避難後放置されて亡くなった馬もいる中で奇跡的に避難できたものの、馬は中通りにある岩瀬牧場に、家族は相馬市内の仮設住宅に避難しバラバラになってしまう。
避難のストレスでトーホウドリームは痩せてしまったものの、2013年の野馬追でも元気な姿を見せていた。しかし管理が難しくなったことから、オーナーはこの年の秋に岩瀬牧場への寄付を決め、手続きも終わり後は名義が移るだけ…だった11月15日に突如息を引き取った。牧場の人曰く、「最後まで家族の馬のまま死にたかったんじゃないかな」という。
また、岩瀬牧場にいた頃の彼をモデルとした絵本も出版されている[1]。ただし、古本含め一般流通はほとんどしていないため入手は困難。
血統表
メジロライアン 1987 鹿毛 |
アンバーシャダイ 1977 鹿毛 |
*ノーザンテースト | Northern Dancer |
Lady Victoria | |||
*クリアアンバー | Ambiopoise | ||
One Clear Call | |||
メジロチェイサー 1977 鹿毛 |
メジロサンマン | Charlottesville | |
*パラデイシア | |||
*シェリル | Snob | ||
Chanel | |||
サクラササヤキ 1988 芦毛 FNo.3-l |
*ノーアテンション 1978 鹿毛 |
Green Dancer | Nijinsky II |
Green Valley | |||
No No Nanette | Sovereign Path | ||
Nuclea | |||
シルバーナイキ 1978 芦毛 |
*ドン | Grey Sovereign | |
Diviana | |||
ケープルビー | *ムーテイエ | ||
ガーネツト | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Northern Dancer 4×5(9.38%)、Grey Sovereign 4×5(9.38%)
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
- 競馬
- 競走馬の一覧
- 2000年クラシック世代
- テイエムオペラオー
- 東日本大震災/福島第一原子力発電所事故
- 被災馬
- トーホウエンペラー 同じく岩手競馬で走った冠名「トーホウ」の馬。
- トーホウジャッカル 東日本大震災に運命を翻弄された冠名「トーホウ」の馬。
脚注
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