ドゥラエレーデ(Dura Erede)とは、2020年生まれの日本の競走馬。黒鹿毛の牡馬。
主な勝ち鞍
2022年:ホープフルステークス(GⅠ)
概要
父ドゥラメンテ、母マルケッサ、母父オルフェーヴルという血統。
父は故障に泣いた2015年の二冠馬で、種牡馬入り後も9歳で早世してしまったが、残された産駒からタイトルホルダーやスターズオンアース、ダートではヴァレーデラルナを送り出し、惜しまれ続ける悲運の暴れ馬。
母は5戦未勝利だが、半兄にサトノダイヤモンドがいる。
母父は言わずと知れた三冠馬にして、超気性難で知られた「金色の暴君」。ダートでの産駒の大活躍が記憶に新しいが芝でも古馬を中心に中長距離で結果を出している。
競馬ファンなら誰でも「気性がヤバそう」と思う血統だが、池添学調教師によると「特に問題もなく調教もこなしているし、ゲート(試験)も一発で合格しましたからね。気性も大人びた馬ですよ」とのこと。
2020年1月29日、ノーザンファームで誕生。2021年のセレクトセールにて1億円(税抜)で落札された。
オーナーは㈱スリーエイチレーシング。一口馬主クラブっぽい企業名だが、個人馬主である橋本征道オーナーの法人名義である。他の所有馬に2022年の朝日杯FSを勝ったドルチェモアなど。
馬名意味は「父名より+イタリア語で『最高の後継者』」。名古屋弁で「とても疲れた」ではない。
暴れん坊の後継者
2歳
栗東・池添学[1]厩舎に入厩。仕上がり早く、デビューは宝塚記念当日の2022年6月26日、阪神・芝1800mの新馬戦だったのだが、その1週前、競馬ファンの度肝を抜く動画が拡散された。
それは19日のマーメイドSに出走する牝馬アイコンテーラーの追い切り動画である。2頭の併せ馬かと思いきや、画面外から突如として現れブチ抜いていく馬が1頭。それこそデビュー前のドゥラエレーデだった。この動画のインパクトもあって、北村友一を鞍上に迎えた彼は、かなりの好メンバーと目される中で単勝2.0倍の1番人気に支持された。
しかしレースではハミに頼って(力みっぱなしで)走ってしまい、直線で伸びず5着。北村騎手は「馬は能力を秘めていて、課題を改善することができれば走ってくると思います」とのコメント。
2戦目は8月6日、札幌・芝1800mの未勝利戦。横山和生を鞍上に迎え、2.5倍の2番人気。スタートから押して逃げの手に出たが、番手で追ってきた同じドゥラメンテ産駒の牝馬ドゥーラにかわされ2着。
3戦目は中1週でなんとダートへ。札幌・ダート1700mの未勝利戦。池添謙一を鞍上に、押して2番手追走から3コーナー前でもう先頭に出ると抜群の手応えで抜け出し、シゲルカミカゼの追撃を振り切って勝利。
これでダート転向かと思いきや、芝に戻って11月の東京スポーツ杯2歳ステークス(GⅡ)へ。鞍上にはライアン・ムーアを迎えたが、20.1倍の11頭立て6番人気。2番手追走から直線で一度は抜け出したが、後続に呑まれ、粘ったものの3着とクビ差の4着。
そして迎えた2歳王者決定戦・ホープフルステークス(GⅠ)。葉牡丹賞を圧勝したミッキーカプチーノ、野路菊Sを快勝したファントムシーフ、黄菊賞を勝ったセブンマジシャン、東スポ杯勝ち馬ガストリックと3着馬ハーツコンチェルトあたりで人気が割れる中、ドゥラエレーデはというと……単勝90.6倍の14番人気。鞍上は短期免許で初来日中のカザフスタン人騎手バウルジャン・ムルザバエフ。ドイツのリーディングジョッキーとはいえ日本ではまだ未知数の騎手、馬自身も勝利はダートのみとくれば軽視されるのも致し方なしか。
レースは明確な逃げ馬がおらず先行争いが注目される中、横山典弘の7番人気トップナイフが前ポツン逃げの手に出る。ドゥラエレーデは好スタートから2番手でそれを追う。スローペースの展開のまま、前2頭が並んで直線へ。後続を突き放してこの2頭の叩き合いとなり、最後はドゥラエレーデがぐっとトップナイフに並びかけたところがゴール板だった。
中継の映像ではトップナイフが残したように見え、テレ東のウイニング競馬もレース直後には「横山典弘騎手 JRA・GI最年長勝利!! 8 トップナイフが優勝!」のテロップを出してしまうほどの僅差となったが、写真判定の結果、僅かにハナ差だけドゥラエレーデが差し切っていた。
3着にも6番人気キングズレインが後方から突っ込み、14番人気-7番人気-6番人気での決着。単勝9060円、ワイドはドゥラエレーデ絡みが両方とも万馬券。3連単は246万6010円という大荒れの配当となった。[2]JRAのGⅠで14番人気以下の勝利は2014年フェブラリーSのコパノリッキー(16番人気)以来である。
ムルザバエフ騎手は日本での重賞初制覇、そして日本での芝レース初勝利をGⅠで達成。池添学調教師もこれが嬉しいGⅠ初制覇。スリーエイチレーシングは朝日杯FSのドルチェモアでのGⅠ初制覇に続いて、なんと2歳GⅠを連勝となった。
ちなみに芝初勝利をGⅠで飾った馬はグレード制導入以降で彼が17頭目だが、鞍上も芝初勝利というのは言うまでもなく史上初である。
なお、JRA賞最優秀2歳牡馬は無傷の3連勝で朝日杯FSを勝った同馬主のドルチェモアに持って行かれた。こっちは5戦2勝だし仕方ないね。
3歳
明けて3歳はドバイのUAEダービー(G2)と、アメリカクラシック三冠に予備登録。ドバイからの招待を受諾し、なんと芝の2歳王者が国内クラシックを蹴って海外ダート戦線に挑むことになった。鞍上はクリスチャン・デムーロ。
同馬主のドルチェモアがいるから……と思いきや向こうはNHKマイルカップに向かうので、スリーエイチレーシングは2歳牡馬芝GⅠを両取りしながらどっちもクラシック1冠目の皐月賞を蹴るということになった。
レースはというと、最内枠のデルマソトガケが逃げを打ち、ドゥラエレーデは2番手でそれを追走。4コーナーでもそのまま2頭で後続を突き放していくが、手が動くドゥラエレーデに対してほぼ持ったままのデルマソトガケに直線では完全に置き去りにされ、新馬戦の雪辱を果たされてしまう[3]。それでもそのまま3着以下を突き放して2着。
クラシック1冠目を蹴っての海外ダート挑戦という異例の選択、勝てなかったものの結果は出したドゥラエレーデ。その後は球節に違和感があったため、ケンタッキーダービーには向かわず帰国となった。
日本に戻ったドゥラエレーデの次走は、なんと芝に戻って日本ダービー(GⅠ)。ホープフルS→UAEダービー→日本ダービーという前例のないローテで大一番に挑むことに。さらに鞍上は坂井瑠星となり、デビューからダービーまで鞍上が全て異なる騎手での出走となった。トーセンジョーダンもビックリ。
迎えたレース本番。17番枠からの出走となったが、何とスタートで躓いて落馬、坂井騎手を落としてしまう。この時点で競走中止となりダービー2走目は一瞬にして終わってしまったが、ドゥラエレーデは競走中もそれほど他馬に迷惑をかけることなく無事完走。しかも周囲をしっかりと把握していたのかレース終了後は自分から地下馬道入口まで戻ってくるという賢さも見せ、そのポテンシャルを世間に知らしめたのだった。シルソニが嬉しそうな顔で観てる気がする。
ちなみにダービーでの落馬による競走中止も30年前の1993年、南井克巳騎手鞍上のマルチマックス以来の珍事である。
この年のダービーでは2番人気のスキルヴィングが最下位でゴール後に急性心不全で死亡してしまうという悲劇があったが、幸いにしてこちらは人馬ともに無事。坂井騎手はそのまま目黒記念でバーデンヴァイラーに騎乗し、ドゥラエレーデも事無きを得たのだった。しかし芝2400の適正は分からずじまいで、ドゥラエレーデは"ローテがカオスで鞍上がコロコロ変わるので距離や馬場適性がよく分からない謎多き馬"という評価も広まっているようだ。父も母父も産駒は芝ダート万能なタイプだし…
レース後、馬自身には何の異常もみられなかったので、陣営はなんと宝塚記念(GⅠ)を視野に入れていることを発表。参戦が実現すれば3歳馬としてはマウントシャスタ以来11年ぶりの挑戦となる。時期が時期だけに3歳馬は古馬よりも5kg軽いハンデを貰えるが、それでも過去に挑んだ3歳馬はローエングリンの3着が最高で、二冠馬ネオユニヴァース(4着)や牝馬ダービー馬ウオッカ(8着)ですら勝利には遠かった。ドゥラエレーデの挑戦は果たして。
秋にはアイルランドのアイリッシュチャンピオンSや、フランスの凱旋門賞にも登録している。芝、ダート問わず好成績を修めているドゥラメンテ産駒のオールラウンダー筆頭として今後はどのレースに、誰を鞍上に出るのかという点でも注目である。
血統表
ドゥラメンテ 2012 鹿毛 |
キングカメハメハ 2001 鹿毛 |
Kingmambo | Mr. Prospector |
Miesque | |||
*マンファス | *ラストタイクーン | ||
Pilot Bird | |||
アドマイヤグルーヴ 2000 鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo | |
Wishing Well | |||
エアグルーヴ | *トニービン | ||
ダイナカール | |||
マルケッサ 2015 鹿毛 FNo.1-w |
オルフェーヴル 2008 栗毛 |
ステイゴールド | *サンデーサイレンス |
ゴールデンサッシュ | |||
オリエンタルアート | メジロマックイーン | ||
エレクトロアート | |||
*マルペンサ 2006 鹿毛 |
Orpen | Lure | |
Bonita Francita | |||
Marsella | *サザンヘイロー | ||
Riviere |
クロス:*サンデーサイレンス 3×4(18.75%)、Halo 4×5×5(12.50%)、*ノーザンテースト 5×5(6.25%)
関連動画
関連リンク
関連項目
脚注
- *池添謙一騎手の弟。
- *ちなみにこのレースで1番人気ミッキーカプチーノが5着に敗れたことで2022年のJRA平地GIは1番人気が24戦4勝、グレード制導入以来最低勝率を更新する.167という結果に。詳しくは1番人気の呪いの記事を参照。
- *デルマソトガケもドゥラエレーデと同じ新馬戦に出走しており、ドゥラエレーデに1/2馬身差の6着に敗れている。
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