ドミネーターとは、アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」に登場する特殊拳銃である。
概要
正式名称は「携帯型心理診断鎮圧執行システム・ドミネーター」。公安局の執行官と監視官のみが携帯を許される大型の特殊拳銃である。種類としては実弾を使用しない、電磁波照射銃(端的に言ってしまえばマイクロ波射出機)である。
対象のサイコパス(本作の造語である精神証明を指すPsycho-Passで、病理的な意味を指すPsychopathではない。)を読み取って犯罪係数をシビュラシステムにより算出し、その値に応じて「鎮圧・排除・そのどちらもしない」を自動的に選択し、それに応じたモードに変形する。射手にのみ聞こえる指向性の音声ガイダンスと、網膜投影か何かを用いた射手にのみ見える情報表示により、所持する執行官と監視官はそれら銃の読み取った犯罪係数やステータスなどを知ることができる。
ドミネーターは個人認証機能によって登録された執行官と監視官が持ったときしか発砲できず、向けた対象の犯罪係数が規定値に達していなくてもトリガーがロックされるなど、かなり安全対策がなされた銃であるが、それでも現場に到着するまで専用の輸送用ドローンの中に収められたままで、執行官も監視官も常に携帯することは許されないなど、劇中での扱いはかなり厳重である。
この銃を操る執行官といえども、彼らの犯罪係数は潜在犯の数値であるため、逃亡を企てたなどといった理由で監視官が必要と認めた場合は、任意執行対象として監視官はその権限により執行官に発砲することが認められている。前述したドミネーターの厳重な管理も執行官が犯罪や逃亡に使うことを防ぐためなのかもしれない。
犯罪係数の判定はドミネーター単独では不可能であり、すなわち使用するためにはシビュラシステムとの通信を確立することは必須となる。もしシビュラと繋がっていなければ、武器にもならない犯罪係数を読み取ることもできないただの文鎮 鉄屑と化してしまう。そのため、電波が通らない環境での利用のために有線ケーブルや中継器を用いている様子も劇中では描写されている。
ドミネーターの執行モード
パラライザー (麻酔銃)
対象を気絶させて鎮圧するための非致死性武器となるモード。犯罪係数にして100以上300未満の通常の執行対象となる潜在犯を確保するためのモードである。非致死性武器にはよくあることであろうが、薬物などで興奮状態だと効果が薄い場合があったり、逆に当たり所が悪いと一時的に気を失うだけでは済まない描写もある。おそらくテーザー銃のように撃たれた拍子に心臓が止まっちゃった、気を失って倒れた拍子に頭を打って死んじゃったみたいな事故もある程度は起きているかもしれない。
エリミネーター (殺人銃)
「慎重に照準を定め、対象を排除して下さい…」
対象を殺傷して文字通り社会からエリミネート(排除)するモード。犯罪係数が300以上の執行対象、もしくはパラライザーでは制圧することができなかった脅威度の高い対象を排除するためのモードである。人体に射撃するとその部分の組織は大きく破裂。胴体など致命的な部分に照射された場合、「ひでぶっ!!」といった感じに死亡するか、運良く(運悪く?)腕などに当たって即死を免れても失血死するような傷を負うというように、ある意味究極のストッピングパワーを持つ銃となる。劇中でドミネーターをこのモードにするような場合、対象の犯罪係数がかなり高い部類に入るため、とうの昔に潜在犯を通り越してすでに凶悪犯罪者になっているか、そうでなくとも正常な精神状態を逸脱したかなり危険な人というパターンが多い。
この社会では、更生保護施設はあっても既に裁判所や刑務所は廃止されており、すなわち執行官は犯罪者を逮捕して刑を課して罪を償わせることが目的ではない。対象に「治癒矯正の見込みがある状態なのか・そうでないのか」に焦点があるため、シビュラシステムがドミネーター経由でそれを診断し、見込み無しならば執行官と執行システムたるドミネーターにより現場で文字通り社会からの排除が即時執行されてしまう。ただし、ドミネーターを向けられたらエリミネーターになるような犯罪係数の人達ばかりが集めて隔離した収容所も存在するようなので、皆が皆殺されるわけでもなく、自ら治療も受けようともしない、公安局が来たのに投降もしない者は公安局員らの安全最優先で即執行ということになっている可能性もある。
デコンポーザー (分子分解銃)
対象を消滅させる、ドミネーターの執行モードの中では最強のモード。縢秀星曰く"ドミネーターの本気"。エリミネーターは劇中での描写の通り生モノには効果てきめんだが、機械や爆発物、瓦礫などの「物」に対する効果はない。ドローンなどに襲われるなどして射手が危険に晒されると、犯罪係数とは別に脅威判定が更新され(当たり前だが機械のドローンに犯罪係数も何もあったものではない)、対象を排除するためにこのモードになる。デコンポーザーは命中した部分の球状の範囲内の物が分子まで分解され文字通り消滅してしまう。
スローター (虐殺銃?)
アニメ本編には未登場の執行モード。Cerevoより発売されたドミネーターの可動式レプリカの専用スマホアプリ内のドミネーター音声集に収録されていたモード。
正確には、下記の様なドミネーターの原型となった小型特殊拳銃、およびそれ以前に同名称で使用された鎮圧用の実弾武装である。
アニメ本編で執行官だった征陸智己の新人時代を書いたスピンオフ小説『PSYCHO-PASS GENESIS』シリーズに登場。治安の劇的な悪化に対応するために重武装化、事実上の準軍事組織と化していた厚生省麻薬取締部(後に各都道府県警察と統合され公安局となる)所属の無人鎮圧ドローンにより使用された。ドミネーターとは違い、大口径の実弾を連射して使用する仕組みになっているようで、その威力は執行された対象者の上半身が消し飛ぶほど。
また、実弾ではなくドミネーターと同じマイクロ波を使用し、人間に携帯できるようになるまで小型化された白色のプロトタイプドミネーターの「スローター(Slaughter)」も存在していた。この時のプロトタイプモデルにはパラライザーモードとエリミネーターモードは搭載されていたが、デコンポーザーモードは搭載されておらず、バッテリーの容量も少なかったのかエリミネーターモードは数回程度しか撃てなかった。征陸の警視庁時代の元上司にして免罪体質者だと思われる八尋和爾(ヤヒロ ワニ)に引き起こされた公安局員同士の同士討ちによるサイコハザードで文字通り虐殺を引き起こす事となり、その悪名から「ドミネーター(Dominator 支配者)」へと改称された。
ちなみに、英語で「エグゼキューション(execution)」は「執行」、「スローター(slaughter)」は「虐殺」を表す。
強襲型ドミネーター
続編に当たるアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス 2」から登場した新型ドミネーター。従来の拳銃型のものとは異なり、こちらは狙撃用に造られた大型のものである。携行するには適さないが、従来型ドミネーターよりも更に強力な武器になっている。
その最も特筆すべき特徴は、隔壁や障害物を隔てた位置からも対象のサイコパスを測定し、各モードによる執行が行える点である。主に対象が密閉された場所に立て籠もっている状況や、隠れた位置から対象を攻撃したい際に効力を発揮する。また、2期の最終話「WHAT COLOR?」において、精神刺激薬を服用した酒々井水絵に対してもパラライザーが効いた事から、純粋な出力の面でも従来型より強化されていると推測される。
こうして見ると、混迷する事件現場では魅力的な武装に思える。しかし実はこの強襲型、対象の犯罪係数は測定できるが、身元や容姿に関するデータは特定できないという致命的な欠点がある。このため、現場の状況が見えない場所から、不特定多数の人物を対象に執行する場合、今照準の先に誰がいるのか、判然としないまま執行せざるを得ない場合がある。作中では、これが原因で悲劇が起きてしまう……
もっとも、シビュラシステムからすれば犯罪係数こそが、想定外の事態を除けば、執行の可否を決める唯一絶対の基準であり、対象となる人物が誰なのかは現場に於いては二の次なのかもしれない。
余談だが、劇中では主に須郷徹平執行官がこの強襲型ドミネーターを使用している為、扱いにはそれなりの慣れや技術が必要であると考えられる。
関連動画・静画
関連商品
- 2
- 0pt